神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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探し求めて 〜カール〜

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「ここから2人が落ちたのですか?」

俺はコトネオールの騎士達に案内された場所から下を覗き込んだ。

崖の下には木々が茂っていて底までは見る事は出来ないが、かなり深そうだった。

「現在の捜索状況は?」

案内してくれている騎士達に尋ねると、騎士達は顔を見合わせて困り顔をする。

「2人が落ちてすぐ、同行していた者達が崖の下まで降りたのですが、既に2人の姿はありませんでした。落ちた痕跡や血痕が無くて何とも不可解なんですが……今もなお、現場やその周辺を隈無く捜索しています。」


不可解ね……。

俺は一緒に来ていたダナンを見る。

ダナンも俺を見てコクリと頷いた。



ーーこの国の奴らは、アヤナとリュートのを知らない。


きっと、こうやって何かあった時の為に、リュートが敢えて言わなかったのだろう。


「分かりました。崖の下にはどうやって行くのでしょう?私達も現状を確認しておきたいので、連れて行ってもらえると嬉しいです。」

俺とダナンは騎士達の後について、崖の下へと続く道を下っていった。





コンコンコン。

「おーい、居るかー?」

「……はい。」

コトネオールに暫く滞在する為に取った宿は、王都ではなく少し離れた町にした。

部屋の扉を開ければ、窓の外をジッと眺めている金髪碧眼の男が1人。

そいつは戻って来た俺達をチラリと見ると、またすぐに窓の外へと目を移す。

「どうでしたか?」

「やはり、この国ではアヤナとリュートは能力を隠していたんだろうな。確かにあの崖は高さがかなりあったが、2人ならあれくらい簡単に降りられた筈だ。」

「まあ、普通の人間だったら簡単に死んじまうレベルの高さだけどな。」


俺とダナンが調査した結果、あの崖から落ちてもあの2人なら全く問題無かっただろうと判断した。




崖を調査した後、城に連れて行かれテックとルイスに再会する事になった。

アヤナと別れる前に、ルイスとは何度か会っている。
アヤナとリュートが行方不明の今も、平然とした態度なのが気に食わない。

一方のテックは憔悴しきった様子で、顔色も良くない。

ルイスの説明では、ずっと体調の良くなかったアヤナを元気付ける為に花畑へ行き、アヤナを抱っこしていたリュートが誤って崖から落ちたとのことだった。

あのリュートが誤って崖から落ちるなんて有り得ない。
ましてやアヤナを抱いているのに。

万が一、本当に誤って落ちたのだとしたら、なんとしてでもアヤナだけは助けようとしただろう。

それが、抱いたままだったのなら確実に自分から落ちたのだ。
きっと、コイツ等の手の内から脱出する為に。

「捜索は継続していますが、行方不明になってから2か月近く経っていますので状況はかなり厳しいでしょう。」

「……はい。」

「あの崖から落ちたので、自力で動けたとはとても思えません。ですから、何故行方不明になってしまったのかが私達には全く分からないのです……。申し上げにくいのですが、もし見つかっても生きている可能性は少ないでしょう。」

「…………」

淡々とアヤナ達が死んでいるかもしれないと告げるルイスに苛立ちながらも、必死に自分を落ち着かせる。

ダナンがルイスに掴みかからないかと心配したが、ダナンもなんとか耐えているようでホッとした。

俺達はアヤナとリュートが無事だと確信しているからな。


「私達も暫く滞在して、2人を探しても良いでしょうか?万が一、あの2人を発見出来た時には、是非とも一緒に連れて帰りたいのですが……。」

「……いいでしょう。と思いますが、その際には2人を連れ帰って下さい。気の済むまで滞在されて結構ですよ。」


……本当にコイツ、一発殴ってやりたい……。





言質は取った。後は2人を見つけるだけだ。

俺達は城を出ようとしたところで、後ろから呼び止められる。

振り返ると、パルラと、その横には威厳たっぷりな中年男性がいた。

……風貌からして、間違いなくこの国の王だろう。

俺達が膝を折ろうとすると、すかさず止められる。

「堅苦しい挨拶はよい。それより、私は其方達に謝らねばならぬ。…………アヤナ殿に対する、息子達の行き過ぎた仕打ちを止められず……すまなかった。」

国王が俺達に向かって頭を下げる。
横にいるパルラも同じく頭を下げた。

「あれの……テックの嬉しそうな顔を見ると、アヤナへの態度もなかなか注意出来ずにいた。不甲斐ない親ですまない。」

「私も、ずっと側にいたのにこんな事態にまでなってしまってごめんなさい。」

ボロボロと泣きながら謝るパルラに、俺は首を横に振って見せた。

「謝らないで下さい。俺達は、アヤナとリュートが無事だと信じていますから。元気な2人を連れて、国に帰ります。」

「そうだよな。とっと見つけて早く帰ろうぜ。いいですよね?国王様。」

イラついているのか、国王の前だと言うのにダナンの言葉遣いが乱れている。

苦笑しながらダナンを見ていると、国王が俺達の前にスッと封筒を差し出した。

「この中に、アヤナとリュートの帰国を命じる私の直筆の書と、船の切符が2枚入っている。これがあれば、2人を見つけ次第すぐに帰る事が出来るだろう。」

俺達は有り難くそれを受け取る。

去り際、パルラが泣きながらも笑顔で手を振り、俺達を見送ってくれた。

「アヤナに会ったら、伝えて下さい。……今までありがとうって。2度と会えなくても、これからも、ずっとずっと大好きって…………そう、伝えて下さい。」



見送ってくれていたパルラを思い出して感慨にふけっていると、窓の外をずっと見ていた男が部屋を出ようと歩き出す。

「分かりました。1分1秒でも早くアヤナを見つけてとっとと帰りましょう。」

「……リスター。お前もブレないねぇ。」

俺とダナンは思わず苦笑する。



コトネオールから、アヤナとリュートが行方不明になったという連絡を受けて、騎士団から調査隊が数人送られる事になった。

すぐに俺とダナンは立候補し、すんなりと許可を得る。
2人と普段から仲良くしていたのが功を奏したのだろう。

モタモタしている時間が惜しいので、連絡を受けた翌朝にはコトネオールに向かう船の上にいた。

そしてそこに、さも当然というようにリスターがいたのだ。

「アヤナがどんな姿をしていても、僕ならすぐに分かりますから。叔父上にも許可をもらってあります。」

しれっと言ってのけるリスターに、俺とダナンが顔を見合わせて笑ったのは言うまでもない。





リスターの中で、優先順位は昔からいつもアヤナが1番だった。


昔から騎士を目指しているのも、アヤナを守る為だというのも周知されている。


俺はずっと、ここまで1人の人を好きになれるリスターが羨ましかった。
それは今でも変わらない。

だからこそ、リスターがアヤナと幸せに暮らせる日が、早くやってくる事を願わずにはいられない。

なんとしてでも 見つけてやる。

決意も新たに、俺は部屋を出て行くリスターの後を追った。







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