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異世界と弓作り
五十三話 対等
しおりを挟む「あらぁ!! イイ男~~!!」
「うるせぇな。んだコイツ」
「やーん! ワルそうなところもす・て・き!」
「セローが絡まれてる……」
エルフたちと冒険者との協議の結果、魔物を一旦みんなで村に運ぶことに決めたようだ。
話の終わったミラウッドの仲間らしい二人がこちらに向かってくると、つばの広い帽子を被った美女がセローを視界に捉え大声をあげた。
「ヨルディカ、不敬だぞ」
「不敬?」
「姉貴はイイ男に目がないからなぁ~。ミラウッドと出会ったのもそれが縁だし」
なんとなくその現場が想像できるな……。
「そっちのお兄さんは? 人間ってことは、村に来ていた行商か?」
「いや。こちらはコーヤ。訳あって村に滞在している」
「ど、どうも。はじめまして」
「おう、よろしく。おれはアンセル、剣士だ。ミラウッドとは冒険者仲間ってところか? こっちは姉のヨルディカ」
「はぁい。よろしく。…………で?」
チラチラとセローの方を盗み見ながら自己紹介するヨルディカさん。
誰なのか気になるんだろうな。
「オレは人間に名乗ったりしねぇぞ」
「あら、種族はどちら……」
「ヨルディカ。こちらはセロー様とルナリア様。コーヤと契約されている精霊様だ」
「「──え!?」」
「ルナリアですわ。よろしくお願いします、ええ。よろしくですの」
少女姿のルナリアがぺこりと頭を下げる。
俺の真似をしたようだ。
「こちらは村の泉の精霊様で、コーヤの力で目覚めたお方だ」
『!』
泉の精霊もふわりと浮いて一回転。精霊なりの挨拶なんだろう。
「え? 精霊と契約……それも、二人!?」
「マジか……。そりゃー精霊術師の中でも珍しいな」
「ヨルディカ。特にセロー様は風の上位精霊でいらっしゃる。失礼な物言いはやめるのだぞ」
「えーーーー!!??」
「静かにしてりゃぁ、なんでもいいんだが……」
ヨルディカさんは俺とセロー、ルナリアを交互に見比べると、心底驚いた様子でミラウッドに問いかけた。
「なに? あんた、弟子でもとったのかい? いや、むしろ……師?」
「そういうものではない。たまたまだ」
「えっと、いろいろあってミラウッドと村の皆にはよくしてもらってます」
「へぇ~~。人間が、エルフの村にねぇ」
「めずらしいこともあったもんだぜ」
それぞれ自己紹介を終え、簡単な近況を共有する。
アンセルさんとヨルディカさんはまず村で長老たちからの報酬をもらい、ヘルリザードの素材をギルドに持って帰って懸賞金と素材の買取代金をさらにゲットする……という予定らしい。
「ひとまず、村へと戻ろう」
「そうだな」
「ほら、アンセル。キリキリ働きな!」
「ひでーよ姉貴」
アンセルさんは村のエルフと協力して、ヘルリザードを運びに行った。
◇◆◇
「すまない、コーヤ。遅くなった」
「ミラウッド」
長老や守衛たち、冒険者らと諸々を確認し合っていたミラウッド。
ようやく落ち着いたのか工房で待っていた俺のところに戻ってきた。
「お疲れさま」
「ああ、コーヤも。いろいろ助かった。それで……話というのは?」
「うん。あのさ──」
俺はウィンハックに言われた時に気付いた。
弓を作る際に想定した、作りたい射手のことを。
俺は元の世界では弓を引けない弓師で、落ちこぼれだ。
じいさんの手伝いということでなんとかなっていたが、俺単体に指名で弓作りの依頼がくることはなかった。
だから、俺の想定する弓の引き手は『じいさんの依頼主』だった。
もちろん手を抜くことなんて無かったし、どんな相手だろうかと想いを巡らせた。
でも直接会えるのはじいさんだけだし、弓の状態からおおよその行射の癖なんかは読み取れても、どんな気質で、どんな考えを持っていて、どういう経緯で弓と出会ったのか。
そういうのは全部じいさんからの情報だけで、ましてじいさんすらも全ての引き手と会うわけじゃない。
俺が真に引き手を理解して弓を作ることは、離れた場所の者とやり取りができる元の世界の性質上、なかなか無かった。
そして今、俺はミラウッドの弓を作りたいと思っている。
彼の人柄や精霊に対する考え、どういう暮らし。そういったのを教わりながら共に過ごすことで、引き手がどういう人物か知れた。
なら今度は俺の番だ。
相手のことだけを知って、いや。知った気になっただけで、自分のことは何も言わないって……それはきっと、対等じゃない。
「実は、俺……」
「ああ」
「──この世界の人間じゃ、ないんだ」
「……!」
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