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第26話 風が泣いています
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水の壁から目を逸らし、改めて室内を見渡す。
この部屋は、学校の教室程度の広さで、天井もそこそこ高く、自分たちが入ってきた場所以外に窓や扉のようなものは見当たらない。
部屋の中はほどよく明るいが、照明器具の姿は見えないので、壁や床が直接発光しているようだ。
先ほどまで水中にいたせいだろうか、空気がほんのりと暖かく、妙に心地よい。
それに、微かに甘い香りが漂っている。
──が、それはたぶん、長良さんの匂いだ。
自分たちが入ってきた場所から一直線の位置に、黒くて光沢のある石碑のような物体が二本、地面から生えているように立っていた。
その先の壁には、黒板のように真っ黒な板がはめ込まれている。
「あれ、なんだろうね」
そう言いながら、前方を指差す。
「んー、モニターでしょうか?」
「まあ、無視して引き返せないよね……」
二人でゆっくりと、黒い石碑へと近づいていく。石碑は腰の高さほど。
その上面には、まるで『ここに手を置いてください』とでも言わんばかりに、人の手のひらを模したマークが刻まれていた。
「「これは……」」
二人の声が重なった。
「ビリってくるかも?」
長良さんが冗談めかして言う。
「ちょっ……! 先に触るつもりだったけど、いまの一言で不安になったよ」
けれど、このまま触れずに放置するわけにもいかない。
覚悟を決めて、石碑に手のひらをピタリと重ねた。
──次の瞬間。
キィン、と電子音のような鋭い音が短く鳴り響き、正面の黒板が灰色に染まった。
同時に、石碑の表面に光が走る。
・第一スキル名:風魔法
・詳細:空気を操る魔法
まず表示されたのは、判断石で出た内容とほぼ同じだった。が、そのまま表示は止まらない。
・氏名:伊吹勇也
・性別:男
・種族:人間
・年齢:16
・初入域日:20XX/06/04
・入域済区域数:1
・入域履歴:232033(踏破階層数:2)
つづいて、まるで履歴書でも見せつけられるかのように、個人情報が次々と浮かび上がっていく。
・職業:高校生、株式会社代表
・在籍教育機関名:県立八宮高等学校
・利き手:右利き
・好きな音楽ジャンル:ロック、J-POP
・趣味:読書、ゲーム
・好きな飲み物:緑茶
・休日の過ごし方:ダンジョン探索
・携帯電話の機種:yPhone 108
・好きな色:青
・苦手な食べ物:ミョウガ
・最近読んだ本:ザリガニでもわかる確定申告
・好きな季節:真夏以外
・好きな食べ物:チーズハンバーグ
・希望進路:国立南駿大学
・最後に観た映像作品:風の谷でヤるしか
・注意指導件数:3(遅刻・上履き忘れ 等)
・繁殖希望対象者名──
「──ちょっ!?!?」
慌てて隣にいた長良さんの肩を掴み、ぐるりと反対を向かせる。
「えっ! 伊吹くん!?」
こんな情報は人に見せる物ではない!
