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第13章『消えたひよこまる♪と、深夜0時のリレー配信』
ひより失踪!?偽りの声と囁く影
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「うぅ……今日の朝ごはん、納豆ごはんにしようか悩んで、結局チョコパンにしちゃったのです……」
スマホから流れてくるのは、聞き慣れた声――《ひよこまる♪》だった。
でも、それはどこかおかしかった。
「え? 配信してないよね、私……?」
ひより本人が、モニターを見ながら震える声を漏らす。
LinkLive本社の会議室、午後九時。コウとひより、そしてカオルマネージャーの三人は、まさに“異常事態”の現場に直面していた。
「えーっと……ひよりちゃん、さっきの配信、どう見ても……君が、しゃべってるように見えるんだが……?」
「しゃべってないですー!! わたし、今日は夕方からコウくんと一緒にお好み焼き食べてたじゃん!」
「うむ。俺はキャベツを3回も落とされたことしか覚えてないが、それは確かに事実だな」
「こらぁっ! 落としたのは鉄板のほうですーっ!」
――そんな冗談が言えるのは、まだマシだった。
問題はその「ひよこまる♪」が、まさに“本人しか知らないような雑談”をリアルタイムで話していたことだ。
「今日もひより、ちょっと眠いけど……でも、みんなに会えてよかったのです♪」
画面の中の《ひよこまる♪》は、まるで完璧に「ひより」を再現していた。
声も、話し方も、間の取り方まで。完璧すぎる“代役”。
「……これ、誰かがわたしの……声を、使ってる?」
ひよりの表情が一気に曇る。
手が震えていた。声を使われること――それはVにとって“自分の存在”を盗まれることと同義だ。
「落ち着け、ひより」
コウは彼女の肩に手を置き、モニターを見つめた。
「これは……AIだな。しかも、ただのボイスチェンジャーじゃない。お前の配信ログから会話パターンを抽出して、リアルタイムで生成してるタイプのやつだ」
「……どうしてそんなに詳しいの?」
「前に、“妹の代わりにVやる羽目になった男”って記事に書かれたことがある男だ。そりゃ調べもするさ」
「その記事、バズってたよね」
「言うな。あれ以来、“イケボお兄ちゃん養成塾”の勧誘メールが止まらないんだ」
「ご愁傷さまです」
ちょっとだけ和んだ空気。しかし、事態は深刻だった。
その配信は、ひよりの公式チャンネルを使って堂々と行われていた。コメント欄には、
「ひよちゃん久しぶりー!」
「やっぱ声かわええわ……」
「最近さらにトーク上手くなってね?」
――誰も、異変に気づいていない。
それだけ“完成度”が高すぎる。
「これ……視聴者が、偽物に気づかないまま信じ続けたら……私の声、本当に“いらない”って思われちゃう……」
ひよりの目が伏せられる。
「ひより、聞け」
コウはそっと、彼女の視線を引き戻す。
「たしかに、AIは正確かもしれない。でもな、お前の“今日の声”は、今日しか出せないんだよ。眠そうだったり、テンション上がってたり、ちょっと鼻声だったり……その全部が“ひより”なんだ」
「コウくん……」
「完璧じゃないからいい。お前の声を、機械の代わりなんかにさせない。だから、安心しろ」
その言葉に、ひよりはほんの少しだけ笑った。
「……うん。ありがと。でも、やっぱりちょっと悔しいな。あたしより、あたしっぽい声を出されるのって」
「じゃあ、取り返しに行こうぜ。“あたし”は、ここにいるって証明しにさ」
二人が目を合わせた、その時だった。
「ちょっとお待ちを」
マネージャー・カオルが、ドヤ顔でノートPCを掲げた。
「調べたぞ。どうやら今回の一件、“例のプロジェクト”のなれの果てらしい」
「例の……?」
「“シームレスAIボイスチェンジプロジェクト”――かつて社内で試験運用されていた、AI配信代行システム。開発は中止されたはずだったが、内部からリークされた可能性が高い」
「まさか、それが……今、勝手に動いてる?」
「うむ。そして、それが“毎晩0時に行われる謎のリレー配信”に繋がってる。場所は、外部からアクセスできない隠しサーバーだ」
「……0時に、誰かが“偽物のひより”を演じてるってこと?」
コウが、椅子の背もたれに深く腰をかけると同時に、ふっと鼻で笑った。
「なるほどな。“幽霊みたいなV”って意味で、ゴースト配信か……笑えない冗談だ」
「でも、わたし笑えない……!」
「うん、わかる。俺もちょっと背中に冷や汗かいてる」
三人が一斉に画面を見る。
モニターの中、《ひよこまる♪》は笑顔でこう言っていた。
「じゃあまたね~♪ 次の子にバトンタッチするのです~」
その瞬間、画面が切り替わった。
今度は、別のVの“そっくりな声”が配信を開始していた。
「リレー形式……!」
「毎晩、偽物たちが“バトン”を渡し続けてるってことか……」
「じゃあ、私たちも……そのバトン、取り返しに行こうよ」
ひよりの瞳に、決意の光が宿る。
「おお……これはアツい展開になってきましたな……!」
「急にナレーター口調になるな、カオルさん」
こうして――
“偽りの声”に奪われた《ひよこまる♪》の居場所を取り戻すための、真夜中の作戦が始まった。
