12 / 96
甘い……甘いですよ!!
しおりを挟む
ひとしきり泣いた後、サイラスはゆっくりと顔を上げた。
「…………ごめん、ユーカ。服が濡れちゃった。」
サイラスが顔を押し付けていた私の肩を見ると、サイラスの涙を吸い取ったであろう部分が濡れている。
私は服が一着しか無いから、寝る時とかはサイラスのお母さんのシャツを着て寝ていた。
どう着ても5歳児に大人のシャツは大きいけど、袖を何重かにして折り曲げれば、ワンピースっぽく見えなくもない。
私がそれを着ている間に、いつもサイラスが私の一張羅の服を洗濯してくれている。
「熱で汗もかいただろうし、ユーカの服も乾いているから着替えようか。ほら、バンザイして?」
「ん。」
言われた通りにバンザイをする私から、サイラスが慣れた手つきでサッとシャツを脱がせてくれた。
素早く私の服を持ってくると、これまた素早く私に服を着せてくれる。
こんな感じに、いつもサイラスは私の世話を焼いてくれるのだ。
「うん、可愛い。」
着せ終わった私の頭を撫でながら、サイラスがニッコリと笑った。
泣いてスッキリしたのか、サイラスの表情はとっても晴れ晴れとしていて、イケメン度が更にパワーアップしている。
ーーくっ!!笑顔が眩しい!!
目をショボショボさせている私を見て、サイラスが楽しそうにクスクスと笑う。
「どうしたの?ユーカ。そんなに面白い顔をして。」
「…………サイラスのえがおがまぶしすぎるんだよ……。イケメン、おそるべし。」
「なんだそれ。ユーカは本当に可笑しな奴だなぁ。」
アハハッと声を上げて笑った後、サイラスが私をヒョイッとベッドから抱き上げて歩き出した。
「ご飯は食べられそうか?少し遅くなったけど朝ご飯にしよう。」
「ねえねえ、サイラス。ひとりであるけるから、おろして。」
「だーめ。病み上がりなんだから、大人しく抱っこされてて。」
下りようともがいても、サイラスが抱いてる力を強めてくるから、結局下りられなかった。
…………なんか、サイラスの過保護っぷりに拍車がかかっている気がする。
「……サイラスが、わたしにあまい……。」
「うん。だって、それはしょうがないよ。ユーカは俺の特別なんだもん。」
「えっ!?とくべつ?」
"特別"という言葉に敏感に反応する私にサイラスが目を細め、そして大きく頷いた。
「そう、特別。俺も、ユーカが世界で一番好きだよ。ユーカが……ユーカだけが、俺の特別だから。」
ーー私が、サイラスの特別?
今まで、誰にも必要とされなかった私が?
"特別"という言葉に、心と体がブワッと熱くなる。
「わたし、サイラスのとくべつ!!」
「ふふっ、そうだよ。ユーカは俺の特別。俺は?俺は、ユーカの特別じゃない?」
「とくべつだよ!!わたしも、サイラスだけが、とくべつだもんっ!!」
ギュッと、サイラスの首にしがみ付いて必死にそう言うと、サイラスも嬉しそうに笑ってギュッと私を抱き締めてくれた。
「良かった。俺達、一緒だね。」
「うん!!いっしょ!!」
「さあ、早く行って朝ご飯を食べちゃおう。」
「うん!!たべる!!」
そんな会話をしているうちに、私はサイラスに抱っこされたままリビングへ到着する。
朝食をペロリと食べ終えた私はサイラスにまた抱っこされ、強制的にベッドへ寝かされた。
また熱が出るといけないから、と、ベッドから動くのを禁止された私が頬を膨らませて拗ねて見せても、サイラスからの許可はおりなかった。
ジト目でサイラスを見上げると、サイラスは苦笑しつつ私の頭を撫でる。
「ユーカがまた熱を出したりしたら、これから俺はきっと、ユーカが心配で心配で……ユーカに何もさせてあげられなくなっちゃうかもしれない。……それでもいいの?」
「…………おとなしくしてます。」
「ふふっ。エライな。夜ご飯は、ユーカの好きなモノ、沢山作ってあげるから。」
「うんっ!!」
目を輝かせる私を、クスクス笑ってサイラスが見下ろし、掛け布団を掛けてくれた。
私をあやすように、掛け布団の上から優しくポンポンと叩くサイラスを、私はニヘニヘと笑いながらジ~ッと見つめる。
「何?」
「……なんでもな~い。」
やっぱりサイラスは私に甘いよなぁ、と思いつつも、その特別扱いが嬉しくて、心がホクホクして、ついつい顔がニヤけてしまう。
「ふふっ、変な顔。」
「はいはい。どうせわたしはへんなかおで、サイラスはイケメンですよ~。」
「なんだそれ。」
サイラスが面白そうに笑って、また私の頭を撫でる。
この日、サイラスにずっと監視されていた私は、本当に一日中ベッドから出ることなく過ごしたのだった。
「…………ごめん、ユーカ。服が濡れちゃった。」
サイラスが顔を押し付けていた私の肩を見ると、サイラスの涙を吸い取ったであろう部分が濡れている。
私は服が一着しか無いから、寝る時とかはサイラスのお母さんのシャツを着て寝ていた。
どう着ても5歳児に大人のシャツは大きいけど、袖を何重かにして折り曲げれば、ワンピースっぽく見えなくもない。
私がそれを着ている間に、いつもサイラスが私の一張羅の服を洗濯してくれている。
「熱で汗もかいただろうし、ユーカの服も乾いているから着替えようか。ほら、バンザイして?」
「ん。」
言われた通りにバンザイをする私から、サイラスが慣れた手つきでサッとシャツを脱がせてくれた。
素早く私の服を持ってくると、これまた素早く私に服を着せてくれる。
こんな感じに、いつもサイラスは私の世話を焼いてくれるのだ。
「うん、可愛い。」
着せ終わった私の頭を撫でながら、サイラスがニッコリと笑った。
泣いてスッキリしたのか、サイラスの表情はとっても晴れ晴れとしていて、イケメン度が更にパワーアップしている。
ーーくっ!!笑顔が眩しい!!
