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14.風邪だけは召されないように。
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最初は、ちろりと。先端の鈴口の周りだけ。ギャムシアの吐息が落ちてきた。
彼の猛りが、ぶるりと揺れる。頬に擦られ、驚きの弾みで口を開く。そこに、彼は……押し込んだ。
「ん、ぐっ!」
最初から喉奥を突かれ、嘔吐感。しかしすぐにおとなしくなり、ラチカの頬に彼の手が添えられた。
「……そう、だ。歯は立てるな……こっちは初めてだろ?」
頷く。しかしそれすら刺激と化したらしく、彼が一瞬のけぞる。そこで、気付いた。もしかするとこの行為は、唯一自分が優位に立てるのかもしれない。
塩気のある、ねばり。それを舌で絡めとりながら、口内をすぼませる。この程度では膣の感触には程遠いのだろうが、それでもギャムシアの吐息は次第に荒く、甘くなっていく。
「そう、そうだ。喉のあたり……」
彼らしくない、上ずった声。ひとまず言われるがままに、喉の奥に力を込める。亀頭がごりゅ、と音を立てて押しつぶしてしまうかのような。それがたまらなかったのか、彼は再び息をのんだ。
彼の腰が揺れ始める。その波に耐えるために、全身に力を込める。全身の毛穴から、玉のような汗が噴き出す。先程からほんの少し冷気を感じ始めていたが、体内はあまりにも……熱い。
舌を、ぐるりと動かす。ねちゃ、ねちゃ、と彼の亀頭周りはかなり硬度を増していた。ギャムシアは手の平をラチカの髪の下に潜らせた。そのまま、髪を頭皮のあたりからぎゅっと掴む。
「んっ……」
痛い。しかし、ギャムシアはやめる気配がない。それどころか薄らと笑みを浮かべて。
「やっぱり、そうなんだな。お前は」
「え……?」
意図は見えない。しかし、彼はどこか嬉しそうだった。
「離せ」
……ああ、また。そんな予感が、ラチカの下腹の中を熱くさせる。
唇を離す。唾液なのか先走りなのか区別のつかない透明な粘液が、柔らかく垂れた。
「四つん這いになれ」
従う。濡れた床に掌と膝をつく。明るい照明の中、彼に尻や背中、秘所まですべてが丸見えになるのが分かる。その羞恥のあまり涙がこぼれそうになるが、彼の命令には何故か逆らえない。まるで、脳にそのまま滑り込んできたかのような支配力。
ギャムシアの指が、ラチカの入り口を拡げる。ぬちゃり、と音が立った。もはや自分の愛液なのかギャムシアの唾液なのか、区別がつかない。
「もう真っ赤だ。……ここも、俺に会いたかっただろ?」
「そ、そんな事……」
「何だ、違うのか。まあ」
宛がわれる。それだけで、頭が真っ白になるような……熱。
「俺は、会いたかったぜ?」
ごりゅ、と。恥骨に沿うようにして彼は進む。
「やぁっ……」
入り口が、拡がる。指や舌とはくらべものにならない重み、そして熱量。膝から崩れそうになるが、彼に髪を引かれ強制的に体制を保たせられる。
「あっ……やだ、入って……」
脳内どころか体でもしっかり感じているのに、何故か言葉に出てしまう。自分で羞恥を煽っている気がして、それはそれで恥ずかしい。それなのにギャムシアは何も言わず、腰を打ち付けた。
「ひゃ、うぁっ!」
以前と違う。以前よりも、おぞましい快感。体の内側から一気に理性を削がれていく。
「や、だめっだめだめ!」
「口癖か? それ」
あくまでギャムシアはゆっくり、腰を動かしてくる。しかしその分彼の猛りを味わう形になってしまい、中がどんどん麻痺していく感覚に陥る。それでも、ずっと子宮がびくびくと痙攣を繰り返していた。
角度がずっと、ラチカの内部のとくに敏感なところを押しつぶす。それだけで、頭の中がショートしていくのを感じる。
「あっ……や、あっあっ……」
「っ、狭いな……」
「ごめ、なさっ……あっあっ、ああ……っ」
自分は悪くない。何も、悪くないはずなのに。それでも彼の言葉に委縮してしまう。彼はそんなラチカをあくまで、攻めた。
「やぅっ、あん、あっ!」
