時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは

文字の大きさ
73 / 137

73.明け方の散歩

しおりを挟む
「気持ちいい…」

甲板に出て夜が明ける海を見ている。遠くが明るくなりオレンジ色と濃紺のコントラストがキレイな空。まだ少し星も見える。

出港前にひと悶着あり心労から熱を出し丸2日寝込んだ。やっと昨晩熱も下がり動けるまでになった。ずっと部屋だったので気分転換に船内をウロウロしていたら甲板に出た。早朝で誰にも合わなかったが、もし会っていたら速攻で騎士さんに連絡が行き部屋に連れ戻され、絶賛過保護中のアレックスさんに怒られるだろう。

「もうすぐヴェルディアか…予定より遅れているらしいから、着いた早々予定が詰まっているって… 嫌だなぁ…それより部屋までどうやって帰ろう⁈」

そう、意気揚々と散策したのはいいが部屋の場所が分からない。船内の通路は狭く似通った景色ですっかり迷子だ。
帰りもって侍女さんか従僕さんを捕まえてこっそり案内してもらおう。そろそろ夜明けだけだから誰か起きてくるだろう。そんな事を考えながらぼんやり海を見ていたら…

「春香?」
『げっ!見つかった』

振返ると部屋着の上にガウンを纏ったローランド殿下が立っていた。出来るだけ平然を装い

「おはようございます。いい朝ですね。お散歩ですか?」
「おはよう。胸騒ぎがしてなぜかここが気になって来てみたら…春香お付きの者は?」
「えっと…」

殿下の問いに答えれず汗が滲み出る。すると眉を顰めた殿下は

「いくら王家の船の中とはいえ、何があるか分からない。春香は自分の事を平民だと思っているが、私が求婚した時点で王家の者と同じ扱いになる。春香に付いている侍女や護衛の騎士に咎めが行くと思わなかったのか⁈」
「!!」

殿下に窘めたれハッとする。何も考えず行動する事で皆に迷惑をかけるんだと反省。でもそんな簡単に平民感覚は抜けないよ。

「ごめんなさい。ずっと部屋だったから外の空気が吸いたくて…早朝だし侍女さんや騎士さんに悪いと思って」
「春香が謙虚のは重々分かっているが彼らは仕事なのだ。プライドを持って職務に付いている。頼らない方が彼らに悪いぞ」
「はぃ…」

殿下に怒られてテンションダダ下がりで俯いていると温かくなる。顔を上げると殿下が自分のガウンをかけてくれた。

「熱が下がったとはいえ朝は冷える。またぶり返すといけない」
「でも殿下が…」
「私はそんなに軟では無いよ」

そう言って抱きしめて額に口付けた。

「あの…お願いがあります」
「春香のおねだりは何でも聞こう」
「お世話してくれている皆さんにバレない様に部屋に戻りたいのですが…」
「ならば私が送ろう」

殿下に案内してもらい自室の前まで来た時に異変に気付く。部屋の前が騒がしくアレックスさんの声が目立つ。

『あっちゃ…間に合わなかったよ』

「気付いたのは何時だ!」
「あの…アレク⁈…私はここです」

みんな一斉に振り返り驚いて後ずさりしたら殿下に抱き留められた。

「春香!無事か!殿下と一緒だったのか⁈」
「ごめんなさい。外の風に当たりたくて一人で散歩していました。船の中だから安全だと思って… そしたら完全に迷子になり殿下が見つけてくれました」

皆安堵したようだがアレックスさんはまだ険しい顔をしている。絶対まだ怒っているよ。だってレベル5だよ。

「春香は早朝だから皆に迷惑をかけない様にと思った様だ。悪気はないのだ。これからは皆に頼る様に言い聞かせてある」
「アレク…私が悪いの!皆さんを責めないで…」
「おや?いつから春香はアレクの事を愛称呼びする様になったんだい?」
「えっと…」

アレックスさんはレベル0になり柔らかく微笑み、殿下は微笑んでいるが目が笑っていない。この状況から誰か助けて… するとメリージェーンさんが来てくれて

「皆さん。ヴェルディア到着が近づいています。そろそろご準備された方が…それに春香様は病み上がりです。いつもでこの寒い廊下に立たせておくつもりですか?」
「「!!」」

メリージェーンのお陰で解散になり部屋に戻る事が出来た。部屋に戻るとメリージェーンさんに気を使わない様にここでも注意を受け、侍女さんが早朝から湯浴を促される。朝食もやっと元の量を食べれるようになって来た。それでも少ない様で周りに心配される。
侍女さんに手伝ってもらい丈は踝までだがプリンセスラインの若葉色のドレスを着て部屋で待っていると殿下が部屋に来た。

「春香。準備はいいかい?もう港が見えて来たよ。間もなく到着する。あぁ…そのドレスはよく似合う。温暖なレイシャル王国に比べヴェルディアは寒い。コートと帽子、手袋を用意させた。着用したら乗船口にメリージェーン嬢とジョシュとおいで」
「はい」