石碑には尚も情報が表示され続け、自分の過去の言動や生活習慣までもが暴かれていく。
まるで人生の棚卸だ。
好物や趣味などはまだ許せるが、『よく利用するウェブサイト名』や、『クラスで一番嫌いな人物の名前』などは誰にも知られたくない。
パニック状態で目を泳がせていたそのとき、石碑の右上に控えめなアイコンを見つけた。
『基本情報以外を非表示』
即座にそのアイコンに触れる。すると、さっきまでの赤裸々な情報は一瞬で消え、スキルや氏名など最小限の情報だけが残った。
「……な、なんなのこれ……」
額に汗が滲む。
「ちゃんと好物にチーズハンバーグって書かれてましたね」
後ろから、長良さんの静かな声が聞こえた。
どこまで見られてしまったのか──いや、考えたくない。
自分は顔を伏せたまま、絞り出すように言った。
「……もう、振り向いていいよ……」
長良さんはこちらに向き直り、再び石碑を見た。
「あら? 随分とスッキリしてしまいましたね」
「う、うん。変なのは非表示にできたよ……」
いまは見られて困るような項目は表示されていない。あらためて見てみると、名前や年齢、初入域日など、表向きには公的な情報ばかりが整然と並んでいるだけだ。ただ、
──それでも、表示されていること自体が、どこか気味悪い。
「会社の立ち上げなんて、つい先日のことでしたのに、随分と新しい情報までも表示されているのですね」
「確かにそうだよね」
司法書士の先生から設立完了の連絡を受けてから、まだ一週間も経っていないはずだ。
表示されていた内容が、まるでこのダンジョンが“今の自分”を随時観測しているかのように思えてくる。
「先ほどまでの項目の中に、伊吹くんが知り得ない情報は含まれていましたか?」
「うーん、自分のことばっかりだった気がするけど……“知らない自分”って何?」
「例えばですが、生まれた時間だったり、まだ返却されていないテストの点数などです」
確かに、生まれた時間なんて聞いた覚えがない。
「いや、ちょっと分かんないな……」
「でしたら今一度──」
「いやいやいや、それはまた今度にしよう! さっきの情報、ちょっと恥ずかしすぎたから!」
「そういった理由でしたら仕方がありませんね」
長良さんは一歩近づいて、石碑の表示を指さした。
「いま見えている情報の──この『残点数』というのは心当たりありますか?」
彼女の指す先には、小さく“残点数11”という文字がある。
「いや、分かんないな……期末テストで取り損ねた点数とか?」
半ば冗談で返しながら、石碑をさらに見渡す。
他に目を引くのは、右下に並んだ“決定”と“キャンセル”の二つのアイコンだけだ。
どちらも、何を“決定”し、何を“キャンセル”するのかが分からない。
「とりあえずこのアイコン、押してみるか……」
そう言って石碑の“キャンセル”をタップした。
すると、黒板の灰色がすっと消え、自分のプロフィール表示も石碑から消えていった。
「あっ、消えてしまいましたね」
石碑の上には、再びあの手のひら型のマークが現れる。
──もう一度、手を置いてみる。
キィン
灰色に染まる黒板、そして再び浮かび上がる基本情報。今度は落ち着いて見られる──そう思った、そのとき。
「あっ! 伊吹くん見てください!!!」
長良さんが、声を上ずらせて黒板を指差した。
「ん?」
──何も……。
「うわっ!」
見た目には“灰色一色”に見えていた壁一面の黒板は、実は隙間なくびっしりと、文字情報で埋め尽くされていたものだった。
「これ……全部、日本語ですよ」
黒板に近づいて目を凝らしてみる。そこに並んでいたのは──
握力:41.7523▲▼【42】
走力:39.8741▲▼【40】
視力:39.5529▲▼【40】
聴力:47.8713▲▼【48】
──など、ステータスとも思える項目が無数に。しかも、それだけではなかった。
人相記憶力
短時間睡眠回復力
ツッコミ瞬発力
意味不明、というか、何に使うのかさっぱりわからないような項目と数値が、壁一面にズラリと並んでいる。むしろ意味不明な項目の方が圧倒的に多い。
「あ、これって、さっきの“残点数”を割り振るのかも」
「どういうことでしょう?」
長良さんはゲームに馴染みがないらしく、いまいちピンときていない。
「ええっと、例えば……」
伊吹は、“走力”の項目の右にある▲マークをタップしてみる。が、何も起こらない。
「んー? こっちじゃないのかな?」
試しに“走力”の文字そのものをタップすると、それに関連しそうな項目が大量に、光を帯びて浮かび上がった。
「あぁ、そういうことか。光った項目を全部上げるには、必要な数値が足りないってことね」
光っているのは『右足首筋力』『左腿持久力』『右ふくらはぎ筋力』など、“走る”という行動に直結しそうな項目ばかりだ。
「つまり、これら全部を同時に強化できるだけのポイントが無いから、上がらないと……」
と、そのとき──。
「本当ですね。他に影響することのなさそうな項目でしたら、三角マークを押すことで数値が増えました」
「えっ!? 長良さんも弄れるの!? って何を上げたの!?」
「『左中指の発毛力』です」
「ちょっと!! 俺の左の中指が剛毛になっちゃうじゃん!!」
なぜ、よりによって中指!?
