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2章
外道の所業
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(なんだか分からないけど、レオス様に僕の居場所が伝わった…?これがあの魔術の力?)
完成していないと思ったのは、発動条件が普通の魔術と違うからだったのだろうか。確実に今、僕の知らない力が働いた。
(想うことで繋がるってこと?なんか恥ずかしい!)
ひとりで頬を染めていると、部屋のドアが開いた。
「やぁカナリエ。よく眠れたかい?」
「先輩…!!ここはどこですか!」
「そんなに警戒しないでくれ。今は、何もしないから」
眉を下げて寂しそうに笑う顔に寒気がする。
第一僕は、ファーストネームで呼ばれるほどライネ先輩と親しくした覚えはない。
「僕の仲間が君を呼んでこいと言っていてね…それに、竜王の番様もここに来ているんだ。会いたいだろう?」
「シリアス様が…?!早く連れて行ってください!」
予想はしていたけど、僕だけじゃなくシリアス様まで誘拐するだなんて。番と引き離された竜がどうなるか、知っているはずなのに。
絶対にこいつらの思いどおりにはさせない、そう覚悟を決めて、にこにこと笑うライネ先輩を警戒しながら歩いた。
やがて辿り着いた部屋に、手足を縛られて座らされたシリアス様と、その目の前の豪勢な椅子に座る一人の男がいた。
「やぁ、君がカナリエ=リュードリアだね」
「シリアス様…!」
「カナリエ殿…?!おいお前!ここには私だけだとっ…!」
「ははっ、そう易々と本当のことを言うと思ったか?」
笑いながら蔑むような目をシリアス様に向ける男。
(彼は…誰だ?)
全く覚えのない、初めて見た男だ。つまり近隣国の要人ではない。
金色の髪に浅緑の瞳。そう有り触れた色ではない。どこかの国の貴族かと記憶を辿ってみたが、やはり該当する者はいなかった。
「あなたは誰ですか?なぜ僕たちを…」
「はっ!そうかそうか…もう私たちは廃れた存在なのだなぁ、シリアスよ」
「っ…!」
意味ありげな視線を向ける男に、シリアス様は憎らしげに唇を噛む。僕は男の言葉の意味が全く分からなかった。
「私はカイン。カイン=ヴェルディアだ」
「ヴェルディア…?!そんな、ヴェルディアはもう滅んだ存在のはず!」
「へぇ、そう伝わってるんだなぁ」
かつてシェルリオン王国の隣に位置していた国・ヴェルディア。もう滅んだはずのその名を冠する家、つまり故ヴェルディア王家は、国が無くなった時に滅んだはずだ。
「お前の口から話すか?シリアス」
「シリアス様…?」
「…すみません、カナリエ殿。私のせいで、あなたは…」
力ないシリアス様の言葉に、ただ事ではない何かがあるのを察した。
「カナリエ殿、これから話すのは我が国の機密事項、王家の者しか知らない情報です…ヴェルディア滅亡の物語は、知っていますよね?」
そう言われて、話の流れについていけないながらもおずおずと頷いた。
完成していないと思ったのは、発動条件が普通の魔術と違うからだったのだろうか。確実に今、僕の知らない力が働いた。
(想うことで繋がるってこと?なんか恥ずかしい!)
ひとりで頬を染めていると、部屋のドアが開いた。
「やぁカナリエ。よく眠れたかい?」
「先輩…!!ここはどこですか!」
「そんなに警戒しないでくれ。今は、何もしないから」
眉を下げて寂しそうに笑う顔に寒気がする。
第一僕は、ファーストネームで呼ばれるほどライネ先輩と親しくした覚えはない。
「僕の仲間が君を呼んでこいと言っていてね…それに、竜王の番様もここに来ているんだ。会いたいだろう?」
「シリアス様が…?!早く連れて行ってください!」
予想はしていたけど、僕だけじゃなくシリアス様まで誘拐するだなんて。番と引き離された竜がどうなるか、知っているはずなのに。
絶対にこいつらの思いどおりにはさせない、そう覚悟を決めて、にこにこと笑うライネ先輩を警戒しながら歩いた。
やがて辿り着いた部屋に、手足を縛られて座らされたシリアス様と、その目の前の豪勢な椅子に座る一人の男がいた。
「やぁ、君がカナリエ=リュードリアだね」
「シリアス様…!」
「カナリエ殿…?!おいお前!ここには私だけだとっ…!」
「ははっ、そう易々と本当のことを言うと思ったか?」
笑いながら蔑むような目をシリアス様に向ける男。
(彼は…誰だ?)
全く覚えのない、初めて見た男だ。つまり近隣国の要人ではない。
金色の髪に浅緑の瞳。そう有り触れた色ではない。どこかの国の貴族かと記憶を辿ってみたが、やはり該当する者はいなかった。
「あなたは誰ですか?なぜ僕たちを…」
「はっ!そうかそうか…もう私たちは廃れた存在なのだなぁ、シリアスよ」
「っ…!」
意味ありげな視線を向ける男に、シリアス様は憎らしげに唇を噛む。僕は男の言葉の意味が全く分からなかった。
「私はカイン。カイン=ヴェルディアだ」
「ヴェルディア…?!そんな、ヴェルディアはもう滅んだ存在のはず!」
「へぇ、そう伝わってるんだなぁ」
かつてシェルリオン王国の隣に位置していた国・ヴェルディア。もう滅んだはずのその名を冠する家、つまり故ヴェルディア王家は、国が無くなった時に滅んだはずだ。
「お前の口から話すか?シリアス」
「シリアス様…?」
「…すみません、カナリエ殿。私のせいで、あなたは…」
力ないシリアス様の言葉に、ただ事ではない何かがあるのを察した。
「カナリエ殿、これから話すのは我が国の機密事項、王家の者しか知らない情報です…ヴェルディア滅亡の物語は、知っていますよね?」
そう言われて、話の流れについていけないながらもおずおずと頷いた。
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