実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―16

ダメな安倍晴明16

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 庇の間(家屋の外側)に共に座ると、
「安倍家の使者が参っておりまする」
 と家司は声を張り上げた。
 御簾の向こうで人影が動く。苦しそうな息づかいだ。それだけでなく瘴気のようなものを晴足は感じ取った。
 よくある、貴族の早とちりではないな――。
 覆面の下で真面目な顔になる。
「晴明殿の式でおじゃるか?」
 相手の問いかけに一拍の間を置いて、
「さようにございます」
 と晴足はこたえた。そうだ、と即答するには抵抗があったのだ。
「実は物の怪に憑かれたようなのでおじゃる。咳、汗、震えが止まらず」
「さよう、手前のみたところでも物の怪に憑かれておりまする」
 邸の主の言葉に晴足は大きくうなずいた。
「早う、早う祓ってくだされ」
「されど」
 思ってもみなかった。
 今までは兄弟がそれぞれ得意なことを担当していたのだ。だが、
 私の出番かもしれぬ――。
 晴足はそう思った。
 いずれ晴明を独り立ちさせるのだ。そのときは当然、兄弟たちもそうなるだろう。
 ならば、今から独力で依頼を解決できたほうがよいのではないか。
 晴足はそう考えた末、
「承知つかまつりそうろう」
 と答えていた。
 御簾をあげさせ、貴族の側らに座した。
「四縦五横禹為除道蚩尤、避兵令吾周遍天下帰還、故嚮吾死者留吾者亡、急々如律令」
そして、呪文を唱えた。
 刹那、貴族の体から黒い霞のごときものが湧き出た。それらが凝集し、淡い人影じみたものを形成する。
 これは――土公神、と晴足は正体を看破した。
 とたん、霞は胡散霧消する。
「御所様(ご主人)、今のは土公神でございます。竈(かまど)になにか心当たりは?」
「そうえいば、雑人が鍋を落と罅を入れたとか」
「それでございます。至急、竈を直し下され」
「竈を?」
「いくら祓えを行っても、根本のところが治っておらねば意味がないのでございます」
「晴明殿の式でもさようでおじゃるか」
 感心したような口調で言う貴族に晴足はため息をつきたくなった。
 暢気な、という思いと、ここでも晴明か、という感情が交錯したのだ。
 まあ、とにかく私一人で依頼はこなせた――。
 その後、間に合えば顔を出せと言われていた陰陽道の師の賀茂忠行の酒宴へと顔を出した。
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