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第54話 空中大回転
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「ちょっと浅井、臭いって! もっと向こうでやって!」
「昨今、人に『臭い』なんて言うとイジメ認定されるぞ? もし俺が学校にチクったら、お前の進学にも影響が出──」
「もっと離れた場所でやってって言ってんの! そっちこそスメハラなんだからね!」
浅井のゴブリン料理に文句を言っているのは、落下耐性女子『深谷市花』さんだ。
彼女は先日まで、動きやすい靴を持っていなかったため、自身の『落下耐性』スキルを試すことができなかった。
だが今は、ダンジョン用品店で柔らかめの運動靴を手に入れ、飛んだり跳ねたり思いのままだ。
そんな深谷さんは、中村さんが用意してくれた櫓に登って、飛び降り具合を確認しようとしていたのだが、浅井が焼いているゴブリン肉があまりに臭く、場所の移動、あるいは中止の要請を訴えている。
「伊吹、ちょいアレ頼むわ」
「あいよー」
浅井がゴブリン料理を作っている釜戸に、魔法を使って微風を吹かせると、辺りに漂っていた嫌な臭いが人気のない森へ流れていく。
「ふふっ、どうよ、俺の風魔法は」
「……よくその力で、ダンジョン潜る気になったな」
風魔法の有用性をドヤ顔でアピールしてみたのだが、逆に憐憫の表情を向けられる結果となった。
「どうせなら、それずっと吹かせておいてよ! 臭い散らし魔法は、拾い食いスキルとセットで活動すべきよ」
「に、臭い散らし魔法……」
「拾い食いスキル!?」
最近では、微風程度の魔法なら、あまり意識を割くことなく吹かせ続けられるようになったので、深谷さんのリクエストには問題なく応えられるのだが、臭いを吹き飛ばすだけの能力と思われているのは少し納得がいかない。
「俺からも頼むよ相棒。これ以上文句言われたくないし……」
「分かった分かった。……あと、相棒になった覚えはないからな」
そう言って、手で払うような仕草で、浅井を元いた場所へと追い返した。
今ココ、異界薬理機構の窓口周辺には、自身のスキルを確認するための、様々な施設が建てられていた。
深谷さんが落下耐性スキルを試しているアスレチックや櫓をはじめ、料理用の釜戸に燻製小屋、遠距離攻撃のための的や戦闘スキル用の木人形など──
ほかにも、裁縫や染め物に使うブース、さらには空き巣スキルの練習用に建てられたログハウスまで揃っている。
加えて先日、オーク集落から持ち帰ったテーブルと椅子も近くに並べられ、過疎ダンジョンとは思えないほど、施設は充実してきていた。
そんな施設のほとんどを『木工スキル』持ちの中村さんが造っているのだが、驚かされるのはその構造だ。
金属の釘やネジを一切使わず、木材同士を組み合わせ、楔で締めて固定する──伝統的な組木の技法で造られている。
ぱっと見では分かりにくいが、『継手』や『仕口』といった職人技が随所に用いられており、堅牢でありながら分解・修繕が容易な造りとなっていた。
この技巧をどこで学んだのかと尋ねた際、中村さんはすぐにこう答えてくれた。
「……動画サイトで観たんすよ」
つまり、木工スキルは“木を加工する手先の器用さ”を後押ししてはくれるが、知らない技法が勝手にインストールされるわけではない。
その一方で、『この建物にはどの樹種が向いているか』や『強度を出すためには、どこに添え木を取り付けるべきか』といった、目的に応じた判断・指針のようなものは、自然と頭に浮かぶ感覚があるという。
生産スキルとは、知識や経験を補強し、実用的に引き出してくれる“後押し”のようなもの。
あらためて、生産スキルの仕様を深く知ることができた。
そんな、件の中村さんがいくつかの木箱を抱えて、こちらの近くを通りがかった。
「それなに?」
「あー、これは、パズルみたいなもんっすね」
中村さんが抱えていた木箱は、箱根・小田原の伝統的な工芸品を参考に作ったもので、決まった手順通りに木のパーツをずらしていくと、ようやく蓋が開く仕組みになっているらしい。
