ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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甘い……甘いですよ!!

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ひとしきり泣いた後、サイラスはゆっくりと顔を上げた。


「…………ごめん、ユーカ。服が濡れちゃった。」


サイラスが顔を押し付けていた私の肩を見ると、サイラスの涙を吸い取ったであろう部分が濡れている。

私は服が一着しか無いから、寝る時とかはサイラスのお母さんのシャツを着て寝ていた。

どう着ても5歳児に大人のシャツは大きいけど、袖を何重かにして折り曲げれば、ワンピースっぽく見えなくもない。

私がそれを着ている間に、いつもサイラスが私の一張羅の服を洗濯してくれている。


「熱で汗もかいただろうし、ユーカの服も乾いているから着替えようか。ほら、バンザイして?」

「ん。」


言われた通りにバンザイをする私から、サイラスが慣れた手つきでサッとシャツを脱がせてくれた。

素早く私の服を持ってくると、これまた素早く私に服を着せてくれる。

こんな感じに、いつもサイラスは私の世話を焼いてくれるのだ。


「うん、可愛い。」


着せ終わった私の頭を撫でながら、サイラスがニッコリと笑った。

泣いてスッキリしたのか、サイラスの表情はとっても晴れ晴れとしていて、イケメン度が更にパワーアップしている。


ーーくっ!!笑顔が眩しい!!


目をショボショボさせている私を見て、サイラスが楽しそうにクスクスと笑う。


「どうしたの?ユーカ。そんなに面白い顔をして。」

「…………サイラスのえがおがまぶしすぎるんだよ……。イケメン、おそるべし。」

「なんだそれ。ユーカは本当に可笑しな奴だなぁ。」


アハハッと声を上げて笑った後、サイラスが私をヒョイッとベッドから抱き上げて歩き出した。


「ご飯は食べられそうか?少し遅くなったけど朝ご飯にしよう。」

「ねえねえ、サイラス。ひとりであるけるから、おろして。」

「だーめ。病み上がりなんだから、大人しく抱っこされてて。」


下りようともがいても、サイラスが抱いてる力を強めてくるから、結局下りられなかった。


…………なんか、サイラスの過保護っぷりに拍車がかかっている気がする。


「……サイラスが、わたしにあまい……。」

「うん。だって、それはしょうがないよ。ユーカは俺の特別なんだもん。」

「えっ!?とくべつ?」


"特別"という言葉に敏感に反応する私にサイラスが目を細め、そして大きく頷いた。


「そう、特別。俺も、ユーカが世界で一番好きだよ。ユーカが……ユーカだけが、俺の特別だから。」



ーー私が、サイラスの特別?

今まで、誰にも必要とされなかった私が?

"特別"という言葉に、心と体がブワッと熱くなる。


「わたし、サイラスのとくべつ!!」

「ふふっ、そうだよ。ユーカは俺の特別。俺は?俺は、ユーカの特別じゃない?」

「とくべつだよ!!わたしも、サイラスだけが、とくべつだもんっ!!」


ギュッと、サイラスの首にしがみ付いて必死にそう言うと、サイラスも嬉しそうに笑ってギュッと私を抱き締めてくれた。


「良かった。俺達、一緒だね。」

「うん!!いっしょ!!」

「さあ、早く行って朝ご飯を食べちゃおう。」

「うん!!たべる!!」


そんな会話をしているうちに、私はサイラスに抱っこされたままリビングへ到着する。



朝食をペロリと食べ終えた私はサイラスにまた抱っこされ、強制的にベッドへ寝かされた。

また熱が出るといけないから、と、ベッドから動くのを禁止された私が頬を膨らませて拗ねて見せても、サイラスからの許可はおりなかった。


ジト目でサイラスを見上げると、サイラスは苦笑しつつ私の頭を撫でる。


「ユーカがまた熱を出したりしたら、これから俺はきっと、ユーカが心配で心配で……ユーカに何もさせてあげられなくなっちゃうかもしれない。……それでもいいの?」

「…………おとなしくしてます。」

「ふふっ。エライな。夜ご飯は、ユーカの好きなモノ、沢山作ってあげるから。」

「うんっ!!」


目を輝かせる私を、クスクス笑ってサイラスが見下ろし、掛け布団を掛けてくれた。

私をあやすように、掛け布団の上から優しくポンポンと叩くサイラスを、私はニヘニヘと笑いながらジ~ッと見つめる。


「何?」

「……なんでもな~い。」


やっぱりサイラスは私に甘いよなぁ、と思いつつも、その特別扱いが嬉しくて、心がホクホクして、ついつい顔がニヤけてしまう。


「ふふっ、変な顔。」

「はいはい。どうせわたしはへんなかおで、サイラスはイケメンですよ~。」

「なんだそれ。」


サイラスが面白そうに笑って、また私の頭を撫でる。




この日、サイラスにずっと監視されていた私は、本当に一日中ベッドから出ることなく過ごしたのだった。

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