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本編
居なくなった攻略対象者
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「信ちゃんが停学って、そんな」
僕達が和やかに話していたら、突然大きな声が教室中に響きわたった。
「俺達から離れていた方がいいな、巻き込まれるぞ」
「おやおや、今頃その話題か。お言葉に甘えて俺達は退散しようか」
「そうだな」
そそくさと僕達から離れていく四人を見送り、僕は雅の背に隠れる様にしながら自分達の席へと歩く。
「谷崎様の話だよね?」
信ちゃんと言っているけど、多分そうだ。
「何か言われてもハルは答える必要はないから」
「う、うん」
雅は何か言ってくる前提で話しているけれど、谷崎様の停学と僕を結びつけて何か言ってくるだろうか。
昨日の今日だし、僕のせいだと思うよね。
「鈴森様っ。信ちゃんは悪くありません。僕を庇う気持ちが強すぎて衝動的に動いてしまっただけなんです。停学なんて酷すぎだと思いますよねっ!」
雅の予想凄すぎる、本当に来た。
止めようとする川島君の腕をすり抜け、僕達の席に走り寄ってきたから驚いてしまった。
「し、信ちゃんは本当は優しいんです。努力家だし、お父様に認められたくて必死に今まで頑張ってきたんです。なのに、停学なんて騒ぎにするのはあんまりです。あ、雅様っ」
「お前に名前呼びを許した覚えはないと何度言えば理解するんだ?」
僕に掴み掛かる勢いで泣きながら近付いてきた木村君を、雅が押し止め僕を背に庇う。
「も、申し訳ありません。でも、その人が酷いことをするから、僕は勇気を出してお願いをしようとしていたんです」
雅に庇われながらそっと覗くと、木村君は両手を胸の前で組み合わせ、泣きながら小首を傾げて雅を見上げていた。
木村君の可愛い顔は泣き顔でも可愛くて、雅が絆されてしまうんじゃないかと一瞬不安になったけれど、雅の声は冷たいままだった。
「ハルは昨日のあいつに暴力を振るわれて気を失って、頬も腫れて大変だったんだが、それはお前には谷崎が酷いことをしたという認識にはならないんだな」
昨日打たれたことを思い出し怖くて震えてしまうのを、雅の肘の辺りに触れながら耐える。
「信ちゃんはそんなに力を込めたりしていないって言っていました。だけど大袈裟に転んで気を失った振りを、あ。いえ、そんな振りだとは思ってませんけど」
ポロポロ涙をこぼしながら、木村君は雅に訴え続ける。
「保健室に行きたくてわざと気を失った……とか?」
「ハルがわざと?俺の気を引きたかったのか」
木村君を無視して、雅の方を振り向き聞いてくる。
「雅」
「冗談だ。俺はいつだってハルに夢中だからな、態々気を引く必要はないな」
笑いながら雅は僕を抱きしめて、木村君に見せつける様に僕の頭を撫でている。
「な、教室でそんなっ」
「可愛い小姓を愛でて何が悪い」
「こ、小姓っ」
教室のアチコチで悲鳴が上がる。
小姓に驚いたのか、雅の発言に驚いたのか分からないけれど、僕は恥ずかしくて顔を上げられない。
「当て馬の癖に、こんなの設定に……」
「設定?」
思わず木村君の声に反応してしながら、やっぱり木村君は転生者だと確信した。
「何が言いたいんだ」
「山城様は騙されているんです。僕は鈴森様に意地悪をされていて、だから昨日谷崎様が怒ったんです。僕、毎日辛くて」
弱々しい声で、木村君は切々と訴え続ける。
これ、雅がいなかったら周囲の人達が騙されたりしていたかもしれない。
「話にならないな」
「本当なんです。その人は裏表が激しくて僕は転校してすぐに苛められる様になって」
「公にしていなかったが、お前の転校直後俺はハルを小姓にし、ほぼ一緒に過ごしていた。ハルにお前を苛める暇は無かった筈だが」
小姓にはなってなかったけど、勉強教えて貰ってたから一緒にいる時間は多かったのは確かだ。
「体育の着替えの最中とか、僕……」
「僕は鈴森様といつも着替えをご一緒していますが、木村君が居た記憶はありません。同じ更衣室使われていないのではありませんか?皆さんご記憶にありますか?」
「関係無い方は口を挟まないでっ!」
登校してきたばかりの大林君が、僕を擁護してくれるけど、それにも木村君は食って掛かる。
「何を騒いでいる。皆席に座れ」
突然ドアが開き担任の先生の声が響き、慌てて席につく。
「今日はクラス移動が何人かいるから、騒がしくなっても仕方ないが気を付ける様に。ホームルームを始める前に連絡事項を伝える。谷崎信也は病気療養の為領地に戻るそうだ」
ざわりと教室の空気が揺れた。
「退学手続きは昨日付けでされている。挨拶は出来ず申し訳ないが、静かに療養に励むため連絡は遠慮して欲しいとの事だ」
