実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―27

ダメな安倍晴明27

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    二

 この日も、晴明は依頼を探してまわっていた。
 訪れたのは貴族向けの賭場だ。下流貴族が生計を得るために設けている場所だ。
 あちこちで双六の盤をふたりの男たちが挟んで向かい合う光景が広がっていた。
 晴明も今しがた、一勝負を終えたところだ。結果は勝ちだった。
 そして、休憩のために西の対の隅に設けられている場所についた。床には土器に入った水やちょっとした食事が用意されていた。
「いや、相変わらず見事な腕前で」
 そこに人影が近づいてきた声をかけてきた。邸の主だ。
 相変わらずというのは、実は晴足は賭け事にめっぽう強くほぼ負けなしであることを示していた。
「それほとでもない」
「またまた、御けんそんを」
 そこまでは別にどうということのない会話だったが、
「さては兄上と同じく神通力をお持ちとか」
 という言葉には晴足は渋い表情になるのを我慢せざるをえなかった。
 だが、さらに風向きが変わる。
「なんでも、安倍家の雑人が貴族の邸で祓えを行って見事に霊物を退治したとか。実は雑人ではなく貴殿のことではありませんかな」
 邸の主の言葉に晴足は目を見張った。
 もう、噂になっているのか、という思いと、己のことが風聞になるのは思っていた以上に心地がいい、という感情のふたつを抱いた。
「見事な祓えであったとか」
「さて、晴明兄のことが誤ってつたわったのでありましょう」
 主の言葉に晴足は辛うじて答えた。
 危うく、確かに自分のことである、と口を滑らせそうになったのだ。
 それほどに、一種己が肯定されるというのは気持ちがよかった。
 主は凝っとこちらを見やった末、
「まあ、そういうことにいたしましょう」
 と曰くありげな口調で告げた。
「ところで」
 ふいに主が明るく口調を変える。
「隅におられる御仁(人)、家人が病に臥せって(病気にかかって)おり陰陽師の手を借りたいと参ってございますぞ」
 彼は手にしていた扇子でそちらを指した。実は、彼は特に謝礼は渡していないが物好きなことに依頼の仲介役をこなしていた。もっと、話を聞き出すことで好奇心を満たすという役得はあったが。
 言われてみるとなるほど、どこか顔色の悪い公家が心ここにあらずのようすで双六の勝負に挑んでいた。
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