124 / 297
123.呪力の発現(3)
しおりを挟む
「シーシの……?」
「はい」
と、シアユンさんは優しく微笑んだ。
「私たちは皆、シーシ殿の言葉に深く納得しております」
「……純潔純情失恋少年」
「そちらではございません」
あ……、すみません。インパクト強すぎて。純潔純情失恋少年。
「祖霊がマレビト様をマレビトに選んでお遣わしになったのには意味がある。……という言葉です」
「私も、そう思っております」
と、ツイファさんが言った。
「私も思ってます! だってスゴイじゃん!」
という、メイユイを皆が見た。
「だって、マレビト様が召喚されて、まだ20日そこそこでしょ? 20日前には、夢にも思わなかったよ、こんなの! 剣士以外の人が剣士と一緒に闘ってるでしょ? 平民に家を建ててくれたし、ご飯も美味しくなった! 服もキレイなの着てる! すごい武器も作ってくれた! なにより、なんか人獣に勝てそうな雰囲気になってきてるのがスゴイよね!」
「私も同じ思いでおります」
と、イーリンさんが言った。
「剣士は独りで闘います。それが、人の命を奪う儀礼であると教わって参りました。ですが、皆で闘う。皆で力を合わせる。この楽しさ、この強さをマレビト様に教えていただきました」
「私はね……」
と、ユエが小さな声で言った。
「私のおっぱい見てドギマギしてるマレビト様を見てるの楽しい」
おっと。なにぶっ込んでるんです?
「お兄ちゃんにも馬鹿にされてて、邪魔だなぁってずっと思ってた自分のおっぱいが、好きになったよ!」
ユーフォンさんが、振り向いてユエの頭を撫でた。
「ユエは偉いね」
「そう?」
「自分の好きなところを見付けられる子は偉いんだよ?」
「そっか……。ふふっ」
「またひとつ、自分の好きになれるところを、マレビト様から教えてもらったね」
「ほんとだぁ!」
そ、その論理展開は少し複雑な気持ちになりますが……。好きになれたんなら、いいことなんですよね……?
「マレビト様」
と、ユーフォンさんが俺に向き直った。
「恋はタイミングです! マレビト様の『今じゃない』って気持ちもよく分かります! 私にも、そんな時がありました。でも、そんなタイミングのマレビト様を祖霊が選ばれたのには、きっと意味があるんだって思うんです」
意味……、か。
「確かに今のマレビト様には呪力を発現することは出来ないかもしれません。でも、出来ることは何でもされようする。シキタリだからって諦めたりしません。私たちも諦めずに出来ることを頑張りたいんです」
この娘たちが俺に、里佳のことを忘れさせようとしてるって考えたら、なんだか迷惑のようにも感じるタイミングだ。
だけど、フラれた傷を癒そうとしてくれてるって考えたら、なんだかとても胸に温かいものを感じてしまう。
「それが全部じゃないかもしれないけど、祖霊が私たちにマレビト様を引き合わせくださったのは、私たちに諦めないことを教えるためだったんじゃないかな? って思うんです」
ユーフォンさんが、みんなが、よく分からない呪力なんかじゃなくて、俺の行動、俺の人格を認めてくれて、俺のことを大切に思ってくれてる。
だから、大切な人が傷付いてるから……、癒してあげたいんだって気持ちが伝わってくる。
シアユンさんが正座している膝の前に、静かに手を着いた。
「かつて、皆の前で申し上げました想いに、今も変わりはありません。いえ、むしろ想いはより強くなっております」
……想い?
「我ら純潔の乙女一同。どこまでもマレビト様のお気持ちに寄り添い、マレビト様の為されることを心の底からお支えいたします。どうか、末永くお仕えさせてくださいませ」
と、シアユンさんは俺に向かって深く頭を下げた。皆も同じように続いた。
……。
もう!
皆、ビキニ姿だし!
シアユンさん、そんなに深く頭下げたら、お尻見えてるし!
プリッとキレイなお尻ですね!
まんまと【お色気大作戦】に、やられておりますですよ?
……いつか、純潔の乙女の誰かと、そういうことになるかもしれません。
耳にはメイファンとミンユーが「子種がほしいです」って囁いてくれた声も蘇ります。
でも今は、頼りない俺ですけど、呪力にアテのない俺ですけど、出来る限りの知力を振り絞って、皆と一緒に人獣に立ち向かわせてください。
それで……、いつか、そういうことになるとしても。
いつか、里佳への想いに整理がついて、皆さんと結ばれるとしても。
その時は、平和を迎えてからがいいな。
平和な時に平和な呪力が発現するのがいいな。
うん。
「ありがとうございます」
と、俺も深々と頭を下げた。
「ふつつかなマレビトですが、どうか、よろしくお願いいたします」
そして、皆で頭を上げて、ププーッて笑い合った。
それから、面積の小さな橙色のビキニ姿のユーフォンさんが立ち上がり、高らかに宣言した。
「それでは【お色気大作戦】、本格始動です!」
ええっ?
そうなる?
そうなるのかー。
ま、頑張ってるんなら、応援するしかないよね。
ドギマギしながら、応援するよ。
……。
……でも、チラ見はやめよう。
出来るだけ。
出来るかな?
