ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽

文字の大きさ
83 / 99

急展開―諸悪の根源と対峙。➁

しおりを挟む
「ちょ、ちょっとごめん!」

不意に後ろから声が聞こえ、振り向いた。

「江奈っ!」

「雪ちゃん!」

野次馬を掻き分け、雪ちゃんが私の側に駆け寄って来る。

「あれ、もしかして笹木……?」

雪ちゃんが眉間にシワを寄せ、今の笹木の風貌を見てをなんとも言えない顔をした。

「うん。あの写真を送り付けて来たのも、笹木の仕業だったの」

「やっぱりそうだったのね」

雪ちゃんもどうやら確信していた様だ。

「それより、雪ちゃん大丈夫?」

「ええ、まあなんとか……」

フッと笑ってはいるけど、絶対大丈夫じゃない気がする。

かなり揉みくちゃにされた様で、いつもピシッとなっているスーツがヨレヨレだ。

「アンタ、こんな卑劣なやり方で満足なワケ!?江奈を取られたのがそんなに悔しかったんなら、正々堂々と勝負してみなさいよ!」

雪ちゃんが笹木に向かって叫んだ。

雪ちゃんの声も、ロビーにこだまする。

すると、

「なんか、津田部長の喋り方オネエみたいじゃなかった?」

と野次馬の中の誰かが言い出し、辺りがどよめく。

「確かに」

「じゃあ、あのメールってマジなん?」

「イタズラとかじゃなかったんだ?」

「マジで?」

ロビーがザワ付き始めた。

『ヒソヒソヒソヒソ……』

視線が突き刺さる。

よく聞こえはしないけど、心無い言葉を言われていたらどうしよう…雪ちゃんが傷付いたらどうしよう…と胸が苦しくなる。

雪ちゃんをこんな事に巻き込んでしまったのは私。

あの時、笹木の事を言わずに別れていれば、雪ちゃんはまだまだ平穏な日々を過ごせていたハズなのに……。

後悔の念で泣きそうになるのをこらえ笹木を見ると、この状況が心底楽しい、と言う様な顔で笑っていた。

(なんで……なんでコイツは笑っていられるのっ!?)

コイツの、笹木のせいでこんな事になっているのにっ!

私はいよいよ我慢が出来なくなり、握り拳に更に力を入れ、笹木に詰め寄ろうとした。

その瞬間、

「あー、うるさいうるさい!アタシがオネエでなんか悪い!?」

と言う雪ちゃんの怒鳴り声がロビーに響いた。


シーン……。


と今までヒソヒソ話をしていた人達が皆、静まり返る。

すると、暫く顔を見合わせていた野次馬達が、こう言った。

「べ、別に悪くない、よね……?」

と。

その言葉を皮切りに、

「うん……ちょっとビックリしたけど、イマドキ珍しくもないし、ねぇ……?」

「まあ、個人の自由だし、問題なくね?」

「そーだな」

「個性は大事だよ」

「うんうん」

と、私達が全く予想していなかった言葉が飛び交って、今度は私達が顔を見合わせる。

誰一人として、雪ちゃんを『気持ち悪い』などと言う人はいなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

運命には間に合いますか?

入海月子
恋愛
スペイン建築が大好きな設計士 大橋優那(おおはし ゆな) 28歳        × せっかちな空間デザイナー 守谷翔真(もりや しょうま) 33歳 優那はスペイン建築を学ぶという夢が実現するというときに、空間デザイナーの翔真と出会った。 せっかちな彼は出会って二日目で優那を口説いてくる。 翔真に惹かれながらも、スペインに行くことが決まっている優那はその気持ちに応えられないときっぱり告げた。 それでも、翔真はあきらめてくれない。 毎日のように熱く口説かれて、優那は――

こじらせ女子の恋愛事情

あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26) そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26) いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。 なんて自らまたこじらせる残念な私。 「俺はずっと好きだけど?」 「仁科の返事を待ってるんだよね」 宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。 これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。 ******************* この作品は、他のサイトにも掲載しています。

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

妖狐の嫁入り

山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」 稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。 ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。 彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。 帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。 自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!   & 苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る! 明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。 可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ! ※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

処理中です...