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第13章『消えたひよこまる♪と、深夜0時のリレー配信』
エピローグ『真夜中の再会、そして未来へ』
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配信は、無事に終わった。
再生数は右肩上がり、コメント欄は“おかえり”と“ありがとう”の嵐、SNSでは「#本物のひよこまる」がトレンド1位を獲得。
LinkLive社内は祝福ムードに包まれ、カオルマネージャーは早速「勝利のうな重会議」を企画し始めていたが――
その頃、当の本人たちは静かな夜道を歩いていた。
「ん~~~……ふぅ……全身の緊張が、いま一気に抜けた感じ」
「そりゃ、2時間ぶっ通しで喋りっぱなしだったしな。ほぼ涙あり笑いありだったし」
「っていうかレイのあのラストのセリフ、“そばにいます”って……あれ、どこから出てきたの?」
「……即興」
「天才か。爆発してくれ」
「ひより、それ褒めてんのか呪ってんのか、どっちかにしてくれ」
ふたりきりの夜道。
都心の喧騒も沈み、ひんやりとした夏の風がビルの隙間を吹き抜けていく。
街灯に照らされたアスファルトに、ふたつの影が並ぶ。
手の甲が、時折ふれては離れる。
まるで、“気持ち”の距離を測っているように。
「ねぇ、レイ」
「ん?」
ひよりが立ち止まり、小さな声で言った。
「……あ、いや。あの、その……変なこと言っていい?」
「どうぞ。もうだいたいの変なことには慣れた」
「うん、そう思ってた」
微妙に失礼なやりとりを挟みながら、ひよりは少しだけ顔を赤らめて言った。
「……さっきの配信中、みんな“声が帰ってきた”って言ってくれてたじゃん」
「ああ。みんな待ってたんだな、ひよりの声」
「それで、思ったの。私がずっと怖かったのって……誰かに“声”を奪われることじゃなくて……」
「うん」
「“私の声を、誰も必要としなくなること”だったのかもって」
コウはその言葉に、しばらく何も言わなかった。
ふたりの間に、夜の静寂が流れる。
「……わかるよ」
ぽつりと、静かに答えた。
「誰でもそうだ。“代わりなんていくらでもいる”って、言われたら、そりゃ怖いよな。でもな」
ふと、彼は立ち止まると、ゆっくりとひよりのほうを向いた。
「俺にとって、お前の声は、代わりなんていない。震えてても、裏返ってても、へんな沈黙があっても――」
「それ言う!? 今それ言う!?」
「重要だからな」
「ぐぅ……っ、言い返せないのが悔しい……!」
「つまりだな、《ひよこまる♪》の声じゃなくて、“天城ひより”の声が、俺は好きなんだよ」
「……あっ」
ひよりが、ほんのわずかに目を見開いた。
街灯の光の中で、コウの表情はよく見えなかったけど。
その声は、はっきりと真っ直ぐで、あたたかくて、彼女の胸の奥にまっすぐ届いた。
「……ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「私の声……ほんとに、届いてた?」
コウは少し驚いた顔をしたあとで、ふっと息をついて笑った。
「……ああ。何度でも、ちゃんと聞こえてたよ」
そう言って、彼女の頭をそっと撫でた。
優しい掌。
懐かしい温もり。
彼女がずっと“守られた”気がしていたもの。
でも今は、少しだけ違っていた。
自分の声で、ちゃんと届いた。
自分の気持ちで、ちゃんと話せた。
誰かの代わりじゃない。どこにもいない、“わたしだけの声”で。
それが、ちゃんと「届いた」と言ってもらえた。
「……ありがと」
ひよりはそっと笑って、コウの手を、きゅっと握った。
「なんか、やっと“また始められる”って思えた。私、これからも頑張るから」
「うん。応援してるよ、ファンとして」
「だからそのファン設定やめてって言ってるじゃん!」
「え、じゃあ何設定でいく? 兄?」
「兄はリアルだから余計にこじれるの!」
「じゃあ……“ずっとそばにいる配信仲間”とか?」
「うわ……絶妙に照れるやつ来た……」
ふたりで、声を上げて笑った。
真夜中の空は、驚くほど晴れていた。
星がひとつ、きらりと瞬いている。
“声”は、届く。
たとえ誰にも姿が見えなくても、どんなに偽物が現れても。
その“声”を、信じてくれる人がいる限り。
