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52.直接聞きに行くしかないでしょう。
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「う……」
「お嬢様っ!」
目を覚ますと、そこは部屋の中だった。覚醒して初めて聞いた音は、相変わらずの外の豪雪の音。ベッドの脇には、シャイネが心底安心したかのような顔で座り込んでいた。
周囲を見渡す。公務室か。自分とシャイネ以外に人は見えない。体を起こそうとすると、シャイネに「無理はなさらないでください」と制される。
「わ、私……どれくらい、寝てた……?」
よく見ると腕に点滴が繋がっている。まるで先日のギャムシアの行為を思い出したが、それに恐怖する程自意識は目覚めきっていないらしい。
「恐らくまだ半日も経っていないかと」
「私……そうだ、あの後食事して……そのまま……」
「ええ、不意に意識が落ちられたとモシェロイ神父が」
ハッとする。シャイネの方に向き、彼の腕を強く掴んだ。揺らしながら、問う。
「サ、サガリオット様は大丈夫なの?」
シャイネは頷いた。
「結界が強固になってからはとくに異変は見られません。現在はモシェロイ神父が監視して下さっています」
「そ、そっか……よかった……」
ひとまず安心、といったところだろうか。意識を失っていて無事も何も無い気はするが。
シャイネの体が、巻き付いてくる。力強く抱きしめられ少々戸惑うも、そっと彼の背に手を回した。
「……かなり、血を流されたと聞きました。首まで切られたと」
「あ、うん」
「切った使用人がずっとお嬢様の傍を離れなかったんですよ、とても不安がっていて。お嬢様の容態が安定してからギャムシアが無理やり寝かしつけていましたが……彼女もどうやら夜勤から立っていてくれたようです」
「それは悪い事したなぁ……」
シャイネは「本当です」と呟く。
「あと一歩輸血が遅ければ、後遺症の恐れもあったとギャムシア様は仰っていました。でも本当に、よかった。大丈夫そうで」
「え、輸血? って事は、誰かの血を貰ったって事?」
まさか、と思いシャイネに頬を擦りつける。冷たくなっていた。そのまま彼は頷く。
「といっても、俺には何も影響が出ない程度の微量ですが。ギャムシア様が『戦力の体力を削りたくない、後はラチカの生命力に全賭けする』と」
「……ありがとうね」
「貴女のシャイネですから」
シャイネの頭を撫でてやる。すると彼は軽くだけ唇同士を重ねてきて、体をそっと離した。そのままベッドにラチカを優しく寝かせる。彼女の額をそっと撫でて、微笑んだ。
扉の向こうから使用人が顔を出してきた。彼にラチカが目覚めた事を伝えると、背を向けた使用人を見送りながらラチカに向き直る。
「ギャムシア様とモシェロイ神父は現在会議をされています。ポシャロも戻ってきましたよ」
「よかった……ポシャロは、無事?」
その問いに、シャイネは黙る。その表情に何かを感じ取り、嫌な予感が背筋を伝う。ラチカの様子を伺うようにしながら、シャイネはぽつりと口を開いた。
「……生きては、います。しかしやはり、道中ネクロマンサーの襲撃を受けたらしく……後ろの右脚が、腐食されていました」
「そん、な」
「それでも何とかエヴァイアンに辿り着き、腐食の気配を感じ取ったモシェロイ神父が出向いた事で合流出来たそうです。処置が早かったお陰で全身に渡り切らずに済んだ、と仰っていました。現在は休養中との事です」
体が、震える。まさか、そんな事になっていたとは。襲撃したのは、十中八九ディグレオの一味だろう。彼に対しての怒りが、止まらない。全身が、熱くなる。ラチカのそんな様子をひしと感じたのか、シャイネはラチカの手を握った。
「お嬢様も、今は焦らず休養を。怒っているのは俺も同じです。レヂェマシュトルの存在意義、即ち武器である四肢を奪うなど……遺憾極まりない」
そうか、シャイネにとってはポシャロはある意味では同郷なのか。確かにその表情は硬い。彼の怒りは、知っている存在が傷つけられたという以上にレヂェマシュトルへの宣戦布告として捉えたものに等しいのだろう。
