大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

文字の大きさ
17 / 21
2章

外道の所業

しおりを挟む
(なんだか分からないけど、レオス様に僕の居場所が伝わった…?これがあの魔術の力?)

完成していないと思ったのは、発動条件が普通の魔術と違うからだったのだろうか。確実に今、僕の知らない力が働いた。

(想うことで繋がるってこと?なんか恥ずかしい!)

ひとりで頬を染めていると、部屋のドアが開いた。

「やぁカナリエ。よく眠れたかい?」
「先輩…!!ここはどこですか!」
「そんなに警戒しないでくれ。今は、何もしないから」

眉を下げて寂しそうに笑う顔に寒気がする。
第一僕は、ファーストネームで呼ばれるほどライネ先輩と親しくした覚えはない。

「僕の仲間が君を呼んでこいと言っていてね…それに、竜王の番様もここに来ているんだ。会いたいだろう?」
「シリアス様が…?!早く連れて行ってください!」

予想はしていたけど、僕だけじゃなくシリアス様まで誘拐するだなんて。番と引き離された竜がどうなるか、知っているはずなのに。

絶対にこいつらの思いどおりにはさせない、そう覚悟を決めて、にこにこと笑うライネ先輩を警戒しながら歩いた。

やがて辿り着いた部屋に、手足を縛られて座らされたシリアス様と、その目の前の豪勢な椅子に座る一人の男がいた。

「やぁ、君がカナリエ=リュードリアだね」
「シリアス様…!」
「カナリエ殿…?!おいお前!ここには私だけだとっ…!」
「ははっ、そう易々と本当のことを言うと思ったか?」

笑いながら蔑むような目をシリアス様に向ける男。

(彼は…誰だ?)

全く覚えのない、初めて見た男だ。つまり近隣国の要人ではない。

金色の髪に浅緑の瞳。そう有り触れた色ではない。どこかの国の貴族かと記憶を辿ってみたが、やはり該当する者はいなかった。

「あなたは誰ですか?なぜ僕たちを…」
「はっ!そうかそうか…もうは廃れた存在なのだなぁ、シリアスよ」
「っ…!」

意味ありげな視線を向ける男に、シリアス様は憎らしげに唇を噛む。僕は男の言葉の意味が全く分からなかった。

「私はカイン。カイン=ヴェルディアだ」
「ヴェルディア…?!そんな、ヴェルディアはもう滅んだ存在のはず!」
「へぇ、そう伝わってるんだなぁ」

かつてシェルリオン王国の隣に位置していた国・ヴェルディア。もう滅んだはずのその名を冠する家、つまり故ヴェルディア王家は、国が無くなった時に滅んだはずだ。

「お前の口から話すか?シリアス」
「シリアス様…?」
「…すみません、カナリエ殿。私のせいで、あなたは…」

力ないシリアス様の言葉に、ただ事ではない何かがあるのを察した。

「カナリエ殿、これから話すのは我が国の機密事項、王家の者しか知らない情報です…ヴェルディア滅亡の物語は、知っていますよね?」

そう言われて、話の流れについていけないながらもおずおずと頷いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【本編完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※番外編を数話、投稿予定です。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました

岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。 そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……? 「僕、犬を飼うのが夢だったんです」 『俺はおまえのペットではないからな?』 「だから今すごく嬉しいです」 『話聞いてるか? ペットではないからな?』 果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。 ※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。

目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?

キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。 目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。 そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。 どうして僕はこんな所に居るんだろう。 それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか…… コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。 【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】 反応いただけるととても喜びます! 匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(⁠^⁠^⁠)  

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

【短編】売られていくウサギさんを横取りしたのは誰ですか?<オメガバース>

cyan
BL
ウサギの獣人でΩであることから閉じ込められて育ったラフィー。 隣国の豚殿下と呼ばれる男に売られることが決まったが、その移送中にヒートを起こしてしまう。 単騎で駆けてきた正体不明のαにすれ違い様に攫われ、訳が分からないまま首筋を噛まれ番になってしまった。 口数は少ないけど優しいαに過保護に愛でられるお話。

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

処理中です...