【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

自覚が大事、そんな事分ってる。

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「うん、僕って馬鹿だね。自覚した」

 昨日の事を色々思い返してそう自覚して落ち込んだ。
 雅の邪魔をしないようにと早退したのに。
 いや、自分が雅が主人公に惹かれる光景を見たくなくて逃げ出したんだけど。とにかく自分が邪魔にならないように、そうしたはずなのに雅は転校生である主人公に校内を案内するという役目を放棄して僕のところに来ていた。

「今日は、今日からは僕は雅に近寄らない」

 雅は主人公に惹かれている。
 ゲームの展開で、主人公が他の攻略対象者を選んでいるなら僕は安心して雅の傍に居られる。だけど、昨日の雅は主人公に一目惚れしている様に見えた。
 主人公がどのルートに入っているのか分らないけれど、雅は主人公に惹かれているなら僕が邪魔して良いわけがない。

「僕はなるべく雅に近寄らない。そして、雅が主人公にアプローチしたい様なそぶりが見えたら、そのフォローをする」

 雅が主人公と上手くいく。
 それはつまり、僕が失恋するってことだ。
 それって凄く辛い。辛すぎて想像だけで泣けるレベルだけど、しょうがない。
 僕はあのゲームでは「モブ中のモブなんだし、雅は攻略対象者で主人公は絶対的王者なんだ。だって主人公だし。
 ゲームは彼が幸せになる為に存在するんだ。

「雅。好きなのに。なんでこの世界はあのゲームなの」

 男同士とか、それはこの世界では枷にならない。
 同性でも添い遂げられる。正妻にはなれなくても、嫡男の側室としてそのポジションは確立される。それがこの世界。
 なんでだろ、BLゲームだからなのかわからないけれどその辺は容認されてるんだ。
 同性でも世間的に認められている。
 恐ろしいのが、小姓制度。同性の場合小姓という地位が認められているのだ。前世の記憶を取り戻してすぐは忘れていたけれど、小姓制度という恐ろしくご都合主義的なものがこの世界にはあるのだ。なんですぐに思い出さなかったんだ、僕。同性の恋愛が黙認どころじゃない。合法的に認められる、それが小姓制度だ。
 前世の感覚ではありえないけれど、雅が望めば僕は小姓という立場で雅の傍にいる事が認められる。
 小姓というのは、異性で言うなら側室の立場。
 正妻が居て異性なら側室。同性なら小姓としてその地位が認められる。
 上位貴族ならではなんだけど、これがなんと学院内でも申請されると認められる地位だ。
 小姓として届ける事で、何か違いがあるのかといえば寮の部屋だ。
 仮に雅が僕を小姓として届けると、僕の部屋は雅の使う部屋の一部になる。
 僕こと鈴森千晴の部屋は、今のまま存在するけれど雅の小姓としての部屋も雅の部屋の一室に存在する事になる。
 なんていうかな。僕個人というより、主人である雅が優先されるのだ。
 たとえば主人と小姓が違うクラスな場合、主人が望めば小姓は主人と同じクラスに居られる。小姓は主人の財産扱いで、小姓を溺愛する主人は授業中でも小姓を抱っこしながらラブラブいちゃいちゃ状態でいてもいいのだ。
 なんだよ、それ。的な疑問がでるけれど。
 この世界それが当然なのだから、びっくりする。僕が今いるクラスでは小姓制度を使っている人がいないから忘れていたのだ。

「爵位とかそういうのが壁になっても、小姓制度っていう抜け道があるもんなあ」

 雅と主人公のハッピーエンドは確かそれだったんだ。
 雅の小姓として主人公はその地位で幸せを得る。
 雅は侯爵家の嫡男で、主人公は平民だから。それが最大譲歩のハッピーエンド。
 ゲームは二人の気持ちが通じ合うところで終わるから、学校を卒業した雅が誰か正妻を迎えるのかどうかは分らない。
 でも、主人公は雅の大切な人になる。それは確定。

「僕がその立場になりたいなんて思うのは無理なんだろうな」

 雅とただのクラスメイトという位置だったら、そんな風に望むのは無謀だと分る。
 でも、最近の雅は僕とクラスメイトの立場以上に仲良く接してくれている様にも見えて、だから期待してしまう。無謀にも期待してしまう。

「馬鹿だろ、そういうの。だってここは主人公の為の世界だ」

 雅が好きだ。
 僕はモブ中のモブだけど、雅が好きだ。
 でも、雅はゲームの攻略対象者で主人公は絶対的なポジションなんだ。

「諦めるんだ。諦めるしかないんだよ。僕は、そういう立場なんだ」

 雅は僕を友達だと言ってくれる。苦手な勉強を教えてくれて、具合が悪い僕を心配して見舞ってくれる。
 モブの僕はそれだけで満足しなくちゃいけないんだ。
 だって、僕は主人公にはなれないんだから。

「雅が好きだよ。大好きだよ。なのに僕は、雅の一番にはなれないんだね」

 ぽろりと涙がこぼれ落ちる。
 前世の僕は同性の恋人を望むことすら諦めていた。
 今世の僕は、好きな人がいるのにその人へのアプローチを諦めるしかない。

「雅の幸せが一番だよ。雅が主人公を望むなら、僕はそれを全力で応援するよ。だって雅の幸せが僕の幸せだから」

 ぽろりぽろりと涙がこぼれ落ちる。

 雅の幸せが僕の幸せ。そう分っていても、辛くて。
 自分の恋心を封印しなくちゃ行けない、今世を嘆くしかなかったんだ。   
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