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本編
夢なのか現実なのか
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夢を見ていた。
夢って、現実だと思い込んでる時と夢だとはっきり分る時があるけれど、今回は夢だとはっきり分るバージョンなんだと思う。
だって、雅が僕の部屋に来て、眠っている僕の頭を撫でている。
優しく何度も僕の頭を撫でる大きな手。
僕を見つめる顔は赤面しそうな程に優しくて、それは愛しい恋人を見ている様で勘違いしそうになる。
優しく何度も頭を撫でて、それだけじゃ足りなくなったのか雅は僕の額に唇を近付ける。
優しく雅の唇が、僕の額に触れる。
額に何度も触れて、そして僕の唇にも雅は触れてくれた。
泣きそうになる程の幸福感。
だって、雅が。大好きな雅が僕に触れている。
ああ、神様。
いるのかいないのか分らない神様に、僕は祈る。
こんな幸せな夢、見せてくれてありがとう。
雅を応援すると言いながら、挫けて帰って来た情けない僕にこんな幸せな夢。
僕、頑張るよ。
雅と主人公が上手くいくように。
この夢の記憶だけで、根性を奮い立たせて頑張る。
だって、雅に幸せになって欲しい、雅の幸せに主人公が必要なら、僕は泣きながらでも応援する。応援し続ける。
だから神様、どうか雅が幸せになるように。彼が心から幸せだと思える未来がある様に、どうかお願いします。
そう念じて、夢から覚めて瞼を開いた。
あるわけ無いものが目の前に見えるなんて思いもせずに、僕は目を見開いた。
「え、雅?」
あれ、僕何してたんだっけ?
雅が僕の額に唇を寄せて、何度も僕にキスをして、そして。
あれ、口。唇にも? あれは夢? そうだよ、夢。僕の願望。
だって、雅は僕を見下ろしている。
どうしてか、僕しかいなかった部屋で、僕を見下ろして立っているんだ。
「電話に出ないから。心配して来てみれば」
「心配?」
ああ、あれは夢だったのか。やっぱり、そうだと思った。
少し、いいや、かなりがっかりしながら体を起すと、「な、なんで」という雅の焦った様な声が部屋に響いた。
「え?」
なんでそんな声。
疑問に思って雅を見上げるとカーテンから入る日差し以外の明りがない部屋で、雅の顔が赤く見えた。
「雅? どうしてここに?」
なんか寒いと思って気がついた。
そういえば僕、制服全部脱いでパンツだけで寝てたんだ。
着替える気力もなくて、もういいやって感じで。
つまり、上半身は裸。裸? え、ちょっと待って。
「み、雅。あの、なんでいるの」
僕鍵締めたよね? どうして雅が僕の部屋にいるの?
焦って部屋の中を見渡して見ても、ここは見慣れた僕の寝室だ。雅がいるのは変だ。
僕、裸。いや、パンツははいてるけど、でもほぼ裸。
いやいや、同性だし、男同士だし。
でも、僕は雅が好きで、そういう意味で雅が好きで。つまり、これって。
「なんで、なんで、雅がここに」
恥ずかしさのあまり、じわりと涙が浮かんでくる。
僕の体って華奢と言えば聞こえは良いかもしれないけれど、貧弱なんだ。
ひょろひょろと細くて、白くて、肩も腕も嘘みたいに細い。
雅みたいに格好良くない。
体育の授業の時に見る雅の程よく筋肉がついた体。
すらりと伸びた、文学的に言うなら瑞々しく成長した若木の様な生命力溢れた体は、うっとりするくらいに格好よくて、長い手足が彫刻の様で、僕はいつも密かにときめいていた。
「ごめん。電話を何度掛けてもハルが出ないから。心配で、管理人に鍵を借りたんだ」
「そんなに簡単に、鍵借りれるの? それっていいの」
もう、涙目だ。もう泣きたいよ、こんなみっともない痩せっぽっちで貧相な体を雅に晒すなんて。
だって、プライベート。
そんなに簡単に鍵を貸し出ししてたら、プライベートとか安全とか確保出来ない。
雅は僕に何もしないって、悲しいくらい理解出来るからいいけれど。
もしも悪意がある人だったら? そしたら、これって重大問題だ。
「良く無いよ。いいわけないよ。俺だって、ハルの部屋の鍵を俺以外に簡単に貸し出しされたら抗議する。でも心配だったんだ。帰る時様子がおかしかったから、だから無理を言って鍵を借りて、管理人さんもドアの外で待機してる」
