闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0727話 毒宗、金雁宗、慕蘭谷

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青山俊領に比べれば今日の人数は明らかに少ない。

鎮内の街道には人影がほとんどなく、四方の城門も厳重に閉ざされていた。

堅固な花崗岩で築かれた高聳する城壁の上では黒々とした人頭がうっすらと浮かび上がり、弟のささやき声が人群中を漂い回っている。

「くそっ。

これらの毒は帝国中部までどうやって侵入したんだ?前線には炎孟と皇室の防衛網があるはずだぞ」

「三大帝国が加賀帝国に合同攻勢をかけているからな。

炎孟が強くても優先的に守るわけにもいかない。

この連中は隙を見て潜り込んだんだろう」

「さてどうする?彼らの中の一人、胸に徽章をつけた奴は四品毒師だ。

そのような階級の毒師に対処できるのは五品以上の強者だけだぞ」

「あー、うちの青山鎮には血戦傭兵団の厳承が八品斗霊だ。

他の連中は大抵七品以下の実力だ。

もしも四品毒師が毒霧を撒けば相当数が即座に昏倒するだろう」

「くそっ、どうしてもなら彼らと正面から戦うしかないさ。

人数で押さえ込めば勝てるんじゃないのか?」

「だが彼らは我々が城門を開けるのを待っているんだ。

毒師の恐ろしさは一人で多数を殲滅できる点だ。

絶対的な実力差がない限り、殺すのは容易じゃないぞ」

黒々とした人頭の中心に集まっていた一団の冷厳な傭兵たちが、胸に同じ徽章を刻んだ血戦傭兵団の面々だ。

その先陣にはかつて蕭炎と対決した中年男・厳承がいた。

彼の隣にはカーゴとレインという聞き覚えのある顔ぶれも並んでいた。

全員の視線は城壁外側に佇む十数人の影に注がれていた。

その中の一人、胸に四品毒師の徽章を掲げた男を見つめながら、厳承の姪・レインが鋭い目つきで問う。

「二叔さん、どうするんですか?こんな待機だけでは解決しないでしょう。

この辺りの魔物山脈には多くの毒師が潜伏していると聞きました。

最近は小さな村が次々と滅ぼされているんです。

その凄惨な手段は彼らにしかできないんですよ」

「待つ以外にないさ。

ここは加賀帝国内だから、いずれ炎盟の強者が援軍で来るはずだよ」

厳承も深刻な表情を浮かべながら答えた。



「皆が計画を話し合っている間に、城壁下に並ぶ十数人の灰袍の人物たちにも動きがあった。

胸元に四色の鮮やかな毒ヘビの紋章をつけた老人がゆっくりと歩き出し、険しい三角形の目で城壁を見上げながら、耳障りな声を発した。

その言葉は城壁上の全ての人々の鼓膜に響き渡った。

『貴方たちには十分間ある。

自分たちで城門を開けるか、老夫が毒霧を撒いてこの街全体を滅ぼすか——愚かな行動の代償として皆殺しにするか』

声を放ち終わると、老人はゆっくりと目を閉じた。

その言葉が城壁にどれほどの騒動を呼び起こしたかなど構わずに。

十分後、老人の瞼を開いた。

依然として反応のない城壁を見つめながら、枯れた顔に残忍な笑みが浮かんだ。

「本当に城壁で守れると思ってるのか?」

と冷たい声で言い放ち、その瞬間、彼の顔面には奇妙な緑色の光が広がった。

袖を軽く振ると、濃厚な緑色の霧が一気に湧き上がってきた。

『気を包んで息を止めるんだ!』厳承は徐々に上昇する緑色の霧を見て顔色を変え、鋭い声で叫んだ。

その言葉を聞いた城壁上の傭兵たちは、体中の気力を最大限まで引き延ばし、身体全体を包み込むようにした。