「これを、シマシマさんの解錠能力で開けられるか試してみようって話で、いまからログハウスに持って行くんすよ」
「おー、なるほど。それ面白そうだね。…………おーい、深谷さーん! 少しの間、店番代わってくれなーい?」
声をかけたときにはすでに、櫓の三階から深谷さんが身を乗り出していた。
スキル能力を確認するために、登っては飛び降りる動作を繰り返していたようで、彼女はこちらの呼びかけに手を振り返しながら、そこから躊躇することなく飛び降りる。
高さはおよそ六メートル。普通なら脚をくじいてもおかしくない高さだが、深谷さんは音ひとつ立てずに地面へと着地した。
途中、スカートが大きく捲れ上がっていたが、本人にそれを気にする様子はない。
「……パンツ丸見えだったよ」
「短パンだから平気だっての」
深谷さんは学校では黒髪ストレートの真面目女子。だか、ダンジョンへ来る前にはクランハウスで軽くコテを当て、今はゆるく波打つウェーブヘアだ。
うちの学校は、いわゆるクソ真面目な進学校なので、派手な身なりをすると内申に思いっきり響く。しかし、ここではそれを咎める者も居ないため、彼女は内なる趣味を全開にした、派手でチャラめなJKファッションを身に纏っていた。
「人が来たら、適当に木札を渡せばイイんだよね?」
「適当はやめて……」
なにも、性格まで服装に合わせなくても……。
◻︎◻︎◻︎
「えっ、これでホントにレベル1?」
「こっちは開きましたよ」
中村さんが作ってくれた仕掛け箱は、三段階の難易度が用意されており、レベル1で4回、レベル2で10回、そしてレベル3で30回もパーツを動かさないと、蓋が開かない仕組みになっていた。
手渡された箱の表面には『レベル1』と書かれているので、たった4回パーツを動かせば開くはずなのだが、それすら満足にクリア出来ないでいる。
「これ完全にスキルが働いてますね……。適当にガチャガチャしてると、動かす順番が頭に流れ込んできます」
「あれ? 木工スキルだと、自分の知らない知識は流れ込んでこないんだよね?」
「そっすね。『こっちの方が頑丈だ』とか『こっちの方が良い匂いがする』的なのは流れてきますけど、『こういった継ぎ方がある』的なのは無いっすね」
「私が、木片をスライドさせる術を知らないなら、流れてこないんじゃないですか?」
「ああ、そういうことか。なら鍵の仕組みを説明した動画なんかを見といた方が、このさき応用が効きそうだね」
「そんな動画あるんです?」
「何でもあるでしょ」
それにしても、なぜ魔法系のスキルは、彼らのスキルとは違って、サポート的な働きをしてくれないのだろうか?
「いいなぁ……。俺の風魔法も、高火力の出し方とか、効率的な使い方とかサポートしてほしいよ」
「それって逆じゃないです?」
シマシマさんが、つい口にしてしまったボヤキに対して、何かを思いついたようだ。
「逆?」
「多分ですけど、魔法スキルって何でも出来るんですよ。……大きな竜巻を起こしたいならそれも出来るし、地面から噴き上がる気流を発生させたいならそれも出来る。規模も威力も思うがままに」
「いや、そんなこと出来んけど……」
「それはきっと、今はまだMPやレベル的なものが足りていないからじゃないですか? だから凄い現象を思い浮かべても発現しない。……とか?」
「なる……ほど……。でもそうなると、詠唱魔法の意味が無くないか?」
「詠唱魔法なんてあるんですか!?」
あ、しまった。自分は水底の部屋で『詠唱』の存在自体を確認しているが、一般的にはまだ知られていないことだ。
「あ、いや、もし詠唱があるならって話だけど……」
「それも、別に不自然ではありませんよ? むしろ、何でもできるからこそ詠唱があるんじゃないですか?」
「どういうこと?」
「例えば『メラ』って詠唱をすると、直径50センチで1000度の火球が、時速60キロで飛ばせるとか、常に一定の形で発現する? みたいな」
「それって、毎回その1000度で60キロの火球をーってイメージするんじゃダメなの?」
「ゴブリン5匹に追いかけ回されている時でも、冷静にイメージできるならそれでも良いんですが、そうはいかないじゃないですか」
「確かにそんな時は便利そうだな……。じゃあ詠唱破棄は?」