「心配することなんかないよ。ぐっすり寝たから体調も良くなったし」
雅が心配してくれた。その事実が嬉しくて、でも態度に出せないからちょっとだけぶっきらぼうにそう言うと、雅は自分が来ていた制服の上着を脱いで僕に羽織らせながら「なら良かった」と呟いた。
「いいよ、上着」
「駄目だよ。とにかく、これ羽織って俺の理性の限界超える」
雅がなにか呟いたのは、声が低すぎて聞こえなかった。
「今何時だろ」
少しお腹空いたかも。
そういえば、朝食べずに昼も抜いてしまった。
スマホを探しても枕元にない。そういえば、鞄の中に入れっぱなしだった。
「三時ちょと過ぎたばかりだよ。授業が終わってすぐこっちに戻ってきたから」
「そうなんだ。あれ、授業終わって、すぐ?」
ぼんやりした頭で返事して、はっと気がついた。
雅重要な事があったんじゃ無いの? 授業が終わった後、重要な。
「雅、授業終わってすぐにこっちに来たの? なんで」
「なんでって、ハルが心配で」
「そうじゃなくて、雅。用事とか無かったの? そういえば転校生、転校生は」
言えない、雅に校内の案内を頼んだりしてなかったのか、なんて。
誰が彼を案内したのか。そんなの聞くのは不自然過ぎる。でも気になる。
「転校生? ああ、木村春か。彼はそれなりに馴染んでいたよ。なんで? 気になるのか?」
「気になるっていうか。僕、挨拶の途中で気分悪くなって、挨拶の邪魔しちゃったかもって、気になっただけ。平民なんでしょ。クラスに馴染めそう?」
木村春、主人公気にいった雅は放課後学園の中を案内するという重要イベント。
これを雅がするかどうかで、雅ルートに入りやすくなるかどうか決まる。
「ハルは優しいな。大丈夫。それなりに上手くやってるみたいだ。俺が帰る時に川島が校内を案内するって言ってたし、川島は面倒見がいいから大丈夫だよ」
「え、川島君が案内。雅じゃなくて?」
「え」
「しゅじ、木村君は川島君に案内を頼んだの?」
「いや、俺が帰る準備をしている横で学校が広くて迷子になりそうだとか言い出してたが、俺はすぐに帰りたかったから話に加わらなかったんだ。そしたら川島が自分が案内すると。川島の奴掃除当番だったくせに山村に代わってくれと頼んでたな」
「そうなんだ。川島君、クラス委員だから気になったのかもね。優しいね」
でも、これじゃ雅の好感度が。
校内案内って、スタートダッシュの決め手なのに。
ああ、でももうどうしようもない。
「優しい? ハルはそう思うのか。川島って優しいと思うのか」
「え、だってクラス委員だから転校生を放っておけなかったんでしょ。迷子になったら可哀相だもん。平民なんでしょ、彼。貴族の子息ばかりが通ってるこの学校で、気安く道を尋ねるのだって難しいんじゃ無いのかな。そういうのを考えて案内を買って出たんだろうから川島君優しいなって思わない?」
余計なお世話して、と恨みたくなるけれど。
川島君は、今回の件抜きにしても良い人なんだ。
「そういう意味でだけ?」
「え。他に何か」
「いいや、いい。転校生は上手くやってる。川島が親切にしているし、あいつが世話してるって事は庇護対象ってことだ。だからハルが心配する様な事はないよ。平民だって勉強する権利はある」
「雅、わざとそういう言い方しなくていいよ。雅が優しい人で平民とか貴族とか、そういう事に拘らない人だって知ってるから」
平民は、平民だってだけで蔑む対象にする貴族はいる。
現代もののゲームの筈なのに、そういう貴族階級制度をやたらと強調しているゲームなんだ。
「俺は優しくなんかない」
「優しいよ。今だって、僕を心配して来てくれたんでしょ。ありがと雅」
主人公との学園案内エピソードイベントを雅がクリア出来なかったのは残念だけれど、でも僕を心配してくれたっていうのが、純粋に嬉しくて。
僕は単純に喜んでしまったんだ。
雅の上着を羽織った上半身裸の状態で。
「そんな大袈裟なもんじゃない。それより、食欲はどうなんだ、具合悪くても食べられそうなもの、一応買って来た」
なぜか少し赤く見える顔で、雅はコンビニの袋を差し出してきた。
