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本編
このメールは僕を破滅に誘うのかな
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「俺は手続きを済ませに少し出てくる、一人で休んでいられるか?」
お茶を飲んで少し話をした後、雅は自分の寝室に僕を連れて行きながらそう言った。
二人で話をして、小姓の手続きを行なうと決めた。
何かあった時の為、それが理由だった。
「うん、すぐ戻ってくるよね」
「勿論」
僕の頭を撫でながら、雅は後ろに控えているメイドさんに指示を出す。
メイドさんは流れるような動きでレースのカーテンだけが閉められていた窓に近付くと、厚手のカーテンを引いた後、加湿器に使うアロマオイルを数種類僕の前に持ってきた。
「千晴様、お好みの香りはございますか」
「ラベンダーはありますか?」
「畏まりました、こちらでございます」
テスター様の細長い紙にオイルを付けると僕に差し出してくれるから、すうっと香りを吸い込むと甘いラベンダーの匂いがした。
「とっても良い香り。でも僕は好きだけど、雅は大丈夫?」
心配になって雅に尋ねる。
少し休む間だけとしても、こういうのって割と長い時間部屋に残る。
好みじゃない匂いがしてたら、落ち着かないんじゃないかな。
「気持ちが落ち着きそうだから、いいんじゃないか。寝室なんだし」
「ならいいけど」
「ほら、ベッドに入って。眠れなくても横になって体を休めた方がいい。頭を打った後の様な症状は出ていないが、打たれて気を失っていたんだから」
「分った」
メイドさんがアロマオイルを加湿器にセットしてくれる。
ベッドの足下の方に置かれた加湿器は部屋の広さに合わせたのか大型な物だけど、音は全く気にならない。間接照明を兼ねていてスイッチを入れると柔らかな灯りが部屋の中を照らしている。
「ほら、横になって」
サイドテーブルにスマホを置き、雅に促されてベッドの中に潜り込む。
以前ここに泊った時は雅が隣に寝てたし動揺してたから、ベッドの広さを考える余裕は無かったけれど。このベッドかなり広いよキングサイズかな?
僕の使っている部屋とこの部屋って、使用人用の部屋があるとか以前に寝室とかも大きさが全然違うみたいだ。
雅のところの寝室は僕の部屋のリビングよりも広いし、僕用に用意してくれた部屋も僕の寝室の倍くらい広いと思う。
「雅早く帰って来てね」
毛布を掛けられて額の辺りを撫でる手に、瞼を閉じながらお願いする。
ベッドが広すぎて落ち着かない。
目を閉じて、一人になるのが何だか不安だ。
「すぐ戻る。何か用があればベッドサイドのベルを鳴らせ、すぐメイドが来る」
「うん」
気持ちが落ち着くというハーブティーをさっき飲ませて貰った。
腫れた頬は冷やしているけれど、夜熱を出すかもしれないからと夕食後に飲む薬は保険医から処方されていて管理人さんの所に届けられていた。
薬と一緒に精神安定用のハーブティも届けられていたそうだ。
素直にそれを飲もうとしていた僕に、雅は用心の為にと処方された薬とハーブティと同じ成分の物をメイドさんに用意させ、管理人さんが預かっていたものは破棄させた。
「少し眠くなってきたかも」
ハーブティに眠気を誘う効果があるのかアロマオイルの香りのせいか、僕はうとうととした眠りの中に入り込んだ。
『俺は春が好きなんだ。以前お前に俺の名前を呼ぶことを許す日はぜったいに来ないと言ったのをずっと後悔していたんだ』
『山城様』
『雅、そう呼んでくれないか』
『いいのですか、僕は平民ですよ。それに孤児です』
『かまわない。春の生まれがどんなものでも俺にとって春が俺の側にいる、それだけが大切なんだ』
二人の姿を僕は少し離れた位置から見ているのに、声ははっきりと聞こえてくる。
ああ、これは夢だゲームの雅ルートの夢を見ているんだと何故か理解した。
雅ルートは主人公じゃなく攻略対象者の雅が告白する。その場面を見ているんだ。
『雅様、ずっとそうお呼びしたかった』
雅の胸に主人公が泣きながら飛び込む、そして雅の背中に両腕を回すんだ。
『春。俺の小姓になってくれ』
『はい。僕を雅様のお側に置いて下さい、僕の大好きな旦那様、ずっと一緒にいてくれますか?』
『お前を一生愛すると誓うよ』
そうだ、これが雅ルートのハッピーエンドだ。雅は主人公に一生愛するって誓う。
まあ、攻略対象者は皆同じ台詞を言うんだけど。
『雅様、嬉しいです』
抱き合いながらキスをする。
夢だと分っていても、止めてと叫び越えを上げたくなる。
雅、僕を好きだと言ったのに。
夢でも、嫌だよ雅。
叫びたいのに声が出ない。
苦しんで苦しんで、僕は気がついた。
僕は雅に『お前を一生愛すると誓うよ』とは言われなかった。
僕が主人公じゃないから? それとも、ここはゲームの世界じゃないから?
