実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―21

ダメな安倍晴明21

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「気を失っている」
 晴秀の呆れた声に、晴俊が大きな声で笑った。
「さすが我らが兄、只者ではない」
「やれやれ、連れ帰るのも難儀だというのに」
 絶対に手を貸さない癖に晴篤が近づいて行って晴明の頬を突いた。
 晴足も側らへと足を運んだ。すると、確かに兄は気を失っていた。
「退治のたびに気を失っておったら大変だろうに」
「まっことまっこと」
 晴足の言葉に、晴俊が大きく二度うなずいた。
 正直なところ、やはり己らがいないと兄は駄目なのだと思っていた。だが、それは思い違いに過ぎなかったらしい、という思いを晴足は抱く。
「正直、師の兄への見通しは間違っておるという了見だったが、それこそが間違いだったのやもしれぬな」
 晴秀が感心した顔つきで独語めいた言葉をを吐く。
 言われてみると、晴明の道を決定づけたのは師の賀茂忠行だ。その予見は、今までの晴明の有様では到底、正しいとは思えなかったが今になると正解なのかもしれないと思わされた。
「もし、もし」
 そこに細い声が聞こえてくる。なんだ、と見やるとあちことに視線を走らせながら雑人の態の男が近づいてく来ていた。
「妖の退治を検分して参れ、と主より仰せつかり参りましでございます」
 手の届く距離に近づいたところで、相手はやや安心した顔つきで告げる。
 どうやら疑り深い貴族が妖が無事に退治されるか検分役を寄越したらしい。
 悲鳴を上げて新宅から逃げ出したと聞いているが――。
 いざ、己の身が安全な場所に置かれると傲慢ともいえる行動を人に取らせるらしい。
「一足遅かったの」
 晴俊がつまらげに応じた。
「一足遅かったとは?」
「言うた通り。既に祓えは終わっておる」
 雑人の質問に、晴秀がぞんざいな口調で応じる。人ならぬ力を持つせいか、兄弟たちは常人に対してどこか適当なところがあった。
「そ、そんな、わしが叱られる」
 雑人が頭を抱える。
 やれやれ、と晴足は周囲を見まわした。ああ、あった――一歩、二歩と歩いて足もとに落ちていた年代物の柄杓を持ち上げた。
「ここに、元は妖の柄杓がある、これを証左として主のもとに持って行くがいい」
 晴足は雑人に柄杓を掲げてみた。
 口から出任せだ。本当かどうかは怪しいが、手ぶらで帰らせるよりはと適当に落ちていた物を拾い上げたのだ。
「は、ありがとう存じる」
 雑人の礼に、晴足は笑みを浮かべる。彼は謝礼がどれくらいか数えるより、こうして礼を誰かに述べられるほうが好きだった。
「物好きよな」
 こちらの胸中を見抜いてか、晴篤があさっての方向を見ながらつぶやく。
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