本当に心配してくれたんだなあって、僕は呑気に喜んでしまった。
転校生と雅の関係がどうなるのかなんて、今だけ忘れる事にして喜んでしまったのだった。
夢って、現実だと思い込んでる時と夢だとはっきり分る時があるけれど、今回は夢だとはっきり分るバージョンなんだと思う。
だって、雅が僕の部屋に来て、眠っている僕の頭を撫でている。
優しく何度も僕の頭を撫でる大きな手。
僕を見つめる顔は赤面しそうな程に優しくて、それは愛しい恋人を見ている様で勘違いしそうになる。
優しく何度も頭を撫でて、それだけじゃ足りなくなったのか雅は僕の額に唇を近付ける。
優しく雅の唇が、僕の額に触れる。
額に何度も触れて、そして僕の唇にも雅は触れてくれた。
泣きそうになる程の幸福感。
だって、雅が。大好きな雅が僕に触れている。
ああ、神様。
いるのかいないのか分らない神様に、僕は祈る。
こんな幸せな夢、見せてくれてありがとう。
雅を応援すると言いながら、挫けて帰って来た情けない僕にこんな幸せな夢。
僕、頑張るよ。
雅と主人公が上手くいくように。
この夢の記憶だけで、根性を奮い立たせて頑張る。
だって、雅に幸せになって欲しい、雅の幸せに主人公が必要なら、僕は泣きながらでも応援する。応援し続ける。
だから神様、どうか雅が幸せになるように。彼が心から幸せだと思える未来がある様に、どうかお願いします。
そう念じて、夢から覚めて瞼を開いた。
あるわけ無いものが目の前に見えるなんて思いもせずに、僕は目を見開いた。
「え、雅?」
あれ、僕何してたんだっけ?
雅が僕の額に唇を寄せて、何度も僕にキスをして、そして。
あれ、口。唇にも? あれは夢? そうだよ、夢。僕の願望。
だって、雅は僕を見下ろしている。
どうしてか、僕しかいなかった部屋で、僕を見下ろして立っているんだ。
「電話に出ないから。心配して来てみれば」
「心配?」
ああ、あれは夢だったのか。やっぱり、そうだと思った。
少し、いいや、かなりがっかりしながら体を起すと、「な、なんで」という雅の焦った様な声が部屋に響いた。
「え?」
なんでそんな声。
疑問に思って雅を見上げるとカーテンから入る日差し以外の明りがない部屋で、雅の顔が赤く見えた。
「雅? どうしてここに?」
なんか寒いと思って気がついた。
そういえば僕、制服全部脱いでパンツだけで寝てたんだ。
着替える気力もなくて、もういいやって感じで。
つまり、上半身は裸。裸? え、ちょっと待って。
「み、雅。あの、なんでいるの」
僕鍵締めたよね? どうして雅が僕の部屋にいるの?
焦って部屋の中を見渡して見ても、ここは見慣れた僕の寝室だ。雅がいるのは変だ。
僕、裸。いや、パンツははいてるけど、でもほぼ裸。
いやいや、同性だし、男同士だし。
でも、僕は雅が好きで、そういう意味で雅が好きで。つまり、これって。
「なんで、なんで、雅がここに」
恥ずかしさのあまり、じわりと涙が浮かんでくる。
僕の体って華奢と言えば聞こえは良いかもしれないけれど、貧弱なんだ。
ひょろひょろと細くて、白くて、肩も腕も嘘みたいに細い。
雅みたいに格好良くない。
体育の授業の時に見る雅の程よく筋肉がついた体。
すらりと伸びた、文学的に言うなら瑞々しく成長した若木の様な生命力溢れた体は、うっとりするくらいに格好よくて、長い手足が彫刻の様で、僕はいつも密かにときめいていた。
「ごめん。電話を何度掛けてもハルが出ないから。心配で、管理人に鍵を借りたんだ」
「そんなに簡単に、鍵借りれるの? それっていいの」
もう、涙目だ。もう泣きたいよ、こんなみっともない痩せっぽっちで貧相な体を雅に晒すなんて。
だって、プライベート。
そんなに簡単に鍵を貸し出ししてたら、プライベートとか安全とか確保出来ない。
雅は僕に何もしないって、悲しいくらい理解出来るからいいけれど。
もしも悪意がある人だったら? そしたら、これって重大問題だ。
「良く無いよ。いいわけないよ。俺だって、ハルの部屋の鍵を俺以外に簡単に貸し出しされたら抗議する。でも心配だったんだ。帰る時様子がおかしかったから、だから無理を言って鍵を借りて、管理人さんもドアの外で待機してる」
