イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第13章『消えたひよこまる♪と、深夜0時のリレー配信』

失われた記録と、深夜0時の扉

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「まさか……本当にこれ、俺が関わってたプロジェクトだったのか……?」



LinkLiveの資料室。夜の静寂を切り裂くように、コウが呆然と呟いた。

テーブルに広げられた旧式の開発資料――そこに記されていたのは、かつて封印された幻のシステム、その名も《GHOST-LIVE:リレー配信AIシステム》。



「これさ、なんでお兄ちゃんの名前がこんなに赤ペンでマルつけられてるの……?」



「それはたぶん、俺が当時バイトで手伝った企画が全部“事故レベルの失敗”だったせいだろうな」



「それ、自慢できる話じゃないからね」



ひよりは小声でぼやきつつも、資料の一枚に目を留める。そこにはこう記されていた。



『Vtuberの代役AIを生成し、連鎖的に“無限配信”を成立させる計画』

『音声・会話データの蓄積が進めば進むほど、“本人性”は意味を失う』



「……うわ、何これ。怖っ」



「倫理観、どこに置いてきたんだよ」



コウが思わず引きつった笑みを浮かべると、カオルマネージャーが資料の端をコンコンと指で叩いた。



「開発チームの責任者は、今は別の会社に移ったけど……協力者の一人が、今もV業界にいる。そいつに話を聞いてみよう」



──

そして翌日。

コウたちが訪れたのは、秋葉原の裏路地にある小さな喫茶店。



「ようこそ、LinkLiveの未来を潰した元エンジニア、通称“メカ屋のジローさん”です」



「自虐が強すぎるんだけど!?」



出迎えたのは、眼鏡をキラリと光らせた三十代の青年――いや、どう見ても、深夜テンションを常にまとってる“やべー人”だった。



「ひよこまる♪ちゃんかぁ、君のボイスログ、めちゃくちゃ優秀だったんだよね。なにせ、機械が再現しやすい発音&間の取り方ベスト3に入ってた」



「喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わかんない……」



「悲しんでください」



「即答!?」



ひよりのツッコミを華麗に受け流しつつ、ジローはテーブルにUSBメモリを置いた。



「ここに、プロジェクトの中間ログが残ってる。“ゴーストライブ”は、すでにクローズドサーバーで運用されてる。配信は“毎晩0時”、そのタイミングだけアクセスが許される」



「そのサーバー、今も動いてるんですか?」



「うん。だけど外部から入るには“認証キー”が必要。昔のプロジェクト関係者……たとえば、テスト配信で使われたアカウントじゃないと入れない」



「……あ」



ひよりがぽつりと呟いた。



「私とコウくん、昔やったことあるよね。“夜更かし耐久コラボ配信”」



「おお……懐かしいな。深夜テンションのノリで、お互いに変な声真似しながら“愛してるゲーム”やったやつか」



「そう! あの時、途中で“録音用サブサーバー”に自動転送されたってマネージャーが言ってた!」



「つまり……その配信データが、今でも認証キー代わりになってる可能性があるってことか!」



三人の目が、同時に輝いた。

ジローはにやりと笑い、立ち上がる。



「なら決まりだな。鍵の在り処は、お前らの“黒歴史”の中だ」



「うぅ……なんでいつも黒歴史から掘り起こさなきゃいけないの、私たち……」



「おまえらの関係性、だいたい黒歴史から生まれてるだろ?」



「失礼すぎるーっ!!」



──

夜23時50分。LinkLive本社の旧サーバールーム。



「よし、これがログイン端末だ。アクセスには3ステップの認証が必要になる」



ジローがセットアップした端末の前に、コウとひよりが並ぶ。



「まず、ユーザーIDを読み込む。それから、過去の音声データを一致させる。“愛してるゲーム”のやつ、再現してくれ」



「……マジでやるのか?」



「恥をかけ。過去の自分に勝つために」



「カオルさんの言葉、地味に刺さるんだけど……」



コウが深呼吸し、マイクに向かって囁く。



「ひより……俺のこと、好きか?」



「……す、好き……っ、だけどっ、コウくんの顔見ると、笑いが止まらないのです……!」



「笑ってるじゃねーか!!!」



「それが、逆にリアルだったのよ!!!」とジローが歓声を上げた瞬間――



端末にログイン成功の音が鳴った。



Access granted. Welcome back, Ghost Keyholder.



「入った……!」



目の前の画面に浮かび上がったのは、ゴーストライブの配信サーバー一覧。そして、中央には《今日のバトン配信者:AIひよこまる♪》と表示されていた。



「このまま放っておけば、また“偽物”があたしの声で喋る……!」



「なら、乗り込もうぜ。本物の声、取り戻しに」



コウがひよりの肩に手を置き、優しく言った。



「大丈夫。あの夜、俺に“好き”って言った君の声は、嘘じゃなかった。あれが、“本物”なんだよ」



「もぉ……あれはノリだったのに……」



でも、頬を染めながらも、ひよりはしっかりと画面を見据えていた。



「今度は……ちゃんと、言ってみせる。画面の向こうに、“わたし”がいるってことを」



秒針は、0時を指した。

扉が、ゆっくりと開かれる音が響いた。



“ようこそ、ゴーストライブへ。次の配信者は、あなたです”
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