そして底冷えする程の声で、言い放たれる。
「……必ずや仕留めましょう、奴を」
力強く、頷いた。
シャイネの表情は少しだけ和らぎ、手の力も緩む。しかしふと、気付いた。
「そういえばポシャロって、何でここに来たんだろう。ギャムシアがレヂェマシュトルから買ったって事?」
ラチカの点滴を揺らして確認しながら、シャイネは答えた。
「いえ、それより前です。確かディグレオが買い付けた、と」
「そうなの?」
「モシェロイ神父が鳩も連れてきてくださったので、俺も島に頼んで調べてもらいました。といっても、ポシャロを買った人間というよりはディグレオについて調べてもらったんですが」
ギャムシアや使用人総ざらいでディグレオの事を調べ、やがて複数の偽名に辿り着いた。それを含め彼の怪しい部分……そのすべてを手紙に記し、レヂェマシュトルへ鳩を飛ばした。何か手がかりがあれば、程度の気持ちだったがかなりの量が返ってきたらしい。
「彼は十二年前にポシャロを買っています。当時まだ赤ん坊とも言える、これからレヂェマシュトルの訓練を本格的に受けようとしていたポシャロをです。勿論子犬とはいえレヂェマシュトルの訓練は始まっていたので、ある程度心得はある状態だったそうですが」
「……レヂェマシュトル怖すぎない?」
「とりあえず立つ・持つ・威嚇するが出来るようになった瞬間から訓練が始まりますからね。俺も一歳になった頃には訓練が始まっていました」
恐ろしいとは思うものの、よく考えれば自分もエクソシストとして訓練が始まったのもそう変わらなかった気もする。
シャイネは続けた。
「あえて人間のレヂェマシュトルではなく、犬のレヂェマシュトルを選んだ理由としては……考えられるのは単純に財力でしょう。犬は人間より寿命も短く、統率するのが難しい。人間より闘争本能が元来高いので、主君にそれなりの忠誠心が無ければ使いこなす事すら出来ません。犬のレヂェマシュトルを制御しきれず逆に襲われた、という話も聞いた事があります」
「じゃあ、ギャムシアに懐いてるのってもしかして」
最初にポシャロに出会った時の事を思い出す。あの時のポシャロは血の匂いに興奮して、ギャムシアが剣を使わなければ止まる事は無かっただろう。ギャムシアの事だ、もしかすると実力行使で屈服させているのかもしれない。ポシャロにとってギャムシアは後から来た主人なので、それくらいする必要はありそうだ。しかし、それならそれで時期が合わない。
ラチカの言いたい事が分かったのか、シャイネは溜息を吐いた。
「ここからは、あくまで俺の推測です」
点滴の袋を組み替えながら、シャイネは淡々と話す。
「ディグレオはポシャロの存在を隠していたのでしょう。サガリオット様がポシャロの存在を知らなかったという事は、見付からないようディグレオに監禁されていた可能性が濃厚かと」
確かにそれならそれで、ポシャロがディグレオを敵視する理由は納得出来る。もしかするとポシャロは、その動物的な勘でディグレオの正体に最初から勘付いていたのかもしれない。
しかし、何故そんな面倒な事をしたのだろう。
「もしかして、その時はポシャロを何かに利用しようとしてたって事?」
「恐らく。しかしディグレオからすれば、ポシャロが自分に懐かない以上統率する事は出来ないと思ったのかもしれませんね。だから、ギャムシア様に譲ったのかもしれません」
「そんな……」
度し難い。あまりにも、許せない。
「人間のレヂェマシュトルを選ばなかった……というより選べなかったのは、恐らく資金の問題かと思われます。アスパロロクは大陸の中では財政的に豊かでは無かったそうですから」
「そうなの?」
「ギャムシア様の政策でかなり持ち直しているそうですよ。漁業に力を入れ出したのは彼で、そこから少しずつ景気が上昇していったようです。あと医者の派遣をするようになったのも大きいようですね」