殿下が持ってきたくれたコート等を身に着け準備万端。騎士服の上からロングコートは羽織ったジョシュさんとメリージェーンさんはかっこいい。制服フェチでは無かったが騎士服は所属によって違うけどどれもかっこいい。というか着る人がかっこいいから当たり前なのだ。

ジョシュさんにエスコートされ乗車口に着いた。殿下はこれまた煌びやかな正装をしていて福眼だ。
タラップから下を見るとハチミツ壺を持っていない大きい熊さんが…

「殿下!ジャン陛下が!私目がおかしくなってます?」
「いや、春香が来るから陛下自らお出迎えだ。他の国の王族が来てもそんな事はしないだろう。それだけ春香に感謝しているという事だ」
「恐れ多いです。侍女さん達に紛れて別で出ていいですか⁈」
「春香…公式の場だ。今日は我慢しなさい」
「はぁ…い」

殿下のエスコートで船を降りジャン陛下の前まで行き先ずはローランド殿下がご挨拶される。

『大きい…』

ジャン陛下御一行が来た時に皆さん大きいと思ったけど、出迎えてくれた皆さん陛下には負けず劣らず大きい!2m近くあり巨人の国に迷い込んだ様だ。 
そんな事を考えていたら殿下の挨拶が終わった様で、ジャン陛下が目の前に来て手を取り口付ける。
陛下は少し痩せた様だ。レイシャルから戻り怒涛の日々だったんだろう

「我が戴冠式に参加下さり感謝する。滞在中はゆっくりしてくれ。春香嬢、病はもういいのか⁈」
「ご心配おかけしました。まだ長くは無理ですが生活に支障の無い程に」
「良かった…我々の事情に巻き込んでしまって気にしていたのだ」
「でもヴェルディアのお役に立てて良かったです


殿下は優しくハグして耳元で

「ヴェルディアの膿みは出し切った。貴女を傷付けた者達は粛清する。詳しくは後ほど」
「はい」

形式的な挨拶も終わりヴェルディア城に移動する。
やはりヴェルディアは寒い。高校の修学旅行で行った冬の北海道位寒い。しかし馬車の中は暖かくコートを脱ぎ身軽になる。ここでミハイルさんから頼まれた、海難事故の情報開示を求める話をする。

「あぁ…シュナイダー公爵からも陳情が上がり、正式に要請するつもりだ。春香か願えば開示してくれるだろう」
「陛下とお話をする機会が有ったら、私から直接話をしても問題ありませんか?」
「恐らく春香と陛下は公式な場で一対一で会う事は無いだろう。親しい知人として会食やお茶の席にならあり得る。だとしたら雑談の一環で話しても差支えはない」

良かった。ミハイルさんのお願いはクリアできそうだ。安心していたら殿下が隣に移動して来て手を握り

「春香。陛下の戴冠式には各国の王族や代表が集まる。それ故に戴冠式参列だけでは無く外交の場となる。戴冠式と晩餐会の出席は外せん。今回のヴェルディアの王の交代はレイシャルつまり春香が絡んでいるのは各国が認識している。どの国でも王が代わる時は色々事情を孕み円満な国は少ない。そんな中でも今回のヴェルディア特異だ。血が流れず対外的にも平和に解決している」
「いい事じゃーないですか!揉めると結局民が巻き込まれるから」

殿下は眉尻を下げて困った顔をして私の頬に口付け

「そうでは無いのだ。各国の代表は春香の知識に興味を持っている。春香が異世界人であるこっも知れ渡っているから尚更だ。レイシャル王国次期王である私が求婚しているので、口説いて来る命知らずはいないと思うが、親しくなろうと近づく者が出て来るだろう。他国の問題に関与しない方がいい。今回のヴェルディアは期せずして結果を出し恩を売りレイシャルに有益を齎したが、必ずそうなるとは限らない。不幸を齎らす事もあるのだ」
「外交や政治は私には分からないので、他国の方々と余り接点を持たない方が良いって事ですね!」

殿下は嬉しそうに微笑み。

「春香は理解が早くて助かるよ。でも私の想いは中々理解してくれないのは何故だろうね⁈」

殿下は腰に手を廻し引き寄せる。

「ナンノコトカサッパリ…」
「今から分かるまで愛を囁こうか⁈」
「えっと…ご遠慮したいかなぁ…」

着いた港からヴェルディア城は1時間半位かかるらしく長い防戦が続く事となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで

恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」  男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。  ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。  それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。  クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。  そんなルドに振り回されるクリス。  こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。 ※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます ※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません ※一部変更&数話追加してます(11/24現在) ※※小説家になろうで完結まで掲載 改稿して投稿していきます

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人
恋愛
 私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!  素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。  しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!  ……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?  私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!! ※【エブリスタ】でも公開しています。  【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...