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職人集団集結
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職人たちは駿府に集まれという命令が布告され、駿府の町は人でごった返した。
しかもその命は太守様直々のお声がかり。
職人どもからすれば大変に名誉な事であり、来るだけでも旅費分の褒美は頂けるとあって、職人でない武士や商人までもが駿府に集まってしまった。
これに困った義元は駿府の町の商工組合にその選別を任せ、職にあぶれている武士は常備兵として雇い入れた。図らずも戦力の増強になったのである。
それからしばらく選考に時が懸り、ほかの町からの職人を戻してくださいといった嘆願に対処していると、ようやく駿遠エリート職人集団の選別が完了した。
その内訳は、主には船大工に宮大工といった木で物を作る大工衆。鉄で刀や鍋などを作る鍛冶金物衆。竹などを使って細かな物を作る細工衆。その他に紙作り衆・機織り衆・塗り物衆が揃った。
そうした者達が、今川館の主殿ぎゅうぎゅうに集められた。
「太守さま、おなぁりぃ~~」
しかし小姓の声に平伏しようとするも、鮨詰状態で平伏できぬ。そこで困った職人たちは前に座る者の背に手をついて頭をさげ、一応の体裁を整えるといった有り様であった。
そんな職人たちの様子に入ってきた義元は微笑み、歩きながら扇子をふって声をかける。
「よいよい、苦しゅうない。みな顔をあげよ」
そして上座に着座すると、まず宣言した。
「只今より、その方らは全て儂の直臣と致す」
突然の出世に恐れ入った職人たちはどうしていいのか分からず、とりあえず平伏しようと再びドミノ平伏。
「なれど、儂の直臣となったからには、知った秘密は生涯口に出来ぬ。家に戻ること家族に会う事も制限される。それが嫌じゃと申す者は、今すぐこの場を立ち去るが良い」
するとそれを聞いた職人たちは、どうしたものかと顔をひきつらせた。
「太守さま。その制限というのをもう少し噛み砕いて話してやらねば、職人どもも判断つきかねましょう」
上座側の隅に座った雪斎がそう口にしたので、義元は頷いて制限について説明してやることにした。
「まず、家に戻れるのは盆や正月だけになる。但し、家族の不幸など遭った場合には、相談のうえ暇をあたえよう」
これを聞いて職人たちの表情は幾分和らいだ。
「ただ、囲われた塀のなかでずっと暮らすことになろう。理由はの、それほどに大事な秘密だからじゃ。無論、そなたたちにはその苦労に見合うだけの禄を与えるし、女が抱きたい美味い飯が食いたいといった欲にも応えよう」
そう聞くと職人たちの何人かは、目に欲の光を灯らせた。それに雪斎・義元・小姓の3人は、素早く目を走らせてその者達の顔を覚えておく。もし欲に目がくらんで裏切るとすれば、そういった者達だからである。
「恐れながら、太守様。わたくしどもは一体何を作ればよいのでしょう?」
そう一番前に並んでいる職人が質問してくるが、これは仕込み。質問したのは、前々から奇天烈船の模型などを作らせていた職人である。
「うむ、よくぞ聞いた!儂がその方らに作らせるは、日ノ本初の大船。日ノ本一の大船よ。これがあれば、とつ国にさえ航海できよう!」
「「おおッ!」」
さらに素早く目を走らせ、この説明に目を輝かせた者達の顔も覚えておく。こちらはヤル気のある者達。職人魂あふれる者達であろう。
「日ノ本一とは…」
「いや、太守様は文殊菩薩の知恵持つお方、不可能なことなど言い出すまい」
ざわざわと私語が出始めた所で義元は立ちあがった。
「そなたらも言われて直ぐでは、判断つきかねるであろう。よくよく思案しての。進退はそこの雪斎に告げるが良い」
そう言って出て行く義元を、職人たちはまたドミノ平伏で見送った。
しかもその命は太守様直々のお声がかり。
職人どもからすれば大変に名誉な事であり、来るだけでも旅費分の褒美は頂けるとあって、職人でない武士や商人までもが駿府に集まってしまった。
これに困った義元は駿府の町の商工組合にその選別を任せ、職にあぶれている武士は常備兵として雇い入れた。図らずも戦力の増強になったのである。
それからしばらく選考に時が懸り、ほかの町からの職人を戻してくださいといった嘆願に対処していると、ようやく駿遠エリート職人集団の選別が完了した。
その内訳は、主には船大工に宮大工といった木で物を作る大工衆。鉄で刀や鍋などを作る鍛冶金物衆。竹などを使って細かな物を作る細工衆。その他に紙作り衆・機織り衆・塗り物衆が揃った。
そうした者達が、今川館の主殿ぎゅうぎゅうに集められた。
「太守さま、おなぁりぃ~~」
しかし小姓の声に平伏しようとするも、鮨詰状態で平伏できぬ。そこで困った職人たちは前に座る者の背に手をついて頭をさげ、一応の体裁を整えるといった有り様であった。
そんな職人たちの様子に入ってきた義元は微笑み、歩きながら扇子をふって声をかける。
「よいよい、苦しゅうない。みな顔をあげよ」
そして上座に着座すると、まず宣言した。
「只今より、その方らは全て儂の直臣と致す」
突然の出世に恐れ入った職人たちはどうしていいのか分からず、とりあえず平伏しようと再びドミノ平伏。
「なれど、儂の直臣となったからには、知った秘密は生涯口に出来ぬ。家に戻ること家族に会う事も制限される。それが嫌じゃと申す者は、今すぐこの場を立ち去るが良い」
するとそれを聞いた職人たちは、どうしたものかと顔をひきつらせた。
「太守さま。その制限というのをもう少し噛み砕いて話してやらねば、職人どもも判断つきかねましょう」
上座側の隅に座った雪斎がそう口にしたので、義元は頷いて制限について説明してやることにした。
「まず、家に戻れるのは盆や正月だけになる。但し、家族の不幸など遭った場合には、相談のうえ暇をあたえよう」
これを聞いて職人たちの表情は幾分和らいだ。
「ただ、囲われた塀のなかでずっと暮らすことになろう。理由はの、それほどに大事な秘密だからじゃ。無論、そなたたちにはその苦労に見合うだけの禄を与えるし、女が抱きたい美味い飯が食いたいといった欲にも応えよう」
そう聞くと職人たちの何人かは、目に欲の光を灯らせた。それに雪斎・義元・小姓の3人は、素早く目を走らせてその者達の顔を覚えておく。もし欲に目がくらんで裏切るとすれば、そういった者達だからである。
「恐れながら、太守様。わたくしどもは一体何を作ればよいのでしょう?」
そう一番前に並んでいる職人が質問してくるが、これは仕込み。質問したのは、前々から奇天烈船の模型などを作らせていた職人である。
「うむ、よくぞ聞いた!儂がその方らに作らせるは、日ノ本初の大船。日ノ本一の大船よ。これがあれば、とつ国にさえ航海できよう!」
「「おおッ!」」
さらに素早く目を走らせ、この説明に目を輝かせた者達の顔も覚えておく。こちらはヤル気のある者達。職人魂あふれる者達であろう。
「日ノ本一とは…」
「いや、太守様は文殊菩薩の知恵持つお方、不可能なことなど言い出すまい」
ざわざわと私語が出始めた所で義元は立ちあがった。
「そなたらも言われて直ぐでは、判断つきかねるであろう。よくよく思案しての。進退はそこの雪斎に告げるが良い」
そう言って出て行く義元を、職人たちはまたドミノ平伏で見送った。
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