という事は、目の前に居る彼はそれ以上に金をかけて買われているという事なのか。そういえば以前兄に聞いたが、レヂェマシュトル一人買うのに下手をすれば国家資産五年分を使う、との事だった。その時はさすがに冗談だと思っていたが……もしかすると、あながち冗談でもないのかもしれない。それだけレヂェマシュトルというものは高価なものなのだろうか。戦力のインフラを防ぐための高価設定、というのもあるにはあるのだろう。
「何せ今は何もする事無さそう?」
「そうですね。使用人総出でディグレオの本拠地を探しています。念のため島にも協力要請を出していますので、時間の問題かと。見つかればすぐにでも叩く準備もしております」
「……どこに居るんだろうね」
彼はサガリオットに執心している。そもそも彼の目的自体が、アスパロロクの再建と仮定するならば。
「ロドハルトの敷地内に居る可能性は高いですね」
シャイネの言葉に、頷く。
アスパロロクやロドハルトに、ネクロマンサーの襲撃が今まで無かったのは自分達の本拠地だからとも考えられる。よくよく考えれば、簡単な話だった。さすがにまったく予期していなかったわけではないが。
ただ、気になる事がある。
「……シャイネ。これ、誰にも言わないでほしいんだけど。とくに、師匠とギャムシアには」
「はい?」
シャイネはこちらに身を寄せてきた。彼の耳元で、囁く。
「なんか……ディグレオと会った時から、違和感がある」
「違和感?」
「うん。何だろうなー、執事長として会っていた時は全然何も感じなかったんだけどね」
彼が正体を現した瞬間。あの時は必死で、何も考える余裕が無かった。しかし今この冷静な状況で彼の事を思い出すと。
「どっかで絶対会ってる」
ラチカの言葉に、シャイネは眉根を寄せる。視線をラチカに真っすぐ向け、「どこでです」と少し厳しい声で問うてきた。慌てて首を振る。
「分からない、分からないんだけど。顔も正直覚えてないし……でも絶対、あの感じ知ってる」
「記憶が無い……というわけでもありませんよね。それだけ昔という事でしょうか」
「どうなんだろう。うーん分からない、まあちょっと思っただけ。ごめんね、忘れて。あの二人に知れたら何か大事になりそうだし」
シャイネは頷いた。しかし、その顔に納得した様子は一切見えない。
ラチカは改めて、ベッドに寝そべった。嫌な悪寒を、覚えながら。
「お嬢様っ!」
目を覚ますと、そこは部屋の中だった。覚醒して初めて聞いた音は、相変わらずの外の豪雪の音。ベッドの脇には、シャイネが心底安心したかのような顔で座り込んでいた。
周囲を見渡す。公務室か。自分とシャイネ以外に人は見えない。体を起こそうとすると、シャイネに「無理はなさらないでください」と制される。
「わ、私……どれくらい、寝てた……?」
よく見ると腕に点滴が繋がっている。まるで先日のギャムシアの行為を思い出したが、それに恐怖する程自意識は目覚めきっていないらしい。
「恐らくまだ半日も経っていないかと」
「私……そうだ、あの後食事して……そのまま……」
「ええ、不意に意識が落ちられたとモシェロイ神父が」
ハッとする。シャイネの方に向き、彼の腕を強く掴んだ。揺らしながら、問う。
「サ、サガリオット様は大丈夫なの?」
シャイネは頷いた。
「結界が強固になってからはとくに異変は見られません。現在はモシェロイ神父が監視して下さっています」
「そ、そっか……よかった……」
ひとまず安心、といったところだろうか。意識を失っていて無事も何も無い気はするが。
シャイネの体が、巻き付いてくる。力強く抱きしめられ少々戸惑うも、そっと彼の背に手を回した。
「……かなり、血を流されたと聞きました。首まで切られたと」
「あ、うん」
「切った使用人がずっとお嬢様の傍を離れなかったんですよ、とても不安がっていて。お嬢様の容態が安定してからギャムシアが無理やり寝かしつけていましたが……彼女もどうやら夜勤から立っていてくれたようです」
「それは悪い事したなぁ……」
シャイネは「本当です」と呟く。
「あと一歩輸血が遅ければ、後遺症の恐れもあったとギャムシア様は仰っていました。でも本当に、よかった。大丈夫そうで」
「え、輸血? って事は、誰かの血を貰ったって事?」
まさか、と思いシャイネに頬を擦りつける。冷たくなっていた。そのまま彼は頷く。