それとも、雅が本当に愛してるのは僕じゃないから?
「違う、雅は僕を好きって言ってくれた」
夢じゃ無く、本当に声が出て。
僕は瞼を開いた。
ああ、良かった。あれは夢だ。
ホッとしながら、サイドテーブルのスマホを手に取り画面を見る。
トークアプリに雅からメッセージが来ていた。
「手続き完了したよ。かぁ」
実感ないけれど、これで僕は雅の小姓になった。
雅はもう僕の旦那様だ。
「これで良かったんだよね」
決心がつかないのに、安全を考えて手続きをした。
それが引っかかっているけれど、でも僕を守りたいという雅の気持ちが嬉しかったのは確かだ。
「これで良かったんだよね。……あれ、メール?」
殆ど使わないスマホのメール。
スマホの電話帳に登録していないアドレスなのは、送信者の表示を見て分った。
「誰だろ。え」
立場を理解していないモブさんへ
もしも雅様が小姓にしようと言い出しても、受け入れたりしないで下さいね。
もし、あなたが小姓になったら、あなたの大切なお友達宮原舞に不幸が起きるかもしれませんよ。
あなたのせいで不幸になるんですよ。
あなたに相応しいのはこの人です。
モブはモブらしくしていればいい。
それが出来ない時は、これを学園中に貼り出しますよ。
添付のデータ、これは保健室の前の僕とあの人。
「嘘」
手元からスマホが滑り落ち床に転がった。
ガタガタと体が震えて止まらない。
「どうしてこんな、誰が一体」
床の上で光っているスマホの画面には、あの店員に手を握られ指先を舐められている僕の姿がはっきりと映っていた。
お茶を飲んで少し話をした後、雅は自分の寝室に僕を連れて行きながらそう言った。
二人で話をして、小姓の手続きを行なうと決めた。
何かあった時の為、それが理由だった。
「うん、すぐ戻ってくるよね」
「勿論」
僕の頭を撫でながら、雅は後ろに控えているメイドさんに指示を出す。
メイドさんは流れるような動きでレースのカーテンだけが閉められていた窓に近付くと、厚手のカーテンを引いた後、加湿器に使うアロマオイルを数種類僕の前に持ってきた。
「千晴様、お好みの香りはございますか」
「ラベンダーはありますか?」
「畏まりました、こちらでございます」
テスター様の細長い紙にオイルを付けると僕に差し出してくれるから、すうっと香りを吸い込むと甘いラベンダーの匂いがした。
「とっても良い香り。でも僕は好きだけど、雅は大丈夫?」
心配になって雅に尋ねる。
少し休む間だけとしても、こういうのって割と長い時間部屋に残る。
好みじゃない匂いがしてたら、落ち着かないんじゃないかな。
「気持ちが落ち着きそうだから、いいんじゃないか。寝室なんだし」
「ならいいけど」
「ほら、ベッドに入って。眠れなくても横になって体を休めた方がいい。頭を打った後の様な症状は出ていないが、打たれて気を失っていたんだから」
「分った」
メイドさんがアロマオイルを加湿器にセットしてくれる。
ベッドの足下の方に置かれた加湿器は部屋の広さに合わせたのか大型な物だけど、音は全く気にならない。間接照明を兼ねていてスイッチを入れると柔らかな灯りが部屋の中を照らしている。
「ほら、横になって」
サイドテーブルにスマホを置き、雅に促されてベッドの中に潜り込む。
以前ここに泊った時は雅が隣に寝てたし動揺してたから、ベッドの広さを考える余裕は無かったけれど。このベッドかなり広いよキングサイズかな?