そこだけモジャモジャになったら、すごく……カッコ悪い!
「この数値が本当に伊吹くんに影響するのであれば、発毛力などの項目で確かめるのが、一番分かりやすくありませんか?」
「確かにそうだけどさぁ……」
他にもっと適当なものはないかと目を走らせるも、膨大すぎるリストの中から適当な項目を見つけ出すのは容易じゃない。
「そちらの石碑の数字はどうなっていますか?」
長良さんに促され、再び石碑を見る。
そこには、先ほどまで『11』と表示されていた“残点数”が、見事に『0』となっていた。
「ちょっ!! 11ポイント全部を中指の毛に振ったの!?」
「実験結果が分かりやすい方が宜しいかと思いまして」
……まあ、▼を押せば戻せるだろうが、どこにその項目があったかを覚えておかないと、戻すのも一苦労だ。
「その『指毛力』の場所、ちゃんと覚えておいてね?」
「はい、大丈夫です」
『まずは実験、まずは実験』と自分に言い聞かせながら、石碑の右下に表示された“決定”アイコンに指を伸ばした。
ポン。
すると画面に、新たな表示が浮かび上がる。
次回割り振り可能まで【719:59:57】
「ちょーっとー!!!!」
「どうされました?」
「割り振り可能になるまで、719時間って出たんだけど!!」
「720時間……それは30日後ですね」
…………まさかこれは、中指の毛が30日間はモジャモジャということだろうか……。
◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎
この部屋は、学校の教室程度の広さで、天井もそこそこ高く、自分たちが入ってきた場所以外に窓や扉のようなものは見当たらない。
部屋の中はほどよく明るいが、照明器具の姿は見えないので、壁や床が直接発光しているようだ。
先ほどまで水中にいたせいだろうか、空気がほんのりと暖かく、妙に心地よい。
それに、微かに甘い香りが漂っている。
──が、それはたぶん、長良さんの匂いだ。
自分たちが入ってきた場所から一直線の位置に、黒くて光沢のある石碑のような物体が二本、地面から生えているように立っていた。
その先の壁には、黒板のように真っ黒な板がはめ込まれている。
「あれ、なんだろうね」
そう言いながら、前方を指差す。
「んー、モニターでしょうか?」
「まあ、無視して引き返せないよね……」
二人でゆっくりと、黒い石碑へと近づいていく。石碑は腰の高さほど。
その上面には、まるで『ここに手を置いてください』とでも言わんばかりに、人の手のひらを模したマークが刻まれていた。
「「これは……」」
二人の声が重なった。
「ビリってくるかも?」
長良さんが冗談めかして言う。
「ちょっ……! 先に触るつもりだったけど、いまの一言で不安になったよ」
けれど、このまま触れずに放置するわけにもいかない。
覚悟を決めて、石碑に手のひらをピタリと重ねた。
──次の瞬間。
キィン、と電子音のような鋭い音が短く鳴り響き、正面の黒板が灰色に染まった。
同時に、石碑の表面に光が走る。
・第一スキル名:風魔法
・詳細:空気を操る魔法
まず表示されたのは、判断石で出た内容とほぼ同じだった。が、そのまま表示は止まらない。
・氏名:伊吹勇也
・性別:男
・種族:人間
・年齢:16
・初入域日:20XX/06/04
・入域済区域数:1
・入域履歴:232033(踏破階層数:2)
つづいて、まるで履歴書でも見せつけられるかのように、個人情報が次々と浮かび上がっていく。
・職業:高校生、株式会社代表
・在籍教育機関名:県立八宮高等学校
・利き手:右利き
・好きな音楽ジャンル:ロック、J-POP
・趣味:読書、ゲーム
・好きな飲み物:緑茶
・休日の過ごし方:ダンジョン探索
・携帯電話の機種:yPhone 108
・好きな色:青
・苦手な食べ物:ミョウガ
・最近読んだ本:ザリガニでもわかる確定申告
・好きな季節:真夏以外
・好きな食べ物:チーズハンバーグ
・希望進路:国立南駿大学
・最後に観た映像作品:風の谷でヤるしか
・注意指導件数:3(遅刻・上履き忘れ 等)
・繁殖希望対象者名──
「──ちょっ!?!?」
慌てて隣にいた長良さんの肩を掴み、ぐるりと反対を向かせる。
「えっ! 伊吹くん!?」
こんな情報は人に見せる物ではない!
