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71.情報開示
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ミックさんに連れて行かれたのはレストランで入店すると店内はお昼時で混雑していた。
「いらっしゃい!あらミック今日は若様と…そのお嬢ちゃんは?」
元気な声の主はキッチンに立つ華やかな美人だ。
「おぅアリッサ!若とこのお嬢ちゃんの食事を頼む1卓空いてるか?」
「奥が空いているよ」
ミックさんは手を引いたまま空いている席に向かい、ミハイルさんと私を座れせ向かいに座る。するとすぐにアリッサさんがお水を持って来てくれて
「若様…そのお嬢ちゃんは身内のご令嬢?」
「アリッサ聞いてくれ!やっと若が嫁を娶るんだ。この嬢ちゃんさ!」
するとアリッサさんは顔を顰めて…
「いくら若様とはいえ駄目よ、こんな幼気なお嬢ちゃんに手を出したら犯罪よ!見損なったわ!」
『あははは…やっぱりそう来ましたね』
ミハイルさんと顔を合わせて苦笑い。これからどこに行ってもこの誤解から始まるんだろうなぁ…
「アリッサ。彼女は小柄で幼く感じるが成人している。勘違いしないでくれ」
「・・・はぁ⁈どう見ても13歳くらいだよ。お嬢ちゃん本当?成人してると言えと若様に強要されていない⁈」
「アリッサ!俺を犯罪者扱いするな」
特殊趣味を疑われ不機嫌になるミハイルさんに苦笑いし
「幼く見えますが18歳です。私が生まれ育った国は体が小さい人が多く、私は女性の標準体型なんです」
驚いた顔をして固まるアリッサさん。
「アリッサ。彼女はお腹が空いている。いつものを頼む。あぁぁ…彼女は食が細いから量は半分にしてくれ」
動揺を隠さないアリッサさんはフラフラしながらキッチンへ戻って行った。
「やっぱり私は子供にしか見えない様ですね。ミハイルさん思いっきり犯罪者扱いだし」
「シュナイダー領はゴラスから来た女性が多いからみんな大きいんだ。ハルが幼く見えるのは仕方ない」
食事が運ばれるまでミックさんが色々聞いてくるが、全てミハイルさんが答えてくれる。私が答えるとうっかり異世界人っ言っちゃいそうだからありがたい。すると他のテーブルから船員だろうか体格のいい男性がテーブルに来てミハイルさんに話しかける
「若様。珍しく女性を連れてるんですね!親戚のお嬢ちゃんですか?」
すると何故かミックさんが自慢げに
「おい!このお嬢は子供じゃないぜ!お前ら女性レディーに失礼だぞ。このお嬢は若の婚約者だ」
「おぉ!本当ですか若様!お~ぃ!皆!若様が婚約者をお連れだ!今日は祝杯を上げよう!」
店内は一気にお祝いムードに変わり気が付くと昼間からエールを頼み酒盛りが始まっている。そして知らぬ間に私たちにテーブルにもお酒が…ミックさんとミハイルさんは楽しいそうにエールを飲み話している。一応私の前にもワイン?果実酒?甘い香りのお酒が置かれた。
「はるちゃん飲めないなら若に飲んでもらいな」
「ハル。飲まなくていいから置いておけ」
でも折角出してもらったし一口飲んだ。ラズベリーの様に甘酸っぱくて美味しい。でも度数が高そうだから2口でやめておいた。しかし…
「ハル飲んだのか⁈」
「うん!折角出してもらったからね!2口だけ飲んだよ♪」
「はるちゃん2口で酔ってるよ!可愛いな」
そう私はお酒が強くない。体が熱くなってきて今服を脱ぎたい衝動と戦っている。するとミハイルさんが口に手を当てて横を向いてしまった。
「お嬢ちゃん。もう飲んだら駄目よ。はい!お水飲んで。そして食事をしっかり食べな。空腹時に飲んだら酔うに決まっているよ。はい!若様何やってんの!早くお嬢ちゃんのお世話して」
アリッサさんが食事をテーブルに並べてくれた。食事は魚介類のクリームスープ。チャウダー的な?とシーフードサラダとパンとチキンのソテーだ。
「これで半人前?多すぎ~」
「あぁ…ハル完全酔っているな…愛らし過ぎて俺は辛い…」
