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だが、そんな彼女の胸中に肩すかしを喰らわすように、そこに第三者が姿を現す。
虚無僧の現われた方向からひとりの浪人らしき侍が歩いてきたのだ。
しかも、
「頭の言いつけを破る気か、兼松。捕えて、色々と吐かさねばならぬであろう」
と獣遁使いを制止するような声をかけた。
だが、そのせりふの内容からしてあきらかに敵の仲間かそれに近い立ち位置の人間だ。
次にどういう行動に出るか油断がならない、そう考えあきは警戒をとかずにふたりの動向を見守る。
長身が極度の猫背のせいで中背ぐらいに見え、苦渋を感じているような顔つきをした浪人は近くにいた犬が威嚇するのを鬱陶しげに見やった。整った顔立ちをしているのだが、表情のせいでそれが台なしになっている。
「兄を殺されて、仇を黙って見過ごせるか」
「仇がいずかたにいるかもわからず放浪するよりはましであろう」
獣遁使いが声をあらげ、それに浪人は面倒くさそうに応じた。
「ふん、それはこなたが役立たずだからだろう」
「なに」
だが、前者の嘲笑に対し、浪人の総身にまとう気だるい気配が消し飛んだ。代わりに後者が放出したのは凄絶な剣気だった。
「貴様の口をふさげば、頭にことが露見することはあるまい。仇を犬どもに食いつくさせればおれの仇討ちは誰にも知られぬ」
「痴れ者が」
「金剛鈷、こやつもそやつもどちらも逃がさずに殺させろ」
流れで浪人はとりあえずは敵ではなくなり、獣遁使いは己の犬を通じて余の畜生たちへと命令を伝達する。
虚無僧の現われた方向からひとりの浪人らしき侍が歩いてきたのだ。
しかも、
「頭の言いつけを破る気か、兼松。捕えて、色々と吐かさねばならぬであろう」
と獣遁使いを制止するような声をかけた。
だが、そのせりふの内容からしてあきらかに敵の仲間かそれに近い立ち位置の人間だ。
次にどういう行動に出るか油断がならない、そう考えあきは警戒をとかずにふたりの動向を見守る。
長身が極度の猫背のせいで中背ぐらいに見え、苦渋を感じているような顔つきをした浪人は近くにいた犬が威嚇するのを鬱陶しげに見やった。整った顔立ちをしているのだが、表情のせいでそれが台なしになっている。
「兄を殺されて、仇を黙って見過ごせるか」
「仇がいずかたにいるかもわからず放浪するよりはましであろう」
獣遁使いが声をあらげ、それに浪人は面倒くさそうに応じた。
「ふん、それはこなたが役立たずだからだろう」
「なに」
だが、前者の嘲笑に対し、浪人の総身にまとう気だるい気配が消し飛んだ。代わりに後者が放出したのは凄絶な剣気だった。
「貴様の口をふさげば、頭にことが露見することはあるまい。仇を犬どもに食いつくさせればおれの仇討ちは誰にも知られぬ」
「痴れ者が」
「金剛鈷、こやつもそやつもどちらも逃がさずに殺させろ」
流れで浪人はとりあえずは敵ではなくなり、獣遁使いは己の犬を通じて余の畜生たちへと命令を伝達する。
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