【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

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250.霊縁(15)ミンユー・メイファン

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珍しくご機嫌きげんななめのミンユーが、俺の寝室に荷物を広げた。

「お姉ちゃんが、自分は後でいい、後でいいって……」

と、姉のメイファンにご立腹りっぷくだ。

「いつも、自分のこと後回し……」

「あ、うん……」

他人ひとゆずってばっかり……」

人見知りはおさまってきたとはいえ、寡黙かもくなミンユーが、メイファンのことになると饒舌じょうぜつになる。

「マレビト様もお姉ちゃんに早く来てほしかったでしょ……?」

「あ、うん……、そう……かな……?」

まあ、俺の寝室に荷物を広げる順番の話で、そんな風に言われても反応に困るわけですが……。

「お姉ちゃんの次のつもりだった……」

と、小さくほおを膨らませたミンユーも、メイファン本人には強く言えないのだ。

俺はと言うと――。

――お姉ちゃんの次でいいから、私にも子種こだねさずけてほしい……、です……。

と、ミンユーに耳元でささやかれたことを思い出して、赤面せきめんしてる。

「……メ、メイファンはんなのことが大好きだからっ」

「そうだけど……」

「そんなメイファンだから、んなも大好きなんだと思うよ」

「そう……? んな、お姉ちゃんのこと大好き?」

「うん」

「……マレビト様も?」

「う、うん……」

「大好き?」

「だ、大好き……」

「そっか……」

と、姉をおもって微笑ほほえむミンユーに、胸がキュンとさせられてしまう……。

機嫌を直したミンユーと北側広場の大樹の木陰こかげでピクニックした。すべて、ここから始まったという気持ちもある。

弓の練習をするミンユーとメイファンを見かけたのが全部の始まり。

頭上から、わあ~! という感嘆かんたんの声が聞こえて見上げると、の始まった望楼ぼうろうに笑顔が並んでいた。

「マレビト様が……」

「ん……?」

「お姉ちゃんと私を望楼ぼうろうのぼらせてくれて……、ビックリした……」

と、ミンユーが言った。

「ただの平民が昇っていい場所じゃなかったから……」

「はは。知らなくてさ」

「すごく、ドキドキした」

「そっか」

「王都では庭園に入れてもらった」

「うん、あれはスゴかったね」

「泉で泳いだのは、気持ち良かった」

木漏こもれ日に輝く森の泉で、裸でたわむれる5人は女神様みたいに美しかった。もちろん、ミンユーも綺麗でまぶしかった。

側室そくしつにしてもらって、宮城きゅうじょうに自分の部屋があるなんて……、今でも信じられない……」

「うん……」

「マレビト様は、いつも新しい景色けしきを見せてくれる」

と、ミンユーが微笑ほほえんだ。

北側城壁を登ると、第2城壁はすぐそばにある。そのわずかな距離があの頃、果てしなく遠かった。

「新しい景色を見せてもらってたのは、俺の方だよ」

「え……?」

「やってみる――、って、ミンユーが何度言ってくれたことか」

短弓たんきゅう隊の初陣、いや、それだけじゃない。いつも準備不足の中をミンユーがけて行ってくれた。

「クゥアイの槍を、隊に受け入れてくれたのもミンユーだし」

「そんなこともあった……」

「ミンユーはいつも、先頭に立って状況を突破とっぱしてくれた。その後ろをんなが歩けた」

顔を赤くしたミンユーが、ふるふると首を振ると、立派なも揺れた。

つい、あの朝のことを思い出して赤面してしまう。裸の私を重ねて見てましたよね? って言うミンリンさんの赤い顔も一緒に。

「い、色々あったなあ」

と、顔を赤くした2人が並んで第2城壁をながめた。

「言葉だ……」

「え……?」

「マレビト様の言葉が、私たちを突破させてくれた」

「言葉……?」

「マレビト様が、人獣じんじゅうを『退しりぞける』って口にした時から……」

と、ミンユーは真っ赤な顔で俺の目を見詰みつめた。

