異世界弓師~作るおっさんと、射るエルフ~

蒼乃ロゼ

文字の大きさ
16 / 57
弓師とエルフ

十六話 迷いと役割

しおりを挟む
『ただいまです、ただいまですわ~!』
「おかえりルナリア。どうだった?」

 長老たちに報告に行っていたルナリアとミラウッドが帰ってきた。

「やはりルナリア様のおっしゃるように、他所にある聖樹の根が消失したことが一連の原因であるだろうと長老方も結論づけた。問題は、今の状況がいつ解消されるかだが……」
『森のヤツってのはノロマだからなぁ。用事がある時に叩き起こすしかねぇんじゃねーの?』
『まぁー!? 風のお方は無礼極まりないですわ! ええ、極まりない!』
「ケンカは止めてくれな……」

 かわいいイタチとウサギがケンカしている姿は一見すると微笑ましいんだが……。
 実際はとんでもない力を秘めた精霊同士。
 見守る側もハラハラする……!

「ともかく、私は今しばらくセロー様とルナリア様にお仕えするよう言われている。同胞たちに見回りの強化を手配した。もし、何かあれば……ルナリア様」
『ええ、ええ。わたくしにお任せくださいな! しっかりアドバイスしてあげます。ええ、しますとも!』
『コイツの尻拭いだけはゴメンだがな』
『んまーーーー!?』
「はいはい、そこまで」

 ふわふわと浮きながら互いにキッと睨み合う二人。
 間に入るように俺が制せば、「ふんっ」と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

「コーヤ。どうする?」
「ん?」
「元の場所に一刻も早く帰りたいのであれば、聖樹の精霊におうかがいするのが一番早いとは思う。だが、もし森を抜けて地道に探すならば、手間と根気は要るが……少なくとも『待つ』時間は少ない」
「……元の場所、か」

 正直、自分がどうしたいのかまるで分からない。
 異世界に対する不安は大いにある。
 ただ、それがに直結しているかと問われると……よく、分からない。

「……」
『『?』』
「?」

 セロー、ルナリア、ミラウッドの顔を順に見る。

 多分彼らの存在も大きな要因だ。
 この世界で危険な目に遭うどころか、彼らに助けてもらって心地よく過ごせている。
 それが無ければ一刻も早く帰りたいと願ったかもしれない。

「分からない」
「……そうか」

 純粋な想いをミラウッドに伝えた。

 もう四十路のいい大人だ。
 他人に何かを伝える時はAなのか、Bなのか。
 ハッキリとしていた方がいいとは分かっている。
 相手も返事に困るからな。

 でも心が本当に迷っている時に、そうであると伝えられるのは……。
 ミラウッドのことを、俺が信頼しているからだと思う。
 短い間ながら、彼の人柄はなんとなく分かってきた。

「……なら、今しばらく私たちと生活を共にし、ゆっくり考えてみるといい。幸いエルフというのは人間よりも時間があるからな」
「ありがとう」

 元の場所に帰りたいかどうか。
 それは未だ分からないが、もう一つ俺の中では迷っていることがある。

 自分の役割だ。

「……それで、その。なにか手伝えることはないか?」
「手伝う?」
「ただ待っておくだけってのも気が引けるし……。それに、セローとルナリアのおかげでエルフ達からは俺のことも信用してもらってるけど。実際、俺自身は何者でもないんだし……なにか、役に立てたらなって。自分でエルフたちからの信頼を勝ち取りたいというか」
「コーヤ……」
『殊勝なこって』
『コーヤさま。素敵ですね、素敵です!』

 そんな大層なものじゃない。
 不安なだけだ。
 何もできていない自分がここに居ていいのかと、自分で自分を責めたくなるだけだ。

 まるで早気はやけで弓を上手く引けない俺が、弓師でいてもいいのか。

 それを自問自答する日々に似ている。

 人のためと言いながら、全部自分のためだ。

「ふむ。……なら、私の手伝いをしてもらえるか?」
「! いいのか?」
「もちろんだ。私も助かる」
『コーヤがやるなら付き合ってやるかぁ』
『わたくしもですわー!』
「ありがとう、みんな」

 いろいろ不安もあるが。
 異世界で出会った人や精霊に、俺はずいぶんと助けられている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...