淡々と告げる先生の言葉に、僕の胸はぎゅっと何かに捕まれた様に苦しくなった。
僕達が和やかに話していたら、突然大きな声が教室中に響きわたった。
「俺達から離れていた方がいいな、巻き込まれるぞ」
「おやおや、今頃その話題か。お言葉に甘えて俺達は退散しようか」
「そうだな」
そそくさと僕達から離れていく四人を見送り、僕は雅の背に隠れる様にしながら自分達の席へと歩く。
「谷崎様の話だよね?」
信ちゃんと言っているけど、多分そうだ。
「何か言われてもハルは答える必要はないから」
「う、うん」
雅は何か言ってくる前提で話しているけれど、谷崎様の停学と僕を結びつけて何か言ってくるだろうか。
昨日の今日だし、僕のせいだと思うよね。
「鈴森様っ。信ちゃんは悪くありません。僕を庇う気持ちが強すぎて衝動的に動いてしまっただけなんです。停学なんて酷すぎだと思いますよねっ!」
雅の予想凄すぎる、本当に来た。
止めようとする川島君の腕をすり抜け、僕達の席に走り寄ってきたから驚いてしまった。
「し、信ちゃんは本当は優しいんです。努力家だし、お父様に認められたくて必死に今まで頑張ってきたんです。なのに、停学なんて騒ぎにするのはあんまりです。あ、雅様っ」
「お前に名前呼びを許した覚えはないと何度言えば理解するんだ?」
僕に掴み掛かる勢いで泣きながら近付いてきた木村君を、雅が押し止め僕を背に庇う。
「も、申し訳ありません。でも、その人が酷いことをするから、僕は勇気を出してお願いをしようとしていたんです」
雅に庇われながらそっと覗くと、木村君は両手を胸の前で組み合わせ、泣きながら小首を傾げて雅を見上げていた。
木村君の可愛い顔は泣き顔でも可愛くて、雅が絆されてしまうんじゃないかと一瞬不安になったけれど、雅の声は冷たいままだった。
「ハルは昨日のあいつに暴力を振るわれて気を失って、頬も腫れて大変だったんだが、それはお前には谷崎が酷いことをしたという認識にはならないんだな」
昨日打たれたことを思い出し怖くて震えてしまうのを、雅の肘の辺りに触れながら耐える。
「信ちゃんはそんなに力を込めたりしていないって言っていました。だけど大袈裟に転んで気を失った振りを、あ。いえ、そんな振りだとは思ってませんけど」
ポロポロ涙をこぼしながら、木村君は雅に訴え続ける。
「保健室に行きたくてわざと気を失った……とか?」
「ハルがわざと?俺の気を引きたかったのか」
木村君を無視して、雅の方を振り向き聞いてくる。
「雅」
「冗談だ。俺はいつだってハルに夢中だからな、態々気を引く必要はないな」
笑いながら雅は僕を抱きしめて、木村君に見せつける様に僕の頭を撫でている。
「な、教室でそんなっ」
「可愛い小姓を愛でて何が悪い」
「こ、小姓っ」
教室のアチコチで悲鳴が上がる。
小姓に驚いたのか、雅の発言に驚いたのか分からないけれど、僕は恥ずかしくて顔を上げられない。
「当て馬の癖に、こんなの設定に……」
「設定?」
思わず木村君の声に反応してしながら、やっぱり木村君は転生者だと確信した。
「何が言いたいんだ」
「山城様は騙されているんです。僕は鈴森様に意地悪をされていて、だから昨日谷崎様が怒ったんです。僕、毎日辛くて」
弱々しい声で、木村君は切々と訴え続ける。
これ、雅がいなかったら周囲の人達が騙されたりしていたかもしれない。
「話にならないな」
「本当なんです。その人は裏表が激しくて僕は転校してすぐに苛められる様になって」
「公にしていなかったが、お前の転校直後俺はハルを小姓にし、ほぼ一緒に過ごしていた。ハルにお前を苛める暇は無かった筈だが」
小姓にはなってなかったけど、勉強教えて貰ってたから一緒にいる時間は多かったのは確かだ。
「体育の着替えの最中とか、僕……」
「僕は鈴森様といつも着替えをご一緒していますが、木村君が居た記憶はありません。同じ更衣室使われていないのではありませんか?皆さんご記憶にありますか?」
「関係無い方は口を挟まないでっ!」
登校してきたばかりの大林君が、僕を擁護してくれるけど、それにも木村君は食って掛かる。
「何を騒いでいる。皆席に座れ」
突然ドアが開き担任の先生の声が響き、慌てて席につく。
「今日はクラス移動が何人かいるから、騒がしくなっても仕方ないが気を付ける様に。ホームルームを始める前に連絡事項を伝える。谷崎信也は病気療養の為領地に戻るそうだ」
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「退学手続きは昨日付けでされている。挨拶は出来ず申し訳ないが、静かに療養に励むため連絡は遠慮して欲しいとの事だ」
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