34 / 295
第2部 ヒバナ、フィーバードリーム!
#16 一騎打ち
しおりを挟む
脱衣場を出ると、ヒバナは待合室を通り抜け、外に向かった。
出入口には番台があり、跳ね戸の向こうにしなびた梅干しみたいな老人が座っていた。
「こちらがこのお風呂屋さんのご主人、源三さんだよ」
ヒバナの手を引いていたひずみが、立ち止まって番台を指さした。
「いつもひずみちゃんが「お世話になっています。それにこのたびは助けていただいて、本当にありがとうございました」
ヒバナは、白のセーラー服の上着に似たコスチュームと、へそが見えるほど浅いショートパンツを身に着けている。
そのコスプレまがいの格好に、老人が目を瞬いた。
「おお、ヒバナちゃんだったかのう。すっかり元気になったようで、よかったよかった」
「じゃ、私、戦いがありますから、お話はまた後で」
風呂場を出ると、すぐに外かと思いきや、そこは延々と続く長い廊下だった。
左手には、ガラス戸越しに枯山水をあしらった気品のある庭が広がっているのが見える。
「ここ、ただの銭湯じゃないみたいね」
びっくりして、ヒバナは言った。
「うん。昔は料亭とか、色々やってたみたい。勇者様限定の、会員制の休憩所だったんだよ」
「織田信長とか?」
「そう、もちろん、秀吉も家康も。かれら、この地方の出身だし」
「うほほ、だね。私、三英傑の入ったお風呂につかってたわけだ」
「まあ、そうだね。その分きっと、パワーアップしてるんじゃない?」
「うん、そう思う。だから試してみたいことがあるんだ」
「試してみたいこと?」
ヒバナは左手をひずみの前に掲げて見せた。
「この腕輪の新しい使い方」
長い廊下を抜け、京都の町家ふうの玄関口にたどり着くと、ふたりは今度こそ外界に出ることができた。
背後に古墳を控えた、何もない草原である。
「ここなら結界の中だから、一般人には見られないよ」
ひずみが耳打ちした。
「そうなんだ」
なるほど。
よく見ると、草原は靄みたいなものに囲まれていて、その外は見えなくなっている。
「おせえぞ、こらあ」
ドラ声が降ってきて、振り向くと右手に武藤塊が突っ立っていた。
肩にマスコットみたいに小さなフクロウを乗せている。
「俺が勝ったら、あのトカゲ野郎の命はもらうからな」
太い首をグリグリ回して、塊が言った。
「どうぞ遠慮なく」
少し足を開いて立つヒバナ。
「なんか、走れメロスみたいだね」
ひずみがいかにも中学生らしい感想を述べる。
「ひずみちゃんとミミは下がってて」
腕輪に手を置いて、ヒバナは言った。
「行くよ」
ひずみの安全を確認して、リングを回す。
これまで動かなかった、内側から二番目の輪だ。
かちりと澄んだ音がした。
「やった」
ヒバナは瞳を輝かせた。
「回ったよ。新しい竜の文様が、できた!」
その瞬間、身体中がかっと熱くなり、変身が始まった。
出入口には番台があり、跳ね戸の向こうにしなびた梅干しみたいな老人が座っていた。
「こちらがこのお風呂屋さんのご主人、源三さんだよ」
ヒバナの手を引いていたひずみが、立ち止まって番台を指さした。
「いつもひずみちゃんが「お世話になっています。それにこのたびは助けていただいて、本当にありがとうございました」
ヒバナは、白のセーラー服の上着に似たコスチュームと、へそが見えるほど浅いショートパンツを身に着けている。
そのコスプレまがいの格好に、老人が目を瞬いた。
「おお、ヒバナちゃんだったかのう。すっかり元気になったようで、よかったよかった」
「じゃ、私、戦いがありますから、お話はまた後で」
風呂場を出ると、すぐに外かと思いきや、そこは延々と続く長い廊下だった。
左手には、ガラス戸越しに枯山水をあしらった気品のある庭が広がっているのが見える。
「ここ、ただの銭湯じゃないみたいね」
びっくりして、ヒバナは言った。
「うん。昔は料亭とか、色々やってたみたい。勇者様限定の、会員制の休憩所だったんだよ」
「織田信長とか?」
「そう、もちろん、秀吉も家康も。かれら、この地方の出身だし」
「うほほ、だね。私、三英傑の入ったお風呂につかってたわけだ」
「まあ、そうだね。その分きっと、パワーアップしてるんじゃない?」
「うん、そう思う。だから試してみたいことがあるんだ」
「試してみたいこと?」
ヒバナは左手をひずみの前に掲げて見せた。
「この腕輪の新しい使い方」
長い廊下を抜け、京都の町家ふうの玄関口にたどり着くと、ふたりは今度こそ外界に出ることができた。
背後に古墳を控えた、何もない草原である。
「ここなら結界の中だから、一般人には見られないよ」
ひずみが耳打ちした。
「そうなんだ」
なるほど。
よく見ると、草原は靄みたいなものに囲まれていて、その外は見えなくなっている。
「おせえぞ、こらあ」
ドラ声が降ってきて、振り向くと右手に武藤塊が突っ立っていた。
肩にマスコットみたいに小さなフクロウを乗せている。
「俺が勝ったら、あのトカゲ野郎の命はもらうからな」
太い首をグリグリ回して、塊が言った。
「どうぞ遠慮なく」
少し足を開いて立つヒバナ。
「なんか、走れメロスみたいだね」
ひずみがいかにも中学生らしい感想を述べる。
「ひずみちゃんとミミは下がってて」
腕輪に手を置いて、ヒバナは言った。
「行くよ」
ひずみの安全を確認して、リングを回す。
これまで動かなかった、内側から二番目の輪だ。
かちりと澄んだ音がした。
「やった」
ヒバナは瞳を輝かせた。
「回ったよ。新しい竜の文様が、できた!」
その瞬間、身体中がかっと熱くなり、変身が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる