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はじまりの地
プロローグ
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周囲は敵意を漲らせたモンスター達。
可愛い見た目とは異なり、その凶暴性はすさまじく、はじまりの草原に降り立ったプレイヤー達を蹂躙してゆく。
「くっ……ここまでか!」
手の平に乗りそうなほど小さなリス型のモンスター『コリル』。
その愛らしい姿を裏切る充血したせいで真っ赤な瞳。鋭い前歯を陽の光にきらめかせたコリルが、ずらりとプレイヤー達を囲む。
今となっては、後姿を見ただけで、倒せると勘違いした自分達を呪いたい。
チュートリアルなんて大抵似たようなもんだろ?とスキップした彼等は、最初のMAPの敵なら三人がかりで行けば余裕だと、森の近くまで進んだ。
初心者向けに、ここの敵はあちらからは襲ってこないようで、森の中に入るほど無謀ではないので、そこらにいたコリルに手を出したのだ。
背を向けていた一匹にナイフの一撃を叩き付けた途端、はじまりの草原一面を覆う草の影から次々現れるコリルの群れ。
最初に手をかけた一匹も倒しきる事が出来ず、そいつは他の奴より凶悪な顔をしながら振り向く。
「どうせ死に戻るなら、少しでも倒すぞ!」
まだ避難用アイテムは無い。どうせスタートしたばかりなのだ。だったら今後の参考のためにも挑もうと、彼等三人のプレイヤーは初期装備のナイフを構え、コリルの群れに向かって駆ける。
ゲームのステータスのおかげで、本来の姿よりは素早く動けるものの、所詮はLV1の初心者だ。一匹も倒す事ができずに、皆の体力がレッドゾーンに突入する。
示し合わせたように、いっせいに身を屈めるコリルに、この身体のHPが空になり、砕け散るのを覚悟した。
このゲームはデスペナルティが大きく、経験値や金銭だけではなく、必ずアイテムを一つロストしてしまう。しかも容赦なく装備中の武器防具も対象になるという鬼畜仕様だ。
せめて、ナイフだけは……と祈りつつ、最後の瞬間を迎えようとした彼等の前を、青い影が走る。
「な、んだって……」
呆然と、一瞬で地に倒れてゆくコリルの群れをただ見つめる。
目で追えないほどの素早さで影が過ぎるたびに、一匹、また一匹とコリルが急所である首から血を噴出しながら倒れてゆく。
自分たちでは足元にも及ばない強者の戦いに、ごくりと息を呑む。
いつかは俺たちもあんな風に……そんな憧れの眼差しで、青い影を見つめる。
どんな人なんだろうか、颯爽と無謀な自分達に救いの手を伸べてくれた人は。憧れに満ちたキラキラした目で、彼等は影が戦闘を終え、立ち止まるのを待つ。
十匹ほどいた群れが全て地に伏した時、彼らは救世主の姿を目にし――時を止める。
「自分の力量を測れねぇ奴ァ、早死にするぜ?」
どれほどの死線を潜り抜けたのか、全身に亘る古傷。
「そのちっぽけなナイフでも、出来る事はあらァ、もっと町の傍にいる奴らを倒すことから始めな」
腹に響くような低い声。わずかに擦れたその声は渋く、魅力的であった。
「いつでも助けが来るなんて、甘ェ考えは持つなよ?次があっても俺は知らん」
励めよ、小僧共。そう男気溢れる彼は振り返る。
「…………」
振り向いた憧れの人の姿を、プレイヤー達は言葉も無く食い入るように見つめる。
せめて、名前を。そう告げようとしていたパーティーリーダーでさえ声を出せない。
「じゃあな」
自然に他人を助けるという行動をしてのけたその人は、こんな事何でもないかのように、代価も受け取らず、名前も名乗らず颯爽と去ってゆく。
「兄貴……」
衝撃に固まっていたプレイヤー達が、その背が見えなくなる頃ぼんやりと呟いた。
そう、彼がどんな姿をしていようと、構わないじゃないか。
その溢れる男気に俺たちは憧れた。それでいいじゃないか。
「兄貴ィイイイ!!有難うございますっっっ!!」
大声を張り上げ、遠く霞む背に感謝の意を述べる。
