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チャプタ―3
ダメな安倍晴明3
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晴足がことの次第の報告のために寝殿に向かうと、父と中心に兄弟が車座になっていた。
その中でも父から盛んに言葉をかけられているのは晴明だ。
「よくぞ、鬼の住まう邸(やしき)からもどった」
「いえ、父上。まろは何お為しておりませぬ」
「なに、帰ってきただけで偉い」
今日も、父は晴明に対して過保護だった。
それに呆れながら晴足は車座に加わった。雑人が側に来て、
「焼いた餅にございます」
と疲れた晴足には嬉しい夜食を土器で渡してくれる。
「礼を言う、土麻呂」
雑人に礼を述べ、晴足は餅を口に運んだ。香ばしい匂いが空腹の腹に嬉しかった。
「のう、晴足。晴明は立派であったろう」
「さて、いかがでございましょうな」
父の前でまで過剰な世事など口にしたくなく晴足は言を左右にする。
そんな彼の横では、晴篤が盛大に舟をこいでいた。手には食べかけの餅を握っているのだからまだ子どもだ。
それを見なねて父が、ではなく兄弟の晴秀が。
「これ晴篤、寝るなら床に就いてからにしろ」
と叱声を飛ばす。
「も、餅を食べてからに」
「痴(し)れ者、餅が喉に詰まるぞ」
たわけたことを言う弟に、兄は厳しい口調だが気づかいのある言葉を吐く。
「要らぬのなら、もらうぞ」
晴篤の持っていた餅を兄の晴俊が奪い取るや口に放り込み豪快に咀嚼する。
「汚い」
それに長兄の晴明が眉をひそめるが、晴俊はどこ吹く風だ。
「それでは、今宵の手柄は誰の者なのだ?」
やり取りが一旦止まったところで父が問うてくる。どことなく自信のない口調だ。
「晴秀、次点で晴足でしょうな」
晴俊が悔しげな口調で述べた。己が目立つのが好きな性分が声音によく表れていた。
ただ、それでも外では晴明のことを持ち上げているのだから健気だといえよう。
この時代、まだ兄弟の生まれ順で序列が決まるような仕組みにはなっていない。では、なぜこうも晴明を大事にするかというと、まず、
「麿は晴明が案じられるのでおじゃる。晴明はそなたら我が子の中で最も世事に長けておらぬ」
という父の考えがあった。
彼の発言に、兄弟たちはため息を小さく。この父のことが決して嫌いではないが、前記のような発言は聞き飽きているのも事実だった。
「されば、兄弟が兄を支えてくれれば麿もいつ虚しゅうなっても安心でおじゃる」
「さようなことを申されますな、父上には長生きしてもらいとうございます」
父に、晴俊が快活な口調で告げる。
「晴俊」
父は涙ぐんだ声をもらした。
同じような声音と母から聞いたことがあった。
その中でも父から盛んに言葉をかけられているのは晴明だ。
「よくぞ、鬼の住まう邸(やしき)からもどった」
「いえ、父上。まろは何お為しておりませぬ」
「なに、帰ってきただけで偉い」
今日も、父は晴明に対して過保護だった。
それに呆れながら晴足は車座に加わった。雑人が側に来て、
「焼いた餅にございます」
と疲れた晴足には嬉しい夜食を土器で渡してくれる。
「礼を言う、土麻呂」
雑人に礼を述べ、晴足は餅を口に運んだ。香ばしい匂いが空腹の腹に嬉しかった。
「のう、晴足。晴明は立派であったろう」
「さて、いかがでございましょうな」
父の前でまで過剰な世事など口にしたくなく晴足は言を左右にする。
そんな彼の横では、晴篤が盛大に舟をこいでいた。手には食べかけの餅を握っているのだからまだ子どもだ。
それを見なねて父が、ではなく兄弟の晴秀が。
「これ晴篤、寝るなら床に就いてからにしろ」
と叱声を飛ばす。
「も、餅を食べてからに」
「痴(し)れ者、餅が喉に詰まるぞ」
たわけたことを言う弟に、兄は厳しい口調だが気づかいのある言葉を吐く。
「要らぬのなら、もらうぞ」
晴篤の持っていた餅を兄の晴俊が奪い取るや口に放り込み豪快に咀嚼する。
「汚い」
それに長兄の晴明が眉をひそめるが、晴俊はどこ吹く風だ。
「それでは、今宵の手柄は誰の者なのだ?」
やり取りが一旦止まったところで父が問うてくる。どことなく自信のない口調だ。
「晴秀、次点で晴足でしょうな」
晴俊が悔しげな口調で述べた。己が目立つのが好きな性分が声音によく表れていた。
ただ、それでも外では晴明のことを持ち上げているのだから健気だといえよう。
この時代、まだ兄弟の生まれ順で序列が決まるような仕組みにはなっていない。では、なぜこうも晴明を大事にするかというと、まず、
「麿は晴明が案じられるのでおじゃる。晴明はそなたら我が子の中で最も世事に長けておらぬ」
という父の考えがあった。
彼の発言に、兄弟たちはため息を小さく。この父のことが決して嫌いではないが、前記のような発言は聞き飽きているのも事実だった。
「されば、兄弟が兄を支えてくれれば麿もいつ虚しゅうなっても安心でおじゃる」
「さようなことを申されますな、父上には長生きしてもらいとうございます」
父に、晴俊が快活な口調で告げる。
「晴俊」
父は涙ぐんだ声をもらした。
同じような声音と母から聞いたことがあった。
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