異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇

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第295話 殲滅と瘴気 中編

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平地から小丘まで焼き尽くして炎の竜巻が収まり、イールスが疲れた様に座り込んでいる
「兄様、大丈夫ですか?」
リシリアが心配そうに見ている
「疲れた… 少し休みたいかな… 魔力回復薬飲んだ方が良いかな? 」
イールスがリシリアを見上げて苦笑いしている
「休んだらもう一度魔法を使いますか?」
リシリアが笑顔で言い、イールスの横に座る
「ゴブリンしぶといから、油断はしないようにしよう」
イールスが笑顔で言うと、ロイド達が周囲を警戒している
「はい! 兄様」
リシリアが笑顔で言うと、魔力回復薬を出して、イールスとリシリアが飲み始めている

一方小丘の焼け跡で1匹のゴブリンが立ち上がり涙を流して叫び、イールス達の方に歩きながら叫んでいる
(何故だーーー 何がーーー 我が軍が… こんな魔法許せない… 敵討ちは絶対に… 化物が……… 何故我らがすぐれていたはず… 人間だけは許さない… 我らが神よ… あいつらを地獄に落としてくれーーーー 我らの怨み必ず……… 我らが身と引き換えに我らが闇の神よ… 我らが敵を道連れにせよ… )

ゴブリンが手を伸ばし、首飾りが砕けて体が黒い靄になっていき、周囲のゴブリンの焼け残りも黒い靄になりながら集まり始めている。黒い靄が次々と集まりながらイールス達の方に近付いていく

「イールス様、あれを!!」
ロイドが遠くで大きく黒い靄が集まっているのを見付けて叫び、シルビアとメリーサリア達も黒い靄を見て驚いている
「瘴気? 全体から集まっている? どうしたら?」
シルビアが驚いたように呟く
「あれが瘴気…」
メリーサリアが呟き立ち尽くしている
「兄様、どうします? 魔法を放ちますか?」
リシリアが困惑したようにイールスを見ている
「大きくなる前に止めないと、大変な事になりそうだよね」
イールスが立ち上がり、杖を構える

「オーラレイ」
イールスが魔法を発動させると、光の玉が出来上がり、玉から閃光が放たれていく。閃光は立ち上がっていたゴブリンを貫き、ゴブリンが倒れる
「何故? 止まってません」
リシリアが黒い靄を見て言う

え? 止まらない? 魔法なのか? それとも何かの事象? 集まり続けたら… 瘴気に触れたらただですまない……考えろ… 何かあるはず…

イールスが魔法の鞄から魔導書を取り出して、ページをめくっている
「これでもない… これは? これでも… これは… これでもない………」
イールスが何かを探しながら魔導書をめくっている。リシリアがイールスを見ながら考えている

どんどん大きく瘴気が集まり、イールス達の方に近付いてくる
「これだ!! ……リシリア、魔力を同調して!! ………セイントサンクチュアリ」
イールスが杖を構えて魔法を発動させ、リシリアが魔力を同調してイールスの杖に魔力を送り込んでいる

光の壁が広範囲を包み込み、中で無数の光の玉が浮遊して黒い靄とぶつかり合い相殺されるように消滅していく

イールスとリシリアが座り込んでいる
「嘘…………」
シルビアが立ち尽くしている
「国一つ滅ぼした瘴気を止めた……」
メリーサリアが呟く
「バウルトリア様に感謝します。 沢山の古代書の写しを用意してくれたお陰です」
イールスが笑顔で靄が無くなった焼け野原を見ている
「もう寝たいです」
リシリアがイールスに寄り掛かっている
「疲れたから、馬車で寝よう… ロイド後は… クリストファー様に任せると伝えて下さい… 未熟者の半人前の魔法戦の所為で瘴気が発生してピンチになりましたと、伝えておいてね」
イールスが笑顔で言うと、リシリアと一緒に馬車の方に歩いていき、従者達もイールスと歩いていく
「シルビア様、何が有ったか説明して貰えますか? クリストファー様に説明をしないと…」
ロイドが苦笑いしている
「は? 無理です!! そもそも全員見ていたのですから、説明も必要無いのでは?」
シルビアが我に返った様に叫ぶ
「不可能です… 」
メリーサリアが苦笑いしている
「バロン様に相談に向かいます」
ロイドが諦めたように言うと、歩いていく

バロン達主だった者が集まっている
「イールス様は疲れて寝られているが…」
バロンが深刻そうに話し始める
「ホーク様、黒い靄について説明をお願いします」
クリストファーが頭を押さえてホークを見ている
「あの黒い靄は、瘴気と思われます。あれに触れたら触れた場所から腐食して死に至ります… それを浄化する魔法なんて無いはず……無い、無い、無い… 誰か教えて下さい……」
ホークが泣きそうになって頭を抱えている
「瘴気か… かつて北の大陸で100年漂い、国々を滅ぼしたあの瘴気か?」
ベルオスが苦笑いしている
「古代書をめくり、魔法を探して魔法を使っていました… あの魔法は伝説の神聖魔法… 神々の祝福… 教会では最上級の秘術に指定されています… 千人の神官が集まり使う儀式魔法だったと思いますけど… 自信がありません」
シルビアが困惑したように言う
「忘れよう!! 何を言っても、憶測だからな!! あれは瘴気では無かったと言う事にすれば良いだけだ!! そもそも儀式魔法何て2人で使えるのか? 考えるだけ無駄だ!!」
ベルオスが諦めたように言う
「見なかった事にします」
クリストファーが諦めたように言う
「良く解りません… 土埃が影に見えただけです」
クーセスが笑顔で言う
「ゴブリンが滅んだだけだからな… 監視だけしておけば良いだろう」
バロンが笑顔で言うと、全員で同意している
「イールス様だから、もうどうでも良いのだろうから… しかし、魔法戦させても良いのだろうか? 何故最初からしなかったのか?」
クラウザーが考えながら言う
「イールス様は魔法戦で魔法に頼りきりになるのを怖れていました。 騎士様達の仕事を取りたくないとも… イールス様ですから、凡人に理解は出来ません」
バロンが苦笑いしながら説明している
「無駄だな!! ゴブリンの残党を見付けて倒して進めば良いだけだな!!」
クラウザーが笑い始めると、全員笑っている。ホークは、頭を抱えたままになっている
(説明不能だから、考えるのを止めて良いのか? そもそも瘴気が発生したのなら、この地に人を近付けない様にしないとまずいのでは? 浄化されていたら…… 説明は? 瘴気では無かったと説明すれば良いのか? しかし、あれは瘴気… 見間違いか? どう報告したら? 浄化魔法も説明出来るのか? 人が理解出来るのか? ムリムリムリムリムリーーーーーーーーー)
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