「私の心は、マレビト様のものだ……」

端正たんせいな顔立ちに浮かぶ、真剣に俺を求めてくれてる表情に息をんだ。

「マレビト様はずっと……、私の純潔はじめてささげるにるお方だ……」

それからは2人とも無言で、指先だけでチョンと手を結んで、顔を赤くしたまま城壁をグルッと歩いた。

そして、寝室に戻り、スルリと服を脱いだミンユーと結ばれた――。

視界の紋様もんようは滑らかにうごめき、ひとつ輪を増やした。

 ◇

「ひひっ! マレビト様のねらってたんだけどなあ」

と、はにかむメイファンが、俺の寝室に荷物を広げた。

「シアユン様、なにを言っても全身真っ赤にして動かないんだもん。あんなの見てたら、私の番でいいのかな? ってなるじゃない?」

おどけて見せたり、優しく包んだり。んなに気をくばって気をくばって、俺を助けてくれたメイファンらしい笑顔に苦笑いを返すしかない。

「馬だと、こんなに近いんだよね」

と、メイファンおすすめの狩場かりばに連れ出してくれた。

「上手い上手い! マレビト様、また腕を上げたねえ!」

俺の弓を手放しでめてくれるメイファンと、2人で狩りにきょうじた。

それから、メイファンが一度俺に見せたかったという夕陽ゆうひを、がけに座って、並んでながめた。すべてが茜色に染まった景色に後押しされるように、口を開いた。

「俺……、大浴場でさ……」

「なに……?」

「メイファンのお尻を、よく見てたんだ……」

「なによ急に? エッチね、マレビト様」

「いや……、うん……」

「なに? より、お尻が好きだった……?」

「……あのお尻の向こう側、俺にお尻を向けたメイファンの向こう側には、俺のことを良く言ってないたちがいたんだろ?」

「えっと……」

な俺の視界に、入らないようにしてくれてた」

「……マレビト様のことキライなは1人もいなかったんだよ?」

「メイファンはいつも、俺を守ってくれてた」

「だ、だってえ……」

「うん……」

「マレビト様、すぐ落ち込むし、へこむし、傷付きやすいし……」

「そうだね……」

「もう! でも見とけ!」

と、空と同じくらいに顔を赤くしたメイファンが、上着をペラっとめくった。

「クゥアイがアスマ達を救けたときも、北の蛮族をたすけるなんて! って非難する人たちを、なだめてさとしてくれてた」

「え……? 見て……くれてたんだ……」

「色々言われてへこんでるクゥアイを褒めて励まして……、俺の背中をように、そっと押し出してくれてた」

「……」

んなを守って、俺を守ってくれてた」

「そんなこと……」

「ありがとう、メイファン」

「もう……。私が口説くどきに来たんだよ……?」

「メイファンには、とっくに口説くどかれてたよ」

「え――?」

「うん……」

「……じゃあ、私のことらしてもてあそんでたんだあ?」

「いや、そんなこと」

「ひひっ!」

「……かなわないな、メイファンには」

「……よっか? 帰って」

「うん……」

気持ちがはやるのを照れ隠しするみたいに、ゆっくりと歩かせた馬にられて宮城きゅうじょうに戻った。

そして、寝室に戻って抱きめ合った。

「優しくしてね……」

と、少し困ったようにささやくメイファンと互いに求め合い、霊縁れいえんは結ばれた――。

輪をひとつ増やした紋様もんようは、俺をつつみ込むようにうごめいている。

あの時、俺の視界を優しくふさいでくれた柔らかなふくらみが、俺の胸に乗っている。

寡黙なミンユーと開放的な性格のメイファン。だけど、んなが思ってるのと、本当は逆だ。

突破するミンユーと守るメイファン。

――任せとけって! ウチら姉妹は最強なんだからッ!

と、短弓たんきゅう隊が初陣を迎える夕暮れに、力強く拳を振り上げてくれたメイファン。大樹の下で出会った最初の時からずっと、最強姉妹は俺の両輪だった。そして、最高の景色が見えるところまで連れて来てくれた。

背中をそっとでると、メイファンがくすぐったそうに俺の顔を見上げた。

「ひひっ! ……今度は、ミンユーと3人でる?」

いや、それはちょっとハードル高いっス……。
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