少しずつ、声の自制が効かなくなっていく。ぐぢゅりぐぢゅり、と膣内が彼の形に変えられる音が心臓にまで響いてくる。
「やだっ、おかしくぅ、ぅあ、にゃるっ……!」
「だろうな」
頭の中からすべての芯が熱で溶かされていく。それはまるで蝋が溶ける感覚に似ていた。
ぱん、ぱん、と肌同士がぶつかる音。そのリズムよりも早く、心臓が悲鳴を上げる。空気が欲しくてたまらない。しかし深呼吸しようとする度、声が漏れだす。
前回よりも長い。もし顔にかけられていたものが「そう」であるなら、彼はすでに一度射精していることになる。その分か。それでもしっかりと、ギャムシアの肉棒は怒張を緩めはしなかった。
膝が、そろそろ震えだしてきた。動けない体制というのが、ここまで辛いとは。それでも、彼は夢中になってラチカの中を抉り続けている。
「っ、そろそろ……出るっ、出るぞっ……」
また、中に出されるのか。ああ、きっとそうだ。快感に圧される思考の中で、覚悟を決める。
しかし予想に反して、ギャムシアは自身をラチカから引き抜いた。そのまましごきながら、もう片手でラチカの前髪を引っ張る。痛みに呻く間もなく、再び緩んだ口にギャムシアの肉棒を突っ込まれた。同時に感じる、飛沫。
「~~~~っ!?」
彼の腿をぺちぺちとはたいても、びくともしない。それどころかしっかりと後頭部を押さえつけられ、肉棒を根元までしっかりくわえ込まさせられる。
どびゅ、どびゅ、と重苦しい液体は何度もラチカの胃にじかに注がれた。ぬるい、どろっとした液体の感触。味よりも胃からのぼってくる生臭い匂いに、吐き気すら覚える。それでもすべて、しっかり注ぎこまれた。
づるり、と引き抜かれた。鈴口から零れた精液が舌に絡み、刺すような苦味。せき込むラチカをニヤニヤ眺めながら、ギャムシアはラチカの顎を掴んだ。
「美味いか?」
首を横に振る。それが気に食わなかったのか、また頬に一発彼の掌が入ってくる。一瞬傾いた視界と、頬の痛みに少しだけ揺れる脳髄。じんわりと、熱が広がりだす。
「……慣らしていくしかねぇな」
ああ、やはり。彼は躊躇わない。まるで……あの時の、昔の。自分以外全員が敵と捉えていた兄と、同じ。
……だからか。だから、すんなりと彼のような男を認めてしまっているのか。
ギャムシアははたいたばかりの頬をそっと撫でた。一瞬また叩かれると思って身を固くしたものの、その手つきはさっきと違ってずっと優しい。その顔は、やはりラチカの好きな造形で……そこに、熱の色を笑みとともに浮かべていた。
「お前はやっぱり、その顔が似合う」
分からない、自分がどんな顔をしているか。ただ分かるのは、きっと今自分は笑っていない。
「中に出されると思ったか?」
頷く。ギャムシアはくすりと笑った。
「言ったろ、お前に嫌われるような真似はしないってな。お前が言うまで、子作りは控えておいてやる」
裏を返せば、一連の行為はすべて嫌われない自信があるという事なのか。とんだ、傲慢だ。
バルブが開かれ、シャワーが溢れ出る。温水をいきなりかけられ身をびくつかせると、ギャムシアは面白そうに笑う。
「足を開け、流してやる」
仕方ないので、座った状態で両足を開く。摩擦のせいで赤く擦れたそこに、突如として温水がかけられた。
「いっ!」
「ん? 痛いか」
「いた、い……」
やっと、声が出た。さっきまで、声を発する気力すらなかった。ああ、やはり……退行しだしているのかもしれない。昔の、コーマスの妹としての自分に。
ギャムシアの指が、また陰毛を掻き分けて陰唇を拡げる。彼はどうやら、この部分を見るのが好きらしい。
「うーん、ちょっと切ってるな。もしかして前もか?」
「……うん」
「やっぱりな。一回膜破ってるだけで数年経ってるなら……再生してたのかもな、もしかすると」
独り言のように、彼は呟く。その顔は先程のような性欲に突き動かされた男のものではなく、純粋な人間としての関心の顔だった。
「まあ場所が場所だし、しばらく触らなけりゃ大丈夫だろ」
つまり、しばらくは。彼はこんな事をしない、という事か。ほんの少しの安心と、……不安。ここが使えないのなら、他に一体何をされるのか。
