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5月 ダチュラ
第22話
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久道千秋side
その存在に気がついたのは、随分と最近の事だった。さも当たり前のようにそこにいたそいつ、鏡宮依夜は、俺に餌付けをするようにスプーンを差し出して笑っている。
俺の前の席で、外部生。その程度しか意識していなかったのが、転校生がきた事によって崩れ落ちた。
内向的な性格のはずのソイツは積極的に転校生に近づいた。警戒心もクソもねぇ転校生相手ではあったが、随分と簡単に転校生と共にいる事に馴染んでいたと思う。
転校生への接し方も、なんとなく違和感があった。まるで、褒めてさえいれば重用されると知っているような扱い方。
その時、はじめてソイツを意識した。
ソイツの発する言葉は全て尊敬と情景に溢れていて、普通なら疑いようのない真実だと思えるのが不気味で、徐々に疑心と不信感が募っていった。
あからさまな媚び売りはないものの、間接的な接触に時折感じる視線。もしも、もしもコイツが久道家から送られてきた刺客なら、そう考えずにはいられなかった。
そのタイミングでの山合宿。久道家の権力で手を回されたのかと疑うには十分な班の組み分け。仕掛けてくるならここだろうと、俺は一切の気を抜かずにいた。
それなのに、これだ。
「あはっ、全部食べちゃった。美味しかった?今度俺の手作りお菓子も食べてよ」
風呂に入ろうと扉を開けてみれば、そこにいたのは全く見覚えのない人物。黒紫の髪に日本人には珍しい紫の瞳。
背丈とそばにあったメガネを見て鏡宮だと結論付け、手を捻り上げたが、それに対する反応は怯えや反発ではなく明らかな興奮。
緩んでしまった力。そこでハッとしたような表情をしてから紡がれた言葉は反発ではなく弁解だった。
それからとんとん拍子に話は進んだ。
庶民の筈が、身元保証人に出てきたのは学園の理事長で梵家の現当主。変装により隠されていた顔は絶世の美貌。内気で卑屈な性格ではなく外向的で人好きのする性格。
嘘偽りだらけだったソイツはその後俺に相互監視の提案をした。
俺はそれに頷いて、過度な接触をせず警戒しようとしていた。していた筈なのに。
「ほんとにいいの?」
酷く寂しそうな弱々しい声に、胸の奥を掻き乱された。
ソイツの方を向けばついさっきまでは笑っていたはずが、今ではまるで迷子の子供のようだった。
濃厚な甘さが、今もなお口の中に残る。
ソイツを放っておけずに与えられるがままプリンを食べてしまったせいだ。
「夜中に甘いもの食べちゃったね。歯磨きしなきゃだ」
ふと、子供の頃を思い出す。
買ってきたプリンを夜中に母さんと2人で食べて、母さんに似たような事を言われた。
けれどその時は、この甘さを忘れたくないとは思わなかった。
──────────────
あったかもしれないその後の会話
「千秋は甘い物の中で何が好きなの?」
「…ショートケーキ」
「苺の?美味しいよね」
「…」
「俺はマカロンが好き」
「聞いてねぇよ」
「でも聞きたそうな顔してたよ?」
「……してねぇ」
その存在に気がついたのは、随分と最近の事だった。さも当たり前のようにそこにいたそいつ、鏡宮依夜は、俺に餌付けをするようにスプーンを差し出して笑っている。
俺の前の席で、外部生。その程度しか意識していなかったのが、転校生がきた事によって崩れ落ちた。
内向的な性格のはずのソイツは積極的に転校生に近づいた。警戒心もクソもねぇ転校生相手ではあったが、随分と簡単に転校生と共にいる事に馴染んでいたと思う。
転校生への接し方も、なんとなく違和感があった。まるで、褒めてさえいれば重用されると知っているような扱い方。
その時、はじめてソイツを意識した。
ソイツの発する言葉は全て尊敬と情景に溢れていて、普通なら疑いようのない真実だと思えるのが不気味で、徐々に疑心と不信感が募っていった。
あからさまな媚び売りはないものの、間接的な接触に時折感じる視線。もしも、もしもコイツが久道家から送られてきた刺客なら、そう考えずにはいられなかった。
そのタイミングでの山合宿。久道家の権力で手を回されたのかと疑うには十分な班の組み分け。仕掛けてくるならここだろうと、俺は一切の気を抜かずにいた。
それなのに、これだ。
「あはっ、全部食べちゃった。美味しかった?今度俺の手作りお菓子も食べてよ」
風呂に入ろうと扉を開けてみれば、そこにいたのは全く見覚えのない人物。黒紫の髪に日本人には珍しい紫の瞳。
背丈とそばにあったメガネを見て鏡宮だと結論付け、手を捻り上げたが、それに対する反応は怯えや反発ではなく明らかな興奮。
緩んでしまった力。そこでハッとしたような表情をしてから紡がれた言葉は反発ではなく弁解だった。
それからとんとん拍子に話は進んだ。
庶民の筈が、身元保証人に出てきたのは学園の理事長で梵家の現当主。変装により隠されていた顔は絶世の美貌。内気で卑屈な性格ではなく外向的で人好きのする性格。
嘘偽りだらけだったソイツはその後俺に相互監視の提案をした。
俺はそれに頷いて、過度な接触をせず警戒しようとしていた。していた筈なのに。
「ほんとにいいの?」
酷く寂しそうな弱々しい声に、胸の奥を掻き乱された。
ソイツの方を向けばついさっきまでは笑っていたはずが、今ではまるで迷子の子供のようだった。
濃厚な甘さが、今もなお口の中に残る。
ソイツを放っておけずに与えられるがままプリンを食べてしまったせいだ。
「夜中に甘いもの食べちゃったね。歯磨きしなきゃだ」
ふと、子供の頃を思い出す。
買ってきたプリンを夜中に母さんと2人で食べて、母さんに似たような事を言われた。
けれどその時は、この甘さを忘れたくないとは思わなかった。
──────────────
あったかもしれないその後の会話
「千秋は甘い物の中で何が好きなの?」
「…ショートケーキ」
「苺の?美味しいよね」
「…」
「俺はマカロンが好き」
「聞いてねぇよ」
「でも聞きたそうな顔してたよ?」
「……してねぇ」
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