大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

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2章

はじまり

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『___エ、カナリエ、起きて…』

深い深い闇に落ちてきた声が、僕を引き上げようとする。

『ダメだ…こんなところで負けちゃ』

だんだん鮮明さを得てきたその声は泣いていた。

(なんだろ…すごく、悲しい)

まるで僕の中にあるがその声に共鳴するかのように、僕のからだは僕に悲しいと訴えかけた。

『失ってしまう、全てを』

(なんで?)

『君が…僕の____だから』

あぁ、一番大事な部分が聞こえなかった。
すごく大事な気がするのに。

『諦めないで、君自身を。僕の力を全部託した君なら大丈夫』

(あなたは…だれ?)

『…僕は、いつでも君の中にいるよ』

どういうことだろう。の中の

あぁ、意識が浮上する。知らなきゃいけない、何かがある気がするのに。


『僕はもう、君を起こすために力を使ってしまった。きっともう出てこれない…絶対に忘れないで、あなたの大事な人のことを』

最後に見えたのは、が寄り添うあの朱色だった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「はっ…」

さっきのは、夢?それにしては鮮明だった。あれは何?そんなことが思考を埋めつくして混乱する。

(そんなことより、ここは?)

ハッとして周りを見渡せば、ここは知らない部屋のベッドの上だった。レオス様たちもいない。
おそらくあの襲撃で僕も一緒に連れ去られたのだろう。

(それと…なんだろう、この感じ)

からだに違和感があった。怪我をしたとか呪われたとかそんな上辺のものではなく、もっと深く、自分自身に変化があった感覚。
敵の工作を警戒すべきところなのだろうけど、僕はこの変化の正体に確信めいたものを感じていた。

(これは…さっきのだ)

僕の奥深くにいる誰かが、僕自身に与えてくれた

そしておそらくあの人は、僕の血に宿った初代リュードリア夫人の魔力そのもの。

(ずっと…見守ってくれてたのか)

僕らリュードリアの行く末を。そしてきっと、この力で僕たちが不幸にならないように、今僕に与えてくれたを隠し持っていた。

そして僕の直感が間違ってなければ、このは魔術そのものだ。
試しに魔術を発現させようと意識を向けてみると、確かに知らない術があった。

けれどこれは、おそらく完成されていない。

(…僕がやってやる)

初代リュードリア夫人が完成させられなかった魔術。これを完成させることは、彼に似ているとされる僕にしかできないだろう。

恐怖で手が震えた。
どこかも分からない、味方がどれだけいるかも分からない場所で、僕はあまりに大きな壁を乗り越えようとしている。

(レオス様…)

脳裏に映ったのは、僕が恐怖を感じた時そばに居てくれた人。あの温かい手があったから僕は強くなれると思った。

(あなたがいなければ僕はこんなにも…)

会いたい、そう考えて涙が滲んだ。

そしてその瞬間僕の中の魔力が弾けて、遥か先と

「レオス様…?」

今はっきりと、僕はここに居てレオス様と繋がったんだと分かった。
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