闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0878話 天火尊者

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蕭炎の体が透明な光の壁を突破した瞬間、その身体に異様な振動が走り抜けた。

その振動は彼の体内にある『堕落炎』と接触するとすぐに消え失せ、無事に内部空間へと侵入できた。

突入直後、視界一杯に広がっていた赤い光景が白濁した薄明かりに取って代わり、蕭炎は体勢を整えると警戒の目で周囲を見回し、中央に浮かぶ謎の骨骸へと視線を集中させた。

この空間は先ほど見た光の壁そのものでありながら、視覚的な錯覚から広く感じられていた。

彼が頭を振ると、光の外側には血色の炎蜥蜴人が数匹現れ、その強さに顔色を変えた。

彼らは既に『斗皇』級の実力で、特に先程討ち取った個体より遥かに強く、蕭炎はこの炎蜥蜴族にさらに強い存在がいる可能性を危惧した。

「くっ……この熔岩世界は表面通りではないのか」彼は歯噛みしながら低く呟いた。

光の外側の炎蜥蜴人はその位置を見つけることができず、やがて蕭炎の視線から消えていった。

最後の赤い影が溶岩に没した瞬間、彼はようやく息を吐き出した。

先ほどの戦闘で多くの敵を討ち取ったものの、消耗も相当だった。

白い空間の中で休まずに立ち上がり、慎重に骨骸へと近づいていく。

距離を縮めるにつれ、その呼びかけの気配が強くなり、蕭炎はようやく岩漿上で感じた呼び声の正体を悟った——それはこの謎の骨骸から発せていたのだ。

彼の視線は骨骸に移り変わり、ついには無形の炎へと注目した。

その炎は頭大で、体内にある『堕落炎』とは比べものにならないほど弱く、成熟体である自身の炎と比較すれば幼生期の段階だった。



当然、幼生期であろうと成熟期であろうとこの異火は異火として成形するのに極めて困難で無数の歳月を要するものだ。

見た目では雀烈(雀烈)という名の炎のようにも見えるが、実際には形体を持たない無形の炎である。

その存在期間は長くても短くとも分からないが、同じ場所に二つの同種の異火が現れるというのは奇異な光景で、蕭炎にとっては聞いたこともない出来事だった。

目を凝らして陨落心炎を見つめながら、蕭炎は深呼吸した。

幼生体の異火は「焚決(焚決)」には多少なりとも役立つかもしれないが、その効果は限定的だろう。

焚決を進化させるには極めて大きなエネルギーが必要で、この小さな存在にはまだ達していない。

掌で顎を撫でながら、蕭炎はしばらく考え込んだ後、急に手を止めた。

目の中に喜びの色が浮かんだ。

幼生体の陨落心炎は彼にとって直接的な利点はないが、内院にとっては天からの贈り物だ。

この存在があれば天焚煉気塔(てんふんれんきとう)は再び稼働可能で、かつてのような効果を維持できるだろう。

強者がエネルギーを供給し続ける限り、内院は「修業加速器」と呼ばれる天焚煉気塔を再び活性化させることができる。

さらに重要なのは、この幼生体の陨落心炎が成熟体へと進化する可能性だ。

幼少期から育てられた異火は将来的に馴服しやすくなる。

以前の成熟体「陨落心炎」のように逆らうこともないだろう。

百年後には完全な進化を遂げ、内院にとって一大助力となるかもしれない。

いずれにせよ異火はいずれも自らの霊智(りょうち)を持つようになるものだ。

その時までずっと内院を育ててきたならば、当然のように内院を家と思って守ってくれるだろう。

そうすれば内院は異質なスーパーガードマンを得ることになる。

これらのメリットを考えると蕭炎の胸中は激しく揺れた。

天焚煉気塔が枯渇する問題にずっと悩んでいた彼にとって、この幼生体の陨落心炎は完璧な解決策だった。

内院への負い目も一気に消える。

その瞬間、彼はついに笑みを浮かべた。

そしてゆっくりと近づき、掌を曲げて幼生体の陨落心炎を捕獲しようとした。

しかし蕭炎が神秘の骨骸から二メートル離れたところで、突然白い光が骸骨の中から爆発した。

その急な変化に驚いた彼は後退し、その直後に自身が動きが止まったことに気づいた。

顔の表情が次々と変わる中、目の前の白光がゆっくりと蠕動(じゅうどう)し、最後には虚ろな老人の影へと変わった。



白い袍をまとった人影は、白髪の老躯に蒼白い顔貌を持ち、その目には穏やかだが精芒が微かに宿っていた。

この虚幻な存在が現れた瞬間、蕭炎(しょうえん)の胸中には底から湧き上がる圧迫感が広がった。

「陨落心炎(うんらくしんえん)? まさか……結局は人間に収められたのか」

その影が蕭炎を一瞥すると、ゆっくりと語り始めた。

声の奥に控えめな威厳が滲んでいた。

「老先生にお目にかかりましたか、この者が勝手に入り込んで申し訳ありません」

心の中で思考を巡らせながらも、蕭炎はその存在に対して礼儀正しく挨拶した。

影はその言葉を無視し、彼の動きに注目していた。

突然、蕭炎の体内から「陨落心炎」が勝手に浮かび上がり、白袍老者の掌へと落ちた。

その光景を見て、蕭炎は声を荒らげた。

炎は老人の手の上で蛇のように蠢き、驚くべきほど従順だった。

しかし蕭炎にとっては異常な現象だ。

自分が完全に統制しているはずなのに……。

「どうした? 不思議か?」

老人が皮肉めいた笑みを浮かべた。

「なぜなら、私はこの炎の前主人だからだ」

その言葉に、蕭炎は目を見開いた。

老人は続ける。

「私が死ぬ直前に『自由にしてやる』と言ったからこそ、当時は確かに無主と見えたはず」

驚きを隠せない蕭炎が吞み込んだ唾液の量は計り知れない。

この人物が死んでからの年数は少なくとも千年以上だろう。

しかし老人は続ける。

「安心しなさい。

私はもう死んでいる。

この影は長年の歳月で消えかけた魂の残滓だ」

その一言に、蕭炎は安堵と恥辱を同時に感じた。

そして名前を尋ねる。

「老尊者……お名前は?」

白袍が笑みを浮かべた。

「私は曜天火(ようてんぱ)、通称『天火尊者』だ」

その称号に、蕭炎の心臓が跳ね上がった。

岩脈深くで出会った謎の白袍人物が、かつて大陸を震撼させた斗尊級の強者だったのだ……

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