石碑には尚も情報が表示され続け、自分の過去の言動や生活習慣までもが暴かれていく。
まるで人生の棚卸だ。
好物や趣味などはまだ許せるが、『よく利用するウェブサイト名』や、『クラスで一番嫌いな人物の名前』などは誰にも知られたくない。
パニック状態で目を泳がせていたそのとき、石碑の右上に控えめなアイコンを見つけた。
『基本情報以外を非表示』
即座にそのアイコンに触れる。すると、さっきまでの赤裸々な情報は一瞬で消え、スキルや氏名など最小限の情報だけが残った。
「……な、なんなのこれ……」
額に汗が滲む。
「ちゃんと好物にチーズハンバーグって書かれてましたね」
後ろから、長良さんの静かな声が聞こえた。
どこまで見られてしまったのか──いや、考えたくない。
自分は顔を伏せたまま、絞り出すように言った。
「……もう、振り向いていいよ……」
長良さんはこちらに向き直り、再び石碑を見た。
「あら? 随分とスッキリしてしまいましたね」
「う、うん。変なのは非表示にできたよ……」
いまは見られて困るような項目は表示されていない。あらためて見てみると、名前や年齢、初入域日など、表向きには公的な情報ばかりが整然と並んでいるだけだ。ただ、
──それでも、表示されていること自体が、どこか気味悪い。
「会社の立ち上げなんて、つい先日のことでしたのに、随分と新しい情報までも表示されているのですね」
「確かにそうだよね」
司法書士の先生から設立完了の連絡を受けてから、まだ一週間も経っていないはずだ。
表示されていた内容が、まるでこのダンジョンが“今の自分”を随時観測しているかのように思えてくる。
「先ほどまでの項目の中に、伊吹くんが知り得ない情報は含まれていましたか?」
「うーん、自分のことばっかりだった気がするけど……“知らない自分”って何?」
「例えばですが、生まれた時間だったり、まだ返却されていないテストの点数などです」
確かに、生まれた時間なんて聞いた覚えがない。
「いや、ちょっと分かんないな……」
「でしたら今一度──」
「いやいやいや、それはまた今度にしよう! さっきの情報、ちょっと恥ずかしすぎたから!」
「そういった理由でしたら仕方がありませんね」
長良さんは一歩近づいて、石碑の表示を指さした。
「いま見えている情報の──この『残点数』というのは心当たりありますか?」
彼女の指す先には、小さく“残点数11”という文字がある。
「いや、分かんないな……期末テストで取り損ねた点数とか?」
半ば冗談で返しながら、石碑をさらに見渡す。
他に目を引くのは、右下に並んだ“決定”と“キャンセル”の二つのアイコンだけだ。
どちらも、何を“決定”し、何を“キャンセル”するのかが分からない。
「とりあえずこのアイコン、押してみるか……」
そう言って石碑の“キャンセル”をタップした。
すると、黒板の灰色がすっと消え、自分のプロフィール表示も石碑から消えていった。
「あっ、消えてしまいましたね」
石碑の上には、再びあの手のひら型のマークが現れる。
──もう一度、手を置いてみる。
キィン
灰色に染まる黒板、そして再び浮かび上がる基本情報。今度は落ち着いて見られる──そう思った、そのとき。
「あっ! 伊吹くん見てください!!!」
長良さんが、声を上ずらせて黒板を指差した。
「ん?」
──何も……。
「うわっ!」
