闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0725話 谷を出る

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山洞の中、重い息遣いがやっと静かになっていく。

炎消は額の冷汗をぬぐい、背後の岩に尻を下ろし、考え事を始めた。

先ほどの巨大な大殿——魂殿だろう。

なぜ自分がそこに入れたのかは薬老の残した霊火印のおかげだとしか言いようがない。

あの空間が崩壊したときに出た恐ろしい霊魂は魂殿の守護者で、それが支柱かどうかは分からない。

ただ炎消は自分がどれだけ強くなってもその謎めいた強敵には勝てないことを知っている。

「やはり魂殿は强者が多いな……あの霊魂の恐怖さを見れば、あの為鵡の護法よりも上だろう」炎消がつぶやくと、額を揉みながらため息をつく。

少なくとも薬老が生きていることは分かった——それが何よりだ。

「老師、待ってろよ」拳を握りしめながら立ち上がり、深呼吸する炎消の体内で奔流のように流れ込む斗気は寒さを追い払う。

山洞口に近づくと巨石を押し開き、「破!」

と叫んだ。

轟音と共に岩が崩れ、炎消は日光の中に出た。

身体を温かく包む陽の光を受けながら、全身からほっとした気分になる。

しばらく日向ぼっこをしてから炎消は谷を見渡し、巨大な紫の光の繭に視線を向けた。

先ほど霊力で感じた通り進化がまだ終わっていなかったが、実際に見るとため息が出るほど大変そうだ。

「彩鳞は?」

美杜莎の姿がないことに眉をひそめていると、光繭近くの巨石に巻物を見つけた。

炎消はそれを取り出し、読み始める。

「蛇人族が事件を起こしたらしい……彼女によれば解決したら戻ってくるはずだが、まだ終わってないのか」

そのとき炎消の顔色が変わった。

「美杜莎でさえもすぐには解決できないなら、この蛇人族は大変なことになったんだろうな」

消炎は巻物を納戒に収めたあと、一旁の光の繭を見やると、ため息混じりに首を横に振った。

「よし、しばらくお前を守ってあげよう。

今すぐ離れても気がかりだしな。

それに今は初めて斗皇に昇級したばかりで、体内的な気の流れにもまだ慣れていないんだ」

そう言いながら消炎は身を翻すと、巨岩の上に瞬時に移動し、ゆっくりと目を閉じた。

消炎が無事に出関し、斗皇の境地に到達したものの、蕭紫煙の存在を考慮して単独で去らずに山谷に留まり続けた。

紫研を看病しつつも、体内に沸き立つ新たな気の流れと相対する機会を得ていた。

谷間の時間が静かに過ぎる中、現在の谷は以前よりも活気がみなぎっていた。

その原因は、消炎が日常的に練習する際に発生する巨響によるものだった。

このように自身の実力を磨く過程で、時間は指先から流れ去った。

気づけば半月が経過し、その間ずっと動きを見せなかった光の繭に驚異的な変化が現れた。

繭表面の紋様輝きがますます濃厚になり、細かな亀裂が徐々に広がり、その隙間に紫い毫芒が滲み出していた。

この状況を見る限り、紫研が繭を脱ぐ時も近いようだ。

谷間の上空で黒衣の人影が浮遊している。

彼の両手は複雑な印結を高速に結び続け、最終的には残像すら生じるほどだった。

蕭炎は手元の翻飛する印結を見つめながら険しい表情を保ち、頬には薄い汗が滲んでいた。

この印結が気の消費量も相当なものだとことが窺えた。

ある瞬間、翻飛していた印結が突然凝固し、蕭炎は鋭く叫んだ。

「翻海印!」

その声と共に彼の手は弧を描きながら空に向かって突き出した。

掌に包まれた膨大な気流が急速に凝縮されると、碧緑色の角質層が自然と形成された。

奇妙な碧緑色の角質層が瞬時に蕭炎の印結を包み込み、その直後には手印と同じサイズの輝く光の印章が爆発的に飛び出した!

その光印章は水晶のように美しい碧緑色で、見るからに驚異的なエネルギー量を湛えていた。

飛翔する度に空間が歪むほどの圧力があり、空気すらも凹みを作り出すほどだった。

碧晶の光印章が上空を駆け抜け、最終的に空間封鎖に衝突した。

その爆発は驚異的な響きを生み出し、空間封鎖の場所から水波のような剛力が四方八方に広がった。

美杜莎が全力で作り出したこの封鎖も、蕭炎の一撃で一メートル幅の破壊範囲を作り出すことに成功した。



空洞を見上げた蕭炎はようやく深いため息を吐き出した。

この『翻海印』が帝印決の第二印であることを知り、その威力に驚かずにはいられなかった。

開山印よりも遥かに強大な力を持つのだ。

斗皇級以上の修練者でなければ習得できないという説明も納得できた。

これまで半ヶ月間、この印を修練し続けてきたが、初めて完全に発動させた瞬間だった。

まだ完成形ではないにも関わらず、その効果は想像を超えていた。

開山印の修練時に感じた帝印決の難しさを思い返すと、今回の成果もまた自然な流れのように思えた。

現在ではほぼ自在に使えるようになったが、この翻海印はまだ小成に達していない。

強敵との戦闘で有効かどうかは疑問だった。

「やはり修練を重ねる必要があるな。

もし斗宗級の相手と対峙したなら、この印は意外性のある一撃になるかもしれない」そう言いながら掌を握りしめた蕭炎が小さく笑った時、突然谷間全体が激しく震えた。

その不意の揺れに驚愕した瞬間、視線を落とすと谷の中央にある紫の光の繭から強烈な輝きが迸っていた。

『晋階成功か?』その異変を見つめる蕭炎の目は次第に喜びで充たされた。

光の強さが増すにつれ、細かい音が響き始め、繭表面の亀裂が次々と広がり始めた。

紫の光線が四方八方に飛び散ろうとするが、空間封鎖によってその動きは制限されていた。

亀裂がさらに増え続け、ある時突然大きな一塊が剥がれ落ちた。

それがきっかけとなり繭全体が爆発的に崩壊し、内部から紫の光柱が天高く伸び上がった。

その先端は空間封鎖と衝突し、激しい波紋を生んだ。

蕭炎の鋭い目で光柱の中を凝視すると、ぼんやりとした人影が確認できた。

光が薄れると同時にその姿が完全に現れた。

現れたのは裸身の美しい女性だった。

紫の輝きが体を包み、妖艶な雰囲気を醸し出していた。

長い髪は紫色のストレートで、臀部まで垂れ落ちていた。

前後に張り出した成熟した身体は、かつての幼い少女からは想像できないほどの妖しさを放ち、その可愛らしい顔にはどこか懐かしい面影が残っていた。

「これが紫研なのか?」

紫研は驚きの表情でその女性を見つめた。

あの子供のような存在からここまで成長したとは思えなかった。

まさかこんなにも魅力的な体になれるとは…

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