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第一章
1-7 喫茶メシに夢中
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梢賢に連れて来られた駅前の喫茶店はレトロな造りの純喫茶で、永達のようについ最近まで中学生だった者達には敷居が高そうな場所だった。
チンピラが学生を三人も連れて店に入る様は他の客の目を引いており、三人は早くも居心地が悪くなっていた。
「なんでも好きなもの頼んでや。お兄さんが奢ったる!」
ふんぞり返って向いに座った梢賢の様子に、蕾生と鈴心は顔を見合わせた後メニューに目を光らせる。
臆する訳にはいかない。なめられたらこっちの負けだ、と言う呼吸で高額メニューのコンボを決めた。
「じゃあ、ナポリタンとカツカレー」
「この期間限定のレジェンドフルーツパフェお願いします」
デコボココンビの要求に敵は震える手で冷水を一口飲んだ後、努めて落ち着いて頷いた。
「遠慮のない子達やねえ……ハル坊は?」
「あ、アイスコーヒーで」
「助かったー」
思わず漏れた声は隣の永にはもちろん、蕾生と鈴心にも聞こえていた。
注文を終えた後、動揺を隠そうとして梢賢は蕾生が背から降ろして立てかけたものを指差す。
「ところでライオンくんは剣道部なん?」
「ん?」
「それ、竹刀やろ?」
「違う。木刀だ」
蕾生が短く答えると、梢賢は目を丸くして感心していた。
「へええ、本格的に習てんやねえ」
「ま、まあな」
蕾生が持っているのは白藍牙と言う、元は銀騎詮充郎が萱獅子刀のレプリカとして作ったものだ。それを孫の銀騎皓矢が高校生の蕾生が持っても不自然でないように木刀に作りかえた。
皓矢の目論見通りの設定を信じてもらえたので、蕾生はほっと胸を撫で下ろした。永と鈴心もつられて安堵の溜息を落とす。
そうしているうちに注文したナポリタンが運ばれた。蕾生はフォークを握ったが、それを制止するように梢賢が切り出した。
「さて、腹割って話そか!君らは今回はどこまで進んでんのん?」
「なんだ、知らねえのか」
「訳知り顔で出て来たのに掴んでないんですか?」
一旦おあずけをくらってしまった蕾生が不機嫌に返すと、つられて鈴心も本来のキツい口調で喋る。
「もう敬語やめられた!都会の子はキツいわあ」
つっこみのつもりなのか、梢賢は大袈裟に頭を抱えて見せた。
見かねた永がフォローを入れる。
「いや、気を使ってくれてるんですよね?ライくんのことで」
「あ、あー、まあ、そらなあ。こっちからネタバレする訳にいかんやん?」
梢賢がそのフォローを有り難く噛み締めていると、続いてカツカレーも運ばれてくる。
蕾生は視線をカツにロックオンしたまま短く返した。
「その事なら心配ない」
「はい。ライは既に私達の呪いの詳細まで知っています」
鈴心の付け足しに、梢賢はかなり驚いて見せた。
「へえ?それなのにその落ち着きなん?すごいなあ、ライオンくん」
「いや、鵺には一度なったから」
もう我慢できない蕾生はフォークをカツめがけて振り下ろした。
「うん?」
蕾生が食い気に負けておざなりになった返答を理解できずに梢賢が首を捻ると、隣で永が苦笑しながら説明した。
「まあ、銀騎と例によって揉めて──鵺化したんだけど、戻れたんです」
「えええええっ!!」
梢賢が意図せずに大袈裟にとったリアクションは、パフェを運んできた店員を怯ませた。
===============================
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チンピラが学生を三人も連れて店に入る様は他の客の目を引いており、三人は早くも居心地が悪くなっていた。
「なんでも好きなもの頼んでや。お兄さんが奢ったる!」
ふんぞり返って向いに座った梢賢の様子に、蕾生と鈴心は顔を見合わせた後メニューに目を光らせる。
臆する訳にはいかない。なめられたらこっちの負けだ、と言う呼吸で高額メニューのコンボを決めた。
「じゃあ、ナポリタンとカツカレー」
「この期間限定のレジェンドフルーツパフェお願いします」
デコボココンビの要求に敵は震える手で冷水を一口飲んだ後、努めて落ち着いて頷いた。
「遠慮のない子達やねえ……ハル坊は?」
「あ、アイスコーヒーで」
「助かったー」
思わず漏れた声は隣の永にはもちろん、蕾生と鈴心にも聞こえていた。
注文を終えた後、動揺を隠そうとして梢賢は蕾生が背から降ろして立てかけたものを指差す。
「ところでライオンくんは剣道部なん?」
「ん?」
「それ、竹刀やろ?」
「違う。木刀だ」
蕾生が短く答えると、梢賢は目を丸くして感心していた。
「へええ、本格的に習てんやねえ」
「ま、まあな」
蕾生が持っているのは白藍牙と言う、元は銀騎詮充郎が萱獅子刀のレプリカとして作ったものだ。それを孫の銀騎皓矢が高校生の蕾生が持っても不自然でないように木刀に作りかえた。
皓矢の目論見通りの設定を信じてもらえたので、蕾生はほっと胸を撫で下ろした。永と鈴心もつられて安堵の溜息を落とす。
そうしているうちに注文したナポリタンが運ばれた。蕾生はフォークを握ったが、それを制止するように梢賢が切り出した。
「さて、腹割って話そか!君らは今回はどこまで進んでんのん?」
「なんだ、知らねえのか」
「訳知り顔で出て来たのに掴んでないんですか?」
一旦おあずけをくらってしまった蕾生が不機嫌に返すと、つられて鈴心も本来のキツい口調で喋る。
「もう敬語やめられた!都会の子はキツいわあ」
つっこみのつもりなのか、梢賢は大袈裟に頭を抱えて見せた。
見かねた永がフォローを入れる。
「いや、気を使ってくれてるんですよね?ライくんのことで」
「あ、あー、まあ、そらなあ。こっちからネタバレする訳にいかんやん?」
梢賢がそのフォローを有り難く噛み締めていると、続いてカツカレーも運ばれてくる。
蕾生は視線をカツにロックオンしたまま短く返した。
「その事なら心配ない」
「はい。ライは既に私達の呪いの詳細まで知っています」
鈴心の付け足しに、梢賢はかなり驚いて見せた。
「へえ?それなのにその落ち着きなん?すごいなあ、ライオンくん」
「いや、鵺には一度なったから」
もう我慢できない蕾生はフォークをカツめがけて振り下ろした。
「うん?」
蕾生が食い気に負けておざなりになった返答を理解できずに梢賢が首を捻ると、隣で永が苦笑しながら説明した。
「まあ、銀騎と例によって揉めて──鵺化したんだけど、戻れたんです」
「えええええっ!!」
梢賢が意図せずに大袈裟にとったリアクションは、パフェを運んできた店員を怯ませた。
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