【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

文字の大きさ
53 / 307
第二章 旧都郷愁

48.始まりの侍女(2)

しおりを挟む
 侍女と女官に特別な区別なく、どちらも王族の側に仕える女性を意味していた頃、ファウロスはロザリーの尋常でない明晰さに気が付いた。

 『聖山戦争』の末期に、女官としてファウロスの側に仕えるようになったロザリーに、何彼につけ国の枢機を相談し、時には執行させるようになるまで、時間は要しなかった。

 王弟カリストスも一目を置き、ロザリーはすぐに国政の一翼を担うまでの存在となった。

 が、その裏では同僚の女官たちの嫉妬による、激しい苛めが起きていた。

 宰相職はじめ、内政に関する職を全て旧都に捨ててきた王国に、ロザリーを遇する役職はなく、また女性で宰相に上り詰めた者もいない。

 同僚の女官たちは、国王のえこ贔屓と受け止め、嫉妬の炎を燃やした。

 しかし、ロザリーは、過酷な状況に置かれていることを、ファウロスに一切気取らせなかった。そして、戦時体制下、女性の騎士もいるにはいたが、男性社会を形成していた王国で、ロザリーの状況にファウロスが気が付けなかったのは無理もないことだった。

 事が露見したのは『聖山戦争』が終結し、側妃サフィナが王宮に入ってからである。

 サフィナは閨で、ロザリーを取り巻く惨状について、切々とファウロスに訴えた。

 驚いたファウロスは、弟カリストスとも相談の上、『侍女』を特別な役職とし準一代貴族待遇に引き上げ、ロザリーを任じた。

 その後、様々な者が各王族の侍女に任じられたが、その最初の一人がロザリーである。総ての侍女から尊崇を集める存在でもあり、憧れでもある。各宮殿の侍女たちから、それとなく報告も入る。

 そういった経緯から、側妃サフィナとも良好な関係にあるが、そのことを知る者は少ない。

 また、ロザリーを苛めていた女官たちは王宮を追放されたが、女官の嫉妬は常に注意の払われる事項になった。


「また、楽しませてくれそうだな」


 と、ファウロスは愉快そうな笑顔をロザリーに向けた。


「ええ。新しい事を恐れず、楽しまれるところは、陛下にそっくりです」

「そうだろう、そうだろう」


 ファウロスは満足気に頷いた。


「ロザリーの判断で、必要があれば力添えしてやってくれ」

「畏まりました。それから、報告もございます」

「なんだ?」

「アメル親王の件です」


 ロザリーは淡々とした口調で、王弟カリストスの曾孫にして、王太子バシリオスの外孫、アメルの名前を出した。

 ファウロスはその名を耳にしただけで眉を曇らせた。


「夜道で剣の試し斬りをしているとの噂は、根も葉もないつくり話でした」


 そうかと、ファウロスは溜息をついた。

 虚偽の風聞であっても信憑性を持って受け止められる、リティアと同い年の親王アメルにも問題があると考えていた。街の者たちが、狂親王とあだ名していることも耳に入っている。


「リティア殿下に騎士団を与えられたことが、お気に障られるようで」

「いずれサーバヌ騎士団を継ぐ身であろうものを」


 お若いですからと、ロザリーは微笑を浮かべて目を伏せた。


「カリストス殿下も手を焼かれているようです」


 王太子に命を狙われているのではないかと、閨でさめざめと泣くサフィナといい、ファウロスには細かな頭痛の種が多い。

 次々と新しい景色を見せてくれる、リティアの笑顔だけがファウロスの楽しみになりつつあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...