「といっても、俺には何も影響が出ない程度の微量ですが。ギャムシア様が『戦力の体力を削りたくない、後はラチカの生命力に全賭けする』と」
「……ありがとうね」
「貴女のシャイネですから」
シャイネの頭を撫でてやる。すると彼は軽くだけ唇同士を重ねてきて、体をそっと離した。そのままベッドにラチカを優しく寝かせる。彼女の額をそっと撫でて、微笑んだ。
扉の向こうから使用人が顔を出してきた。彼にラチカが目覚めた事を伝えると、背を向けた使用人を見送りながらラチカに向き直る。
「ギャムシア様とモシェロイ神父は現在会議をされています。ポシャロも戻ってきましたよ」
「よかった……ポシャロは、無事?」
その問いに、シャイネは黙る。その表情に何かを感じ取り、嫌な予感が背筋を伝う。ラチカの様子を伺うようにしながら、シャイネはぽつりと口を開いた。
「……生きては、います。しかしやはり、道中ネクロマンサーの襲撃を受けたらしく……後ろの右脚が、腐食されていました」
「そん、な」
「それでも何とかエヴァイアンに辿り着き、腐食の気配を感じ取ったモシェロイ神父が出向いた事で合流出来たそうです。処置が早かったお陰で全身に渡り切らずに済んだ、と仰っていました。現在は休養中との事です」
体が、震える。まさか、そんな事になっていたとは。襲撃したのは、十中八九ディグレオの一味だろう。彼に対しての怒りが、止まらない。全身が、熱くなる。ラチカのそんな様子をひしと感じたのか、シャイネはラチカの手を握った。
「お嬢様も、今は焦らず休養を。怒っているのは俺も同じです。レヂェマシュトルの存在意義、即ち武器である四肢を奪うなど……遺憾極まりない」
そうか、シャイネにとってはポシャロはある意味では同郷なのか。確かにその表情は硬い。彼の怒りは、知っている存在が傷つけられたという以上にレヂェマシュトルへの宣戦布告として捉えたものに等しいのだろう。
そして底冷えする程の声で、言い放たれる。
「……必ずや仕留めましょう、奴を」
力強く、頷いた。
シャイネの表情は少しだけ和らぎ、手の力も緩む。しかしふと、気付いた。
「そういえばポシャロって、何でここに来たんだろう。ギャムシアがレヂェマシュトルから買ったって事?」
ラチカの点滴を揺らして確認しながら、シャイネは答えた。
「いえ、それより前です。確かディグレオが買い付けた、と」
「そうなの?」
「モシェロイ神父が鳩も連れてきてくださったので、俺も島に頼んで調べてもらいました。といっても、ポシャロを買った人間というよりはディグレオについて調べてもらったんですが」
ギャムシアや使用人総ざらいでディグレオの事を調べ、やがて複数の偽名に辿り着いた。それを含め彼の怪しい部分……そのすべてを手紙に記し、レヂェマシュトルへ鳩を飛ばした。何か手がかりがあれば、程度の気持ちだったがかなりの量が返ってきたらしい。
「彼は十二年前にポシャロを買っています。当時まだ赤ん坊とも言える、これからレヂェマシュトルの訓練を本格的に受けようとしていたポシャロをです。勿論子犬とはいえレヂェマシュトルの訓練は始まっていたので、ある程度心得はある状態だったそうですが」
「……レヂェマシュトル怖すぎない?」
「とりあえず立つ・持つ・威嚇するが出来るようになった瞬間から訓練が始まりますからね。俺も一歳になった頃には訓練が始まっていました」
恐ろしいとは思うものの、よく考えれば自分もエクソシストとして訓練が始まったのもそう変わらなかった気もする。
シャイネは続けた。
「あえて人間のレヂェマシュトルではなく、犬のレヂェマシュトルを選んだ理由としては……考えられるのは単純に財力でしょう。犬は人間より寿命も短く、統率するのが難しい。人間より闘争本能が元来高いので、主君にそれなりの忠誠心が無ければ使いこなす事すら出来ません。犬のレヂェマシュトルを制御しきれず逆に襲われた、という話も聞いた事があります」
「じゃあ、ギャムシアに懐いてるのってもしかして」