目の前の食事は余裕で1人前以上はある。前に座るミックさんは凄い量の食事を凄い勢いで食べだし、ミハイルさんは横で私のチキンを切ってくれている。
「若…はるちゃんにマジ惚れだなぁ」
気が付くと店内の客の注目を浴びている。少し酔いが覚めてきて
「ミハイルさん皆見ています…」
「こら!そんなに注目するとハルが食べれ無いだろう!皆も早く食事をとり仕事に戻れ!」
男たちはわいわい騒ぎながら仕事に向かった。
「ミハイルさんお酒飲んで皆仕事大丈夫なんですかね⁈」
「彼らからしたらあの位は水の様なもんだよ」
そういうミハイルさんもあんなにエールを飲んでいたのに全然酔っていない。殆どの人が店を出ていき店内は静かになった。するとひと段落した様でアリッサさんが自分のお昼を持ってテーブルに来て空いている席に座った。
私はまだ食べていてアリッサさんと一緒に食べる。アリッサさんはアビー母様と雰囲気が似ている。豪快で面倒見が良そうな姉さん的人物だ。
「ハルちゃんは話してみると成人しているのが分かるよ。しっかりしているね」
アリッサさんの言葉になぜかミハイルさんが嬉しそうだ。
「若様。領主様や奥様はお許しになっているの⁈」
「あぁ…勿論だ」
「という事は私達領民も祝福しないとね。っでいつ式をするの?」
あぁ…そこは複雑なので聞かないで欲しかったなぁ…ミハイルさん!上手く躱して下さい。
「貴族特有の事情があって婚約期間が長くなると思う。暖かく見守って欲しい」
『おぉぉ…』流石ミハイルさん上手く切り抜け心の中で拍手を送る。
「ハルちゃん。ここシュナイダー公爵領は領主様がいい人で領民は家族みたいなもんなの。若様をよろしく頼むね」
「えっと…はぃ…」
胸を張って「はい!」と言えないのが心苦しい。私の心情を察したミハイルさんがテーブルの下で手を繋いでくれ温かい手に泣きそうになる。
思わず見つめ合うと…ミックさんが
「はぁ…独りもんの俺には二人は目の毒だ」
「ミックも早くつき合わせでいい人見つけろ」
「俺はまだいいわ」
とミックさんは何故かアリッサさんを見ている。
見られているアリッサさんも意識している?もしかして…
でも…アリッサさんの左手にはブレスレットがあるという事は既婚者か婚約中⁈
「そうだアリッサ。ヴェルディアの申請は通りそうか?」
「今回も多分却下されそう。あと確認できていないのはヴェルディアだけなの。それが分かればこれからの事も決めれるのに…」
「??」
私一人分からなくて疑問符を頭に付けているとアリッサさんが
「私は5年前にゴラスから嫁いで船乗りと結婚したの。夫は優しい人で幸せだったわ。それが3年前に夫が乗船していた船が嵐で転覆し行方不明に… 転覆したと思われる海域はヴェルディアで情報開示を申請しているんだけど通らなくて、宙ぶらりんの状態なの。亡くなっているのが分かれば身の振り方を決めれるのに」
「ごめんなさい。辛い話をさせて…」
「いいのよ。辛かった時期は過ぎたから。残った者は辛くても生きて行かないとね」
「残った者…」
脳裏に元の世界の叔母と友達を思い出し涙が出た。それに気づいたミハイルさんが優しく抱きしめる。
ミックさんは”ヒュー!”と口笛を吹きからかった。
彼が何が言おうとした時に店の扉が開き誰かが駆け込んできた。
「おぃ!こんな所で油売っていたのか!もう直ぐ王家の船が入船する。親父さんが探していたぞ!」
「やべっ!もぅ7時か⁉︎俺行くわ!」
「あぁ…」「あぃよ!」「いってらっしゃい」
「「「!」」」
フリーズする皆さん。誰?時を止めたのは⁈
「はるちゃんの”いってらっしゃい”はいいなぁ…仕事頑張れるわ」
「ミック急いでいるんだろ!」
ミックさんは慌てて出て行き私達も行く事にした。
アリッサさんにお礼を言うと
「ハルちゃん。若様をお願いね」
「はい」
アリッサさんの店を後にし港から街の方へ戻る。さっきまで停泊していた大きな船は出港していた。
あと少ししたらヴェルディアに向かう王家の船が入港する。王家の馬車みたいに金ピカなんだろうか⁈