「心の中で『メラ』って唱えても、ちゃんと規定値で魔法が発現する能力? ですかね」
何だか、全てが彼女の説明通りな気がしてきたな……。
「じゃあその詠唱するための言葉を知るには?」
「そ、それは分かりませんね……。一通り色んな言葉を決めポーズと共に──」
「やめてくれ! お、思い出したくもない……」
「……既に色々と試したんですね」
初めはウキウキで試していたんだけど、段々と恥ずかしくなってくるんだよな、アレ。
「ただその、不発に終わった厨二的実験も、今はレベルが足りなくて発現しなかっただけかもしれないので、モンスターを狩ってレベルを上げた後、もう一回最初から試し直す必要が……」
「い、嫌すぎる……。大体、魔物を倒してレベルが上がるかも分かんないのに……」
「ですよね。それだと生産スキルを得た人は、ちっともレベルを上げられませんよね」
「ところでシマシマさんって、その手の話に理解ありすぎじゃない?」
「あ、ええと、その、兄が。そう、兄が漫画とゲーム大好きなんで……」
「あー、お兄さんが……」
間違いなく、シマシマさん本人の趣味だろうな……。
会話がひと段落したところで、なんとなく右手をグーにして前に突き出し、少しだけカッコつけた声で叫んだ。
「風鳴の法、第一節──エアスクリーム!」
次の瞬間
『ぷーーーーーーーーー!』
間の抜けた音が、拳の中から響く。
中村さんは真顔になり、シマシマさんがそっと口元を押さえた。
「……あの、それが風魔法なんですか?」
「そうだけど……」
「す、すごいですね……。それを聞いたら集合すれば良いですか?」
「いや、敵の注意を引くための魔法じゃないっすか?」
「……ごめん。いつかちゃんとしたやつを見せるから……」
早く竜巻魔法を使いたい……。
◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎
「昨今、人に『臭い』なんて言うとイジメ認定されるぞ? もし俺が学校にチクったら、お前の進学にも影響が出──」
「もっと離れた場所でやってって言ってんの! そっちこそスメハラなんだからね!」
浅井のゴブリン料理に文句を言っているのは、落下耐性女子『深谷市花』さんだ。
彼女は先日まで、動きやすい靴を持っていなかったため、自身の『落下耐性』スキルを試すことができなかった。
だが今は、ダンジョン用品店で柔らかめの運動靴を手に入れ、飛んだり跳ねたり思いのままだ。
そんな深谷さんは、中村さんが用意してくれた櫓に登って、飛び降り具合を確認しようとしていたのだが、浅井が焼いているゴブリン肉があまりに臭く、場所の移動、あるいは中止の要請を訴えている。
「伊吹、ちょいアレ頼むわ」
「あいよー」
浅井がゴブリン料理を作っている釜戸に、魔法を使って微風を吹かせると、辺りに漂っていた嫌な臭いが人気のない森へ流れていく。
「ふふっ、どうよ、俺の風魔法は」
「……よくその力で、ダンジョン潜る気になったな」
風魔法の有用性をドヤ顔でアピールしてみたのだが、逆に憐憫の表情を向けられる結果となった。
「どうせなら、それずっと吹かせておいてよ! 臭い散らし魔法は、拾い食いスキルとセットで活動すべきよ」
「に、臭い散らし魔法……」
「拾い食いスキル!?」
最近では、微風程度の魔法なら、あまり意識を割くことなく吹かせ続けられるようになったので、深谷さんのリクエストには問題なく応えられるのだが、臭いを吹き飛ばすだけの能力と思われているのは少し納得がいかない。
「俺からも頼むよ相棒。これ以上文句言われたくないし……」
「分かった分かった。……あと、相棒になった覚えはないからな」
そう言って、手で払うような仕草で、浅井を元いた場所へと追い返した。
今ココ、異界薬理機構の窓口周辺には、自身のスキルを確認するための、様々な施設が建てられていた。
深谷さんが落下耐性スキルを試しているアスレチックや櫓をはじめ、料理用の釜戸に燻製小屋、遠距離攻撃のための的や戦闘スキル用の木人形など──
ほかにも、裁縫や染め物に使うブース、さらには空き巣スキルの練習用に建てられたログハウスまで揃っている。
加えて先日、オーク集落から持ち帰ったテーブルと椅子も近くに並べられ、過疎ダンジョンとは思えないほど、施設は充実してきていた。
