最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

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第一章 リュータ、アールガルズに立つ

第四話 リュータと小鬼と豚

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 ナイフショックから明けて翌日。
 棍2号を手に今日もゴブリンを狩ろうと奥へ進むと、なんとそこには二匹のゴブリンがいた。

「これはヤバい」

 俺のレベルも3になり、いよいよもって無敵モードかと思わせておいての、これである。

 タイマンなら先手を取れるこっちが有利。
 でも相手がツーマンセルだと、一匹は先手を打てるが、二匹目には気付かれる。
 そうなるとリーチの差を活かせないから反撃を食らうかもしれない。
 未だにゴブリンの2発で死ぬ身の上で、余計なリスクは負いたくない。

「これはダメだ。放っておこう」

 策を練って、明日挑もう。

 いや、待てよ?
 どうせ倒さなくても生活できるんだし、よく考えたらほっときゃいいんだ。

「倒すのは、勘弁してやろう!!」

 折角来たんだし、在庫はあるけど食材探して帰るかな。


***

 翌日、ゴブリンが3匹に増えていました。

「これは超ヤバい」

 二匹でも勘弁して欲しいのに、三匹。
 そして、今より増えたらもう絶対に対処できないのは、俺でも分かる。
 どうやら昨日冒険しなかったツケが回ってきたようだ。
 なので、前々から考えていた緊急策を用いて対処しようかと思うのです。

「いつ考えてたかって?前の世界でだよ、テヘ♪」

 何と戦う予定だったかは秘密だから聞かないでね。


 まず穴を掘る。それも木の根がびっしりな所をだ。
 すると木の根が網目状になった落とし穴もどきが出来る。
 これで1匹を無効化。
 そして先手で1匹を倒す。
 もう1匹をタイマンでなんとか頑張って撃破する。

「これしかない。いやいや、なんて完璧な作戦だろうか」

 言っていて虚しくなりました。


 準備も万端、早速仕掛けようとゴブリンの後ろから忍び寄るものの、小突く目前で振り向いたゴブリン一匹と目が合った。
 しかしこんな所で人間を見たのが不思議だったのか、首をひねっているそいつを無視して、その隣のヤツの頭を叩きつつ火を2連打。
 一瞬ヒヤっとしたけど、俺を見つけたのが間抜けなヤツで良かったよ。
 そしてレベルが上がって2発で倒せるようになったから、ゴブリン一匹倒すだけなら余裕だ。

 そのままついでにもう一匹と思って横薙ぎに棍を振るうも、叫びながら回避するゴブリン。
 叫び声にもう1匹も気付いて腕を振るってくる。

「う、うひっ!?こ、こわっ!!」

 ゴブリンたちの攻撃を避けて反転、一気に坂を下る。
 下っていって、落とし穴の前に陣取りヤツらがハマるのを待つ。そしてコブリン1匹の足は見事に落とし穴に落ちた。

「よっしゃ!!バーカバーカ!!お前らなんて、所詮は雑魚なんだよう!!怖くないもん!!」

 ハマった1匹を思いっきりバカにしてから、最初に目が合ったヤツとタイマンをする。
 そしてリーチの差を活かして瞬殺し、残る一匹も穴から足が出なくて難儀している間に一撃。
 結果的には作戦が大大、大成功して、逃走中に木に当たって出来たかすり傷1つで無事勝利した。

 完全勝利である。

「いや、泣いてないっスヨ?」

 頬に伝わってくる汗、そう、汗です!!を拭いながら思ったよ。

 こ、怖かった・・・。


***


 翌日、ゴブリン狩りは毎日するものだと思い知ったので森へと進む。
 しかしおなじみの場所にゴブリンはいなかった。

「もしかして、もう少し奥にいるのかな?」

 森の奥へと進んでみよう。

 うーん、しかしあれだ。
 狩りって臭い消したり音消したりしないとまずいんじゃないだろうか。
 腰の高さまである長い草を足でかき分け進みながらそんな事を思っていたら、自分の足音がなくなった。草をかき分ける音も、踏みしめる音もしない。

「まじかー」

 ステータスを確認する。

「MP減ってるし、まじだなー」

 ついでに腕の臭いも嗅いでみる。無臭である。風呂に何日も入っていない男の独特なあの香りがしない。
 今発動したのは、まさかの消臭、消音の魔法だった。

 そこでこれは完全な隠匿魔法なのかと思い、試しに棍で近くの木を叩くと、カツンと音がした。
 これはダメみたいだ。
 あくまで移動時にそっと移動しているとかの音を消すだけみたい。これも『生活魔法』なのか。