店を出てずっと黙っていたミハイルさんがぽつりと話し出した。
「ハルに頼みたい事がある」
「私が出来る事なら」
「反対にハルしかできない」
「?」
一瞬身構えたが内容を聞いて即答する。
内容は…ヴェルディアに船舶の遭難に関する情報開示を、ジャン新王にお願いして欲しいと言う事だった。
各国を繋ぐのは船しか無い。そうすると必ず悪天候で座礁や衝突、沈没が起こる。そこで各国が協定を結び自国の海域で起きた事故は責任を持つ事が定められた。
そして救助者は治療後1か月以内に帰国させ、ご遺体は墨と特徴を記録し埋葬する決まり。この世界ではDNAも指紋、歯の治療痕など身元を判別する術がない。だから船員は必ず体のどこかに墨を入れる。身元証明になる墨は人と被らない様に多種類あり、妻や子供の名を入れたりするらしい。
基本国が開示請求をすれば情報提示され死亡確認がすぐ行われ、妻は自国に帰るかブレスレットを教会に返還し新たな伴侶と婚姻する事になる。
しかし前王の時代はこの情報開示を色んな理由を付けヴェルディアは拒んできた。シュナイダー領の港町ではヴェルディア海域で遭難した妻たちが開示を何年も待っている。アリッサさんもそうだ。
アリッサさんの夫はミックさんの兄貴分で、ミックさんに仕事を教えミックさんは慕っていた。遭難後はミックさんが献身的にアリッサさんを支えて来たそうだ。
「ミックはアリッサに特別な感情を持っているから付き合えに参加しない。しかしミックはこの港の責任者の嫡男で婚姻し家を継がないといけないが、アリッサの想いがあるから付き合わせを渋っているんだ」
2人の視線の意味はやっぱり想い合っているんだ。
「ジャン新王に代わり新体制になる。勿論レイシャルとして今回の訪問でローランド殿下が情報開示を改めて願うが、ジャン陛下を助けたハルが頼めば開示してもらえるだろう。我が領で開示を待っている女性を解放してやりたいんだ」
開示されれば残念だけどアリッサさんの旦那さんの死亡が確定するが、アリッサさんは前に進むことが出来るんだ。勿論同じ境遇にある女性も救える。
「分かりました。殿下にお願いしてジャン陛下とお時間いただくようにし交渉してみます」
初めは謝罪を受けるがために2日もかけてヴェルディアに行くのが凄く嫌だったけど、でも今はアリッサさん達の役に立てるなら是非行きたい。
気が付くと街に戻っていてテリーさんが馬を連れて待っていた。
「?」
意味が分からず見ていたらミハイルさんが騎乗し馬上から手を差し伸べてくる。意味が分からないけど手を出すと馬上まで一気に引き上げられた。
「街ぶらに馬ですか?」
「いや別の場所に向かう。少し時間が押しているから少し急ぐ。舌を噛まない様に喋らないでくれ」
意味が分からないけど頷くとミハイルさんは私の腰を引き寄せ馬を走らせた。街を離れてどんどん山道を上げって行く。どのくらい上がっただろう。
私たちの後ろにはテリーさんをはじめ3人の騎士さんが付いてくる。
やっと馬が止まった。周りを見ると…
「わぁ!キレイ!」
そこは街と港を一望できる広場だった。少し日が傾きだし海がキラキラして綺麗だ。
『あ!あの大きな船は今日乗る王家の船かなぁ⁈』
異国情緒漂う街も日に照らされさっきの街と表情を変えている。ミハイルさんは馬を降りて私を下ろしてくれ馬をテリーさんに預けた。
騎士さん達は後方に下がり距離を取り護衛する。
広場の端にベンチが1台置かれていてそこに座り景色をみていたら
「ここは夕日が綺麗で俺の好きな場所なんだ。愛するハルと一緒に見たいと前々から思っていた」
「ありがとうございます。とても綺麗で私も好きです」
ミハイルさんは私をぐっと引き寄せ抱きしめる。ミハイルさんの体温は高めで少し肌寒くなってたけど温かい。
私の事をずっと見つめているミハイルさん。不意にミハイルさんの美しいお顔が近づいて来た。
『あっ!キスされる』
でも嫌でない自分に気付く。昨日と今日ずっと一緒にいて今更だけどミハイルさんの為人を知った。領民がミハイルさんを慕っているのが分かったし、私の事を本当に大切に思ってくれているのも…