最初にポシャロに出会った時の事を思い出す。あの時のポシャロは血の匂いに興奮して、ギャムシアが剣を使わなければ止まる事は無かっただろう。ギャムシアの事だ、もしかすると実力行使で屈服させているのかもしれない。ポシャロにとってギャムシアは後から来た主人なので、それくらいする必要はありそうだ。しかし、それならそれで時期が合わない。
ラチカの言いたい事が分かったのか、シャイネは溜息を吐いた。
「ここからは、あくまで俺の推測です」
点滴の袋を組み替えながら、シャイネは淡々と話す。
「ディグレオはポシャロの存在を隠していたのでしょう。サガリオット様がポシャロの存在を知らなかったという事は、見付からないようディグレオに監禁されていた可能性が濃厚かと」
確かにそれならそれで、ポシャロがディグレオを敵視する理由は納得出来る。もしかするとポシャロは、その動物的な勘でディグレオの正体に最初から勘付いていたのかもしれない。
しかし、何故そんな面倒な事をしたのだろう。
「もしかして、その時はポシャロを何かに利用しようとしてたって事?」
「恐らく。しかしディグレオからすれば、ポシャロが自分に懐かない以上統率する事は出来ないと思ったのかもしれませんね。だから、ギャムシア様に譲ったのかもしれません」
「そんな……」
度し難い。あまりにも、許せない。
「人間のレヂェマシュトルを選ばなかった……というより選べなかったのは、恐らく資金の問題かと思われます。アスパロロクは大陸の中では財政的に豊かでは無かったそうですから」
「そうなの?」
「ギャムシア様の政策でかなり持ち直しているそうですよ。漁業に力を入れ出したのは彼で、そこから少しずつ景気が上昇していったようです。あと医者の派遣をするようになったのも大きいようですね」
という事は、目の前に居る彼はそれ以上に金をかけて買われているという事なのか。そういえば以前兄に聞いたが、レヂェマシュトル一人買うのに下手をすれば国家資産五年分を使う、との事だった。その時はさすがに冗談だと思っていたが……もしかすると、あながち冗談でもないのかもしれない。それだけレヂェマシュトルというものは高価なものなのだろうか。戦力のインフラを防ぐための高価設定、というのもあるにはあるのだろう。
「何せ今は何もする事無さそう?」
「そうですね。使用人総出でディグレオの本拠地を探しています。念のため島にも協力要請を出していますので、時間の問題かと。見つかればすぐにでも叩く準備もしております」
「……どこに居るんだろうね」
彼はサガリオットに執心している。そもそも彼の目的自体が、アスパロロクの再建と仮定するならば。
「ロドハルトの敷地内に居る可能性は高いですね」
シャイネの言葉に、頷く。
アスパロロクやロドハルトに、ネクロマンサーの襲撃が今まで無かったのは自分達の本拠地だからとも考えられる。よくよく考えれば、簡単な話だった。さすがにまったく予期していなかったわけではないが。
ただ、気になる事がある。
「……シャイネ。これ、誰にも言わないでほしいんだけど。とくに、師匠とギャムシアには」
「はい?」
シャイネはこちらに身を寄せてきた。彼の耳元で、囁く。
「なんか……ディグレオと会った時から、違和感がある」
「違和感?」
「うん。何だろうなー、執事長として会っていた時は全然何も感じなかったんだけどね」
彼が正体を現した瞬間。あの時は必死で、何も考える余裕が無かった。しかし今この冷静な状況で彼の事を思い出すと。
「どっかで絶対会ってる」
ラチカの言葉に、シャイネは眉根を寄せる。視線をラチカに真っすぐ向け、「どこでです」と少し厳しい声で問うてきた。慌てて首を振る。
「分からない、分からないんだけど。顔も正直覚えてないし……でも絶対、あの感じ知ってる」
「記憶が無い……というわけでもありませんよね。それだけ昔という事でしょうか」
「どうなんだろう。うーん分からない、まあちょっと思っただけ。ごめんね、忘れて。あの二人に知れたら何か大事になりそうだし」
シャイネは頷いた。しかし、その顔に納得した様子は一切見えない。
ラチカは改めて、ベッドに寝そべった。嫌な悪寒を、覚えながら。
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