そんな施設のほとんどを『木工スキル』持ちの中村さんが造っているのだが、驚かされるのはその構造だ。
金属の釘やネジを一切使わず、木材同士を組み合わせ、楔で締めて固定する──伝統的な組木の技法で造られている。
ぱっと見では分かりにくいが、『継手』や『仕口』といった職人技が随所に用いられており、堅牢でありながら分解・修繕が容易な造りとなっていた。
この技巧をどこで学んだのかと尋ねた際、中村さんはすぐにこう答えてくれた。
「……動画サイトで観たんすよ」
つまり、木工スキルは“木を加工する手先の器用さ”を後押ししてはくれるが、知らない技法が勝手にインストールされるわけではない。
その一方で、『この建物にはどの樹種が向いているか』や『強度を出すためには、どこに添え木を取り付けるべきか』といった、目的に応じた判断・指針のようなものは、自然と頭に浮かぶ感覚があるという。
生産スキルとは、知識や経験を補強し、実用的に引き出してくれる“後押し”のようなもの。
あらためて、生産スキルの仕様を深く知ることができた。
そんな、件の中村さんがいくつかの木箱を抱えて、こちらの近くを通りがかった。
「それなに?」
「あー、これは、パズルみたいなもんっすね」
中村さんが抱えていた木箱は、箱根・小田原の伝統的な工芸品を参考に作ったもので、決まった手順通りに木のパーツをずらしていくと、ようやく蓋が開く仕組みになっているらしい。
「これを、シマシマさんの解錠能力で開けられるか試してみようって話で、いまからログハウスに持って行くんすよ」
「おー、なるほど。それ面白そうだね。…………おーい、深谷さーん! 少しの間、店番代わってくれなーい?」
声をかけたときにはすでに、櫓の三階から深谷さんが身を乗り出していた。
スキル能力を確認するために、登っては飛び降りる動作を繰り返していたようで、彼女はこちらの呼びかけに手を振り返しながら、そこから躊躇することなく飛び降りる。
高さはおよそ六メートル。普通なら脚をくじいてもおかしくない高さだが、深谷さんは音ひとつ立てずに地面へと着地した。
途中、スカートが大きく捲れ上がっていたが、本人にそれを気にする様子はない。
「……パンツ丸見えだったよ」
「短パンだから平気だっての」
深谷さんは学校では黒髪ストレートの真面目女子。だか、ダンジョンへ来る前にはクランハウスで軽くコテを当て、今はゆるく波打つウェーブヘアだ。
うちの学校は、いわゆるクソ真面目な進学校なので、派手な身なりをすると内申に思いっきり響く。しかし、ここではそれを咎める者も居ないため、彼女は内なる趣味を全開にした、派手でチャラめなJKファッションを身に纏っていた。
「人が来たら、適当に木札を渡せばイイんだよね?」
「適当はやめて……」
なにも、性格まで服装に合わせなくても……。
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「えっ、これでホントにレベル1?」
「こっちは開きましたよ」
中村さんが作ってくれた仕掛け箱は、三段階の難易度が用意されており、レベル1で4回、レベル2で10回、そしてレベル3で30回もパーツを動かさないと、蓋が開かない仕組みになっていた。
手渡された箱の表面には『レベル1』と書かれているので、たった4回パーツを動かせば開くはずなのだが、それすら満足にクリア出来ないでいる。
「これ完全にスキルが働いてますね……。適当にガチャガチャしてると、動かす順番が頭に流れ込んできます」
「あれ? 木工スキルだと、自分の知らない知識は流れ込んでこないんだよね?」
「そっすね。『こっちの方が頑丈だ』とか『こっちの方が良い匂いがする』的なのは流れてきますけど、『こういった継ぎ方がある』的なのは無いっすね」
「私が、木片をスライドさせる術を知らないなら、流れてこないんじゃないですか?」
「ああ、そういうことか。なら鍵の仕組みを説明した動画なんかを見といた方が、このさき応用が効きそうだね」
「そんな動画あるんです?」
「何でもあるでしょ」
それにしても、なぜ魔法系のスキルは、彼らのスキルとは違って、サポート的な働きをしてくれないのだろうか?