自分の答えが少し見えた様な気がした。
「へ?」
しかしミハイルさんが口付けたのは額だった。拍子抜けしてミハイルさんを見ると…
「本当はその可愛い唇にしたかった。しかし今ハルが許してくれて口付けたら俺は自分を止める事が出来ない。きっとハルを攫って何処かに閉じ込めてしまう。しかしハルにはヴェルディアに行く役目があるだろ⁈だから今は耐える。俺との事をヴェルディアで考えて帰って来たら返事が欲しい」
「わかりました」
暫くの間言葉も無く2人で景色を見ていた。ミハイルさんが無口だからじゃない。言葉は要らないって感じ。
「くしゅん!」
風を遮る物も無く冷えて来てくしゃみが出た。すると直ぐテリーさんがショールを持って来てくれた。お礼を言うとミハイルさんがぐるぐる巻きにしてそのまま抱きしめた。
「あったかい…」
心も体も温まって…ずっとこうして居たいなぁ…
“ごぉ~ん”鐘の音が鳴った8時半だ。そろそろ王都からローランド殿下達が来るはず。溜息を吐いたミハイルさんは
「ハルを行かせたくない」
基本無口なミハイルさんだけど自分の気持を素直に伝えてくれる。そういう意味では多分私の方が無口だ。申し訳なさそうにテリーさんが帰りを促して来た。ミハイルさんは私に抱き付いたままだ。
テリーさん達が見てて恥ずかしいけど自分からミハイルさん頬に口付けて帰りを促した。テリーさん達の温かい視線受けながら港へ戻る。
来た道を急いで下り港に着くとミックさんが走って来る。
「若。良かった!お願いがあります。荷の受取で貴族が揉めていて我々の話を聞いてくれない。若!仲裁してほしい」
ミハイルさんは懐中時計を見て少し考えてたが、テリーさんに殿下達が着くまで私の護衛を言い付けミックさんと行ってしまった。
日が落ち始め段々暗くなって来た。殿下達はまだ来そうにないよ… どうしていいか分からず困っていたらテリーさんが何処かに誘導する。
着いて行くとアリッサさんの店前のベンチだった。騎士さん達と雑談していたら馬車行列が港に入って来た。そうすると途端に港は騒がしくなり出した。
「いらっしゃい!あらミック今日は若様と…そのお嬢ちゃんは?」
元気な声の主はキッチンに立つ華やかな美人だ。
「おぅアリッサ!若とこのお嬢ちゃんの食事を頼む1卓空いてるか?」
「奥が空いているよ」
ミックさんは手を引いたまま空いている席に向かい、ミハイルさんと私を座れせ向かいに座る。するとすぐにアリッサさんがお水を持って来てくれて
「若様…そのお嬢ちゃんは身内のご令嬢?」
「アリッサ聞いてくれ!やっと若が嫁を娶るんだ。この嬢ちゃんさ!」
するとアリッサさんは顔を顰めて…
「いくら若様とはいえ駄目よ、こんな幼気なお嬢ちゃんに手を出したら犯罪よ!見損なったわ!」
『あははは…やっぱりそう来ましたね』
ミハイルさんと顔を合わせて苦笑い。これからどこに行ってもこの誤解から始まるんだろうなぁ…
「アリッサ。彼女は小柄で幼く感じるが成人している。勘違いしないでくれ」
「・・・はぁ⁈どう見ても13歳くらいだよ。お嬢ちゃん本当?成人してると言えと若様に強要されていない⁈」
「アリッサ!俺を犯罪者扱いするな」
特殊趣味を疑われ不機嫌になるミハイルさんに苦笑いし
「幼く見えますが18歳です。私が生まれ育った国は体が小さい人が多く、私は女性の標準体型なんです」
驚いた顔をして固まるアリッサさん。
「アリッサ。彼女はお腹が空いている。いつものを頼む。あぁぁ…彼女は食が細いから量は半分にしてくれ」
動揺を隠さないアリッサさんはフラフラしながらキッチンへ戻って行った。
「やっぱり私は子供にしか見えない様ですね。ミハイルさん思いっきり犯罪者扱いだし」
「シュナイダー領はゴラスから来た女性が多いからみんな大きいんだ。ハルが幼く見えるのは仕方ない」
食事が運ばれるまでミックさんが色々聞いてくるが、全てミハイルさんが答えてくれる。私が答えるとうっかり異世界人っ言っちゃいそうだからありがたい。すると他のテーブルから船員だろうか体格のいい男性がテーブルに来てミハイルさんに話しかける