ぬめりを流しきると、ギャムシアは浴室を出た。すぐに戻ってきて、その手には大き目のタオルが二枚。一枚をラチカに渡すと、自身も体をふき始めた。
水気をしっかりと切ってから、立ち上がる。ずきり、と秘所がやはり痛む。そのまま彼の後を追うようにして浴室を出る。彼は寝間着と下着を一組手渡してきた。どちらも、見た事がない。持参したものではない。
「これって」
「就任祝いだ。俺が選んだ」
「しゅ、就任祝いって……」
ギャムシアもまた、先程まで着ていたものとは違う衣服を着ながらこちらを見る。真っ黒だが生地の様子からして、恐らく寝間着だ。
「いいから着ろよ。ロドハルト一の紡績工場で仕立てた、素材も選りすぐってな」
「仕立てたって、これ私のために? わざわざ?」
「当たり前だろ。着心地は保証する」
そこまでするのか。しかしこういう貢ぎものを受け取ってしまうと、それこそどんどん婚約まで結び付けられてしまいそうな気がする。いや、家まで造られて何を言っているのかという感じではあるが。
下着を履き、寝間着を着る。真っ白なワンピース型で、確かに肌に触れる感触は気持ちいい。柔らかく軽い。彼の着ているものを見ると、刺繍の仕方などがよく似ていた。
くるりと回って、翻させてみる。
「大きさ、ぴったり」
「そりゃそうだろ。お前の体形なんざ一回抱いたら覚えた」
「何その特殊能力」
「お前本当余計な事ばかり言うよな」
しかし、素直に嬉しい。一応寝間着を持ってきてはいるものの、やはり新しい衣服は気分がいい。それも自分のために仕立てられたとすれば猶更だ。
ひたすら裾の手触りを触ってにやにやするラチカを面白くなさそうに眺めながら、ギャムシアはラチカの手を引いた。そのまま、ベッドへと連れていかれる。大の大人三人くらい眠れそうな、かなり広いベッドだ。どさり、と押し倒される。意味が分からず彼を見ると、あの青い目がただラチカを見ていた。まるで、心臓が射貫かれたかのような心地。
「な、なに」
「いや、なんとなく」
まさか、と思いつつ。口を開いてみる。
「に、二回目……?」
「馬鹿か。あれだけ出したんだ、もう俺が出ねぇよ」
なるほど、つまりやっぱり顔の分はそういう事か。
「お前は俺をまだ知らないから、結婚したくないって言ったな」
「え、うん」
いきなりぶち込まれた質問に戸惑うも、認める。ギャムシアはラチカを起き上がらせると、掛けシーツをめくる。何となく察して、その中に潜る。ギャムシアもついてきた。
枕に顔を沈める。ゆっくりと、重く沈んでいく感触が心地いい。
「まあ俺もお前を知らない、会ったの自体あの時が初めてだしな。兄君から話は聞いていたが」
「そうなの?」
「そりゃ世間話の感覚で話題には出るだろ。その時から興味はあった、あんな曲者の妹はどんなものかってな」
曲者、と聞いて確かに納得がいく。しかし昔と比べるとまだ温厚になった方だとは思うが、それでも周囲にはそういう印象なのか。ただ、曲者という単語が同じく曲者である彼から出るとどこかおかしな感じすらする。
「実際会って、正直驚いたさ。まだほんの小娘じゃねえかって。エヴァイアンの令嬢、しかもエクソシストって風には見えなかった」
彼の手が、ラチカの髪をすくう。優しい手つきだった。
「……どんな女よりも、何故か。こいつは俺のものにしねぇとって、思った。この時のために、俺は他の女に関心を抱かなかったんだって思った」
まっすぐに見つめられ、どこか気恥ずかしくなる。他のどんな縁談相手にも、こんなに熱く語られたことなどなかったのに。
「だから、お前を色々知りたい。どんな表情をするのか、何を考えているのか。お前の味も、何もかも知りたい」
「ギャムシア……」
「俺だけ知られるって割が合わねぇだろうが」
頷く。そうだ、確かに納得がいく。
「まあ、何となく分かってきたがな。お前の地も」
ぼそり、と呟きながらギャムシアはラチカの髪をなでる。ときたま毛先を指でくるくる弄びながら、彼はシーツに体温を与え続ける。その温もりが心地よくて、再び睡魔がやってきた。うとうとするラチカの顔を見ながら、ギャムシアは「いいぜ、寝ろよ」と囁く。
