神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
24 / 73

新事実が発覚しました

しおりを挟む
「まず名前と年齢。見たところ、アヤナと同じ国から来たようだが、いつからここへ?」

「神崎  龍斗。27才。彩菜と同じく日本人。10年前にここへ来た。」

とーさまと龍斗さんのやり取りを、私はリスターの背中から身を乗り出す態勢で聞いている。
リスターの前には更にダナンさん、カールさんが並んで立ちはだかっていた。

私の前に壁が多過ぎて、とーさまと龍斗さんの姿が見えない。

後ろを振り返ると、かーさまが微笑みながら立っている。

「アヤナの事を調べて何をしたかった?お前の目的はなんだ?」

「日本に帰る方法を探りたかった。こっちに来てから、日本人に会えるのは初めてだったからな。彩菜に会えば、何か情報が得られると思ったんだ。」

「アヤナ以外に、今まで日本人に会ったことが本当にないのか?10年間、1度も?」

「10年の間、俺は帰る方法を探してこの国を旅して回ったけど、何処にもいなかった。彩菜の存在を知った時は嬉しくて震えが止まらなかったぜ。」

そうかぁ、龍斗さんは旅人だったんだね。
途中から盗賊にお仕事変えちゃったの?旅人のがカッコイイのに。
あ、でも旅人はお仕事じゃないのか。
いや待てよ?盗賊だってお仕事じゃないじゃん。

私がそんなおバカなことを考えているうちに、どんどん話しは進んでいた。

「色々調べて探しているうちに盗賊まがいの事をしていたのか?家に侵入するのは、どんな事情があっても犯罪だぞ。」

「犯罪?」

とーさまが言った言葉をバカにするように鼻で笑って、龍斗さんはとーさまをギロリと睨んだ。

「言葉も何も分からない異国の人間を殴り、蹴るのは犯罪じゃないのか?黒髪黒目が気持ち悪い、不気味だと罵り石を投げるのは?髪をむしり取り、目玉をくり抜こうとするのは?散々追いかけ回して崖から突き落とすのは?全部犯罪じゃないのか?」

龍斗さんの話しを聞いて、とーさまが……この部屋にいた全員が眉を顰めた。
私は震えながらリスターの腕にしがみつく。リスターが抱き締めてくれるけど、なかなか震えは止まらない。

龍斗さんが今まで経験したことは、とーさまに助けられてなかったら、きっと私もされていたことなのだから。

「アヤナ、大丈夫だよ。」

リスターが抱き締めながら背中を撫でてくれ、後ろからはかーさまが頭を撫でてくれた。
2人の手の温もりに、震えも少しずつ治まってきた。
私には、ここで頼れる人が沢山いる。けれど、龍斗さんはずっと一人で生きてきたのだ。
これまでの龍斗さんを思うと胸が痛かった。


「……すまない。」

「べつに、あんたに謝って欲しくて言った訳じゃないさ。崖から突き落とされた時には流石に俺もヤバイと思ったけど、それがなかったら気付けなかった事があるからな。」

「それは……」

「そう、無傷だったんだ。彩菜が屋根から落ちても無傷だったろう?それから俺が色々試してみた結果、どの高さから飛び降りても無事に着地出来た。そうなると、下から上にはどうなると思う?ちょっとジャンプしただけで、この家の2階までは軽く跳べるんだ。」

そこまで言うと、龍斗さんはニッと口の端を持ち上げて笑った。

「俺が出来るんだ。だったら同じ日本人の彩菜はどうだ?悪いと思ったが彩菜でも試させてもらって、確信した。俺達日本人は、この国の人間と少し違うってな。」

「違う?どこが違うんだ?」

「俺も専門家じゃ無いから詳しく説明出来ねぇけど、多分、重力とかが関係してんじゃねぇかな。ってかこの国には重力って概念があんのか?」

「ジュウリョク?」

とーさまが首を傾げる。

ちょっと龍斗さん、言葉遣いがだんだん乱暴になってきてますよ。

「重力ってのは、地球で例えると、引力に地球が回転する力が合わさったものだって勉強した気がする。」

「チキュウ?インリョク?」

ああ、とーさまの頭が益々混乱してる。
わかる。わかるよ、とーさま!重力とか引力とか言われても、私もピンとこないもん!!

龍斗さんが頭をガシガシと掻き乱しながら返答に困っていた。

「あー!要は、地面に物体が引き寄せられる力のことだよ。この国は日本よりもその力が弱いんじゃねぇか?」

「……ふむ。だからお前とアヤナの体がこの国の人間よりも軽いという訳か。」

「団長さんだって、彩菜を抱っこしていて思い当たる節があっただろう?そういう事さ。」

とーさまは顎に手を置き考えていたけど、暫くしてから大きく頷いた。

「そうか、そうだな。お前の今までの話しが正しいとすると、全てのことに納得できる。」

私の前の壁……じゃないダナンさんとカールさんの立っている隙間から見えるとーさまは、うんうんと何度も頷いていた。
よく分かんないけど、とーさまが納得出来たみたいで良かった。


ーーそういえば、さっき龍斗さんが言ってたよね。ちょっとジャンプしただけで高く跳べるって。

新事実発覚じゃない?

ジャンプなんて、なかなかしないから分からなかったよ。
ここで私がジャンプしたら、天井に手がついちゃうのかな?
事実確認、今してもいい?

私が上に手を伸ばしてジャンプしようと身を屈めると、リスターに両肩をガッシリと掴まれて阻止された。

「ねえアヤナ、本当にやめて。まだ力の加減が自分じゃ分かってないよね?怪我でもしたらどうするの?アヤナは僕を怒らせたいのかな?ねえ、そうなの?」

私の肩を掴みながら言うリスターは、微笑んでいるけど目が笑っていない。

もう怒ってるじゃん!!……とは言えず。

「ごめんなさい。」

ペコリと頭を下げて素直に謝りましたとも。


触らぬ神に祟りなしならぬ、触らぬリスターに祟りなしだからね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

処理中です...