「いいなぁ……。俺の風魔法も、高火力の出し方とか、効率的な使い方とかサポートしてほしいよ」
「それって逆じゃないです?」
シマシマさんが、つい口にしてしまったボヤキに対して、何かを思いついたようだ。
「逆?」
「多分ですけど、魔法スキルって何でも出来るんですよ。……大きな竜巻を起こしたいならそれも出来るし、地面から噴き上がる気流を発生させたいならそれも出来る。規模も威力も思うがままに」
「いや、そんなこと出来んけど……」
「それはきっと、今はまだMPやレベル的なものが足りていないからじゃないですか? だから凄い現象を思い浮かべても発現しない。……とか?」
「なる……ほど……。でもそうなると、詠唱魔法の意味が無くないか?」
「詠唱魔法なんてあるんですか!?」
あ、しまった。自分は水底の部屋で『詠唱』の存在自体を確認しているが、一般的にはまだ知られていないことだ。
「あ、いや、もし詠唱があるならって話だけど……」
「それも、別に不自然ではありませんよ? むしろ、何でもできるからこそ詠唱があるんじゃないですか?」
「どういうこと?」
「例えば『メラ』って詠唱をすると、直径50センチで1000度の火球が、時速60キロで飛ばせるとか、常に一定の形で発現する? みたいな」
「それって、毎回その1000度で60キロの火球をーってイメージするんじゃダメなの?」
「ゴブリン5匹に追いかけ回されている時でも、冷静にイメージできるならそれでも良いんですが、そうはいかないじゃないですか」
「確かにそんな時は便利そうだな……。じゃあ詠唱破棄は?」
「心の中で『メラ』って唱えても、ちゃんと規定値で魔法が発現する能力? ですかね」
何だか、全てが彼女の説明通りな気がしてきたな……。
「じゃあその詠唱するための言葉を知るには?」
「そ、それは分かりませんね……。一通り色んな言葉を決めポーズと共に──」
「やめてくれ! お、思い出したくもない……」
「……既に色々と試したんですね」
初めはウキウキで試していたんだけど、段々と恥ずかしくなってくるんだよな、アレ。
「ただその、不発に終わった厨二的実験も、今はレベルが足りなくて発現しなかっただけかもしれないので、モンスターを狩ってレベルを上げた後、もう一回最初から試し直す必要が……」
「い、嫌すぎる……。大体、魔物を倒してレベルが上がるかも分かんないのに……」
「ですよね。それだと生産スキルを得た人は、ちっともレベルを上げられませんよね」
「ところでシマシマさんって、その手の話に理解ありすぎじゃない?」
「あ、ええと、その、兄が。そう、兄が漫画とゲーム大好きなんで……」
「あー、お兄さんが……」
間違いなく、シマシマさん本人の趣味だろうな……。
会話がひと段落したところで、なんとなく右手をグーにして前に突き出し、少しだけカッコつけた声で叫んだ。
「風鳴の法、第一節──エアスクリーム!」
次の瞬間
『ぷーーーーーーーーー!』
間の抜けた音が、拳の中から響く。
中村さんは真顔になり、シマシマさんがそっと口元を押さえた。
「……あの、それが風魔法なんですか?」
「そうだけど……」
「す、すごいですね……。それを聞いたら集合すれば良いですか?」
「いや、敵の注意を引くための魔法じゃないっすか?」
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