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第509話 冥府の王(60)
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映画を見終わった後、短い草が芝生のように続く裏庭に出た。
めいめいが自分の琥珀を取り出し、軽く振って武器に変える。
剛が戦斧、由利亜が弓、香澄が短剣、そして僕が槍。
ここまではもう、みんな慣れていて、簡単に武器を出せるまでになっていた。
問題はこの後だ。
が、剛の発見は、正しかった。
映画でつかんだイメージを脳裏に再現して身体を動かしてみると、なるほど、動きがずいぶん楽だった。
武器のほうが身体を動かしてくれるとでも言おうか。
動きのコツが自然と身体に染み込む感じなのだ。
それを一番よく表しているのは、由利亜の弓だった。
50メートルほど離れたところに空き缶を置き、それをめがけて矢を射ると、百発百中で命中した。
構えもサマになっていて、まるでずっと以前から弓道をたしなんでいる達人みたいなかっこよさだった。
僕と香澄は、剛を相手に即席の戦闘訓練を行うことにした。
3人とも腕前は互角で、始めたばかりにしてはなかなか白熱した模擬戦闘になった。
「いつでもいけそうだな」
1時間ほど続けて、さすがに疲れ、武器を放り出して芝生に寝転がると、満足そうな口調で剛が言った。
「そうね。私のほうも、もう準備OKって感じ」
僕らの横に体育座りをして、由利亜が答えた。
「早くしたほうがいいな。またハンザキが事件を起こしたりして村に戒厳令が出ると、外に出られなくなる。いっそのこと、今から出発するってのは?」
腕枕をして、空を眺める雲を眺めながら、剛が言う。
「焦らないで。まず準備を整えないと。懐中電灯、非常食、雨具…最低でもそのくらいは必要だわ」
「確かに。じゃ、明日ってのはどうだ? 終業式じゃなくても、どうせ小学校も中学校も短縮授業だろ? それぞれ今日中に準備して、明日の授業後、もう一度俺んちに集合するんだ。大丈夫、飯はばあちゃんに頼んで作っといてもらうから、心配すんな」
「まあ、ハンザキが3日間も待ってくれるとは思えないしね。それに」
そこまで言って、ふいに由利亜が香澄を見た。
「次の犠牲者は、香澄ちゃんかもしれないし」
僕はぎくりとなって、反射的に上体を起こしていた。
そうなのだ。
香澄には、薄くなったというものの、まだハンザキの刻印が残っている。
ーここから切断してくださいー
そう言わんばかりの、あの切り取り線が…。
「香澄は平気だよ」
僕にならって、身を起こす香澄。
その額と喉元にうっすらと浮き出た赤い縦の筋。
「明日でもぜんぜんかまわない。”もがりの森”はここからそんなに遠くないし、うまくいけば、日が沈むまでに帰ってこられると思うよ」
「香澄ちゃん、”もがりの森”の場所、知ってるの?」
由利亜の大人びた顔に、驚きの色が浮かんだ。
「知ってるよ。お父さんが教えてくれたもん」
大して悪びれたふうもなく、はっきりと香澄がそう言った。
めいめいが自分の琥珀を取り出し、軽く振って武器に変える。
剛が戦斧、由利亜が弓、香澄が短剣、そして僕が槍。
ここまではもう、みんな慣れていて、簡単に武器を出せるまでになっていた。
問題はこの後だ。
が、剛の発見は、正しかった。
映画でつかんだイメージを脳裏に再現して身体を動かしてみると、なるほど、動きがずいぶん楽だった。
武器のほうが身体を動かしてくれるとでも言おうか。
動きのコツが自然と身体に染み込む感じなのだ。
それを一番よく表しているのは、由利亜の弓だった。
50メートルほど離れたところに空き缶を置き、それをめがけて矢を射ると、百発百中で命中した。
構えもサマになっていて、まるでずっと以前から弓道をたしなんでいる達人みたいなかっこよさだった。
僕と香澄は、剛を相手に即席の戦闘訓練を行うことにした。
3人とも腕前は互角で、始めたばかりにしてはなかなか白熱した模擬戦闘になった。
「いつでもいけそうだな」
1時間ほど続けて、さすがに疲れ、武器を放り出して芝生に寝転がると、満足そうな口調で剛が言った。
「そうね。私のほうも、もう準備OKって感じ」
僕らの横に体育座りをして、由利亜が答えた。
「早くしたほうがいいな。またハンザキが事件を起こしたりして村に戒厳令が出ると、外に出られなくなる。いっそのこと、今から出発するってのは?」
腕枕をして、空を眺める雲を眺めながら、剛が言う。
「焦らないで。まず準備を整えないと。懐中電灯、非常食、雨具…最低でもそのくらいは必要だわ」
「確かに。じゃ、明日ってのはどうだ? 終業式じゃなくても、どうせ小学校も中学校も短縮授業だろ? それぞれ今日中に準備して、明日の授業後、もう一度俺んちに集合するんだ。大丈夫、飯はばあちゃんに頼んで作っといてもらうから、心配すんな」
「まあ、ハンザキが3日間も待ってくれるとは思えないしね。それに」
そこまで言って、ふいに由利亜が香澄を見た。
「次の犠牲者は、香澄ちゃんかもしれないし」
僕はぎくりとなって、反射的に上体を起こしていた。
そうなのだ。
香澄には、薄くなったというものの、まだハンザキの刻印が残っている。
ーここから切断してくださいー
そう言わんばかりの、あの切り取り線が…。
「香澄は平気だよ」
僕にならって、身を起こす香澄。
その額と喉元にうっすらと浮き出た赤い縦の筋。
「明日でもぜんぜんかまわない。”もがりの森”はここからそんなに遠くないし、うまくいけば、日が沈むまでに帰ってこられると思うよ」
「香澄ちゃん、”もがりの森”の場所、知ってるの?」
由利亜の大人びた顔に、驚きの色が浮かんだ。
「知ってるよ。お父さんが教えてくれたもん」
大して悪びれたふうもなく、はっきりと香澄がそう言った。
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