「若様。珍しく女性を連れてるんですね!親戚のお嬢ちゃんですか?」
すると何故かミックさんが自慢げに
「おい!このお嬢は子供じゃないぜ!お前ら女性レディーに失礼だぞ。このお嬢は若の婚約者だ」
「おぉ!本当ですか若様!お~ぃ!皆!若様が婚約者をお連れだ!今日は祝杯を上げよう!」
店内は一気にお祝いムードに変わり気が付くと昼間からエールを頼み酒盛りが始まっている。そして知らぬ間に私たちにテーブルにもお酒が…ミックさんとミハイルさんは楽しいそうにエールを飲み話している。一応私の前にもワイン?果実酒?甘い香りのお酒が置かれた。
「はるちゃん飲めないなら若に飲んでもらいな」
「ハル。飲まなくていいから置いておけ」
でも折角出してもらったし一口飲んだ。ラズベリーの様に甘酸っぱくて美味しい。でも度数が高そうだから2口でやめておいた。しかし…
「ハル飲んだのか⁈」
「うん!折角出してもらったからね!2口だけ飲んだよ♪」
「はるちゃん2口で酔ってるよ!可愛いな」
そう私はお酒が強くない。体が熱くなってきて今服を脱ぎたい衝動と戦っている。するとミハイルさんが口に手を当てて横を向いてしまった。
「お嬢ちゃん。もう飲んだら駄目よ。はい!お水飲んで。そして食事をしっかり食べな。空腹時に飲んだら酔うに決まっているよ。はい!若様何やってんの!早くお嬢ちゃんのお世話して」
アリッサさんが食事をテーブルに並べてくれた。食事は魚介類のクリームスープ。チャウダー的な?とシーフードサラダとパンとチキンのソテーだ。
「これで半人前?多すぎ~」
「あぁ…ハル完全酔っているな…愛らし過ぎて俺は辛い…」
目の前の食事は余裕で1人前以上はある。前に座るミックさんは凄い量の食事を凄い勢いで食べだし、ミハイルさんは横で私のチキンを切ってくれている。
「若…はるちゃんにマジ惚れだなぁ」
気が付くと店内の客の注目を浴びている。少し酔いが覚めてきて
「ミハイルさん皆見ています…」
「こら!そんなに注目するとハルが食べれ無いだろう!皆も早く食事をとり仕事に戻れ!」
男たちはわいわい騒ぎながら仕事に向かった。
「ミハイルさんお酒飲んで皆仕事大丈夫なんですかね⁈」
「彼らからしたらあの位は水の様なもんだよ」
そういうミハイルさんもあんなにエールを飲んでいたのに全然酔っていない。殆どの人が店を出ていき店内は静かになった。するとひと段落した様でアリッサさんが自分のお昼を持ってテーブルに来て空いている席に座った。
私はまだ食べていてアリッサさんと一緒に食べる。アリッサさんはアビー母様と雰囲気が似ている。豪快で面倒見が良そうな姉さん的人物だ。
「ハルちゃんは話してみると成人しているのが分かるよ。しっかりしているね」
アリッサさんの言葉になぜかミハイルさんが嬉しそうだ。
「若様。領主様や奥様はお許しになっているの⁈」
「あぁ…勿論だ」
「という事は私達領民も祝福しないとね。っでいつ式をするの?」
あぁ…そこは複雑なので聞かないで欲しかったなぁ…ミハイルさん!上手く躱して下さい。
「貴族特有の事情があって婚約期間が長くなると思う。暖かく見守って欲しい」
『おぉぉ…』流石ミハイルさん上手く切り抜け心の中で拍手を送る。
「ハルちゃん。ここシュナイダー公爵領は領主様がいい人で領民は家族みたいなもんなの。若様をよろしく頼むね」
「えっと…はぃ…」
胸を張って「はい!」と言えないのが心苦しい。私の心情を察したミハイルさんがテーブルの下で手を繋いでくれ温かい手に泣きそうになる。
思わず見つめ合うと…ミックさんが
「はぁ…独りもんの俺には二人は目の毒だ」
「ミックも早くつき合わせでいい人見つけろ」
「俺はまだいいわ」
とミックさんは何故かアリッサさんを見ている。
見られているアリッサさんも意識している?もしかして…
でも…アリッサさんの左手にはブレスレットがあるという事は既婚者か婚約中⁈
「そうだアリッサ。ヴェルディアの申請は通りそうか?」