――彼等の腰ほどの背の、キラキラとした円らな瞳を持つ、可愛らしいコボルドに。
可愛い見た目とは異なり、その凶暴性はすさまじく、はじまりの草原に降り立ったプレイヤー達を蹂躙してゆく。
「くっ……ここまでか!」
手の平に乗りそうなほど小さなリス型のモンスター『コリル』。
その愛らしい姿を裏切る充血したせいで真っ赤な瞳。鋭い前歯を陽の光にきらめかせたコリルが、ずらりとプレイヤー達を囲む。
今となっては、後姿を見ただけで、倒せると勘違いした自分達を呪いたい。
チュートリアルなんて大抵似たようなもんだろ?とスキップした彼等は、最初のMAPの敵なら三人がかりで行けば余裕だと、森の近くまで進んだ。
初心者向けに、ここの敵はあちらからは襲ってこないようで、森の中に入るほど無謀ではないので、そこらにいたコリルに手を出したのだ。
背を向けていた一匹にナイフの一撃を叩き付けた途端、はじまりの草原一面を覆う草の影から次々現れるコリルの群れ。
最初に手をかけた一匹も倒しきる事が出来ず、そいつは他の奴より凶悪な顔をしながら振り向く。
「どうせ死に戻るなら、少しでも倒すぞ!」
まだ避難用アイテムは無い。どうせスタートしたばかりなのだ。だったら今後の参考のためにも挑もうと、彼等三人のプレイヤーは初期装備のナイフを構え、コリルの群れに向かって駆ける。
ゲームのステータスのおかげで、本来の姿よりは素早く動けるものの、所詮はLV1の初心者だ。一匹も倒す事ができずに、皆の体力がレッドゾーンに突入する。
示し合わせたように、いっせいに身を屈めるコリルに、この身体のHPが空になり、砕け散るのを覚悟した。
このゲームはデスペナルティが大きく、経験値や金銭だけではなく、必ずアイテムを一つロストしてしまう。しかも容赦なく装備中の武器防具も対象になるという鬼畜仕様だ。
せめて、ナイフだけは……と祈りつつ、最後の瞬間を迎えようとした彼等の前を、青い影が走る。
「な、んだって……」
呆然と、一瞬で地に倒れてゆくコリルの群れをただ見つめる。
目で追えないほどの素早さで影が過ぎるたびに、一匹、また一匹とコリルが急所である首から血を噴出しながら倒れてゆく。
自分たちでは足元にも及ばない強者の戦いに、ごくりと息を呑む。
いつかは俺たちもあんな風に……そんな憧れの眼差しで、青い影を見つめる。
どんな人なんだろうか、颯爽と無謀な自分達に救いの手を伸べてくれた人は。憧れに満ちたキラキラした目で、彼等は影が戦闘を終え、立ち止まるのを待つ。
十匹ほどいた群れが全て地に伏した時、彼らは救世主の姿を目にし――時を止める。
「自分の力量を測れねぇ奴ァ、早死にするぜ?」
どれほどの死線を潜り抜けたのか、全身に亘る古傷。
「そのちっぽけなナイフでも、出来る事はあらァ、もっと町の傍にいる奴らを倒すことから始めな」
腹に響くような低い声。わずかに擦れたその声は渋く、魅力的であった。
「いつでも助けが来るなんて、甘ェ考えは持つなよ?次があっても俺は知らん」
励めよ、小僧共。そう男気溢れる彼は振り返る。
「…………」
振り向いた憧れの人の姿を、プレイヤー達は言葉も無く食い入るように見つめる。
せめて、名前を。そう告げようとしていたパーティーリーダーでさえ声を出せない。
「じゃあな」
自然に他人を助けるという行動をしてのけたその人は、こんな事何でもないかのように、代価も受け取らず、名前も名乗らず颯爽と去ってゆく。
「兄貴……」
衝撃に固まっていたプレイヤー達が、その背が見えなくなる頃ぼんやりと呟いた。
そう、彼がどんな姿をしていようと、構わないじゃないか。
その溢れる男気に俺たちは憧れた。それでいいじゃないか。
「兄貴ィイイイ!!有難うございますっっっ!!」
大声を張り上げ、遠く霞む背に感謝の意を述べる。
――彼等の腰ほどの背の、キラキラとした円らな瞳を持つ、可愛らしいコボルドに。
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