目をショボショボさせている私を見て、サイラスが楽しそうにクスクスと笑う。
「どうしたの?ユーカ。そんなに面白い顔をして。」
「…………サイラスのえがおがまぶしすぎるんだよ……。イケメン、おそるべし。」
「なんだそれ。ユーカは本当に可笑しな奴だなぁ。」
アハハッと声を上げて笑った後、サイラスが私をヒョイッとベッドから抱き上げて歩き出した。
「ご飯は食べられそうか?少し遅くなったけど朝ご飯にしよう。」
「ねえねえ、サイラス。ひとりであるけるから、おろして。」
「だーめ。病み上がりなんだから、大人しく抱っこされてて。」
下りようともがいても、サイラスが抱いてる力を強めてくるから、結局下りられなかった。
…………なんか、サイラスの過保護っぷりに拍車がかかっている気がする。
「……サイラスが、わたしにあまい……。」
「うん。だって、それはしょうがないよ。ユーカは俺の特別なんだもん。」
「えっ!?とくべつ?」
"特別"という言葉に敏感に反応する私にサイラスが目を細め、そして大きく頷いた。
「そう、特別。俺も、ユーカが世界で一番好きだよ。ユーカが……ユーカだけが、俺の特別だから。」
ーー私が、サイラスの特別?
今まで、誰にも必要とされなかった私が?
"特別"という言葉に、心と体がブワッと熱くなる。
「わたし、サイラスのとくべつ!!」
「ふふっ、そうだよ。ユーカは俺の特別。俺は?俺は、ユーカの特別じゃない?」
「とくべつだよ!!わたしも、サイラスだけが、とくべつだもんっ!!」
ギュッと、サイラスの首にしがみ付いて必死にそう言うと、サイラスも嬉しそうに笑ってギュッと私を抱き締めてくれた。
「良かった。俺達、一緒だね。」
「うん!!いっしょ!!」
「さあ、早く行って朝ご飯を食べちゃおう。」
「うん!!たべる!!」
そんな会話をしているうちに、私はサイラスに抱っこされたままリビングへ到着する。
朝食をペロリと食べ終えた私はサイラスにまた抱っこされ、強制的にベッドへ寝かされた。
また熱が出るといけないから、と、ベッドから動くのを禁止された私が頬を膨らませて拗ねて見せても、サイラスからの許可はおりなかった。
ジト目でサイラスを見上げると、サイラスは苦笑しつつ私の頭を撫でる。
「ユーカがまた熱を出したりしたら、これから俺はきっと、ユーカが心配で心配で……ユーカに何もさせてあげられなくなっちゃうかもしれない。……それでもいいの?」
「…………おとなしくしてます。」
「ふふっ。エライな。夜ご飯は、ユーカの好きなモノ、沢山作ってあげるから。」
「うんっ!!」
目を輝かせる私を、クスクス笑ってサイラスが見下ろし、掛け布団を掛けてくれた。
私をあやすように、掛け布団の上から優しくポンポンと叩くサイラスを、私はニヘニヘと笑いながらジ~ッと見つめる。
「何?」
「……なんでもな~い。」
やっぱりサイラスは私に甘いよなぁ、と思いつつも、その特別扱いが嬉しくて、心がホクホクして、ついつい顔がニヤけてしまう。
「ふふっ、変な顔。」
「はいはい。どうせわたしはへんなかおで、サイラスはイケメンですよ~。」
「なんだそれ。」
サイラスが面白そうに笑って、また私の頭を撫でる。
この日、サイラスにずっと監視されていた私は、本当に一日中ベッドから出ることなく過ごしたのだった。
112
あなたにおすすめの小説
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる