【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ
60 / 297

60.剣士府の演説(3)

しおりを挟む
のちほど剣士府けんしふに向かうと約束し、フェイロンさんとイーリンさんを見送みおくった。

俺はまず、シアユンさんに同行してもらい、宮城きゅうじょうの北側にフーチャオさんをたずねた。

メイユイは前室ぜんしつ待機たいきしてくれていたので、護衛ごえいたのみ忘れることはなかった。まんまと、メイユイの作戦通りだ。護衛してほしくない訳ではないけど。

日の出とともに建設けんせつが始まっていた仮設住宅かせつじゅうたくは、半分以上、完成していた。

現場監督げんばかんとくらしきおっさんが、あせぬぐいながら日没にちぼつまでには全部できると、気持ちのいい笑顔で教えてくれた。

すでに完成していたフーチャオさんの区画くかくに行くと、メイファンがはしゃいでいた。

ふわっと、背中に今朝けさの大浴場での「むにゅん」がよみがえったけど、顔には出てなかったはず……。

メイファンの弓が、波紋はもんを呼んでいるとは聞かせたくなくて、フーチャオさんを外にれ出した。

あらましを説明すると、フーチャオさんはニヤリと笑った。

「勝負に出たな、マレビト様」

そう、勝負だ。当たってもくだけてはいけない。城の中のみんなの気持ちをひとつにするのに、けては通れない勝負だ。俺はフーチャオさんの目を見ながらうなずいた。

心の奥の奥の奥の方では「今朝けさ、娘さんたちにしてもらっちゃいました! すんませんしたっ!」と、土下座どげざしてたけど、顔にまでは出さない。

後ほど、剣士府けんしふで立ち会ってもらうことを約束してわかれた。

それまで、メイファンの耳に変なことが入らないように、そばに付いててあげてほしいとお願いしておいた。

司空府しくうふにミンリンさんをたずねると、少し青い顔をして立ち合いを了承りょうしょうしてくれた。

交渉事こうしょうごと苦手にがてなんだもんな。自分が交渉こうしょうするのでなくても、あまりそういう場所に行きたくないよね。

でも、城の最高幹部さいこうかんぶ勢揃せいぞろいしてるって形がほしい。

話しをさせてもらう参考に、フェイロンさんに一般的いっぱんてき剣士像けんしぞうたずねると「あががるために剣士になった者も多い」って、教えてもらった。

すでに、剣士のほとんどが平民出身へいみんしゅっしんだとは聞いてた。

宮城きゅうじょうと同じ最終城壁内に宿舎しゅくしゃをもらい、平民より一段高いちだんたかあつかいを受けているのは確かだ。

たぶん、特別扱とくべつあつかいされることが当然と思っている人が多い。実際じっさいほか職種しょくしゅの人たちの出来ないことを引き受けてくれている。職種という表現が妥当だとうかどうかはさておき。

心のどこかでは、最終城壁の中で、避難民に仮設住宅を用意していることさえ、おもしろくなく思っていても不思議じゃない。王族が使うような布地ぬのじの服を着始きはじめたことも。

三卿さんきょう一亭いっていが全員で立ち会う。しかも、自分たちのである剣士府けんしふに足を運んでくれる。

たぶん、今のジーウォ城でこれ以上の特別扱いはない。

ミンリンさんには苦手なことをさせて悪いけど、ここはどうしてもお願いしたい。

せっかく司空府しくうふに来たので、シーシの工房こうぼうにもった。少し睡眠すいみんが取れたのか、スッキリした顔でシャキシャキ走り回っていた。

城壁になら篝火かがりびに屋根を取り付ける作業は目途めどが立ち、今晩の戦闘には間に合うと報告を受けたので、いくつか頼みごとをした。

ほかに、鍋付きサーチライト型篝火かがりび最終形さいしゅうけいと、実戦投入じっせんとうにゅう過程ステップ設置せっち場所、設置方法について、めた打ち合わせが出来た。

今日の剣士さんたちとの話の行方ゆくえさだかではないけど、進められることは進めておきたい。

さらに、矢の増産ぞうさんは、すでに3,000本まで出来てるって胸をられた。ツル……。

ツルペタ姉さん、やっぱり、すごいなんだわ。個人が天才ってだけじゃなくて、組織そしきを動かせる立場でないと、ここまで進められないよね。

とりあえず、すごくめておいた。とてもうれしそうに笑ってくれた。

司徒府しとふにウンランさんをたずねると、ニコニコと人の良さそうな笑顔で快諾かいだくしてくれた。

いいわぁ。和むわぁ。小太りのおっさん。

こんなおっさんになりたいわぁ。

太りたくはないけど。

け足で用件を済ませ、一旦いったん、自分の部屋にもどった。

剣士府けんしふからむかえの人が来ることになっている。

それまでの間、ふっと息をいて、剣士のみなさんに伝えたい言葉を、ゆっくり考える時間がとれた。

空は少しだけ赤みをび始めている。

今夜も、あの激しい戦闘が待っている。あのおそろしい人獣じんじゅうたちが、やって来る。

異世界に来てから知り合った、みんなの顔を一人ひとり思いかべる。

も思い浮かぶけど……、このさい、それも受け入れよう。今、一人だし……。

里佳りかに相談したいなと、思った。

里佳なら何て答えるだろう? 日本と異世界って、遠く離れてしまって今はかなわないことだけど。

日本に帰れたところで、どうだ? 

俺が一方的におもいいをつのらせて、関係をこわしてしまった。好きでたまらなくなって、フラれた。前と同じように相談したり、できるだろうか?

心にぽっかり、大きな穴が開いてる。……その穴の中では、あわだらけの純潔じゅんけつ乙女おとめたちがキャッキャしてる。むにゅん、むにゅん、ぽいん、ばいーん……。

……なに? 最後のイメージ?

見ると、空が赤みをしている。……寝てたのか。

昼夜逆転ちゅうやぎゃくてんの生活が続いてるからな。ふっと落ちることがあっても、おかしくない。でも、頭は少しクリアになった。

やがて、剣士府けんしふからの迎えとして、イーリンさんがやって来た。

緊張きんちょうで顔を強張こわばらせるイーリンさんに、ニコッと笑いかけて、俺は部屋を出た。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...