見た目には“灰色一色”に見えていた壁一面の黒板は、実は隙間なくびっしりと、文字情報で埋め尽くされていたものだった。
「これ……全部、日本語ですよ」
黒板に近づいて目を凝らしてみる。そこに並んでいたのは──
握力:41.7523▲▼【42】
走力:39.8741▲▼【40】
視力:39.5529▲▼【40】
聴力:47.8713▲▼【48】
──など、ステータスとも思える項目が無数に。しかも、それだけではなかった。
人相記憶力
短時間睡眠回復力
ツッコミ瞬発力
意味不明、というか、何に使うのかさっぱりわからないような項目と数値が、壁一面にズラリと並んでいる。むしろ意味不明な項目の方が圧倒的に多い。
「あ、これって、さっきの“残点数”を割り振るのかも」
「どういうことでしょう?」
長良さんはゲームに馴染みがないらしく、いまいちピンときていない。
「ええっと、例えば……」
伊吹は、“走力”の項目の右にある▲マークをタップしてみる。が、何も起こらない。
「んー? こっちじゃないのかな?」
試しに“走力”の文字そのものをタップすると、それに関連しそうな項目が大量に、光を帯びて浮かび上がった。
「あぁ、そういうことか。光った項目を全部上げるには、必要な数値が足りないってことね」
光っているのは『右足首筋力』『左腿持久力』『右ふくらはぎ筋力』など、“走る”という行動に直結しそうな項目ばかりだ。
「つまり、これら全部を同時に強化できるだけのポイントが無いから、上がらないと……」
と、そのとき──。
「本当ですね。他に影響することのなさそうな項目でしたら、三角マークを押すことで数値が増えました」
「えっ!? 長良さんも弄れるの!? って何を上げたの!?」
「『左中指の発毛力』です」
「ちょっと!! 俺の左の中指が剛毛になっちゃうじゃん!!」
なぜ、よりによって中指!?
そこだけモジャモジャになったら、すごく……カッコ悪い!
「この数値が本当に伊吹くんに影響するのであれば、発毛力などの項目で確かめるのが、一番分かりやすくありませんか?」
「確かにそうだけどさぁ……」
他にもっと適当なものはないかと目を走らせるも、膨大すぎるリストの中から適当な項目を見つけ出すのは容易じゃない。
「そちらの石碑の数字はどうなっていますか?」
長良さんに促され、再び石碑を見る。
そこには、先ほどまで『11』と表示されていた“残点数”が、見事に『0』となっていた。
「ちょっ!! 11ポイント全部を中指の毛に振ったの!?」
「実験結果が分かりやすい方が宜しいかと思いまして」
……まあ、▼を押せば戻せるだろうが、どこにその項目があったかを覚えておかないと、戻すのも一苦労だ。
「その『指毛力』の場所、ちゃんと覚えておいてね?」
「はい、大丈夫です」
『まずは実験、まずは実験』と自分に言い聞かせながら、石碑の右下に表示された“決定”アイコンに指を伸ばした。
ポン。
すると画面に、新たな表示が浮かび上がる。
次回割り振り可能まで【719:59:57】
「ちょーっとー!!!!」
「どうされました?」
「割り振り可能になるまで、719時間って出たんだけど!!」
「720時間……それは30日後ですね」
…………まさかこれは、中指の毛が30日間はモジャモジャということだろうか……。
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