「明日から忙しくなる。今の内に寝ておけ」
こつん、と額が音を立てて当てられる。痛みになる事の無かった衝突は、甘く温かかった。
彼の猛りが、ぶるりと揺れる。頬に擦られ、驚きの弾みで口を開く。そこに、彼は……押し込んだ。
「ん、ぐっ!」
最初から喉奥を突かれ、嘔吐感。しかしすぐにおとなしくなり、ラチカの頬に彼の手が添えられた。
「……そう、だ。歯は立てるな……こっちは初めてだろ?」
頷く。しかしそれすら刺激と化したらしく、彼が一瞬のけぞる。そこで、気付いた。もしかするとこの行為は、唯一自分が優位に立てるのかもしれない。
塩気のある、ねばり。それを舌で絡めとりながら、口内をすぼませる。この程度では膣の感触には程遠いのだろうが、それでもギャムシアの吐息は次第に荒く、甘くなっていく。
「そう、そうだ。喉のあたり……」
彼らしくない、上ずった声。ひとまず言われるがままに、喉の奥に力を込める。亀頭がごりゅ、と音を立てて押しつぶしてしまうかのような。それがたまらなかったのか、彼は再び息をのんだ。
彼の腰が揺れ始める。その波に耐えるために、全身に力を込める。全身の毛穴から、玉のような汗が噴き出す。先程からほんの少し冷気を感じ始めていたが、体内はあまりにも……熱い。
舌を、ぐるりと動かす。ねちゃ、ねちゃ、と彼の亀頭周りはかなり硬度を増していた。ギャムシアは手の平をラチカの髪の下に潜らせた。そのまま、髪を頭皮のあたりからぎゅっと掴む。
「んっ……」
痛い。しかし、ギャムシアはやめる気配がない。それどころか薄らと笑みを浮かべて。
「やっぱり、そうなんだな。お前は」
「え……?」
意図は見えない。しかし、彼はどこか嬉しそうだった。
「離せ」
……ああ、また。そんな予感が、ラチカの下腹の中を熱くさせる。
唇を離す。唾液なのか先走りなのか区別のつかない透明な粘液が、柔らかく垂れた。
「四つん這いになれ」
従う。濡れた床に掌と膝をつく。明るい照明の中、彼に尻や背中、秘所まですべてが丸見えになるのが分かる。その羞恥のあまり涙がこぼれそうになるが、彼の命令には何故か逆らえない。まるで、脳にそのまま滑り込んできたかのような支配力。
ギャムシアの指が、ラチカの入り口を拡げる。ぬちゃり、と音が立った。もはや自分の愛液なのかギャムシアの唾液なのか、区別がつかない。
「もう真っ赤だ。……ここも、俺に会いたかっただろ?」
「そ、そんな事……」
「何だ、違うのか。まあ」
宛がわれる。それだけで、頭が真っ白になるような……熱。
「俺は、会いたかったぜ?」
ごりゅ、と。恥骨に沿うようにして彼は進む。
「やぁっ……」
入り口が、拡がる。指や舌とはくらべものにならない重み、そして熱量。膝から崩れそうになるが、彼に髪を引かれ強制的に体制を保たせられる。
「あっ……やだ、入って……」
脳内どころか体でもしっかり感じているのに、何故か言葉に出てしまう。自分で羞恥を煽っている気がして、それはそれで恥ずかしい。それなのにギャムシアは何も言わず、腰を打ち付けた。
「ひゃ、うぁっ!」
以前と違う。以前よりも、おぞましい快感。体の内側から一気に理性を削がれていく。
「や、だめっだめだめ!」
「口癖か? それ」
あくまでギャムシアはゆっくり、腰を動かしてくる。しかしその分彼の猛りを味わう形になってしまい、中がどんどん麻痺していく感覚に陥る。それでも、ずっと子宮がびくびくと痙攣を繰り返していた。
角度がずっと、ラチカの内部のとくに敏感なところを押しつぶす。それだけで、頭の中がショートしていくのを感じる。
「あっ……や、あっあっ……」
「っ、狭いな……」
「ごめ、なさっ……あっあっ、ああ……っ」
自分は悪くない。何も、悪くないはずなのに。それでも彼の言葉に委縮してしまう。彼はそんなラチカをあくまで、攻めた。
「やぅっ、あん、あっ!」
少しずつ、声の自制が効かなくなっていく。ぐぢゅりぐぢゅり、と膣内が彼の形に変えられる音が心臓にまで響いてくる。
「やだっ、おかしくぅ、ぅあ、にゃるっ……!」
「だろうな」