「今回も多分却下されそう。あと確認できていないのはヴェルディアだけなの。それが分かればこれからの事も決めれるのに…」
「??」
私一人分からなくて疑問符を頭に付けているとアリッサさんが
「私は5年前にゴラスから嫁いで船乗りと結婚したの。夫は優しい人で幸せだったわ。それが3年前に夫が乗船していた船が嵐で転覆し行方不明に… 転覆したと思われる海域はヴェルディアで情報開示を申請しているんだけど通らなくて、宙ぶらりんの状態なの。亡くなっているのが分かれば身の振り方を決めれるのに」
「ごめんなさい。辛い話をさせて…」
「いいのよ。辛かった時期は過ぎたから。残った者は辛くても生きて行かないとね」
「残った者…」
脳裏に元の世界の叔母と友達を思い出し涙が出た。それに気づいたミハイルさんが優しく抱きしめる。
ミックさんは”ヒュー!”と口笛を吹きからかった。
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「やべっ!もぅ7時か⁉︎俺行くわ!」
「あぁ…」「あぃよ!」「いってらっしゃい」
「「「!」」」
フリーズする皆さん。誰?時を止めたのは⁈
「はるちゃんの”いってらっしゃい”はいいなぁ…仕事頑張れるわ」
「ミック急いでいるんだろ!」
ミックさんは慌てて出て行き私達も行く事にした。
アリッサさんにお礼を言うと
「ハルちゃん。若様をお願いね」
「はい」
アリッサさんの店を後にし港から街の方へ戻る。さっきまで停泊していた大きな船は出港していた。
あと少ししたらヴェルディアに向かう王家の船が入港する。王家の馬車みたいに金ピカなんだろうか⁈
店を出てずっと黙っていたミハイルさんがぽつりと話し出した。
「ハルに頼みたい事がある」
「私が出来る事なら」
「反対にハルしかできない」
「?」
一瞬身構えたが内容を聞いて即答する。
内容は…ヴェルディアに船舶の遭難に関する情報開示を、ジャン新王にお願いして欲しいと言う事だった。
各国を繋ぐのは船しか無い。そうすると必ず悪天候で座礁や衝突、沈没が起こる。そこで各国が協定を結び自国の海域で起きた事故は責任を持つ事が定められた。
そして救助者は治療後1か月以内に帰国させ、ご遺体は墨と特徴を記録し埋葬する決まり。この世界ではDNAも指紋、歯の治療痕など身元を判別する術がない。だから船員は必ず体のどこかに墨を入れる。身元証明になる墨は人と被らない様に多種類あり、妻や子供の名を入れたりするらしい。
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しかし前王の時代はこの情報開示を色んな理由を付けヴェルディアは拒んできた。シュナイダー領の港町ではヴェルディア海域で遭難した妻たちが開示を何年も待っている。アリッサさんもそうだ。
アリッサさんの夫はミックさんの兄貴分で、ミックさんに仕事を教えミックさんは慕っていた。遭難後はミックさんが献身的にアリッサさんを支えて来たそうだ。
「ミックはアリッサに特別な感情を持っているから付き合えに参加しない。しかしミックはこの港の責任者の嫡男で婚姻し家を継がないといけないが、アリッサの想いがあるから付き合わせを渋っているんだ」
2人の視線の意味はやっぱり想い合っているんだ。
「ジャン新王に代わり新体制になる。勿論レイシャルとして今回の訪問でローランド殿下が情報開示を改めて願うが、ジャン陛下を助けたハルが頼めば開示してもらえるだろう。我が領で開示を待っている女性を解放してやりたいんだ」
開示されれば残念だけどアリッサさんの旦那さんの死亡が確定するが、アリッサさんは前に進むことが出来るんだ。勿論同じ境遇にある女性も救える。
「分かりました。殿下にお願いしてジャン陛下とお時間いただくようにし交渉してみます」
初めは謝罪を受けるがために2日もかけてヴェルディアに行くのが凄く嫌だったけど、でも今はアリッサさん達の役に立てるなら是非行きたい。