次の舞台は、深夜0時にだけ開く“幽霊配信サーバー”。
本物の声は、どこにある? それを確かめるのは、君自身だ――。
スマホから流れてくるのは、聞き慣れた声――《ひよこまる♪》だった。
でも、それはどこかおかしかった。
「え? 配信してないよね、私……?」
ひより本人が、モニターを見ながら震える声を漏らす。
LinkLive本社の会議室、午後九時。コウとひより、そしてカオルマネージャーの三人は、まさに“異常事態”の現場に直面していた。
「えーっと……ひよりちゃん、さっきの配信、どう見ても……君が、しゃべってるように見えるんだが……?」
「しゃべってないですー!! わたし、今日は夕方からコウくんと一緒にお好み焼き食べてたじゃん!」
「うむ。俺はキャベツを3回も落とされたことしか覚えてないが、それは確かに事実だな」
「こらぁっ! 落としたのは鉄板のほうですーっ!」
――そんな冗談が言えるのは、まだマシだった。
問題はその「ひよこまる♪」が、まさに“本人しか知らないような雑談”をリアルタイムで話していたことだ。
「今日もひより、ちょっと眠いけど……でも、みんなに会えてよかったのです♪」
画面の中の《ひよこまる♪》は、まるで完璧に「ひより」を再現していた。
声も、話し方も、間の取り方まで。完璧すぎる“代役”。
「……これ、誰かがわたしの……声を、使ってる?」
ひよりの表情が一気に曇る。
手が震えていた。声を使われること――それはVにとって“自分の存在”を盗まれることと同義だ。
「落ち着け、ひより」
コウは彼女の肩に手を置き、モニターを見つめた。
「これは……AIだな。しかも、ただのボイスチェンジャーじゃない。お前の配信ログから会話パターンを抽出して、リアルタイムで生成してるタイプのやつだ」
「……どうしてそんなに詳しいの?」
「前に、“妹の代わりにVやる羽目になった男”って記事に書かれたことがある男だ。そりゃ調べもするさ」
「その記事、バズってたよね」
「言うな。あれ以来、“イケボお兄ちゃん養成塾”の勧誘メールが止まらないんだ」
「ご愁傷さまです」
ちょっとだけ和んだ空気。しかし、事態は深刻だった。
その配信は、ひよりの公式チャンネルを使って堂々と行われていた。コメント欄には、
「ひよちゃん久しぶりー!」
「やっぱ声かわええわ……」
「最近さらにトーク上手くなってね?」
――誰も、異変に気づいていない。
それだけ“完成度”が高すぎる。
「これ……視聴者が、偽物に気づかないまま信じ続けたら……私の声、本当に“いらない”って思われちゃう……」
ひよりの目が伏せられる。
「ひより、聞け」
コウはそっと、彼女の視線を引き戻す。
「たしかに、AIは正確かもしれない。でもな、お前の“今日の声”は、今日しか出せないんだよ。眠そうだったり、テンション上がってたり、ちょっと鼻声だったり……その全部が“ひより”なんだ」
「コウくん……」
「完璧じゃないからいい。お前の声を、機械の代わりなんかにさせない。だから、安心しろ」
その言葉に、ひよりはほんの少しだけ笑った。
「……うん。ありがと。でも、やっぱりちょっと悔しいな。あたしより、あたしっぽい声を出されるのって」
「じゃあ、取り返しに行こうぜ。“あたし”は、ここにいるって証明しにさ」
二人が目を合わせた、その時だった。
「ちょっとお待ちを」
マネージャー・カオルが、ドヤ顔でノートPCを掲げた。
「調べたぞ。どうやら今回の一件、“例のプロジェクト”のなれの果てらしい」
「例の……?」
「“シームレスAIボイスチェンジプロジェクト”――かつて社内で試験運用されていた、AI配信代行システム。開発は中止されたはずだったが、内部からリークされた可能性が高い」
「まさか、それが……今、勝手に動いてる?」
「うむ。そして、それが“毎晩0時に行われる謎のリレー配信”に繋がってる。場所は、外部からアクセスできない隠しサーバーだ」
「……0時に、誰かが“偽物のひより”を演じてるってこと?」
コウが、椅子の背もたれに深く腰をかけると同時に、ふっと鼻で笑った。
「なるほどな。“幽霊みたいなV”って意味で、ゴースト配信か……笑えない冗談だ」
「でも、わたし笑えない……!」
「うん、わかる。俺もちょっと背中に冷や汗かいてる」
三人が一斉に画面を見る。
モニターの中、《ひよこまる♪》は笑顔でこう言っていた。
「じゃあまたね~♪ 次の子にバトンタッチするのです~」
その瞬間、画面が切り替わった。
今度は、別のVの“そっくりな声”が配信を開始していた。
「リレー形式……!」
「毎晩、偽物たちが“バトン”を渡し続けてるってことか……」
「じゃあ、私たちも……そのバトン、取り返しに行こうよ」
ひよりの瞳に、決意の光が宿る。
「おお……これはアツい展開になってきましたな……!」
「急にナレーター口調になるな、カオルさん」
こうして――
“偽りの声”に奪われた《ひよこまる♪》の居場所を取り戻すための、真夜中の作戦が始まった。
次の舞台は、深夜0時にだけ開く“幽霊配信サーバー”。
本物の声は、どこにある? それを確かめるのは、君自身だ――。
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