「どの辺が生活なのかいまいち分からないけど、便利だから良し!!」

 これがあれば小動物とか狩れそうだよなー。
 それが生活に関わってくるかと言われると、ちょっと疑問。生きるって意味なら全部が該当しそうだし、さすがにそこまで万能じゃないよね。
 しかしそれに、ここ、小動物とかいないもんなー。
 だからたぶん違う目的の魔法を勝手に流用してるんだろうなー。
 あー、しかし、肉食いたいね、肉。

「あれ?そう言えばこの辺は草、生えてないな」

 いつの間にか草エリアを脱出していたようで、今度は木がまばらに生えた地帯に出てきた。

「よく見たらこっちの道は草生えてないし・・・」

 おいおい、なんですぐ左側には草のない場所があるんですかね。
 しかも目を凝らせば、辛うじて海も見える。
 つまり、こっちから行けば草エリアに入らずにここまで来れるわけだ。

「はー、ここ、この辺から切り取ったように草が生えてないな」

 不思議すぎるぜ、異世界。
 他にも新たな発見とかあるかもしれんなー。

「こういう予想外って、何か冒険してるって感じするな!!」

 よっしゃ、もっと俺の知らない事を探してみよう!!


***

 ぶもも。
 ぶ、ぶも、ぶもももも。ふごふご。


 周りをよく観察しながら移動してたら、変な鳴き声が聞こえてきましたよ、奥さん。

 うん、確かにここらには小動物はいないね。
 でもあそこほら、大動物なら見えるよ。明らかに食用じゃないヤツですけどね。

「ぶも、ぶももも」

 そこに見えるはオークである。豚である。
 しかも何やら親近感が沸く顔つきである。
 細い目、上ずった鼻。丸い顔。

 そっと隠れて様子を見る。

「見間違う事なんてないな。あれはオークだ」

 これはあれか。
 近くの洞窟にあるオーク集落を潰して、さらわれた娘さんを助け出すフラグか?
 これは興奮するな。
 洞窟があるかは知らんけど。

「そもそも人に遭った事すらないんだけど、本当に人、いるんだよね?」

 人里から少し離れた場所にって聞いてたけど、その少しってどんだけー?

 なんて、色々考えていたら、突然オークがこちらを見た。
 ぶごおおおおお、と叫んだかと思ったらいきなりの突進。
 慌てて避けるも、かすっただけでぶっ飛ぶ俺。
 ステータスを確認したら、HPが3になってる。

「やばい、死ぬ。ちびったし!!」

 オークはそのまま木にぶつかり、ぶごぶごと鼻を鳴らしつつ俺を探す。
 そしてこちらを見る。もう無理、はい死んだ。
 あまりの展開に頭の中が真っ白になった。もう俺は空気、そう俺は空気。
 俺なんてここにはいない。だからやめてもう無理。

 そう思って丸くなり震えていたら、いつまでもオークが来ない。
 なんでだと思い見てみると、ぶごぶごと鼻を鳴らし続けるオーク。
 なんだか俺を見失っているご様子。

 『鑑定』様、『鑑定』様。Lv2になったあなた様のお力で教えてください。


 オーク
 -縄張り意識の強い魔獣。高い身体能力を持つ。音と臭いで敵を探す。目がほとんど見えない。


 これはあれか。まさか消臭消音が効いているのか。
 おいおい、『生活魔法』、強すぎだろ。

 しかしそれならなんで最初はバレたのかと『ステータス』を見れば、なるほど納得。
 発動にMPを2しか消費しない代わりに10分しか持続しないらしい。『ステータス』には[消臭][消音]の項目が追加されていて、更に隣には[9分21秒]と表示されている。今、[9分20秒]と数字が変わり、徐々にカウントが下がっていっている。

 これ、タイマーまで完備しているのか。
 便利すぎっしょ。
 これに気づいた今はもう、いきなり魔法の効果が切れて見つかる心配もないな。

 とりあえず落としていた棍を手に持つ。
 オークは物音一つせずに立ち上がった俺には全く気が付いていない。
 さて、どうしよう。

「倒せるのか?」

 逃げ帰るのも手だと思う。

 ならばよし、逃げよう。


***

「あー、怖かった」

 洗濯してシャワー浴びて、やっと震えが止まったわ。

 しかしあのブタメン、どうしてくれようか。
 俺に恥をかかせたことを、すごく後悔させたい。
 ストレートに、ぶっころころりんしたいよー。

 これはあれか。
 以前ゴブリンの際に失敗した、「拙者、忍者でござる作戦」を復活させる時か?
 そっと音もなく忍び寄って、不意打ちで一撃必殺。

「あれ?なんだか行けそうじゃん。なら、今から乗り込もう!くっそー!待ってろブタメン!!」

 復讐するは我にありってね!!
 首を洗って待ってろよ!!

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