【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

主人公の悪あがき3

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「理事長先生、おはようございます。朝からご足労頂き恐縮です」

 佐々木様が理事長先生に挨拶してるのに気を取られたのか、雅の腕の力が緩んだ隙に僕はするりと拘束から抜け出して手櫛で髪を整える。

「おはよう、佐々木君。これは一体何の騒ぎなんだ」
「こんな合成の写真を出して、自分が山城の小姓だと騒ぎ立て、山城の小姓に盗みの罪まで着せようとしていた為、真偽を確かめていたところです」
「なんて写真を」
「返して下さいっ!僕のスマホっ!」

 入り口のところにいる理事長先生に、佐々木様がスマホを持って行き説明する。
 雅に邪魔されて何も見えなかったけど、写真はスマホに保存されてた物みたいだ。

「返してくださいっ。取り上げるなんて酷すぎますっ」
「おっと、そういうわけにはいかないな。こんな写真が出回ったら山城軍配恥をかくだけでは済まない。合成かどうか判断する為、これは学園で預かる。いいね」

 木村君が理事長先生に飛び付かんばかりに抗議するけれど、先生は動じずに背後に立っていたお付きの人にスマホを渡してしまう。

「これが本当に合成だった場合、君は山城侯爵家に詐欺を働いた事になるんだよ。それを君は理解しているのかな」
「詐欺だなんて、酷いです。山城様は本当に僕を小姓にと」
「その話を今聞く気はないんだよ。場所を移して詳しく確認する。君は一緒に来なさい。山城君と、山城君の小姓は誰だったかな、あぁ鈴森君だね。二人にも話を聞きたいから、後で理事長室まで。そうだね昼休みがいいかな」
「分かりました」
「合成なんかじゃありませんっ、僕は何も悪くないのに」

 理事長先生に素直に返事をする雅と、大声を上げている木村君の対比が凄い。

「どうかな?」
「解析はすぐできますが、する必要も無いほど稚拙な合成ですね。ほら首の辺りにはっきり色の違いが出来ていますし、画像の解像度も違うようですね。今時素人でももう少しマシな処理するでしょうに、そもそもこの山城君の顔は学生証か何かではありませんか?」
「なんだと?山城君、学生証を見せて貰えるか」

 入り口のところで話しているのを、僕は少し離れた位置で見てるしか出来ない。

「合成だと証明されて良かったですね」
「うん。当然だけど」

 でもどうして、あんな場所で話してるんだろ。
 あれじゃ雅のこと誤解する人が出てきたりしないのかな。

「理事長先生、完全に彼を排除するつもりですね」
「排除?」
「木村君です。学園側は山城家の名誉を守った事にしたいのですよ。だからここで合成とはっきりさせているんです」
「成る程」
「彼も馬鹿ですね。ああいった醜聞を貴族は一番嫌うというのに、本人に嘘の写真を見せるんですから」

 大林君は周囲に聞こえない位の小さな声で僕に教えてくれる。

「ですが、山城様の学生証の写真なんてどうやって彼は入手したんでしょう」
「隠し撮りなら兎も角、不思議ですね」

 教室内のあちこちでひそひそと話しながら、視線はドアの辺りに立っている雅達に集まっている。
 雅が理事長先生に渡した学生証の写真と、木村君のスマホを見比べて話し込んでいるのだから、気にならない方がおかしいよね。

「断言は出来ないが、同じに見えるな」
「そうですね」
「知らないっ。僕は山城様とっ」
「その一言一言が、山城君への名誉棄損となるのだよ。全く自覚がないとは嘆かわしい。こんな合成写真を作るなんて」

 理事長先生は不自然な程、名誉毀損とか合成写真という単語を強調して話している気がする。
 その度に「合成だって」とか「山城様を計略にかけようとしたのか?」なんて声が聞こえてくる。
 成る程、大林君の話しは正しいのかもしれない。

「理事長」
「どうした」

 騒ぎ続ける木村君は、理事長先生に手首を捕まれている。
 不思議と木村君は大声を上げるだけで、暴れたりはしていなかったのだけど。

「これ、不味いことになりそうですよ」
「なんだと」
「ほら、これとこれ、凄いな」
「あっ!それは駄目っ!見ないで、関係ないでしょっ!」
「えっ」

 教室中が一気に騒がしくなった。
 スマホを見ている理事長先生とお付きの人に慌てたように、突然木村君が掴まれていない方の腕を振り回し始めたのだ。

「大人しくしなさいっ」
「スマホの中を勝手に見るなんて、酷いですっ!個人情報ですよっ!人権の侵害ですっ!」
「人権の侵害と言うなら、君が山城君にしたことは何なんだ。こんな合成写真を作ってありもしない事をさも本当の様に言って、名誉毀損だけじゃ済まないのだぞ。おい、警備。この生徒を拘束して理事長室へ連れていきなさい」
「畏まりました」
「嫌ぁっ!僕は悪くないっ。悪くないってばぁ!」

 暴れる木村君の腕を、突然教室に入ってきた警備の人が拘束して出ていく。

「君達は授業をしっかり受ける様に。山城君と鈴森君はは後で理事長室に来て話を聞かせてもらうから」
「はい」

 しっかり授業を受けるなんて、とても出来そうに無かった。
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