実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―55

ダメな安倍晴明55

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 そこに、御簾の向こうから晴明が姿を現す。物音で大体を察していたのだろう、恐る恐る、
「首尾(結果)はいかがでおじゃる?」
 とたずねてくる。
「首尾と呼べるものはないのう」
 忠行が師としての責任感か、晴明のかすかな期待にとどめを刺す。
 ほれ、と指さされて簀子に置かれた膳の上に米や稗、大豆などが入り混じる結果を晴明は認めた。
「うまくいかぬでおじゃるなあ」
 晴明は悲嘆のため息をつく。
 それはこちらのせりふだ、と晴足は思ったがあまり追いつめても仕方がない、とあえて口にはしなかった。
「いずれ、そのうち上手くいくさ」
 晴足は慰めの言葉を口にする。
 だが、友を失って以来、暗いままの晴明の表情は明るくなることはなかった。
 失ったといえば晴俊もそうだった。彼が厠に立ったのについていく。外で待っていると、みなの前では隠していた憔悴した表情の晴俊が出てきた。
「大事はないか、晴俊」
 晴足の問いかけに、彼はこちらに気づいてかぶりをふった。
「参った。桜の父母がまさか盗賊に殺されるとは」
 つづけて発したせりふに晴足も無情を感じて唇を引き結んだ。
 桜とは、晴俊が夜這いをくり返した末に子どもを設けてしまった娘だ。だが、父母が晴俊に財がないことを理由に婚姻を認めず、結果、愛する人と子どもと晴俊は離れ離れの暮らしを強いられた。晴足は同じく愛する者がいる者として前記の事情を晴俊から打ち明けられていた。
「桜の父母は財を成しておった、すぐに暮らしに困ることはないだろうが」
「案じられるな」
「さようだ」
 晴足の言葉に晴俊は大きくうなずいた。
 桜の父母に仲を許されていたなら、今ごろ飛んで行っていることだろう。
「したが、御両所も虚しゅうなられたのだ、今なら足を運ぶのも許されるのではないか」
「ううむ」
 晴俊は躊躇いの声をもらす。もしや、と晴足は思った。
「桜殿に受け入れられるか怖いのか?」
「父母の許しが得られなかったからとはいえ、これまで側にいなかったからな」
 晴足の推量に、晴俊は弱々しい声を出す。
「したが、なればこそ」
 さらに告げかけたところで、厠に屋敷の雑人の姿を現した。
 晴足は何事もなかったようにその場から晴俊とともに歩き出す。その後は、桜を巡る話題を口にする機会はなかった。
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