気が付くと街に戻っていてテリーさんが馬を連れて待っていた。
「?」
意味が分からず見ていたらミハイルさんが騎乗し馬上から手を差し伸べてくる。意味が分からないけど手を出すと馬上まで一気に引き上げられた。
「街ぶらに馬ですか?」
「いや別の場所に向かう。少し時間が押しているから少し急ぐ。舌を噛まない様に喋らないでくれ」
意味が分からないけど頷くとミハイルさんは私の腰を引き寄せ馬を走らせた。街を離れてどんどん山道を上げって行く。どのくらい上がっただろう。
私たちの後ろにはテリーさんをはじめ3人の騎士さんが付いてくる。
やっと馬が止まった。周りを見ると…
「わぁ!キレイ!」
そこは街と港を一望できる広場だった。少し日が傾きだし海がキラキラして綺麗だ。
『あ!あの大きな船は今日乗る王家の船かなぁ⁈』
異国情緒漂う街も日に照らされさっきの街と表情を変えている。ミハイルさんは馬を降りて私を下ろしてくれ馬をテリーさんに預けた。
騎士さん達は後方に下がり距離を取り護衛する。
広場の端にベンチが1台置かれていてそこに座り景色をみていたら
「ここは夕日が綺麗で俺の好きな場所なんだ。愛するハルと一緒に見たいと前々から思っていた」
「ありがとうございます。とても綺麗で私も好きです」
ミハイルさんは私をぐっと引き寄せ抱きしめる。ミハイルさんの体温は高めで少し肌寒くなってたけど温かい。
私の事をずっと見つめているミハイルさん。不意にミハイルさんの美しいお顔が近づいて来た。
『あっ!キスされる』
でも嫌でない自分に気付く。昨日と今日ずっと一緒にいて今更だけどミハイルさんの為人を知った。領民がミハイルさんを慕っているのが分かったし、私の事を本当に大切に思ってくれているのも…
自分の答えが少し見えた様な気がした。
「へ?」
しかしミハイルさんが口付けたのは額だった。拍子抜けしてミハイルさんを見ると…
「本当はその可愛い唇にしたかった。しかし今ハルが許してくれて口付けたら俺は自分を止める事が出来ない。きっとハルを攫って何処かに閉じ込めてしまう。しかしハルにはヴェルディアに行く役目があるだろ⁈だから今は耐える。俺との事をヴェルディアで考えて帰って来たら返事が欲しい」
「わかりました」
暫くの間言葉も無く2人で景色を見ていた。ミハイルさんが無口だからじゃない。言葉は要らないって感じ。
「くしゅん!」
風を遮る物も無く冷えて来てくしゃみが出た。すると直ぐテリーさんがショールを持って来てくれた。お礼を言うとミハイルさんがぐるぐる巻きにしてそのまま抱きしめた。
「あったかい…」
心も体も温まって…ずっとこうして居たいなぁ…
“ごぉ~ん”鐘の音が鳴った8時半だ。そろそろ王都からローランド殿下達が来るはず。溜息を吐いたミハイルさんは
「ハルを行かせたくない」
基本無口なミハイルさんだけど自分の気持を素直に伝えてくれる。そういう意味では多分私の方が無口だ。申し訳なさそうにテリーさんが帰りを促して来た。ミハイルさんは私に抱き付いたままだ。
テリーさん達が見てて恥ずかしいけど自分からミハイルさん頬に口付けて帰りを促した。テリーさん達の温かい視線受けながら港へ戻る。
来た道を急いで下り港に着くとミックさんが走って来る。
「若。良かった!お願いがあります。荷の受取で貴族が揉めていて我々の話を聞いてくれない。若!仲裁してほしい」
ミハイルさんは懐中時計を見て少し考えてたが、テリーさんに殿下達が着くまで私の護衛を言い付けミックさんと行ってしまった。
日が落ち始め段々暗くなって来た。殿下達はまだ来そうにないよ… どうしていいか分からず困っていたらテリーさんが何処かに誘導する。
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グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
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