――それは、何よりの証になる。
深夜の街を並んで歩くふたりの足音が、夜風に溶けていった。
未来は、きっとまだ、声の先にある。
再生数は右肩上がり、コメント欄は“おかえり”と“ありがとう”の嵐、SNSでは「#本物のひよこまる」がトレンド1位を獲得。
LinkLive社内は祝福ムードに包まれ、カオルマネージャーは早速「勝利のうな重会議」を企画し始めていたが――
その頃、当の本人たちは静かな夜道を歩いていた。
「ん~~~……ふぅ……全身の緊張が、いま一気に抜けた感じ」
「そりゃ、2時間ぶっ通しで喋りっぱなしだったしな。ほぼ涙あり笑いありだったし」
「っていうかレイのあのラストのセリフ、“そばにいます”って……あれ、どこから出てきたの?」
「……即興」
「天才か。爆発してくれ」
「ひより、それ褒めてんのか呪ってんのか、どっちかにしてくれ」
ふたりきりの夜道。
都心の喧騒も沈み、ひんやりとした夏の風がビルの隙間を吹き抜けていく。
街灯に照らされたアスファルトに、ふたつの影が並ぶ。
手の甲が、時折ふれては離れる。
まるで、“気持ち”の距離を測っているように。
「ねぇ、レイ」
「ん?」
ひよりが立ち止まり、小さな声で言った。
「……あ、いや。あの、その……変なこと言っていい?」
「どうぞ。もうだいたいの変なことには慣れた」
「うん、そう思ってた」
微妙に失礼なやりとりを挟みながら、ひよりは少しだけ顔を赤らめて言った。
「……さっきの配信中、みんな“声が帰ってきた”って言ってくれてたじゃん」
「ああ。みんな待ってたんだな、ひよりの声」
「それで、思ったの。私がずっと怖かったのって……誰かに“声”を奪われることじゃなくて……」
「うん」
「“私の声を、誰も必要としなくなること”だったのかもって」
コウはその言葉に、しばらく何も言わなかった。
ふたりの間に、夜の静寂が流れる。
「……わかるよ」
ぽつりと、静かに答えた。
「誰でもそうだ。“代わりなんていくらでもいる”って、言われたら、そりゃ怖いよな。でもな」
ふと、彼は立ち止まると、ゆっくりとひよりのほうを向いた。
「俺にとって、お前の声は、代わりなんていない。震えてても、裏返ってても、へんな沈黙があっても――」
「それ言う!? 今それ言う!?」
「重要だからな」
「ぐぅ……っ、言い返せないのが悔しい……!」
「つまりだな、《ひよこまる♪》の声じゃなくて、“天城ひより”の声が、俺は好きなんだよ」
「……あっ」
ひよりが、ほんのわずかに目を見開いた。
街灯の光の中で、コウの表情はよく見えなかったけど。
その声は、はっきりと真っ直ぐで、あたたかくて、彼女の胸の奥にまっすぐ届いた。
「……ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「私の声……ほんとに、届いてた?」
コウは少し驚いた顔をしたあとで、ふっと息をついて笑った。
「……ああ。何度でも、ちゃんと聞こえてたよ」
そう言って、彼女の頭をそっと撫でた。
優しい掌。
懐かしい温もり。
彼女がずっと“守られた”気がしていたもの。
でも今は、少しだけ違っていた。
自分の声で、ちゃんと届いた。
自分の気持ちで、ちゃんと話せた。
誰かの代わりじゃない。どこにもいない、“わたしだけの声”で。
それが、ちゃんと「届いた」と言ってもらえた。
「……ありがと」
ひよりはそっと笑って、コウの手を、きゅっと握った。
「なんか、やっと“また始められる”って思えた。私、これからも頑張るから」
「うん。応援してるよ、ファンとして」
「だからそのファン設定やめてって言ってるじゃん!」
「え、じゃあ何設定でいく? 兄?」
「兄はリアルだから余計にこじれるの!」
「じゃあ……“ずっとそばにいる配信仲間”とか?」
「うわ……絶妙に照れるやつ来た……」
ふたりで、声を上げて笑った。
真夜中の空は、驚くほど晴れていた。
星がひとつ、きらりと瞬いている。
“声”は、届く。
たとえ誰にも姿が見えなくても、どんなに偽物が現れても。
その“声”を、信じてくれる人がいる限り。
――それは、何よりの証になる。
深夜の街を並んで歩くふたりの足音が、夜風に溶けていった。
未来は、きっとまだ、声の先にある。
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