「はい」
と、シアユンさんは優しく微笑んだ。
「私たちは皆、シーシ殿の言葉に深く納得しております」
「……純潔純情失恋少年」
「そちらではございません」
あ……、すみません。インパクト強すぎて。純潔純情失恋少年。
「祖霊がマレビト様をマレビトに選んでお遣わしになったのには意味がある。……という言葉です」
「私も、そう思っております」
と、ツイファさんが言った。
「私も思ってます! だってスゴイじゃん!」
という、メイユイを皆が見た。
「だって、マレビト様が召喚されて、まだ20日そこそこでしょ? 20日前には、夢にも思わなかったよ、こんなの! 剣士以外の人が剣士と一緒に闘ってるでしょ? 平民に家を建ててくれたし、ご飯も美味しくなった! 服もキレイなの着てる! すごい武器も作ってくれた! なにより、なんか人獣に勝てそうな雰囲気になってきてるのがスゴイよね!」
「私も同じ思いでおります」
と、イーリンさんが言った。
「剣士は独りで闘います。それが、人の命を奪う儀礼であると教わって参りました。ですが、皆で闘う。皆で力を合わせる。この楽しさ、この強さをマレビト様に教えていただきました」
「私はね……」
と、ユエが小さな声で言った。
「私のおっぱい見てドギマギしてるマレビト様を見てるの楽しい」
おっと。なにぶっ込んでるんです?
「お兄ちゃんにも馬鹿にされてて、邪魔だなぁってずっと思ってた自分のおっぱいが、好きになったよ!」
ユーフォンさんが、振り向いてユエの頭を撫でた。
「ユエは偉いね」
「そう?」
「自分の好きなところを見付けられる子は偉いんだよ?」
「そっか……。ふふっ」
「またひとつ、自分の好きになれるところを、マレビト様から教えてもらったね」
「ほんとだぁ!」
そ、その論理展開は少し複雑な気持ちになりますが……。好きになれたんなら、いいことなんですよね……?
「マレビト様」
と、ユーフォンさんが俺に向き直った。
「恋はタイミングです! マレビト様の『今じゃない』って気持ちもよく分かります! 私にも、そんな時がありました。でも、そんなタイミングのマレビト様を祖霊が選ばれたのには、きっと意味があるんだって思うんです」
意味……、か。
「確かに今のマレビト様には呪力を発現することは出来ないかもしれません。でも、出来ることは何でもされようする。シキタリだからって諦めたりしません。私たちも諦めずに出来ることを頑張りたいんです」
この娘たちが俺に、里佳のことを忘れさせようとしてるって考えたら、なんだか迷惑のようにも感じるタイミングだ。
だけど、フラれた傷を癒そうとしてくれてるって考えたら、なんだかとても胸に温かいものを感じてしまう。
「それが全部じゃないかもしれないけど、祖霊が私たちにマレビト様を引き合わせくださったのは、私たちに諦めないことを教えるためだったんじゃないかな? って思うんです」
ユーフォンさんが、みんなが、よく分からない呪力なんかじゃなくて、俺の行動、俺の人格を認めてくれて、俺のことを大切に思ってくれてる。
だから、大切な人が傷付いてるから……、癒してあげたいんだって気持ちが伝わってくる。
シアユンさんが正座している膝の前に、静かに手を着いた。
「かつて、皆の前で申し上げました想いに、今も変わりはありません。いえ、むしろ想いはより強くなっております」
……想い?
「我ら純潔の乙女一同。どこまでもマレビト様のお気持ちに寄り添い、マレビト様の為されることを心の底からお支えいたします。どうか、末永くお仕えさせてくださいませ」
と、シアユンさんは俺に向かって深く頭を下げた。皆も同じように続いた。
……。
もう!
皆、ビキニ姿だし!
シアユンさん、そんなに深く頭下げたら、お尻見えてるし!
プリッとキレイなお尻ですね!
まんまと【お色気大作戦】に、やられておりますですよ?
……いつか、純潔の乙女の誰かと、そういうことになるかもしれません。
耳にはメイファンとミンユーが「子種がほしいです」って囁いてくれた声も蘇ります。
でも今は、頼りない俺ですけど、呪力にアテのない俺ですけど、出来る限りの知力を振り絞って、皆と一緒に人獣に立ち向かわせてください。
それで……、いつか、そういうことになるとしても。
いつか、里佳への想いに整理がついて、皆さんと結ばれるとしても。
その時は、平和を迎えてからがいいな。
平和な時に平和な呪力が発現するのがいいな。
うん。
「ありがとうございます」
と、俺も深々と頭を下げた。
「ふつつかなマレビトですが、どうか、よろしくお願いいたします」
そして、皆で頭を上げて、ププーッて笑い合った。
それから、面積の小さな橙色のビキニ姿のユーフォンさんが立ち上がり、高らかに宣言した。
「それでは【お色気大作戦】、本格始動です!」
ええっ?
そうなる?
そうなるのかー。
ま、頑張ってるんなら、応援するしかないよね。
ドギマギしながら、応援するよ。
……。
……でも、チラ見はやめよう。
出来るだけ。
出来るかな?
90
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる