64 / 76
チャプタ―64
ダメな安倍晴明64
しおりを挟む
四
大内裏の一隅に、物々しい空気が生まれていた。
騎馬や武者がたむろし、その中に官民両方の陰陽師の姿が混じっていた。その中には安倍五兄弟の姿も見受けられる。
ここに集まった者たちは朝廷の決定により玉藻前の討伐のために集められたものだ。妖が危うく政道の中枢に巣食うところだったという事実を重く見た朝堂は官民問わず、討伐のための人を集めたのだ。
「そなたらの誰が近頃名高い、安倍晴明か」
そこに胴間声がひびいてくる。
見やると、武士がつれだってこちらにやって来ていた。
「こちらが安倍晴明様だ」
晴足が従者のごとくふるまうことに違和感をおぼえながらも応じた。ちなみに、晴明以外は面をかぶって正体を隠している。晴明を持ち上げるという至上命題は今も守られている。
「ほう、話に聞いていた通りに若いな」
武士の中央にいた男が興味深げに晴明を見ながら間近までやって来た。
「それがし、名を源頼光と申す。討伐においては世話になることもあろう、よろしく頼む」
気さくな調子で挨拶され、兄弟たちは軽く面食らった。
殺しの上手、などと揶揄される武士の中でも際立った者となればろくでもないと端から思い込んでいたのだ。
「主共々、よろしくお願い申し上げる」
晴明があたふたして口を開かないので、晴足が代わりに頭をさげる。
「おう」
頼光は満面の笑みで応じた。とそこで、
「やれ、あそこにいるのは」
と言ってそのまま去っていく。随分と気ままな男のようだ。
「小僧共」
そこに頼光が連れてきた巨漢が口を開く。
「言っておくが、こたび功名を立てるのは我らだ。そこのところを勘違いするなよ」
低い声で男は脅しをかけてくる。
「貴殿は名すら名乗れぬ凡愚か」
そこに晴秀の鋭い嫌味が飛んだ。とたん、男の表情が殺気立った。
「まあ、待て」
側らにいた男が金時を制す。後者とは対照的な優男だ。
「こちらは坂田金時、手前は渡辺綱だ」
優男こと渡辺綱は、さわやかな空気をまとった男で場を和ませる。
「金時が乱暴な口を利いて失礼した、主を思う余り思いも寄らぬことを口にすることがあるのだ」
「さようか」
如才のない口調に晴秀も不承不承うなずいた。
「ほれ、行くぞ」
綱に袖を引かれ、金時は主の去った方向へと歩いて行く。
「いやはや、世には色んな奴がいるな」
晴俊の発した言葉は、兄弟たちの抱いた思いを代表していた。
その後、公卿による激励があり、改めて玉藻前の討伐が宣言され、討伐衆は大内裏から出立した。
大内裏の一隅に、物々しい空気が生まれていた。
騎馬や武者がたむろし、その中に官民両方の陰陽師の姿が混じっていた。その中には安倍五兄弟の姿も見受けられる。
ここに集まった者たちは朝廷の決定により玉藻前の討伐のために集められたものだ。妖が危うく政道の中枢に巣食うところだったという事実を重く見た朝堂は官民問わず、討伐のための人を集めたのだ。
「そなたらの誰が近頃名高い、安倍晴明か」
そこに胴間声がひびいてくる。
見やると、武士がつれだってこちらにやって来ていた。
「こちらが安倍晴明様だ」
晴足が従者のごとくふるまうことに違和感をおぼえながらも応じた。ちなみに、晴明以外は面をかぶって正体を隠している。晴明を持ち上げるという至上命題は今も守られている。
「ほう、話に聞いていた通りに若いな」
武士の中央にいた男が興味深げに晴明を見ながら間近までやって来た。
「それがし、名を源頼光と申す。討伐においては世話になることもあろう、よろしく頼む」
気さくな調子で挨拶され、兄弟たちは軽く面食らった。
殺しの上手、などと揶揄される武士の中でも際立った者となればろくでもないと端から思い込んでいたのだ。
「主共々、よろしくお願い申し上げる」
晴明があたふたして口を開かないので、晴足が代わりに頭をさげる。
「おう」
頼光は満面の笑みで応じた。とそこで、
「やれ、あそこにいるのは」
と言ってそのまま去っていく。随分と気ままな男のようだ。
「小僧共」
そこに頼光が連れてきた巨漢が口を開く。
「言っておくが、こたび功名を立てるのは我らだ。そこのところを勘違いするなよ」
低い声で男は脅しをかけてくる。
「貴殿は名すら名乗れぬ凡愚か」
そこに晴秀の鋭い嫌味が飛んだ。とたん、男の表情が殺気立った。
「まあ、待て」
側らにいた男が金時を制す。後者とは対照的な優男だ。
「こちらは坂田金時、手前は渡辺綱だ」
優男こと渡辺綱は、さわやかな空気をまとった男で場を和ませる。
「金時が乱暴な口を利いて失礼した、主を思う余り思いも寄らぬことを口にすることがあるのだ」
「さようか」
如才のない口調に晴秀も不承不承うなずいた。
「ほれ、行くぞ」
綱に袖を引かれ、金時は主の去った方向へと歩いて行く。
「いやはや、世には色んな奴がいるな」
晴俊の発した言葉は、兄弟たちの抱いた思いを代表していた。
その後、公卿による激励があり、改めて玉藻前の討伐が宣言され、討伐衆は大内裏から出立した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる