神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
49 / 73

どうにかして下さい

しおりを挟む
その後、勉強の時間中でもリスターとテックはギスギスした感じのままだった。

「アヤナ、ここが上手く書けないんだけど教えてくれない?」

「アヤナは今向こうに行ったから僕が教えるね。そこは丸を書くようにこうやって書くといいよ。」

リスターが私を手でグイッと奥に押しやってテックに字を教える。

「アヤナ、この読み方が分からないんだけど……。」

「アヤナは今手を洗いに行ったから僕が教えるよ。どこ?」

リスターが私を手でグイッと奥に押しやって読み方を教えようとする。

「ねえ、あんたじゃなくてアヤナに教えてもらいたいんだけど。」

「別に誰が教えてもいいよね?それに僕の名前はあんたじゃなくてリスターだよ。名前も覚えられないのかい?」

「あんたの名前なんてどうでもいいよ。俺はいつもアヤナに教えてもらってるから、アヤナがいいんだよ。」

「ふふっ。アヤナアヤナって煩いね。しつこい男は嫌われるんだって。知ってた?」

「あんたこそ、嫉妬深い男は嫌われるんだって、知ってるか?」


ーーバチバチッーー

リスターとテックの間に火花が散っている。
2人とも笑っているのに、目が笑っていないんだよ!

どうしよう……。

私とパルラがオロオロしているのを横目に、お母様は平然と他の子達の勉強を見ているし、龍斗さんは「青春だね~」としみじみと呟きながら2人を見守っていた。

パルラが涙目になりながら、私の腕にガシッとしがみ付く。

「アヤナ、ごめんね?リスター様に……貴族様にあんな態度を取るなんて許される事じゃ無いと思う。でもね、テックもリスター様がアヤナの婚約者だからって、ついついムキになってしまっているだけなの!悪気はないのよ!……多分。」

「だ、大丈夫だよ。リスターは身分とか気にしてないと思うし。それによっぽど何か問題が有りそうだったら、お母様か龍斗さんが注意すると思うよ。」

私はパルラの頭をヨシヨシと撫でて落ち着かせる。
パルラは涙目のままだったけど、自分に言い聞かせるように何度も何度も頷いた。

「うん、そうだよ……そうだよね。ありがとう、アヤナ。」

「少し早いけど、2人で中庭に行こうか?部屋にいると気が気じゃないもんね。」

パルラの手を取り部屋を出ようとしたところで、後ろからガシッと両肩を掴まれる。

恐る恐る振り返れば、リスターとテックが微笑みながら私の肩に手を置いていた。

「「どこに行くの?一緒にいくよ。」」

……わ~お。息ピッタリじゃん。


結局、その日は帰るまでずっとリスターとテックはワイワイと言い争っていた。

でも逆にここまで言い争えるなら、すっごく仲良くなれるんじゃないの?

私が帰りの馬車の中でリスターにそう言うと、ニッコリ笑って、きっぱり拒否をした。

「無理だよ。彼とはライバルだから。しかもアイツ、とてもアヤナに執着しているみたいだしね……かなり諦めが悪そうだ。」

「彩菜は天然人たらしだからな~。」

龍斗さんがそう言って苦笑する。

なんだよ天然人たらしって。しかもライバルって何?

私が難しい顔をして眉を顰めていると、リスターが私の頭を愛しげに撫でて微笑む。

「アヤナはそんなに考えなくてもいいよ。アヤナは僕の婚約者で、将来の僕のお嫁さんでしょう?」

「もちろんだよ!リスターとしか結婚したくないもん!テックは友達だし、やきもちなんて妬かなくても全然大丈夫だよ。だからテックと仲良く……」

「それは無理。」

リスターが食い気味に返事をする。 

……なんでだよ~。

もう、誰かどうにかして下さい!

「これからは僕も教会に行くからね。」

「え?騎士団の訓練はどうするの?」

「少し時間を調整してもらうから大丈夫。叔父上に聞いたけど、アヤナ達が教会に教えに行くのも新しいシスターが来るまでの間だけなんだよね?その間くらいどうにかなるよ。」



その宣言通り、教会に新しいシスターが来るまでの2ヶ月間、リスターは私達と一緒に教会まで通った。

そしてその2ヶ月間、私とパルラがオロオロしっぱなしだったのは言うまでもなく……。
リスターとテックが仲良くなる事もまた、最後までなかったのである。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...