頭の中からすべての芯が熱で溶かされていく。それはまるで蝋が溶ける感覚に似ていた。
ぱん、ぱん、と肌同士がぶつかる音。そのリズムよりも早く、心臓が悲鳴を上げる。空気が欲しくてたまらない。しかし深呼吸しようとする度、声が漏れだす。
前回よりも長い。もし顔にかけられていたものが「そう」であるなら、彼はすでに一度射精していることになる。その分か。それでもしっかりと、ギャムシアの肉棒は怒張を緩めはしなかった。
膝が、そろそろ震えだしてきた。動けない体制というのが、ここまで辛いとは。それでも、彼は夢中になってラチカの中を抉り続けている。
「っ、そろそろ……出るっ、出るぞっ……」
また、中に出されるのか。ああ、きっとそうだ。快感に圧される思考の中で、覚悟を決める。
しかし予想に反して、ギャムシアは自身をラチカから引き抜いた。そのまましごきながら、もう片手でラチカの前髪を引っ張る。痛みに呻く間もなく、再び緩んだ口にギャムシアの肉棒を突っ込まれた。同時に感じる、飛沫。
「~~~~っ!?」
彼の腿をぺちぺちとはたいても、びくともしない。それどころかしっかりと後頭部を押さえつけられ、肉棒を根元までしっかりくわえ込まさせられる。
どびゅ、どびゅ、と重苦しい液体は何度もラチカの胃にじかに注がれた。ぬるい、どろっとした液体の感触。味よりも胃からのぼってくる生臭い匂いに、吐き気すら覚える。それでもすべて、しっかり注ぎこまれた。
づるり、と引き抜かれた。鈴口から零れた精液が舌に絡み、刺すような苦味。せき込むラチカをニヤニヤ眺めながら、ギャムシアはラチカの顎を掴んだ。
「美味いか?」
首を横に振る。それが気に食わなかったのか、また頬に一発彼の掌が入ってくる。一瞬傾いた視界と、頬の痛みに少しだけ揺れる脳髄。じんわりと、熱が広がりだす。
「……慣らしていくしかねぇな」
ああ、やはり。彼は躊躇わない。まるで……あの時の、昔の。自分以外全員が敵と捉えていた兄と、同じ。
……だからか。だから、すんなりと彼のような男を認めてしまっているのか。
ギャムシアははたいたばかりの頬をそっと撫でた。一瞬また叩かれると思って身を固くしたものの、その手つきはさっきと違ってずっと優しい。その顔は、やはりラチカの好きな造形で……そこに、熱の色を笑みとともに浮かべていた。
「お前はやっぱり、その顔が似合う」
分からない、自分がどんな顔をしているか。ただ分かるのは、きっと今自分は笑っていない。
「中に出されると思ったか?」
頷く。ギャムシアはくすりと笑った。
「言ったろ、お前に嫌われるような真似はしないってな。お前が言うまで、子作りは控えておいてやる」
裏を返せば、一連の行為はすべて嫌われない自信があるという事なのか。とんだ、傲慢だ。
バルブが開かれ、シャワーが溢れ出る。温水をいきなりかけられ身をびくつかせると、ギャムシアは面白そうに笑う。
「足を開け、流してやる」
仕方ないので、座った状態で両足を開く。摩擦のせいで赤く擦れたそこに、突如として温水がかけられた。
「いっ!」
「ん? 痛いか」
「いた、い……」
やっと、声が出た。さっきまで、声を発する気力すらなかった。ああ、やはり……退行しだしているのかもしれない。昔の、コーマスの妹としての自分に。
ギャムシアの指が、また陰毛を掻き分けて陰唇を拡げる。彼はどうやら、この部分を見るのが好きらしい。
「うーん、ちょっと切ってるな。もしかして前もか?」
「……うん」
「やっぱりな。一回膜破ってるだけで数年経ってるなら……再生してたのかもな、もしかすると」
独り言のように、彼は呟く。その顔は先程のような性欲に突き動かされた男のものではなく、純粋な人間としての関心の顔だった。
「まあ場所が場所だし、しばらく触らなけりゃ大丈夫だろ」
つまり、しばらくは。彼はこんな事をしない、という事か。ほんの少しの安心と、……不安。ここが使えないのなら、他に一体何をされるのか。
ぬめりを流しきると、ギャムシアは浴室を出た。すぐに戻ってきて、その手には大き目のタオルが二枚。一枚をラチカに渡すと、自身も体をふき始めた。
