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お茶会編 Re:start
10.お茶会の招待状
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フリージア夫人からの手紙を受け取った私は中を改めた後、帰宅されたオウル様に手紙を見せました。
「ジゼル、フリージア夫人と面識があったんだね」
「はい。フリージア夫人は私に令嬢としての心得を教えて下さった先生なのです」
手紙の送り主、フリージア夫人は私の師と呼べるお人です。
フリージア夫人はジェーン公爵家の娘として生まれ、西の辺境伯に嫁がれた辺境伯夫人。
西方は隣国との緊張状態が長く続いており、争いの種が絶えない土地です。
辺境伯の屋敷が襲撃されることもあるため、万が一にも人質にとられるようなことがないようフリージア夫人は王都に住んでいらっしゃいます。ただ避難しているだけではなく、フリージア夫人は国内の情勢に目を配り、国境警備から目を離せない辺境伯へ内政の情報を送ってらっしゃいます。外を辺境伯が、内をフリージア夫人が固めることで強固で磐石な辺境伯家を築いているのです。
それだけではなく、フリージア夫人は他家の令嬢に淑女になるための指南をされており、私も生徒の一人でした。
箱入りで育った方などは泣き出してしまうくらい厳しい指導でしたが、権謀術数が蔓延る世界で生き抜くために必要なことを沢山教えて頂きました。
今の私があるのもフリージア夫人の教えのおかげです。
私にとって信用出来る方の一人であり、ラピスフィール公爵家への引っ越しも事前にお伝えしておりました。
なので、私宛ての手紙が届いてもおかしくはありません。重要なのはその内容です。
「あのフリージア夫人の指導を受けていたんだね。通りで仕草が洗練されてるわけだ。それで、フリージア夫人はどうして手紙を?」
「そのことでオウル様にご相談したくて足をお運び頂きました。中をご覧下さい」
「これは──お茶会の招待状だね」
フリージア夫人からの手紙は招待状でした。
二週間後に王都にあるフリージア夫人がお住まいの屋敷でお茶会を開くとのことです。
主催者の格、参加者の顔触れ、お茶会の規模を鑑みても、私が求めていたものが揃っています。
婚約者を交換した際に、社交場への出入りはしばらく控えるとフリージア夫人にはお伝えしていたので、これは気を回して下さったのでしょう。
オウル様と共にお茶会に参加し、新たなる一歩を踏み出しなさい、と。
私にお断りする理由はありません。ありがたくご厚意に甘えさせて頂こうと思います。問題はオウルのご予定ですが──
「オウル様、私、このお茶会に参加したいと思います。それでご都合がよろしければ、一緒に行っていただけないでしょうか?」
「勿論。日取りも問題ないし、婚約者をエスコートするのは当然の務めだからね。一緒に参加しよう」
「ありがとうございます。これから忙しくなりますね。お茶会は二週間後。それまでにしっかり準備しなくては。まずはお茶会にどなたが招待されているかを絞り込んで、どのようにご挨拶するかの予測を立てなくては」
なんだか久しぶりに与えられた宿題のようで、気が引き締まります。
この二週間のうちに万全に備え、一分の隙もなく仕上げてみせましょう。
「頑張って。僕に出来ることがあったら何でも言って欲しい」
「では、オウル様の交流関係をお教え願えますか? フリージア夫人のお茶会であれば、オウル様のご友人も招待されているでしょうから、ご挨拶したいです」
「わかった。そうだね、まずは──」
オウル様の言葉を一つも取り溢さないよう耳に神経を集中させます。
とはいえ、油断出来ない一幕ではありますが、勝算は十分にあります。フリージア夫人のお茶会には何回も参加したことがありますから、雰囲気や流れはしっかり把握出来ておりますので。
──などと、この時の私は些かの気の緩みがありました。
まさか、お茶会であんなことが起こるなんて、この時の私は予想すらしていなかったのです。
「ジゼル、フリージア夫人と面識があったんだね」
「はい。フリージア夫人は私に令嬢としての心得を教えて下さった先生なのです」
手紙の送り主、フリージア夫人は私の師と呼べるお人です。
フリージア夫人はジェーン公爵家の娘として生まれ、西の辺境伯に嫁がれた辺境伯夫人。
西方は隣国との緊張状態が長く続いており、争いの種が絶えない土地です。
辺境伯の屋敷が襲撃されることもあるため、万が一にも人質にとられるようなことがないようフリージア夫人は王都に住んでいらっしゃいます。ただ避難しているだけではなく、フリージア夫人は国内の情勢に目を配り、国境警備から目を離せない辺境伯へ内政の情報を送ってらっしゃいます。外を辺境伯が、内をフリージア夫人が固めることで強固で磐石な辺境伯家を築いているのです。
それだけではなく、フリージア夫人は他家の令嬢に淑女になるための指南をされており、私も生徒の一人でした。
箱入りで育った方などは泣き出してしまうくらい厳しい指導でしたが、権謀術数が蔓延る世界で生き抜くために必要なことを沢山教えて頂きました。
今の私があるのもフリージア夫人の教えのおかげです。
私にとって信用出来る方の一人であり、ラピスフィール公爵家への引っ越しも事前にお伝えしておりました。
なので、私宛ての手紙が届いてもおかしくはありません。重要なのはその内容です。
「あのフリージア夫人の指導を受けていたんだね。通りで仕草が洗練されてるわけだ。それで、フリージア夫人はどうして手紙を?」
「そのことでオウル様にご相談したくて足をお運び頂きました。中をご覧下さい」
「これは──お茶会の招待状だね」
フリージア夫人からの手紙は招待状でした。
二週間後に王都にあるフリージア夫人がお住まいの屋敷でお茶会を開くとのことです。
主催者の格、参加者の顔触れ、お茶会の規模を鑑みても、私が求めていたものが揃っています。
婚約者を交換した際に、社交場への出入りはしばらく控えるとフリージア夫人にはお伝えしていたので、これは気を回して下さったのでしょう。
オウル様と共にお茶会に参加し、新たなる一歩を踏み出しなさい、と。
私にお断りする理由はありません。ありがたくご厚意に甘えさせて頂こうと思います。問題はオウルのご予定ですが──
「オウル様、私、このお茶会に参加したいと思います。それでご都合がよろしければ、一緒に行っていただけないでしょうか?」
「勿論。日取りも問題ないし、婚約者をエスコートするのは当然の務めだからね。一緒に参加しよう」
「ありがとうございます。これから忙しくなりますね。お茶会は二週間後。それまでにしっかり準備しなくては。まずはお茶会にどなたが招待されているかを絞り込んで、どのようにご挨拶するかの予測を立てなくては」
なんだか久しぶりに与えられた宿題のようで、気が引き締まります。
この二週間のうちに万全に備え、一分の隙もなく仕上げてみせましょう。
「頑張って。僕に出来ることがあったら何でも言って欲しい」
「では、オウル様の交流関係をお教え願えますか? フリージア夫人のお茶会であれば、オウル様のご友人も招待されているでしょうから、ご挨拶したいです」
「わかった。そうだね、まずは──」
オウル様の言葉を一つも取り溢さないよう耳に神経を集中させます。
とはいえ、油断出来ない一幕ではありますが、勝算は十分にあります。フリージア夫人のお茶会には何回も参加したことがありますから、雰囲気や流れはしっかり把握出来ておりますので。
──などと、この時の私は些かの気の緩みがありました。
まさか、お茶会であんなことが起こるなんて、この時の私は予想すらしていなかったのです。
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