悪役令嬢(仮)に断罪された偽王太子は本物王太子に影武者としてこき使われる

雪野 みゆ

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第2章 学園編

第20話

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 エドワルドとフィルミナの姿をみとめたトームスは、慌てて「違うから!」と手をぶんぶん振る。

「送り狼はいけないな。トームス」

 いけないと言いつつも、怒っているそぶりはなく、にやにやとしているエドワルドだ。明らかに面白がっている。

「違うって言ってんだろ! 打ち身の手当てをしてもらっていたんだ」

「あら? 下心はなかったと言い切れますか? (今にも襲いかかりそうに見えますわ。きゃー!)」

 それを言われると、なかったとは言い切れないが、必死に弁明する。

「一応、婚約前だからって断ったんだぞ!」

「……あの……誘ったのはわたくしですわ。トームスを責めないでくださいませ」

 エレナが恥ずかしがりながらも、トームスを庇ってくれる。トームスはじ~んと心をうたれた。

(いい女だ。ますます惚れたぜ)

「とにかく、シャツを着ろ。女性陣が目のやり場に困っている」

 エレナはともかくフィルミナは手の隙間からガン見している。いたたまれなくなったトームスはシャツを急いで着た。

「殿下たちはエレナに用があるんだろう? 俺は客室に戻るから」

 部屋から出ようと扉に向かったトームスをエドワルドが手で制する。

「お前にも用がある。ちょうどいい。ここで話をしよう」

 トームスはエレナと顔を見合わせる。


 
 4人はエレナの部屋のソファに座ると、エドワルドの話に耳を傾ける。

 エドワルドが語ったのは、ある陰謀・・・・についてだ。

「……というわけで、フィーとエレナ嬢にも手伝って欲しいのだ」

「女性を巻き込むのは危ないんじゃないか? 殿下」

「しかし、彼女たちの協力がなければ、逃げられる可能性が高い」

 フィルミナとエレナは顔を見合わせると互いに頷く。先に言葉を発したのはフィルミナだ。

「そういうことでしたら、協力しますわ(トームスが間抜けでドジを踏むかもしれませんし)」

「お前はいちいち本音が余計だ! 誰が間抜けだ」

 エレナもフィルミナに続けとばかりに手を挙げる。

「わたくしも協力いたしますわ」

 フィルミナとエレナの同意を得て、エドワルドはほっとする。

「フィーは私が全力で守る。エレナ嬢はトームスが全力で守るよな?」

「当たり前だ。命がけで守る!」

 フィルミナとエレナは男たちの言葉にきゅんとする。

「これが胸きゅんというやつかしら?」

「本で読むのと自分で感じるのは違うものですね」

 
 
 具体的な策を練るため、エドワルドとトームスが話し始めたので、エレナとフィルミナは、部屋にあるミニキッチンでお茶の用意をしていた。

 エレナの部屋にミニキッチンがあるのは、フィルミナと女子会をするためである。ちなみにフィルミナの部屋にもある。自分たちで焼き菓子を作ったり、お茶をブレンドしたりしているのだ。

「フィルミナ様。わたくし婚約前だというのに、トームスの裸を見てしまいましたわ。意外と引き締まっていて、きれいな肌をしていました」

「わたくしもエドの上半身裸なら見たことがあるわ。殿方らしく筋肉がしっかりついているのに肌はすべすべだったわ(思わずときめいてしまったわ)」

 紅茶の茶葉をブレンドしながら、淑女らしからぬ会話をしている。

「でも、結婚したらいやでも見ることになるのよね(楽しみですわ)」

「フィルミナ様。はしたないですわ」

 ミニキッチンからきゃーきゃーという賑やかな声が聴こえる。

「あいつら、何を話しているんだ?」

「さてな。女性には女性の話があるんだろう」

 きっとろくでもない話だとトームスは思った。彼の勘は当たっている。まさか自分たちの肌について談義をされているとは夢にも思わないが……。

「おまたせいたしました。お茶を淹れましたわ」

 フィルミナとエレナがお茶と焼き菓子を持ってきて、ソファの前にあるローテーブルに置く。

「ありがとう。フィー、エレナ嬢」

 エドワルドはティーカップをとると一口飲む。

「うん。美味いな。オリジナルブレンドか?」

「そうですわ。エレナと相談しながらブレンドしましたの」

 トームスも一口飲む。かっと目を見開く。

「本当に美味いな。これお前らが淹れたのか?」

「お口に合いましたか?」

「侍女も顔負けだな。貴族令嬢ってお茶の淹れ方までマナーで学ぶのか?」

「嗜み程度ですわ。他の令嬢方は茶葉のブレンドまではしないと思いますけれど」

 エレナが自分でお茶を嗜むきっかけになったのは、当時自分付きだった侍女の淹れる紅茶が不味かったからだ。自分で淹れた方が好みの味が作れるのではと思いつき、本を読み漁ってお茶の淹れ方を研究した。

 フィルミナも興味を持ち、エレナと一緒に研究をしながら、美味しいお茶の淹れ方を極めているのだという。

「結婚したら、フィーの淹れるお茶が毎日飲めるのか。嬉しいな」

「お前ら、いい嫁さんになれるぜ」

 お茶の淹れ方についてだけはだが……。

「お話は終わりましたの?」

「だいたいはな」

 フィルミナはコホンと可愛らしく咳ばらいをする。

「では、もう1つの要件ですが……ダブル結婚式をマルク子爵領で挙げた後、4人で新婚旅行に行きましょう」

「はい!?」

 唐突なフィルミナの要件にトームスはあっけにとられる。

「ちょ……ちょっと待て! ダブル結婚式って何だ? 新婚旅行を4人で行く?」

「まあ! 殿下は了承してくれましたのね?」

 エレナが顔を輝かせる。

「もちろんだ。異論はない。そういうわけだ。トームス、マルク子爵領にある小さな教会で結婚式の手配をしておけ」

「俺の意見はスルーなのか!?」

「「「トームスに拒否権はない!」」」

 3人の声が重なる。がっくりと項垂れるトームスだった。
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