水気をしっかりと切ってから、立ち上がる。ずきり、と秘所がやはり痛む。そのまま彼の後を追うようにして浴室を出る。彼は寝間着と下着を一組手渡してきた。どちらも、見た事がない。持参したものではない。
「これって」
「就任祝いだ。俺が選んだ」
「しゅ、就任祝いって……」
ギャムシアもまた、先程まで着ていたものとは違う衣服を着ながらこちらを見る。真っ黒だが生地の様子からして、恐らく寝間着だ。
「いいから着ろよ。ロドハルト一の紡績工場で仕立てた、素材も選りすぐってな」
「仕立てたって、これ私のために? わざわざ?」
「当たり前だろ。着心地は保証する」
そこまでするのか。しかしこういう貢ぎものを受け取ってしまうと、それこそどんどん婚約まで結び付けられてしまいそうな気がする。いや、家まで造られて何を言っているのかという感じではあるが。
下着を履き、寝間着を着る。真っ白なワンピース型で、確かに肌に触れる感触は気持ちいい。柔らかく軽い。彼の着ているものを見ると、刺繍の仕方などがよく似ていた。
くるりと回って、翻させてみる。
「大きさ、ぴったり」
「そりゃそうだろ。お前の体形なんざ一回抱いたら覚えた」
「何その特殊能力」
「お前本当余計な事ばかり言うよな」
しかし、素直に嬉しい。一応寝間着を持ってきてはいるものの、やはり新しい衣服は気分がいい。それも自分のために仕立てられたとすれば猶更だ。
ひたすら裾の手触りを触ってにやにやするラチカを面白くなさそうに眺めながら、ギャムシアはラチカの手を引いた。そのまま、ベッドへと連れていかれる。大の大人三人くらい眠れそうな、かなり広いベッドだ。どさり、と押し倒される。意味が分からず彼を見ると、あの青い目がただラチカを見ていた。まるで、心臓が射貫かれたかのような心地。
「な、なに」
「いや、なんとなく」
まさか、と思いつつ。口を開いてみる。
「に、二回目……?」
「馬鹿か。あれだけ出したんだ、もう俺が出ねぇよ」
なるほど、つまりやっぱり顔の分はそういう事か。
「お前は俺をまだ知らないから、結婚したくないって言ったな」
「え、うん」
いきなりぶち込まれた質問に戸惑うも、認める。ギャムシアはラチカを起き上がらせると、掛けシーツをめくる。何となく察して、その中に潜る。ギャムシアもついてきた。
枕に顔を沈める。ゆっくりと、重く沈んでいく感触が心地いい。
「まあ俺もお前を知らない、会ったの自体あの時が初めてだしな。兄君から話は聞いていたが」
「そうなの?」
「そりゃ世間話の感覚で話題には出るだろ。その時から興味はあった、あんな曲者の妹はどんなものかってな」
曲者、と聞いて確かに納得がいく。しかし昔と比べるとまだ温厚になった方だとは思うが、それでも周囲にはそういう印象なのか。ただ、曲者という単語が同じく曲者である彼から出るとどこかおかしな感じすらする。
「実際会って、正直驚いたさ。まだほんの小娘じゃねえかって。エヴァイアンの令嬢、しかもエクソシストって風には見えなかった」
彼の手が、ラチカの髪をすくう。優しい手つきだった。
「……どんな女よりも、何故か。こいつは俺のものにしねぇとって、思った。この時のために、俺は他の女に関心を抱かなかったんだって思った」
まっすぐに見つめられ、どこか気恥ずかしくなる。他のどんな縁談相手にも、こんなに熱く語られたことなどなかったのに。
「だから、お前を色々知りたい。どんな表情をするのか、何を考えているのか。お前の味も、何もかも知りたい」
「ギャムシア……」
「俺だけ知られるって割が合わねぇだろうが」
頷く。そうだ、確かに納得がいく。
「まあ、何となく分かってきたがな。お前の地も」
ぼそり、と呟きながらギャムシアはラチカの髪をなでる。ときたま毛先を指でくるくる弄びながら、彼はシーツに体温を与え続ける。その温もりが心地よくて、再び睡魔がやってきた。うとうとするラチカの顔を見ながら、ギャムシアは「いいぜ、寝ろよ」と囁く。
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