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第一章
1-10 雨辺の信仰
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「隣村なのには理由があんねん。どうも里の誰かが雨辺を支援してるらしい」
梢賢としてはこの話題の肝はここだった。三人とも続きを知りたがるに違いないと思っていたのだが、永と鈴心の反応はその上をいった。
「ははあ、なるほど。と言うことは麓紫村にも鵺を信仰する人達がいる──つまり麓紫村は一枚岩じゃないんだね」
「麓紫村は雨都の全面的な味方という訳ではなくなっているんですね?」
そういう展開になるには、梢賢の予定では三ラリーほど後のはずだったのに。
「え、ちょっと、なんでそこまでわかるのん?怖いっ、この子達怖いわ!」
「楓から以前に少し聞いていたので、それと今の話とを照らし合わせただけです」
鈴心が涼しい顔で答えたが、永は更に思案し始めていた。
「あの時楓サンが言ってたのはこの事なのかもしれないな」
「里に限界が来てるってやつか?」
蕾生の言葉を材料に、さらに永は考察する。
「そうなると麓紫村そのものも気になるな。いくら雨都が持ち込んだからとは言え、鵺の存在を信じるだなんて。もしかして元からそういう素地があるんじゃない?」
「ええー……、鋭すぎるわあ……。オレ今どん引きしてんねんけど」
一を聞いて十を知るとは正にこの事か。梢賢は薄ら寒さすら覚えていた。
「やはりそうなんですか?」
「結論からいくと頷くしかないわあ。ただ、その辺の説明は里に行って、実際に見てもらった方がわかりやすいかなあ。──あ、わかりやすいんちゃうかなあ」
動揺し過ぎた梢賢は関西弁を忘れるような始末で、その様子に永は思わず苦笑した。
「わかった。じゃあ、その放っておけない親子って話をどうぞ」
長過ぎた前置きからついに本題に入れることで、梢賢は再び元気を取り戻して話し始める。
「よくぞ聞いてくれはった!オレが気にかけてるのは雨辺菫さんっていう綺麗なシングルマザーでなあ。双子の子どもがおんねん。藍ちゃんと葵くん言うてな、十歳なんやけど、これまた可愛らしくてなあ」
形容がとまらない梢賢に、永はにこやかに釘を刺した。
「うん、個人的感情はいいから」
「んん──まあ、その菫さんがな、ちょーっと極端な人やねん。ちょーっとだけな」
「極端に鵺を信仰してる?」
「ちょーっとだけやねん」
話を進めない梢賢に、永はにこやかにイラついた。
「それで?」
「それで、ちょーっと子どもに辛く当たるというかぁ……、過保護が過ぎるというかぁ……」
よくぞ聞いてくれたと言った割に、梢賢の言葉は歯切れが悪い。どう言えば悪く思われずに済むかを懸命に考えているようだった。
埒があかない永は思い切って言葉を選ばずに言う。
「なるほど。親が変な宗教にハマって不安定になり、家庭崩壊しかけてるんだね?」
「いや、そんな大それた話では!──ないというかぁ……」
梢賢の歯切れの悪さはその親子に対する好意の表れだろう。良い状態ではないのはわかっているのに、そうであって欲しくないという希望を持っているからである。
そういう感情を読み取った永は少し表現を緩めて言ってやった。
「わかったわかった。行き過ぎた鵺信仰をなんとかしたいってことでしょ?」
「せやねん!でもオレはそこまで鵺に詳しい訳じゃないから、専門家に頼んだっちゅーわけやん」
「専門家がいるのか?」
「やだもう、とぼけちゃって!君らのことでしょうが!」
「ええー……?」
近所のおばさんの様な口調で蕾生に笑いかけた梢賢だったが、当の本人には物凄い勢いで引かれた。
===============================
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梢賢としてはこの話題の肝はここだった。三人とも続きを知りたがるに違いないと思っていたのだが、永と鈴心の反応はその上をいった。
「ははあ、なるほど。と言うことは麓紫村にも鵺を信仰する人達がいる──つまり麓紫村は一枚岩じゃないんだね」
「麓紫村は雨都の全面的な味方という訳ではなくなっているんですね?」
そういう展開になるには、梢賢の予定では三ラリーほど後のはずだったのに。
「え、ちょっと、なんでそこまでわかるのん?怖いっ、この子達怖いわ!」
「楓から以前に少し聞いていたので、それと今の話とを照らし合わせただけです」
鈴心が涼しい顔で答えたが、永は更に思案し始めていた。
「あの時楓サンが言ってたのはこの事なのかもしれないな」
「里に限界が来てるってやつか?」
蕾生の言葉を材料に、さらに永は考察する。
「そうなると麓紫村そのものも気になるな。いくら雨都が持ち込んだからとは言え、鵺の存在を信じるだなんて。もしかして元からそういう素地があるんじゃない?」
「ええー……、鋭すぎるわあ……。オレ今どん引きしてんねんけど」
一を聞いて十を知るとは正にこの事か。梢賢は薄ら寒さすら覚えていた。
「やはりそうなんですか?」
「結論からいくと頷くしかないわあ。ただ、その辺の説明は里に行って、実際に見てもらった方がわかりやすいかなあ。──あ、わかりやすいんちゃうかなあ」
動揺し過ぎた梢賢は関西弁を忘れるような始末で、その様子に永は思わず苦笑した。
「わかった。じゃあ、その放っておけない親子って話をどうぞ」
長過ぎた前置きからついに本題に入れることで、梢賢は再び元気を取り戻して話し始める。
「よくぞ聞いてくれはった!オレが気にかけてるのは雨辺菫さんっていう綺麗なシングルマザーでなあ。双子の子どもがおんねん。藍ちゃんと葵くん言うてな、十歳なんやけど、これまた可愛らしくてなあ」
形容がとまらない梢賢に、永はにこやかに釘を刺した。
「うん、個人的感情はいいから」
「んん──まあ、その菫さんがな、ちょーっと極端な人やねん。ちょーっとだけな」
「極端に鵺を信仰してる?」
「ちょーっとだけやねん」
話を進めない梢賢に、永はにこやかにイラついた。
「それで?」
「それで、ちょーっと子どもに辛く当たるというかぁ……、過保護が過ぎるというかぁ……」
よくぞ聞いてくれたと言った割に、梢賢の言葉は歯切れが悪い。どう言えば悪く思われずに済むかを懸命に考えているようだった。
埒があかない永は思い切って言葉を選ばずに言う。
「なるほど。親が変な宗教にハマって不安定になり、家庭崩壊しかけてるんだね?」
「いや、そんな大それた話では!──ないというかぁ……」
梢賢の歯切れの悪さはその親子に対する好意の表れだろう。良い状態ではないのはわかっているのに、そうであって欲しくないという希望を持っているからである。
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「わかったわかった。行き過ぎた鵺信仰をなんとかしたいってことでしょ?」
「せやねん!でもオレはそこまで鵺に詳しい訳じゃないから、専門家に頼んだっちゅーわけやん」
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「やだもう、とぼけちゃって!君らのことでしょうが!」
「ええー……?」
近所のおばさんの様な口調で蕾生に笑いかけた梢賢だったが、当の本人には物凄い勢いで引かれた。
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