「ふっはー!この程度の下等な傭兵どもが、老夫の緑色霧でさえ阻むなどと?」

灰袍老人の冷笑が響くと同時に、その背後の十人が急に体中の気力を最大限まで引き延ばし、強烈な風を生み出した。

その風は徐々に上昇する緑色の霧に向かって突き進んだ。

霧が城壁の高さに達したのは一瞬のことだった。

傭兵たちを包み込むと同時に、多くの実力の低い傭兵たちは頭痛を感じ、数分後には意識を失い倒れてしまった。

その光景を見て厳承は顔色を変え、歯を食いしばって叫んだ。

「くっ!この野郎とやるしかないだろ!仲間たち、俺と一緒に!」

その言葉に反応したのは一際の翎(りん)だけだった。

彼女は口を開こうとしたが、ため息と共に諦めた。

四品毒師という存在を戦場に放てば、主力と言っても過言ではない。

彼ら血戦傭兵団の傭兵たちが行くなら、ほぼ確実に死を迎えるだろう。

しかし行かなければ、この緑色霧は彼ら全員の気力を奪い尽くすまで続く——その場合の方がより屈辱的な死を迎えてしまう。

周囲の血戦傭兵団の仲間たちは厳承の声を聞き、顔を引き攏めながらも頷いた。

鋭利な鋼刀を握りしめる手は震えなかった。

下方の灰袍老人は城壁上の騒動を見つめ、険しい表情がさらに強まった。

「上には気の強い者以外なら、一撃で殺せる」

その瞬間、老人の袖を軽く振るとまたもや緑色の霧が噴き上がった。

城壁上の全員は絶望感に打ち沈んだ——この野郎は完全に滅ぼすつもりなのだ。

しかし二度目の霧がゆっくりと上昇するにつれ、彼らは覚悟を決めたように笑みさえ浮かべていた。

いずれにせよ死ぬのだから…

天空が急に熱了起来。

その温度の上昇と共に、濃厚な緑色の毒霧が「ぐっと」と鳴き、沸騰する油のように瞬時に消えた。

突然の出来事に両軍全員が息を吞み、互いを見合わせた。

皆が呆然と立ち尽くす中、魔物山脈方向から二つのぼやけた人影が現れた。

その速さは一呼吸で町上空に浮かび上がるほどだった。

「斗王級の強者!」

二人の姿が現れると同時に、彼らの背後に翼を広げた双翼が光り輝き、場内から驚愕の声が上がった。

その瞬間、両軍ともに不安を感じ、相手側からの援軍と誤認した。

先頭の人物は全身を緑色の炎で包み込み、その熱気は周囲に広がっていた。

その背後には、体からほのかな紫光を放つ少女が興味深げに灰袍の男を見ていた。

緑炎がゆらりと揺れ動き、やがて黒衣の青年が姿を現した。

城壁上で緊張していた厳承たちがその顔を見て驚きの声を上げた。

隣で翎(ひん)も目を丸くし、「まさか……その人だったのか!」

とつぶやいた。

「蕭盟主(しょうめいす)!」

厳承が我に返ると同時に、城壁から大きな叫びが響き渡った。

周囲の傭兵たちはまだ混乱していたが、厳承の表情から敵味方を判別し、安堵の息を吐いた。

その瞬間、下方の灰袍老者が顔色を変え、帝国の強者と悟ると同時に緑霧に身を包み森へと駆け出した。

その後ろには十人の灰袍の男たちが続く。

空を見やる蕭炎(しょうえん)は逃走する十人組を目で追ったが、その瞬間突然体震えた。

次の瞬間、驚愕の視線を浴びながらも一言残さず黒い灰燼に変化した。

十数人の殺害を終えると蕭炎は城壁へと移動し、意識を取り戻す傭兵たちを見やった。

納戒から薬品を取り出し空中に投げ、碧緑の炎で包み込むと、その香りが広がる。

周囲の灼熱な視線を無視して厳承の方へ向かい、「どうしたんだ?」

と低い声で尋ねた。



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