「心配することなんかないよ。ぐっすり寝たから体調も良くなったし」
雅が心配してくれた。その事実が嬉しくて、でも態度に出せないからちょっとだけぶっきらぼうにそう言うと、雅は自分が来ていた制服の上着を脱いで僕に羽織らせながら「なら良かった」と呟いた。
「いいよ、上着」
「駄目だよ。とにかく、これ羽織って俺の理性の限界超える」
雅がなにか呟いたのは、声が低すぎて聞こえなかった。
「今何時だろ」
少しお腹空いたかも。
そういえば、朝食べずに昼も抜いてしまった。
スマホを探しても枕元にない。そういえば、鞄の中に入れっぱなしだった。
「三時ちょと過ぎたばかりだよ。授業が終わってすぐこっちに戻ってきたから」
「そうなんだ。あれ、授業終わって、すぐ?」
ぼんやりした頭で返事して、はっと気がついた。
雅重要な事があったんじゃ無いの? 授業が終わった後、重要な。
「雅、授業終わってすぐにこっちに来たの? なんで」
「なんでって、ハルが心配で」
「そうじゃなくて、雅。用事とか無かったの? そういえば転校生、転校生は」
言えない、雅に校内の案内を頼んだりしてなかったのか、なんて。
誰が彼を案内したのか。そんなの聞くのは不自然過ぎる。でも気になる。
「転校生? ああ、木村春か。彼はそれなりに馴染んでいたよ。なんで? 気になるのか?」
「気になるっていうか。僕、挨拶の途中で気分悪くなって、挨拶の邪魔しちゃったかもって、気になっただけ。平民なんでしょ。クラスに馴染めそう?」
木村春、主人公気にいった雅は放課後学園の中を案内するという重要イベント。
これを雅がするかどうかで、雅ルートに入りやすくなるかどうか決まる。
「ハルは優しいな。大丈夫。それなりに上手くやってるみたいだ。俺が帰る時に川島が校内を案内するって言ってたし、川島は面倒見がいいから大丈夫だよ」
「え、川島君が案内。雅じゃなくて?」
「え」
「しゅじ、木村君は川島君に案内を頼んだの?」
「いや、俺が帰る準備をしている横で学校が広くて迷子になりそうだとか言い出してたが、俺はすぐに帰りたかったから話に加わらなかったんだ。そしたら川島が自分が案内すると。川島の奴掃除当番だったくせに山村に代わってくれと頼んでたな」
「そうなんだ。川島君、クラス委員だから気になったのかもね。優しいね」
でも、これじゃ雅の好感度が。
校内案内って、スタートダッシュの決め手なのに。
ああ、でももうどうしようもない。
「優しい? ハルはそう思うのか。川島って優しいと思うのか」
「え、だってクラス委員だから転校生を放っておけなかったんでしょ。迷子になったら可哀相だもん。平民なんでしょ、彼。貴族の子息ばかりが通ってるこの学校で、気安く道を尋ねるのだって難しいんじゃ無いのかな。そういうのを考えて案内を買って出たんだろうから川島君優しいなって思わない?」
余計なお世話して、と恨みたくなるけれど。
川島君は、今回の件抜きにしても良い人なんだ。
「そういう意味でだけ?」
「え。他に何か」
「いいや、いい。転校生は上手くやってる。川島が親切にしているし、あいつが世話してるって事は庇護対象ってことだ。だからハルが心配する様な事はないよ。平民だって勉強する権利はある」
「雅、わざとそういう言い方しなくていいよ。雅が優しい人で平民とか貴族とか、そういう事に拘らない人だって知ってるから」
平民は、平民だってだけで蔑む対象にする貴族はいる。
現代もののゲームの筈なのに、そういう貴族階級制度をやたらと強調しているゲームなんだ。
「俺は優しくなんかない」
「優しいよ。今だって、僕を心配して来てくれたんでしょ。ありがと雅」
主人公との学園案内エピソードイベントを雅がクリア出来なかったのは残念だけれど、でも僕を心配してくれたっていうのが、純粋に嬉しくて。
僕は単純に喜んでしまったんだ。
雅の上着を羽織った上半身裸の状態で。
「そんな大袈裟なもんじゃない。それより、食欲はどうなんだ、具合悪くても食べられそうなもの、一応買って来た」
なぜか少し赤く見える顔で、雅はコンビニの袋を差し出してきた。
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