闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0714話 神秘の黑影

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茫々とした林海が狂風に翻弄され、林海を波打たせるように吹き上げられ、轟音と共に山脈全体にその声が響き渡る。

林海の上空で突然破風音が響くと同時に、遠方から三つの黒影が疾走し、最後は空中に停まり下方を見回す。

ここへ戻ること数年、地形の変化により小谷の位置も若干ずれてしまい、蕭炎はその探索に時間を費やした。

視線を下方の密林にゆっくりと移動させた直後、蕭炎の目が輝き、背中の火翼を一振りすると、山々の狭間にある地帯へ猛スピードで突入した。

その後、メドゥと紫研も周囲を見回し、彼の後に続く。

やがて焉炎の姿は山頂上空に現れ、下方を見やると安堵の息を吐いた。

谷は険しい山々に囲まれた完全な孤立地で、濃い緑の木々がその存在を隠していた。

体をゆっくりと降下させながら、蕭炎は深く息を吸う。

遠く離れた距離にもかかわらず、強い薬草の香りを感じ取ることができた。

「ここは確かに宝地だな」谷を見つめる蕭炎が喜びを顔に出し、メドゥと紫研に手で合図を送ると、火翼を羽ばたかせて谷の中へ降り立った。

足元に着く寸前、突然腥い風と共に鋭い気流が襲いかかる。

眉根を寄せた蕭炎は指先で雄大な緑色の気を弾き出し、その影と激突させた。

「キィ!」

衝撃を受けた黒影が悲鳴を上げて後退ると同時に、通体漆黒に双翼を持つ魔獣であることが判明した。

魔獣は蕭炎の攻撃で追い払われても離れないまま空高く舞い上がり、脅威的な鋭い鳴き声を連発する。

「四階級の魔獣か……谷中の希少薬草に引き寄せられたのか?」

盤旋する魔獣を見上げながら、蕭炎は独りごちた。

その後頷いてその存在を無視し、谷の中へ突入した。

空を舞う魔獣がその動きを見て目を赤く染め、双翼を羽ばたかせて直線的に襲いかかる。

「退け!」

地面に足を着けると蕭炎は眉根を寄せ、袖を振り上げて強大な気を放ち、魔獣の体から羽毛が飛び散るほど打撃を与えた。

「キィ!」

重撃を受けた魔獣は驚きながらも双翼を羽ばたかせて上昇し、高い位置で円を描くように飛行を続けた。

「ゴォォ!」



煩わしい魔物を追い払った蕭炎がようやく谷間を見渡すと、その視線は突然低く唸る音と共に複数の影に包まれた。

通体碧緑で凶暴な外見を誇り、凶暴な気配を放つ風豹獣(ふうほうりゅう)が瞬時に彼を取り囲んだ。

「四階魔物の風豹獣か……空を飛べないのにこの谷間にどうやって侵入したのか。

しかもこんな数は異常だ」眉根を寄せながら周囲を見回す蕭炎が呟く。

「この小谷間、何年も来ていないのに……凶地になってしまったのか」

その時ふと空中から二つの影が降りてきた。

紫研の宝石のような目で辺りを捜し回ると、涎を垂らして笑みを浮かべる。

「うふふ、こんな小さな場所にこれだけの天材地宝があるなんて……外よりもずっと濃いエネルギーだわ」

美杜莎は冷ややかな視線を周囲の風豹獣に向けた。

眉をひそめながら低い声で命令する。

「退け!」

その清冷な喝破が圧迫力を帯びて広がると、赤い目を持つ風豹獣たちの瞳孔に一瞬の恐怖が揺れた。

苦しみの表情を見せた後、低く唸りながらゆっくりと引き下がっていった。

「四階魔物が私の圧迫力で逃げないなんて……何かおかしいぞ」美杜莎は困惑しながら退いた風豹獣を見つめた。

「斗宗級の実力なら五階でも怯むはずなのに、この風豹獣たちは一瞬だけ抵抗した」

「ここに魔物がいなかったはずだ。

何年も来ていないのに……凶地になってしまったのか」蕭炎は笑みを浮かべながら穏やかに言った。

「だが気にしない。

記憶の中の小屋があるから」

美杜莎と紫研が後に続く中、谷間を十数分進むと茅葺き小屋が視界に入った。

時間の経過を感じさせないほど無傷だった。

その小屋を見つめる蕭炎の目に複雑な感情が浮かんだ。

白い衣装の少女の姿が脳裏に蘇るが、もういないことを知っているからこそ、彼はため息をつく。

やがて平静を取り戻した蕭炎が小屋へ近づくと、谷間全体から新たな怒吼が響き渡った。

次々と風豹獣の影が現れ、茅葺き小屋を包み込むように囲んでいた。

彼らは牙を剥いて彼に向かって唸り声を上げた。



見るや、その魔物たちの動きに異変を察知した蕭炎は笑みを消し、眉根を寄せた。

谷中のこれらの獣類が狩りをしているようにではなく、まるで何者かによって飼育され監視下にあるように感じ取ったのだ。

「もしかしたらこの谷は既に他人の手に…」その念頭に浮かんだ危機感と共に眉を顰めた。

紫研は険しい表情で那些脅威的な咆哮を放つ魔物たちを見据え、鼻を鳴らして歩み出した。

宝石のような瞳が紫光を強めると同時に、一種の異質な圧力が周囲に広がり始めた。

その圧力はメデューサの直接的な実力によるものではなく、むしろ血脈と魂から湧き出るような原始的な威厳だった。

蕭炎とメデューサもその異質な気配を感じ取り、互いに目線を合わせて驚愕を隠せない。

紫研の放つその血脈と魂の圧力の下、凶暴さで溢れる魔物たちが一斉に悲鳴を上げ、尻尾を巻いて四散した。

まるで猫に追われた鼠のように怯えながら逃げ去る姿は滑稽にも程があった。

紫研は鼻を膨らませて蕭炎を見上げると、彼女なりの誇らしげな表情を見せた。

「おや?」

袖口から覗く碧緑の炎がちらりと現れた瞬間、メデューサが後ろから低い声で注意を促す。

「毒があるわ」その言葉に蕭炎は顔色を変え、小屋を見つめる視線がさらに険しくなった。

谷の主権者が変わった可能性を感じ取っているようだ。

メデューサは目を伏せながら指先で七彩のエネルギーを蠢かし、何事か備え始めた。

紫研を引き寄せる蕭炎は低い声で警告した後、小屋を見詰める。

掌に浮かんだ碧緑の炎が強力な風を生み出し、その一撃で扉が粉々になった。

中には誰もいなかったことに困惑するが、メデューサが「毒薬師だわ」と警告した瞬間、蕭炎は冷笑を浮かべた。

「現れぬならこの谷ごと破壊してやる!」

その冷たい笑い声が山壁に反射し、さらに迫力を持ちながら響き渡った。

すると遠くの岩場から黒装の人影が現れた。

全身を覆う闇のような存在は、不気味なまでの静寂を漂わせていた。



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