僕の使っている部屋とこの部屋って、使用人用の部屋があるとか以前に寝室とかも大きさが全然違うみたいだ。
雅のところの寝室は僕の部屋のリビングよりも広いし、僕用に用意してくれた部屋も僕の寝室の倍くらい広いと思う。
「雅早く帰って来てね」
毛布を掛けられて額の辺りを撫でる手に、瞼を閉じながらお願いする。
ベッドが広すぎて落ち着かない。
目を閉じて、一人になるのが何だか不安だ。
「すぐ戻る。何か用があればベッドサイドのベルを鳴らせ、すぐメイドが来る」
「うん」
気持ちが落ち着くというハーブティーをさっき飲ませて貰った。
腫れた頬は冷やしているけれど、夜熱を出すかもしれないからと夕食後に飲む薬は保険医から処方されていて管理人さんの所に届けられていた。
薬と一緒に精神安定用のハーブティも届けられていたそうだ。
素直にそれを飲もうとしていた僕に、雅は用心の為にと処方された薬とハーブティと同じ成分の物をメイドさんに用意させ、管理人さんが預かっていたものは破棄させた。
「少し眠くなってきたかも」
ハーブティに眠気を誘う効果があるのかアロマオイルの香りのせいか、僕はうとうととした眠りの中に入り込んだ。
『俺は春が好きなんだ。以前お前に俺の名前を呼ぶことを許す日はぜったいに来ないと言ったのをずっと後悔していたんだ』
『山城様』
『雅、そう呼んでくれないか』
『いいのですか、僕は平民ですよ。それに孤児です』
『かまわない。春の生まれがどんなものでも俺にとって春が俺の側にいる、それだけが大切なんだ』
二人の姿を僕は少し離れた位置から見ているのに、声ははっきりと聞こえてくる。
ああ、これは夢だゲームの雅ルートの夢を見ているんだと何故か理解した。
雅ルートは主人公じゃなく攻略対象者の雅が告白する。その場面を見ているんだ。
『雅様、ずっとそうお呼びしたかった』
雅の胸に主人公が泣きながら飛び込む、そして雅の背中に両腕を回すんだ。
『春。俺の小姓になってくれ』
『はい。僕を雅様のお側に置いて下さい、僕の大好きな旦那様、ずっと一緒にいてくれますか?』
『お前を一生愛すると誓うよ』
そうだ、これが雅ルートのハッピーエンドだ。雅は主人公に一生愛するって誓う。
まあ、攻略対象者は皆同じ台詞を言うんだけど。
『雅様、嬉しいです』
抱き合いながらキスをする。
夢だと分っていても、止めてと叫び越えを上げたくなる。
雅、僕を好きだと言ったのに。
夢でも、嫌だよ雅。
叫びたいのに声が出ない。
苦しんで苦しんで、僕は気がついた。
僕は雅に『お前を一生愛すると誓うよ』とは言われなかった。
僕が主人公じゃないから? それとも、ここはゲームの世界じゃないから?
それとも、雅が本当に愛してるのは僕じゃないから?
「違う、雅は僕を好きって言ってくれた」
夢じゃ無く、本当に声が出て。
僕は瞼を開いた。
ああ、良かった。あれは夢だ。
ホッとしながら、サイドテーブルのスマホを手に取り画面を見る。
トークアプリに雅からメッセージが来ていた。
「手続き完了したよ。かぁ」
実感ないけれど、これで僕は雅の小姓になった。
雅はもう僕の旦那様だ。
「これで良かったんだよね」
決心がつかないのに、安全を考えて手続きをした。
それが引っかかっているけれど、でも僕を守りたいという雅の気持ちが嬉しかったのは確かだ。
「これで良かったんだよね。……あれ、メール?」
殆ど使わないスマホのメール。
スマホの電話帳に登録していないアドレスなのは、送信者の表示を見て分った。
「誰だろ。え」
立場を理解していないモブさんへ
もしも雅様が小姓にしようと言い出しても、受け入れたりしないで下さいね。
もし、あなたが小姓になったら、あなたの大切なお友達宮原舞に不幸が起きるかもしれませんよ。
あなたのせいで不幸になるんですよ。
あなたに相応しいのはこの人です。
モブはモブらしくしていればいい。
それが出来ない時は、これを学園中に貼り出しますよ。
添付のデータ、これは保健室の前の僕とあの人。
「嘘」
手元からスマホが滑り落ち床に転がった。
ガタガタと体が震えて止まらない。
「どうしてこんな、誰が一体」
床の上で光っているスマホの画面には、あの店員に手を握られ指先を舐められている僕の姿がはっきりと映っていた。
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