異世界弓師~作るおっさんと、射るエルフ~

蒼乃ロゼ

文字の大きさ
17 / 57
弓師とエルフ

十七話 異世界の射術事情

しおりを挟む
「【ミライ草】、か」

 ミラウッドが手配してくれた昼食を食べ、俺たちはさっそく彼の手伝いをしている。

 なんでも、ミラウッドはエルフの村でも数少ない冒険者ギルドに登録している『冒険者』らしい。
 普段は村にて薬草採取や魔物討伐を行い、定期的にギルドへ売りに行っているようだ。
 村の守衛を兼ねることができ、外部でお金も稼げる。一石二鳥。
 そのお金で装備や道具なんかを買って村に持ち帰るんだろう。

 ミラウッドがエルフというこの世界でも珍しい種族ながら、比較的面倒見がいいのはそういう事情があるようだ。

 現在俺は、ミラウッドの備蓄用薬草採取の手伝いをしている。

「その草が元気に上に伸びていると晴れ、しな垂れていると雨を察知している証拠だ」
「へぇ~! 天気予報か」

 ノビーっと空に向かって伸びる薬草。
 今日は雨の心配はなさそうだ。

「魔力伝導効率がいいだろう? 繊維せんいを糸のようにして、弓を握る部分に巻き付けることもある。薬の材料にもいい」
「! ほんとだ」

 ミライ草と教えてもらった草を鑑定してみると、

 【魔力伝導効率B】

 とあった。

 仮にAが一番良い値なら、今までで一番高い。

「……そうだ。魔力伝導効率って……結局なんだ?」

 なんとなく字面から意味は予想できるが、そもそも魔法が一般的でない俺に理解は及ばない。

「魔力伝導というのは、……そうだな。簡単に言うと、自分の思うままに魔力を出力できるかどうか。人にも物にも、少なからず魔力に抵抗する力があるからな」
「ふむふむ」
「魔法を扱う上で、自分の持つイメージの力が最も大切だ。だが、もちろんその他の要因で上手くいかないこともある。精霊魔法でいえば、精霊様にお借りした魔法を自分が扱うというのは、それだけで大変なことだ」
「たしかに……」
「エルフがそれを得意とするのは、生活の中に精霊様への祈りの場を多く設け、自身を自然と一体化する習慣があるからだ。……それでもなお、彼の方々の力を借りて制御するのは難しい。こういった魔力伝導の性質を持つ物の力を借りて、より制御しやすくする。……というのが目的かな」
「なるほどなぁ。精霊魔法でいえば、精霊が好むような材料、かつ魔力伝導効率がいいもの……っていうのが理想なのか」
「そういうことだな」

 つまり、魔法を扱う際の補助的な役割。
 弓道で言うところの、右手に付けるグローブのような『カケ』にあたるだろうか?

 弓を引く時に右手指を保護しながら矢を固定しつつ、弦を引っ掛け引く力をコントロールしやすくする。
 カケ無しでつるを引っ張るのは、それだけで手が痛くなるからな。

 射術に与える影響も大きい。

「こっちは【アカリダケ】、周囲の明るさに応じて自身を発光させるキノコだ。精霊様にお力添えいただければ、明るさの調整もできる」

 ミラウッドがとある木の根元を指差す。
 俺も近づいて見てみると、ランプシェードのような傘を持ったキノコだった。
 しかも──バカでかい!

 光るキノコ、あるいは魚やサンゴなど、元の世界にも似たような性質を持つものはいた。
 だが、このアカリダケに関してはその大きさからしておかしい。
 文字通りランプのようなキノコだ。

「これって、食べる……のか?」
「いや。食べてもいいが、村では灯りとして利用する。不思議なことに、場所を変えても問題ないキノコなんだ」
「へえええぇ……」

 なんかもう、いろいろとすごい。
 そういえば夜、エルフの家の玄関先が淡く光っているのを窓から見た。
 このキノコ以外にも、光る植物があるのかもしれないな。

「面白いな」
「コーヤも、タケ? のような、私たちも知らない植物を多く知っていただろうな。早く記憶が戻るといいが」
「あ、ああ。そうだな」

 記憶があいまいという設定で居続けるのがどうにも心苦しい。

「……ん?」
「?」

 そういえば。俺が転移した元凶ともいえる、謎の木。
 山で初めて見たあの木は……どこか聖樹の枝に似ていると思った。

 そしてルナリアの言葉からして、聖樹は大地の神とやらが創り出し、さまざまな場所に根を張るという。

 さすがに木の根が世界を跨ぐとは思わないが、……可能性はゼロではないか?

「どうかしたか?」
「いやっ、なんか、思い出しそうな気がしたけど……気のせいだ」
「そうか」

 もしうちの山に生えていたのが聖樹の一部だったとしたら……俺を転移させたあと、消失してしまったんだろうか?

 それはなんだか少し、寂しい気がした。




『あん? やんのか?』
『望むところですわ! ええ、望むところです』

 少し離れた場所では、相変わらずケンカしている精霊二人。

「セロー様、ルナリア様。ご協力ありがとうございます」
『! いえいえ。エルフのお方、ミラウッドさん。共に森に生きる仲間ですもの。当然ですわ。ええ、当然です』
『その仲間が眠りについてりゃ世話ねぇな』
『きぃーーーー!!』

 終わりが見えない戦いはそっとしておくことにした。

 あまり遅くなると森ではあっという間に暗闇が襲ってくる。
 俺たちは早めにエルフの村へと帰還した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

処理中です...